第225回(4月1日)双方に離党、解任のお家騒動 緊迫続く後半国会
 通常国会は平成22年度予算と民主党政権公約の目玉法案である「子ども手当」「高校無償化」の両法が年度内に成立、ヤマを越しました。だが、バラマキ政治では景気は一向に回復しません。4月からの後半国会でも、景気・献金・基地の「3K問題」をさらに追及しますが、国家戦略室を局に格上げする「政治主導確立法」「国家公務員法改正」「郵政改革法」「労働者派遣法改正」など重要法案の攻防に重点が移ります。米軍普天間飛行場移設問題は3月末、沖縄県名護市の米軍キャンプ・シュワブ陸上部と、同県うるま市の米軍ホワイトビーチ沖を埋め立てる2つの案を米国に提示しましたが、地元や社民党が反対しているうえ、米側も難色を示し合意は困難な見通しです。首相は5月末決着を公約しており、決着できない場合は当然、引責辞任に追い込まれます。こうした中で自民党は元閣僚の離党、民主党は副幹事長の解任劇というお家騒動が起きましたが、「政治とカネ」問題で自浄力の欠落した民主党の方が事態は深刻です。さらに中井洽国家公安委員長の女性スキャンダルも報道され、ダメージは多大です。自民党は執行部に対する中堅・若手の不満を解消するため、両院議員懇談会を4月1、2の両日開き、国会運営、国民に信頼される政権公約などを討議、一致団結して参院選の必勝態勢を固めます。政権奪還の布石を打つ戦いであり、選挙情勢は厳しいですが、皆さまの変わらぬご支援、ご叱正をお願い申し上げます。

内需貢献しないバラマキ福祉
 「子ども手当法」は、2010年度に限り、中学卒業までの子ども1人当たり1万3千円(初年度半額)を父母らに支給するものです。同法は参院選目当てに成立を急いだため、多くの欠陥が目に付きます。まず、4,5月分まとめて1人当たり2万6千円を6月に支給しますが、その事務は市町村に押し付けます。06年度の児童手当法改正では、期限内に支給できなかった自治体が3割もあったように、今回も準備期間が短く、全国市町村での支給は困難視されます。3月9日の衆院厚生労働委の参考人質疑で、三重県の山中光茂松坂市長が同市の例を挙げ、「手当をやらない代わりに保育所を毎年、25園作ることが出来る。天下の愚策だ」とこき下ろしたように、本来は保育サービスを充実すべきです。自民党は「富裕層にまで一律支給しないで、所得制限を設けるべきだ」と主張、福島瑞穂社民党首も当初は同じ考えを示していました。バラマキ福祉は将来の生活不安に備えた貯蓄に回り内需拡大には貢献出来ず、逆に来年1月からは所得税の扶養控除のうち、15歳以下の子どもの控除は廃止され、16〜18歳の所帯の特定扶養控除も縮小されます。12年6月からは住民税も扶養控除などが同様に廃止・縮小され、計1兆円以上の増税になります。

恒久財源なく子供に莫大借金
 また、同手当は国籍を問わず、日本に住み、子供らを監督、保護して生計を同じくする場合は支給されますが、親が海外赴任中で、国内の学校の寮で生活している子どもには支給されないなど、法制上の色々な矛盾が生じています。一方、高校授業料無償化法は、公立校では授業料を徴収せず、私立校は世帯の所得に応じて就学支援金(年11万8800円〜23万7600円)を支給する内容です。自民党は公立と私立の教育格差が拡大する恐れがあるとして、衆院本会議では「私立高校に授業料負担が残り、やむを得ず私立を選択した生徒に不公平が生じる」と反対しました。北朝鮮系の朝鮮学校については拉致問題担当の中井国家公安委員長が反対しましたが、文科省が同学校を含む各種学校を無償化の対象とする際の基準を定める省令を作り、是非を判断するとの曖昧な決定をしました。民主党の目玉政策で最大の問題は恒久財源をどう工面するかです。11年度以降に、こども手当を満額支給する場合、年間5・3兆円が必要となります。自民党は「恒久財源が明らかでなく、子どもに莫大な借金を押しつけてしまう」と国会で反対しました。子ども手当は、元々同党の税調が02年にまとめた案では1万6千円でしたが、小沢氏が代表当時の07年に「政権を取ったら6兆円規模の手当を創設する」と公約、1万円上積みしたものです。野田佳彦財務副大臣は「半額支給を継続することもあり得る」と正直に述べていますが、長妻昭厚生労働相は「11年度以降の制度設計の中で検討する」と明確な展望を示せないでいます。

