第231回(7月1日)消費税が最大争点 過半数割れ目指す
 第22回参院選は11日の投開票日に向けて終盤戦に突入しました。最大争点は自民党が公約に掲げ、菅首相が検討を確約した消費税率の10%への引き上げ問題。竹下政権が導入後に、橋本政権が引き上げ後に双方とも退陣に追い込まれた問題だけに、左翼の政党が猛反対し選挙戦は際どい攻防を展開、結果は予断を許しません。参院選は鳩山前首相が無責任に投げ出した民主党政権を継続させるかどうか、国民に信を問う重大な選挙です。菅内閣は単なる選挙管理内閣に過ぎませんが、小沢アレルギーを感じた国民が2トップの退陣を歓迎、内閣支持率がV字回復したことから、ご祝儀相場の内にと国会会期延長を避けて選挙に逃げ込みました。しかし、民主党が単独または与党で過半数を取れなければ、国会運営に支障を来し予算・重要法案の成立は絶望的で連立の組み替えが起きます。同時に同党内では9月末の代表選を目指して小沢グループが巻き返し、党内抗争が激化します。逆に民主が過半数を取れば「参院選に政治生命をかけた」谷垣総裁は引責辞任する腹で、自民党内にも波風が立ちます。公示後は公選法の規定で候補者名を書けませんが、長崎の自民党候補を勝たすべく県連会長として懸命な努力を続けています。どうぞご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

与党過半数阻止でねじれ国会
 参院選は、定数242人の半数・121議席(選73,比48)を争奪する戦いですが、今回は前回07年の377人(選挙区選218,比例選159)を61人も上回る438人(選251,比187)が立候補し、激しい戦いになっています。民主党の非改選議席が62、今回の改選議席は54で、単独過半数122の確保には60議席獲得が必要です。菅首相は、与党系無所属4を含めると非改選議席は66あることから、「54プラスα」と控え目に発言しましたが、最悪でも国民新党の助けを借りて現状の与党過半数は維持したい考えです。これは「脱小沢人事」で、国民の間に小沢独裁に対する「アレルギー」が薄れ、内閣支持率が60%台にV字回復したものの、首相が「消費税率を10%へアップ」と公言、自民を除く野党が反対運動を展開しているため、慌てて控え目な予測を立てたものです。対する自民党の谷垣禎一総裁は「与党過半数阻止」を掲げ、最低でも改選議席38を50台に乗せて衆参ねじれ国会に持ち込み、重要法案成立を断固阻止する強い決意を固めています。

PB黒字化は20年度に後退
 首相は6月25〜27日にカナダで開かれたG8及びG20の首脳会議(サミット)で「2020年度までの10年間に国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を黒字化させる」と宣言しました。直前に閣議決定した財政運営戦略によるもので、骨子は@11年度の新規国債発行額を10年度水準(44・3兆円)に抑制A所得税、法人税、消費税、資産課税など税制の抜本改革の内容を早期に決定B一般歳出と地方交付税の支出を10年度当初予算規模(70・9兆円)に抑制C国と地方の基礎的財政収支の対GDP比の赤字幅を15年度までに半減D20年度までに基礎的財政収支を黒字化E21年度以降に、国と地方の債務残高を対GDP比で安定的に低下――が柱です。11〜13年度の歳出に枠をはめ、さらに今後10年間の財政再建の道筋を示しています。しかし、小泉政権は06年7月、基礎的財政収支の黒字化を11年度に達成する「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針06)を決定、新規国債発行額は30兆円、社会保障費の伸びを5年間で1兆1千億円(年間2200億円)と策定、菅内閣より9年早く達成する目標で、財政健全化に努めてきました。リーマンショックによる税収落ち込みがあったとはいえ、菅内閣の国債発行額44・3兆円はバラマキ政策によるもので、身勝手な財政運営戦略です。

氷と油の菅ミックスで大混乱
  選挙戦では、谷垣総裁が「誇りと自信の国造り、進取の政策でもう1度『いちばん』(NO1)が溢れる日本に」と訴えているのに対し、首相は「脱小沢」で「クリーン政治」を印象づけ、「強い経済(新成長戦略)、強い財政(消費税など抜本的税制改革)、強い社会保障(医療・雇用の充実)」三位一体の「第3の道」で「最小不幸社会」の達成を目指すとブチ歩いています。消費税アップ分を医療・介護に回して雇用を生み出し、財政再建と経済成長の両立を図るという「菅ノミックス」ですが、増税と景気刺激は「水と油」というより「氷と油」。その中に不毛政策の肉を入れてすき焼きを煮るようなものです。優先順位を付けずにブレーキとアクセルを同時に踏んで発進すれば、経済が大混乱し家計に響くばかりです。首相は財務相当時、先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議に出席して、「日本の国債発行残高はGDP比181%で先進国中最悪。財政破綻の危険性はギリシャ以上だ」と脅され、消費税を欧州並みに22%程度まで引き上げるよう要求されました。確かに国債発行残高は637兆円で、地方合わせた債務残高は862兆円の巨額です。

