第228回(5月16日)命懸けなら5月末退陣 県民怒りの沖縄訪問
 天王山の参院選は2カ月以内。偽装献金事件で首相の元公設第1秘書の有罪判決が出たり、高速新料金の決定を巡って政府与党がまたも迷走したりで鳩山政権が大揺れの中、国会会期も残り1カ月となって与野党攻防は激しさを加えています。首相は4月末、政権浮揚のショウアップに税金の無駄遣いを洗い出す「事業仕分け」の第2弾を実施しました。しかし、二番せんじの「政治ショウ」に国民の評価は上がらず、間もなく米軍普天間飛行場移設問題が大詰めを迎えます。首相は今国会の冒頭、「5月末までに米国、地元、与党の3者の合意を得て決着させる」と大見得を切り、「必ず」「覚悟を持って」「職を賭して」と次第にハードルを上げ、4月末は「命を懸ける」とまで言い切りましたが、突破口を開こうとした初の沖縄訪問も県民の怒りと失望を買っただけで絶望的。命懸けなら退陣以外にありません。だが、ワシントン・ポスト紙から「益々いかれた(loopy)」と酷評されても平気な宇宙人首相のこと。3月末同様「法律に決められた訳じゃない」と開き直り、参院選後に先送りする魂胆に見えます。内閣支持率40%台は黄信号、30%台は赤信号ですが今は軒並み20%台の危険水域。民主党内から投手交代論が起きそうですが、自民党は政権たらい回しを許さず、窮地の「小鳩体制」を追い詰め、参院選を勝利する覚悟です。ご支援、ご鞭撻をお願い致します。

神妙な顔で県内と徳之島公表
 東京地検は4月22日、総額4億円もの巨額偽装献金事件の元首相公設第1秘書・勝場啓二被告に、禁固2年、執行猶予3年の判決を下しました。首相は「秘書任せで故人献金、母からの資金提供などは一切知らなかった」「公判が終わったら、母からの巨額資金の使途など資料を出して全て説明する」と述べてきましたが、党首討論ではこの発言を翻し、「資料を出す必要はない」と開き直りの答弁をしました。野党時代は秘書が逮捕された自民党の加藤紘一元幹事長に「秘書の犯罪は議員の責任だ。私なら議員バッヂを外す」といって議員辞職に追い込んでいます。昔から政治家、特に宰相の発言は「綸言汗の如し」で重く、一旦出た発言は取り消せず修正も効かないはずですが、平然と嘘をつく首相の破廉恥な姿に国民は驚き、呆れました。その極に達したのが就任後初めて沖縄入りした時の場当たり発言です。首相は4日、黄色の「かりゆし」ウエアに身を包み、県庁で仲井真弘多知事と対面したのに続き、高嶺善伸県議長、稲嶺進名護市長と会談、「県民の皆さんにお詫びしなければならない。全てを県外に、というのは現実問題として難しい」など神妙な表情で述べながら、移設先は「県内と鹿児島県・徳之島を検討している」ことを公式に表明しました。

何しに来たの?県民呆れ怒る
 首相は昨年7月、『最低でも県外移設』と公約して総選挙を戦いましたが、高嶺県議長に対しては「沖縄にも徳之島にも率直に普天間の基地移設に協力願えないかとの思いで来た」と平然と言ってのけ、記者団の質問には「党(の公約)ではなく、私自身の(党)代表としての発言だ」とすり替え、「米海兵隊の存在は、必ずしも抑止力として沖縄に存在する理由にならないと思っていた。学べば学ぶほど抑止力(が必要と)の思いに至った。(認識が)浅かったと言われれば、その通りかも知れない」と臆面もなく語り、記者団を唖然とさせました。重いはずの公約をあっさり否定、口から出任せに語り、北朝鮮や中国の脅威に睨みを利かす抑止力である在沖縄米海兵隊の役割、歴代首相が国政第一に取り組む日本の安全保障について、就任8カ月にしてようやく認識し始めたというから、総理は浅はかさを通り過ぎて欠陥人間です。「非常識だ」(大島理森自民党幹事長)、「国家経営の資格に欠ける」(渡辺喜美みんなの党代表)、「2世首相はみな政治音痴」(塩川正十郎元財務相)と批判しました。まさに米紙が言う「loopy首相」そのものです。何一つ具体策を示さない首相に県側は「一体何をしに来たのか」(幹部)と批判し、対話集会に出席した男性は「集会を『沖縄と話をした』というアリバイ作りに使われたらたまらない」と怒った――と読売は、報じています。首相は7日、徳之島、伊仙、天城の3町長とも会談しましたが、3町長は飛行場移設を拒否しました。

