第226回(4月16日)鳩山内閣崩壊寸前 利敵行為―与謝野・若林の乱
 ポカポカ陽気の4月中旬ですが、7月11日想定の参院選が100日以内に迫り、与野党の攻防は一段と激化しています。予算成立後も景気回復の兆しがなく、民主党のバラマキ政治は国民の生活不安を煽っています。鳩山内閣は、基地移設問題での迷走に続き、郵政改革法案を巡る閣内の意見対立で連立政権は崩壊寸前。軽い発言に終始し指導力が欠如した首相は求心力が薄れ、調整役不在で内閣は機能不全の状態。内閣総辞職・退陣は時間の問題です。しかし、鳩山政権への逆風か募る中、与謝野馨元財務相らが離党し平沼赳夫元経産相グループと新党を結成したり、若林正俊元農相が前代未聞の「代理投票」で議員辞職するなど、利敵行為が目に余ります。参院選は、政権交代が正しかったのか、二大政党制の理想は実現に向かっているのか――国民に信を問う重大な選挙。「大きな政府」志向で労組支援の「結果第一社会主義」的な民主党か、激動の国際社会に順応する保守本流の自民党か。今度こそ本当の政権選択「やり直しの選挙」です。自民党は信頼回復出来る斬新な政権公約を掲げて参院選を戦い、政権奪還の布石を打ち、年内解散・総選挙に追い込む決意で臨んでいます。皆様の変わらぬご支援をお願い申し上げます。

基地・郵政の混乱で退陣要求
 「『官から民へ』に逆行する郵政再国営化だ。小沢幹事長に通ずる『行き過ぎた選挙至上主義』の表れで、国民負担の議論が欠落した暴論。普天間問題に続く閣内不統一は首相がリーダーシップに欠け、調整できないことを白日の下にさらした。政権担当能力が欠如している。1日も早く政権奪還に向け全力を注ぎたい」――。自民党の谷垣禎一総裁は3月25日の記者会見で、基地移設と郵政改革法案を巡る鳩山政権の混乱についてこう退陣要求を突きつけました。政府は同日、閣内で散々迷走を続けた沖縄の米軍普天間飛行場移設問題で2つの移設案をまとめ、米国と沖縄県に対し翌日、正式に伝えました。移設案は同県名護市にまたがる米軍キャンプ・シュワブ陸上部案と、同県うるま市にある米軍ホワイトビーチ沖の埋め立て案の2案に、鹿児島県徳之島など県外への訓練移転を組み合わせたもので、調整を本格化させたうえ、5月末に決着を目指します。しかし、社民党と中井真弘多県知事が瞬時に反対し、米側も反発。首相自身が「針の穴に縄を通すほど難しい」と認めるように、与党内、沖縄、米国の3方面への根回しと説得は至難の業です。

ヘルメットかぶった平野長官
  それでも首相は、記者会見で「極力、県外に移設させる道筋を考えて参りたい」と出来もしない総選挙時の公約にこだわり、「県内移設」となった場合の政治責任は頬かぶりして逃げる態度です。取りまとめ役の平野博文官房長官は「決断する時は、何されようが叩かれようが政府の責任で決断する。ヘルメットを被っておかないといけない」と一人で悲壮感を漂わせています。谷垣総裁は今国会2度目の党首討論で「首相は3月末までに一本化したいと発言したが、今日は(約束の)31日だ。県外だ、国外だ、と県民の期待を煽り立てた。唯一の解決が現行案だった。それをめちゃくちゃにした」と厳しく追及。これに対し、首相は「5月末までに県民、国民、米国に理解を求めた政府方針を作ると約束した。大っぴらに出来ないがその“腹案”は持っている」「命懸けで、体当たりで行動し、必ず成果を上げる」と答えましたが実現の見通しは暗く、言葉は空疎に響きました。谷垣氏は「5月に出来なければ日米間の信頼を決定的に損ない、国民の信頼も裏切る。その時は退陣するか(衆院解散で)信を問うべきだ」と攻め立てました。「手ぬるい」と批判された前回の党首討論と違って迫力十分で、「政治とカネ」よりも基地移設問題に時間をかけて内閣総辞職を強く求めました。