鬼門の消費税アップに舵切る
  「毎年44兆円以上の新規国債を発行すれば、たちまち1千兆円を超えてギリシャの二の舞になるし、そのツケは将来の子どもたちに回り、大きな負担となる」――首相は子ども手当、高速料金無料化などのバラマキ政策が歳出増の原因であることを棚に上げて、4年間は封印していたはずの消費税アップに舵を切りました。しかし、消費税は大平内閣が79年に一般消費税(税率5%)の導入を閣議決定して衆院選で敗北。中曽根内閣が87年に売り上げ税(同5%)を国会提出して翌年の統一地方選挙で大敗。竹下内閣が89年4月に現行の消費税(同3%)を成立させましたが、リクルート事件もあり退陣。直後の参院選で大敗し後継の宇野内閣が退陣。橋本内閣が97年に税率を5%に引き上げて翌年の参院選で大敗し退陣――と受難続きで選挙には鬼門です。そこで、自民党が選挙公約に「消費税を10%へ引き上げる」と打ち出したとたん、菅首相は「待ってました」とばかり先月末、「参院選が終わったら超党派で本格的な議論を始めたい。自民党が提案している10%案を1つの参考にしたい。公約と受け止めて貰って結構だ」と記者会見で増税の本音を打ち明けました。

カンニング、抱きつきお化け
  「首相は自民党の答案を菅(カン)ニングし、丸写しにした」(谷垣総裁)、「自民党政策に“抱きつきお化け”だ」(石破茂政調会長)、「民主党が自民党案をパクり、争点を消そうとした」(山口那津男公明党代表)、「赤信号、ミン・ジで渡れば怖くない、だ」(小池晃共産党政策委員長)――。首相発言に野党首脳は一斉に反発し、選挙に悪影響と見る小沢氏も不快感を示しました。亀井静香国民新党代表は「庶民いじめの消費税増税は断固許さない」と反対し、強行すれば連立解消の構え。共産、社民連も「お札に色は付いていない。増税分が法人税減税など大企業優遇に回る」と猛反発。谷垣氏は「超党派の協議は元々自民党が言い出したこと。協議は基本的に受けて立つ」と言いつつも「民主党の政権公約の基本では『子ども手当、高速料金無料化などは無駄を削れば財源が出てくるので、4年間は上げない』と言って来た。財政、財政構造に対する見方が狂ったわけで、まず国民に謝罪し、同党内論議やシュミレーションをしたうえでないと協議には応じられない」と厳しい注文を付けました。

軽減税率、還元税で逆進緩和
 逆進性の強い消費税のアップには、欧米が取り入れている低所得者、年金生活高齢者に対する食費など生活必需品の軽減税率や還付税制を検討する必要があります。消費税は予算総則で1%は地方に、4%は基礎年金、高齢者医療、介護(3つの計は9・8兆円)に充当するよう定められています。税率1%は2・4,5兆円で、4%は10兆円に見合います。自民党は消費税を福祉目的税化しますが、不足している年金、医療、介護に必要な10兆円を5%アップで賄う方針です。だが、一般家庭は年16万円の負担増が予想されることから、高齢者、低所得層には欧米並みの軽減税率か還元税を適用して逆進性を緩和します。それには商店へのインボイス制とか、税・年金などを統一した背番号制度の導入が必要です。菅内閣は成長戦略で、「2020年度までの平均名目成長率3%、実質成長率2%とする」という目標を掲げ、「法人税率引き下げ」「総合特区・都市政策」など13施策を達成する方針で@環境・エネルギーA健康B観光・地域活性化Cインフラ輸出などアジアとの連携D技術革新E雇用・人材――を重点に掲げていますが、実現は容易ではありません。郵政改革法案、道路財政特措法改正案、労働者派遣法改正案など参院選後の臨時国会では積み残した重要法案が山積しています。自民党はこれら審議に絡めて消費税の問題点を徹底追及する方針です。

部分連合or小沢除名で激動
 消費税報道で内閣支持率のV字回復は約15%ほど軒並み下落し、マスコミは序盤情勢で「与党過半数は微妙 1人区自民優勢 みんなの党躍進」(読売、共同)、「民主党過半数は微妙」(朝日)などと自民に楽観的な予測を立てましたが、民主党の「複数区2人擁立作戦」は功を奏し、共倒れにはならず比例選で相乗効果を発揮している模様です。1人区でも民主党の金権トップ2の退陣は、さほど自民の追い風にならず、厳しい戦いを続けており、油断は禁物です。「第3極」新党も分裂し過ぎて政権打倒の勢力には力不足です。我々は谷垣総裁が言う「与党過半数阻止」が大目標。阻止すれば民主党は衆院307議席で、「衆院に差し戻して3分の2で再可決」する「60日ルール」には13議席足りず、予算は成立しても関連の重要法案は1本も成立出来ません。それでも菅首相は続投し、消費税は自民党などと、公務員改革はみんなの党との部分政策連合(パーシャル連合)を模索し、乗りきる構えです。だが、民社党の9月末代表選を巡る党内抗争は激化が予想され、参院選後に第5検察審査会の結論が出され、「小沢氏起訴妥当」の再議決が出れば、アンチ小沢グループが「小沢除名」の運動を起こすと見られ、これに小沢氏がどう対抗するか。秋に向けた政局は波乱含みです。