第230回(6月16日)7・11決戦迫る 脱小沢化粧直し
 鳩山後継の菅直人内閣は、「脱小沢」に化粧を直して8日に発足しました。幹事長に枝野幸男行政刷新相、副総理兼官房長官には仙谷由人国家戦略相、岡田克也外相ら11閣僚は留任、新人5閣僚を起用しての門出です。小沢一郎前幹事長に距離を置く人材を重用し、同氏の影響力を排除した政権運営でイメージを刷新、参院選勝利に賭ける姿勢を鮮明に打ち出しています。所信表明演説では「経済、財政、社会保障」3強化の一体的実現を目指す経済成長の「第3の道」を追求する考えを強調しました。これにより内閣支持率は60%台半ばまでV字回復したため、ご祝儀相場のうちに参院選を戦おうと会期延長を見送り、参院選は24日公示、投開票日は7月11日と確定しました。2週間の会期延長を要求していた自民党は、2日間の衆参両院代表質問で、小沢氏や鳩山前首相の「政治とカネ」問題を徹底追及し、「小沢隠し」内閣に潜む金権体質を暴きました。一方の小沢陣営は菅内閣を「選挙管理内閣」と位置づけ、党代表の任期が切れる9月の代表選に対立候補を立てて戦うと宣言、早くも党内抗争が始まっています。このように政局は緊迫、参院選は厳しい戦いが予想されます。さらなるご支援、ご叱正をお願い申し上げます。

クリーン目指し抱き合い心中
  「国民が徐々に聴く耳を持たなくなった。残念でならないし、私の不徳の致すところだ」――。鳩山前首相が2日朝の両院議員総会で述べた辞任の理由です。沖縄県の米軍普天間飛行場移設を巡る迷走で社民党が連立政権を離脱したことや、自らの資金管理団体の「政治とカネ」問題の責任を取り退陣したわけですが、進退を巡り3度開かれた3者会談では、改選期の輿石東参院議員会長が「鳩山首相では参院選が戦えない」と真剣な表情で引導を渡したのに対し、鳩山氏は「私も引きます。幹事長も職を引いて頂きたい。それによって新しい民主党、クリーンな党を作り上げることが出来る」と求め、小沢氏が「分かった」と応じざるを得なかったそうです。首に鈴を付けに行ったミイラ取りがミイラにされたというか、抱き合い心中、あるいは鳩山氏が小沢氏と差し違えの死を選んだことは事実です。御厨貴東大教授は読売のコラムで、「鳩山首相のメッセージは意外にも明解。普天間解決の失敗と政治とカネ問題露呈の2点をズバリと指摘し、責任を取る形で辞任。しかもツ−トップの片割れ小沢幹事長も道ずれにした。自ら決断することがなく多くの矛盾を抱え込んだ首相は去り際に決断し、福島社民党党首の閣僚罷免と小沢幹事長の同時辞任のカードを切った。散る際の美学とも言える」と、自民党3代首相の辞め方と比較し誉めています。

素早い小沢包囲網で菅氏大勝
 鳩山後継最有力の菅氏の動きは素早く、直ちに鳩山氏に代表選出場の意向を伝え、3日夕の立候補表明の記者会見では「私が党代表の時に小沢氏が党首だった自由党と『民由合併』を決め、民主党をより強くし、政権交代に繋げる大きな力になった」と小沢氏を持ち上げる一方、「暫く静かにして頂いた方が、本人にも、民主党にも、日本の政治にとってもいいのではないか」と述べ、小沢色排除の方針を明確に打ち出しました。これには普天間基地移設で連帯責任を感じる岡田外相が「権力の二重構造は好ましくない。政治とカネの問題で民主党らしさを取り戻す必要がある。菅氏を支持する」と記者団に語り、小沢氏に距離を置く前原誠司国交相、野田佳彦財務副大臣らも菅氏支援を表明、あっという間に小沢包囲網が形成されました。これに対し、松下政経塾出身の樽床伸二衆院環境委員長は150人の小沢派や特定のグループに属さない中堅・若手の支持を狙って立候補しましたが、小沢グループが自主投票を決めたため代表選は党所属国会議員423人、投票総数422票のうち菅氏が291票、樽床氏が129票を獲得、白紙2票で菅氏が大勝しました。