亀井郵政改革に閣内異論続出
 一方、「郵政改革法案」を巡っては閣内不一致をさらけ出しました。亀井静香郵政改革・金融担当相は同月24日、原口一博総務相、斎藤次郎日本郵政社長らとの会談結果、同法案の骨格を発表しました。主要部分は、@現在の5社体制を改め、持ち株会社の日本郵政と郵便事業会社、郵便局会社を統合した新たな親会社の傘下に、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険を置く3社体制とするA親会社に対する出資比率と、金融2社への出資比率はいずれも「3分の1超」とするBゆうちょ銀への与入限度額は現行の1000万円から2000万円に、かんぽ生保への加入限度額は1300万円から2500万円に、それぞれ引き上げる――というもので、ゆうちょ銀とかんぽ生保の経営自由度を高めて収益力を強化し、コストを賄う考えに立っています。日本郵政グループ内の委託契約で生じる年間5百億円規模の消費税については免除する方針です。これに対し、閣内では異論が続出。仙石由人国家戦略相は同日、「限度額引き上げは、どう使うか分からないお金を集めることになる。今もほとんどが国債運用だ」と、民間への融資に繋がらない点を指摘。野田佳彦財務副大臣は「官業の民業圧迫だ」と批判。古川元久内閣府副大臣もペイオフ制度の関連で懸念を表明しました。

首相、亀井氏が応酬“藪の中”
 税担当の菅直人副総理・財務相は消費税の免除について「どなたからもそういう話は出ていない。税には普遍性と公平性があり、自分のところだけ取るなと言う話をしていいのか」と反論しました。異論を唱える背景には、05年に国会提出した民主党の郵政改革法案が廃案になった経緯があるからです。この案は仙石氏らが策定したもので、郵貯限度額を逆に500万円に引き下げ、保険分野を完全民営化するなど、金融部門を大幅に縮小する案。ユニバーサル(全国一律)サービスを維持するため、金融部門の拡大で収益力強化を図る国民新党とは大きく異なります。亀井氏は異論に対し、「最終案は公聴会や9回の民主党政策会議、信金、信組の意見を聞き、関係閣僚2人で決め、発表前に首相の了解を得、小沢氏にも経過報告している」と反発。原口総務相も「プロセスに瑕疵はない」と亀井氏を擁護しました。だが、首相は「電話(報告)を受けたが了解していない」と記者団に答え、双方水掛け論で“藪の中”。民放テレビでも亀井、菅氏が激しく応酬してひんしゅくを買い、結局、30日の閣議懇談会に持ち越し、首相の一任で亀井氏の最終案に落着しました。

泡沫のしっぽが大家振り回す
 「The tail wags the dog」(しっぽが犬を振り回す)と言う喩えもありますが、基地問題で盾突く社民党。郵政改革でゴリ押しする国民新党。弱小2政党が大家の言うことを聞かず、連立政権は立ち往生です。連立3党は衆参で計403議席。うち社民党は12人、国民新党は8人で足しても20分の1の“泡沫政党”。それが、米軍普天間飛行場移設問題では社民党の福島瑞穂消費者・少子化担当相が「県外か国外移設」を唱えて一歩も引かず、郵政改革法案では国民新党の亀井郵政改革相が独自の案を早めに発表して民主党を振り回し、菅財務相ら経済閣僚の反発を買いました。閣僚経験者が少ない現内閣で、運輸、建設両相をこなした亀井氏は貫禄十分で喧嘩上手。参院選で民主党が過半数を確保すれば、連立が解消されることは百も承知で、要求すべきは強く主張し、郵政改革法案の今国会成立に全力を挙げています。閣議決定前に「最終案」と称して同法案骨子をブチ上げたのも、旧特定郵便局長会の支持を固めるために存在感を示し、既成事実を早く作り上げようとしたものです。亀井氏は自自連立の政調会長時代に小政党だった自由党の小沢一郎党首から政策面で無理難題を吹っ掛けられた苦い経験があります。その貸しを取り返すかのように、小沢氏の強権的手口を真似て随所に「拒否権」を発動しながらも、小沢氏と極めて近い関係にある斎藤氏(元大蔵事務次官)を日本郵政社長に抜擢する「小沢気配り」も見せるなどしたたかです。