名ばかりの政策決定一元化
 8ヶ月間のクルクル変わる軽い発言と「詐欺公約」に国民の怒りは増大するばかりです。こうした発言のブレが予算編成、普天間飛行場移設、郵政改革法案、高速道路料金などで「朝令暮改の政策」となって現れ、「政策決定の内閣一元化」は名ばかりになっています。前号のHPでは紙面の都合で簡潔に述べましたが、政府が一旦決めた高速道路料金の割引制度見直しが2転、3転し、またも迷走しました。まず、普通車2000円の上限制度を決めた前原誠司国交相に噛みついたのは仙谷由人国家戦略相で、「JRやフェリー会社の経営に配慮し、本四連絡道路の料金を1000円高い3000円に設定したことは観光に響く」と反対しました。新料金制度は短い距離を走った場合、値上げになるうえ、トラック業界に対する大口割引制度も年度末で廃止することが盛り込まれたことで、関連業界や民主党内で「参院選が戦えない」と強い不満が出されました。21日の政府・民主党首脳会議では小沢幹事長が「無料化と言っているのに料金が上がっては、選挙民に説明できない。(大臣が)役所を説得できないからこういう結果が出る」と発言、担当の前原国交相を非難しました。

閣内内ゲバで小鳩体制に距離
 この鶴の一声を首相も了承し、仕切り直しに入りました。しかし、元々民主党が昨年末、高速道路の建設促進を政府に求めたのが始まりで、財源難の国交省は3兆円ある料金割引の原資に目をつけ、このうちの1・4兆円を建設費に回すことを考え出したもの。前原氏は「高速道路の建設促進を要望しながら、値上げはいかんというのは二律背反だ。閣議決定したものを変えろと言うのは、ガバナンス(統治能力)を問われる。絶対に認められない」と幹事長の見直し要求を拒否しました。首脳会議で“欠席裁判”を受けた前原氏は日本新党や新党さきがけに所属し「自民党の金権政治打破」を唱えてきただけに、田中金権政治の申し子・小沢氏とは肌が合わず、「小鳩体制」とも距離を置いてきました。アンチ小沢「7奉行」の仙谷国家戦略相も同様で、首相や亀井静香郵政改革相が任期中は封印した消費税率引き上げについて、菅直人財務相を支援する形で、「参院選公約に歳入確保策として明記すべきだ」と発言。衆院議員の任期満了を待たず消費税率引き上げを争点に解散・総選挙または衆参ダブル選挙に踏み切ることまで言及し閣内で内ゲバを起こしました。