7奉行全員参加の居抜き内閣
  菅氏は直ちに党役員・内閣人事に着手、幹事長に枝野行政刷新相、副総理兼官房長官には仙谷国家戦略相を起用、岡田克也外相ら11閣僚を留任させて8日に菅内閣は発足しました。佐藤内閣の発足時と同様、池田内閣の留任組が多かった「居抜き内閣」の形態です。菅氏は「国民の信頼回復のため、政治とカネに対する厳格な姿勢を示し、クリーンな政治を政策実行の大前提として追求する」と強調、政策面では「国民の生活が第一」の立場を継続する考えを示し、「強い経済(成長戦略)、強い財政(抜本的税制改革)、強い社会保障(雇用・医療の充実)」三位一体の“カノ(菅)ミックス”で「最小不幸社会」の達成を目指す目標を掲げました。党運営では「自由闊達な党風を作る」と党風刷新を目指し「政策決定の一元化を維持しつつ、議員同士が闊達に議論できる政策調査会を設置する」とし、小沢氏の主導で廃止された政調を復活させることを確約。玄葉光一郎衆院財務金融委員長を政調会長に充て、公務員制度改革・少子化相として入閣させました。玄葉氏は渡部恒三元衆院議長が命名したアンチ小沢「7奉行」の一人。これで7奉行は全員入閣しました。

猛省促しつつ連立政権は残留
 国民新党の亀井静香代表は、政府が郵政改革法案の成立を参院選後の臨時国会に先送りしたことに「(今国会で速やかに成立させると)両党の紙まで書いた約束が反故になった。民主党は猛省をせないかん」と不満をぶちまけ、連立離脱をほのめかして抗議しました。だが、結局は「1丁目1番地」の政策が実現しないことの責任を取って組閣わずか3日後に金融・郵政改革相を辞任。後任に同党の自見庄三郎幹事長を送り込みましたが、民・国両党間で「同一法案を参院選後の臨時国会に再提出し最優先課題として速やかな成立を図る」など5項目の確認書をまとめ、連立政権には残リました。改革法成立を担保に連立残留を決めるあたり、さすがは老練政治家です。これまで両党間のパイプは亀井、小沢両氏でがっちり握ってきており、両氏の意志疎通は十分。予算編成の過程で亀井氏と菅氏は激しく論争したこともあり、今後の小沢氏の反転攻勢に果たす亀井氏の役割は大きいでしょう。

早くも党内抗争のゴング鳴る
 「参院選で勝利、政権を安定させて初めて本当の意味の改革が出来る。その時、自分自身が先頭に立って頑張るつもりだ」――。小沢氏は菅新首相が選出された直後に、こう収録したビデオメッセージを地元の盛岡市で開かれた党県連決起大会に送り、「1兵卒(無役)になった」と言いつつも全国選挙遊説を続けています。小沢氏は代表選前夜の2,3日、側近を通じ田中真紀子元外相や原口一博総務相、海江田万里選挙対策委員長代理に出馬を打診して断られ、小沢グループの自主投票を決めました。だが、「先頭に立つ」決意は、参院選の結果如何によっては9月の代表選に自ら出馬するか、検察審査会が「起訴の再議決」をした場合は原口氏らを本気で擁立して党の主導権を奪回する意欲を表明したものと見られます。その意味で新内閣発足と同時に党内抗争のゴングが鳴っており、普天間基地移設処理、財政破綻など鳩山政権の負の遺産を受け継いだ菅首相の前途は厳しいでしょう。