過半数確保で社民切り捨てか
 「できる限り与党3党が一致協力し、その力で(参院選では)目標の過半数を達したい」――小沢幹事長も、福島氏の要望に応じ、これまでの記者会見では、民主党が参院選で過半数を制した場合でも、3党連立の枠組みを維持する考えを強調。首相も昨年末までは社・国両党首を料亭に呼び出し慰労する気遣いを見せてきました。しかし、民主党が国民新党などと組む参院の会派は、自民党を離れた議員の相次ぐ合流で、社民党を除いても過半数の122議席を既に確保。民主党内からは「支持者には社民党との連立に不満もある。3党の枠組みが崩れるのも仕方がない」(中堅議員)との声も出ています。小沢氏も「党首といえども閣僚の1員なら首相に従うべきだ」と亀井氏を批判。郵政や基地移設問題では連立解消もやむなしの構えで中央突破の腹を固めたようです。自民党は1,2日の両日、党本部で全議員懇談会を開き、党運営に関する意見を聴取。山本一太参院議員が「党をアピールするため、中堅、若手を執行部に抜擢せよ」と求めたり「新党結成を唱える者には離党勧告でけじめをつけろ」、「派閥を解消しろ」など、若手の激しい意見が出されました。

与謝野氏・平沼グが新党結成
 これに対し、谷垣総裁は「(参院)選挙まで後100日だ。勝って、ねじれ現象を起こしたい。骨格の人事を大きくいじる考えは毛頭ない」と語気を強め、派閥解消についても「本当にいらないと思う人は(派閥を)出ればいい」と突き放しました。谷垣氏としては中堅・若手を参院選の実働部隊である選対本部役員に起用することで党内の不満解消を図ろうとしています。しかし、「谷垣執行部を刷新し、若手・中堅を幹部に起用して出直しを図るべきだ」と要求してきた与謝野氏は、谷垣氏が全議員懇でこの要求を拒否したため、3日昼に党本部で谷垣氏と会談、7日付けの離党届を提出しました。与謝野氏は会談で「国民の求める政治の新しいパラダイム(志向の枠組み)は何かを、党内でもう一度再検討する必要がある。そうでないと自民党に明日はない」と述べ、新党作りを表明しました。与謝野氏は平沼元経産相と早くから新党結成で合意しており、メンバーはこの2人に与謝野氏の盟友で自民党古賀派の園田博之元官房副長官、額賀派で平沼氏に近い郵政造反組の藤井孝男元運輸相、伊吹派で同じ造反組の中川義雄元内閣府副大臣を加え政党要件を満たす5人。これに無所属で平沼グループの小泉龍司、城内実両衆院議員が参加の予定。先に離党の鳩山邦夫元総務相は「坂本龍馬発言で反発が出た」と反省、参加を見送りました。ほかに同党麻生派の鴻池祥肇元防災相、町村派の中山恭子元少子化担当相、額賀派の岩永浩美元農水副大臣(以上参院)も参加が噂されています。こうした新党ブームに刺激され、山田宏東京都杉並区長、中田宏前横浜市長、斉藤弘前山形県知事ら現・前職の首長連合が4月中にも新党を結成します。