連立政権に次々火種くすぶる
 民・社・国3党の連立政権には、基地、郵政、道路以外でも多くの火種がくすぶっています。永住外国人地方参政権付与法案と選択的夫婦別姓導入法案に社民党は賛成ですが、国民新党は反対で、亀井静香代表は「提出するなら連立を解消する」と強気。予算編成で菅直人財務相と対立した亀井氏は3月末、11兆円の追加経済対策を発表し、これを10年度補正予算案に組むよう主張。民主党の企業・団体献金禁止法案にも「金持ちしか政治家になれない」と猛反発しています。労働者派遣法改正案は、厚生労働省が登録型派遣を禁止するまでの猶予期間を「最長5年」とする法案要綱をまとめましたが、社民党は「最長3年」への短縮を修正要求しました。このように多くの法案は調整難で提出がもたつきました。政府内調整の混乱は「政治主導」と称し事務次官会議を廃止したことに起因しますが、元々安保政策に水と油の違いがあることが響いています。3月23日の参院予算委の集中審議で自民党の佐藤正久氏が質問したのに対し、首相は「米国の核抑止力は日本に必要だ」と答えましたが、福島社民党首は「日本の最大の抑止力は憲法9条だ。(9条が核を)日本に撃ち込ませてこなかった」と9条をコーランのように信奉し、護憲一点張りです。

国家衰退を嘆く石原都知事
 「打倒民主党」「日本復活」「政界再編」を使命に「立ち上がれ日本」を旗揚げした平沼新党の発起人・石原慎太郎都知事は一カ月前の「週間文春」で、要旨次のように語っています。「民主党政権は言いようがないほど酷い。普天間基地移設で首相以下閣僚はペラペラ喋りまくって解決できない。財政だってメチャメチャだ。典型的なバラマキ(政策)をやっている。高齢化社会になったら、高福祉・低負担などの仕組みが成り立ち得ないことは中学生でも分かること。敢えて国家衰退の道を選んでいる」とこき下ろし、「NYではこんな日本の冗談がはやっている」として、「日本人が鳩山首相のことを“サギ”と言ったら、米国人は“チキン”だと言う。中国人は“カモ”だと言い、ヨーロッパ人は“アホウドリ”と言う。本人は“ハト”だと言っているけれど、本当は“ガン”なのじゃないか」と面白おかしく紹介したあげく、「自民党も最後は漢字が読めない総理が出てきて世間から軽蔑され、選挙で与党から滑り落ちた。鳩山首相も同じように世界で嘲笑され、民主党仲間や国民からは軽蔑され始めている。就任半年で政権は末期状態だ」――と鳩山政権に厳しい診断を下しています。

高い教養・徳備えた大平元首相
 3月12日は宏池会の3代目会長・大平正芳元首相の生誕百年祭が開かれ、約700人が遺徳を偲びました。来賓代表の中曽根康弘元首相は「大平さんは高い教養と徳を備えた人だった。政治家はややもすれば表に出したがるが、彼は信条として知性を覆い隠していた」と持ち上げました。大平首相の番記者だった某通信社のS前論説委員長は「大平氏は確かに思索の人であり哲学者の趣があった。『権力行使は抑制的に』というのが大平政治の核心だった」と語っています。S氏は大平さんが好んだ言葉として、中国春秋時代の老子の言葉「大国を治むるは小鮮を烹(煮)るが如し」を自分の論説資料に取り上げ、「小鮮は小魚のこと。小魚は腸を抜かず、鱗も取らず、箸でかき回して形が崩れないように煮るべきで、大きな国を統治するには細心の注意と丁寧さが必要との教えだ」と解説。「沖縄の心・日米同盟・3党連立――を崩さず普天間飛行場問題を解決できるか。まさに小魚を煮る術が求められるが、鳩山首相にその術があるようには見えない」と軽薄で説得力や指導性の欠けた鳩山政権の稚拙さを喝破しました。首相が政権浮揚の切り札と期待した「事業仕分け」第2弾は、独立行政法人の原則廃止を掲げたマニフェストに沿って4日間で10府省が所管する47法人の151事業を対象に行い、16法人の34事業を廃止、情報公開を義務づけて透明性を高めたりしましたが、削減額は前回の約7000億円に比べると10年度予算の独法向けの支出は3兆円余に過ぎないため、削減は微々たるもので、単なるパフォーマンスに終わりました。国民が失望し、地元の怒りが頂点に達した普天間問題の詳報は、HP「北村の政治活動」をご覧下さい。