超党派の財政健全化会議提唱
  菅首相は11日の所信表明で、超党派の「財政健全化検討会議」の創設を提唱、同時に「政権公約会議」(菅本部長)を同日開き、「消費税を含む税制の抜本改革を行う」と明記した公約をまとめ、経済成長、財政再建、社会保障制度の維持・安定を一体的に実現する意欲を示しました。だが「超党派の検討会議」は福田、麻生両内閣が既に提起したのを民主党が拒否、谷垣禎一自民党総裁も2月の代表質問で呼びかけましたが、鳩山前首相が無視しています。谷垣氏は「鳩山退陣、福島罷免、亀井辞任。政策に行き詰まり連立政権の3党首が自爆した。小沢隠しで化粧直しをしたが、超党派の協力を望むなら、まずバラマキ政策を総括し、国民に謝罪してからだ」と批判しています。民主党の公約は@無駄遣い排除、行政刷新A政治改革B外交、安全保障C子育て、教育D年金、医療、介護、障害者福祉E雇用F農林水産G郵政改革H地域主権I交通政策、公共事業――の10項目です。

子ども手当の満額支給は断念
 公約の主な内容は【子育て・教育】中卒まで1人当たり年31万2千円(月額2万6000円=10年度は半額支給)の子ども手当を支給。ただし、当面(11年度)1万3000円に相当する増額分は現金支給積み増しに加え、保育・教育など子育て支援に充当▽小中学校校舎の耐震補強改修に迅速に対応【経済財制運営】消費税を含む抜本的な税制改革による歳入改革の具体化を進め、中期財政フレームの期間(2013年度まで)終了後に出来るだけ早期に実施▽租税特別措置の原則廃止▽法人税率の見直し【公共事業】高速道路の原則無料化を段階的に実施▽木造住宅の耐震診断と耐震補強改修に公的支援【社会保障】医療過誤問題に対応する「医療審判庁」の新設▽雇用の基本理念を定める「雇用基本法」制定【外交防衛】将来を見据えた日米同盟の深化▽国連平和維持活動(PKO)への積極参加【政治改革・公務員制度改革】衆参議員定数の削減▽企業・団体献金の禁止▽政治資金所管の「日本型選挙委員会」(仮称)新設▽選挙運動の原則自由化▽「通年国会化」▽国家公務員の定員や給与などを管理する「公務員庁」の新設――などです。

消費税率早期引き上げに含み
  消費税率の引き上げ時期については、当初検討の「次期衆院選後」という表現を見送り、早期の引き上げに含みを持たせました。財政健全化目標は「基礎的財政収支の赤字幅を2015年度までに10年度の半分以下とし、同収支を20年度までに黒字化する」とし、新規国債発行額は11年度以降、10年度の44・3兆円を超えない方針を明記しました。
 衆院選の政権公約(マニフェスト)に掲げた「子ども手当の11年度からの満額支給(月額2万6000円)は「財政の状況を勘案し、既に支給している月額1万3000円から上積みする」との内容に改め、満額支給を事実上断念しています。成長戦略では、「2020年度までの平均名目成長率3%、実質成長率2%とする」という目標を掲げ、「法人税率引き下げ」「総合特区・都市政策」など13施策で達成する方針を示しました。首相は指示通りの「参院選を前に元気の出る、勢いの出る公約」がまとまり、ご満悦の様子です。

詐欺公約重ね支持率V字回復
  しかし、民主党は予算を見直し、税金の無駄遣い廃止で、「2013年度に16・8兆円の財源を生み出す」と衆院選公約で約束。それを子ども手当の満額支給(5・4兆円)、農業の個別所得補償(1兆円)、高速道路の無料化(1・3兆円)などに充てる考えでしたが、第1弾の事業仕分けで生み出した財源はわずか6900億円、無駄遣い予算の廃止でも2,3兆円しか捻出できず、ガソリン税など暫定税率の廃止も地球温暖化対策税(仮称)創設に振り替えるというように、同党マニフェストは「詐欺的公約」を積み重ねています。菅内閣の支持率がV字回復し、参院選は互角の戦いなどと言われていますが、自民党はこうしたペテン・虚構の上に築かれた菅人気を徹底的に暴き、国民の信頼を取り戻したいと奮闘しているところです。重ねてご支援をお願い申し上げます。