第3極の「たちあがれ日本」党
 与謝野氏ら結党メンバーと「私はチアガール」と応援団を買って出た石原慎太郎都知事は5,8の両日、政策や参院選対応など新党結成の段取りを協議、@平沼氏は党代表、与謝野氏は「共同代表」の肩書きで処遇A党本部は東京・永田町の平沼氏の事務所に設置B参院選候補は比例選で10人程度、選挙区で定数5の東京、同3の埼玉、千葉、神奈川、大阪で擁立、1人区は見送る――などを決定。党名は新党発起人の石原氏が名付け親になって「たちあがれ日本」と命名、10日に旗揚げしました。結党趣旨書には「打倒民主党」「日本復活」「政界再編」の3つを「使命」として明記、民主党政権との対決姿勢を強調。綱領では、自主憲法制定や財政再建、経済成長力強化などを目標に掲げました。政策面では税制抜本改革を提唱し「規制緩和と消費税収でつくる雇用で、安心と成長を同時に達成する」と消費税増税の方向性を示唆。郵政改革は「民営化の原則は変えず、全国に郵政事業が行き渡る一律サービスの堅持」を主張しました。新党は第3極の政治勢力の結集を目指し、参院選で与党を過半数割れに追い込むため、東京は昨年の総選挙で高知1区から出馬し落選した橋本大二郎元高知県知事を、比例は同じく宮崎1区から無所属で出馬し落選した中山成彬元国土交通相を立てる考えです。しかし、政策面で自民党と大差がないため、福島社民党主は「タカ派ミニ自民党」、みんなの党の渡辺喜美代表は“あ”の字を抜いて、「第2自民党。立ち枯れ日本、と聞こえる」、仙谷国家戦略相は平均年令70歳の新党に「敬老会青年部のようだ」と皆で散々揶揄し、新党をこき下ろしました。

社民に代わる保守連立模索か
 与謝野氏は谷垣氏との決別会談で「(私の離党を)自民党分裂とか、大げさに感じないで欲しい」と述べ、園田氏も「小党ながら、民主党打倒で挟み撃ちする」と同じ陣営を強調しました。だが、石原氏はかつての「福田・小沢大連立」構想の賛同者。大連立は中曽根康弘元首相と渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長が黒幕とされますが、中曽根氏の秘書だった与謝野氏は5日の会合に先立ち、中曽根・渡辺両氏、青木幹雄前参院議員会長と個別に会い、新党結成を報告しています。「非自民」になった与謝野氏が小沢氏と囲碁仲間で親しい間柄であることを考えれば、「たちあがれ日本」が社民党に代わって保保連立を組む可能性もあり要注意です。ただ、麻布高校の同級生といっても外交・安保政策で穏健・リベラル派の与謝野氏と、拉致問題に厳しく自主憲法制定を主張するタカ派の平沼氏との間には温度差があり、小泉政権の政調会長として郵政民営化関連法案を取りまとめた与謝野氏と、それに反対して離党・無所属となった平沼氏とは「南極と北極ほど価値観が違う」(自見庄三郎国民新党幹事長)との見方があります。自民党は鳩山、与謝野、園田氏らのミニ分裂が離党者を誘発する「離党ドミノ」に発展しないよう、5日の臨時役員会で幹事長代理に河野太郎国際局長を起用したほか、雇用・景気、外交など14分野で政策を参院選向けに発信する政権力委員会(ネクスト・ジャパン)を新設、責任者に1年生を含む中堅・若手を充てました。

良識の府汚す痛恨の代理投票
 そうした騒動の中、若林元農相が2日の参院本会議で、不在だった隣席の青木幹雄前参院議員会長の投票ボタンを押して賛成投票をし、「代返」ならぬ「代理投票」したことが問題になり、民主党から懲罰動議が提出されました。若林氏は責任を取り議員辞職しましたが、記者会見では「青木氏が間もなく戻るものと思ってボタンを押してしまった。魔が差したとしか言いようがない」と釈明しました。だが、10件の採決でボタンを押したことは確信犯であり、単なる軽率行為とは認め難く、国会議員の職責の重大性を全くわきまえない大失態でした。朝日は社説で「一般の有権者が選挙で替え玉投票すれば、公職選挙法違反で逮捕される。それが世間の常識だ。厳正でなければならない国会の議決を冒涜する行為である」と批判しました。まして若林氏は昨年9月、両院議員総会長であったため苦肉の策として、総裁不在で迎えた首相指名選挙の首相候補に担がれ、自民党の全議員が投票した人物です。その自覚もなく偽装投票という愚かな行為で「良識の府」を汚したことは痛恨の一事です。民主党も参院予算委の審議に入ったとたん、3閣僚が遅刻するなど弛みきっており、指導力を失った鳩山内閣の支持率は読売、共同ともに33%の危険水域に急落しました。その大事な時に、敵失に合わせるように愚劣な行動に出たり、党の融解現象を起こして自民党支持層を失望させてはいけません。参院選を前に党のタガを締め直す覚悟です。どうぞご支援下さい。