GDP1・4倍の中期成長目標
 「日本丸は決してタイタニックではない。新しいエンジンを付けて再出発している」――。政権発足から半年を迎えた首相は3月中旬、参院予算委で経済運営に自信を示しました。首相は予算の無駄減らしによる財源確保と子ども手当など家計を重視した予算で内需拡大を図る戦略を描いていたからです。ところが、税収不足から歳入、歳出のギャップは益々拡大し、経済再生シナリオは破綻寸前で国民の批判が増大しています。政府はこの批判をかわそうと昨年末、新たな成長戦略の基本方針を決定しました。それは、環境・エネルギーや医療・介護(健康)、アジア、観光、地域活性化などを軸に10兆円超の需要を生み出し、2020年までの10年間で日本経済を再生させるとの戦略です。国内総生産(GDP)の成長率を名目で平均3%、物価変動の影響を除いた実質で2%を上回る成長を目指し、名目GDPを現在の約1・4倍の650兆円に拡大し470万人程度の雇用を創出するとし、中期目標実現に向けたロードマップは3月中に論点の整理を終え、6月までにまとめる考えです。環境では太陽光など再生可能なエネルギーの全量買い取り制度の実施などで、20年までに50兆円規模の新たな市場を作って140万人の雇用を生み出し、日本の技術を生かし世界の温室効果ガスを13億トン減らす計画です。海外の原発、新幹線など大型社会基盤の受注で首相、閣僚らがトップセールスする「インフラ輸出総合戦略」も盛り込みました。

中央集権的な小沢党運営批判
 だが、冒頭で述べたように基地移設問題では連立政権内部が迷走を続け、景気では小沢幹事長が陳情を一手に引き受け、それを「鶴の一声」で政策に反映させるなど独裁的手法を取るため、上記のように、財政が硬直し有効な景気対策が打てないでいます。しかも、小沢氏は秘書3人が「陸山会」事件で逮捕され、国民世論が幹事長辞任を求めていても、「検察が公正な捜査で(私を)不起訴にした」と開き直っています。たまりかねた生方幸夫副幹事長は3月17日付けの産経新聞インタビューで、小沢氏の中央集権的な党運営を批判し、「今の民主党は権限と財源をどなたか1人が握っている。鳩山さんは小沢さんを呼んでできちんと注意して欲しい」と主張しました。生方氏は読売新聞出身の経済評論家で、衆院千葉6区選出当選4回。先号HPで紹介したように、反小沢陣営の衆参議員41人を集めて「政府・与党一元化の下での政策調査会の設置を目指す会」を結成、政調の復活を要求する旗振り役を演じました。これに対し、高嶋良充筆頭副幹事長は18日、生方氏に副幹事長を辞任するよう求めましたが、生方氏は「普通のことをしゃべっているのに辞めろと言うのは、党内に言論の自由がないと言うことだ。情けない。(処分なら)正式に倫理委にかけて下さい」と反発。高嶋氏は「議論する場はいっぱいある。何故そこで言わないのか」と指摘し、一旦は、23日の常任幹事会で解任する方針を決めました。記者団には「放置しておくと党の求心力や他の議員の意欲がそがれる。解任ではなく役職の交代だ」と説明しました。

言論封殺に党内の批判続出
 しかし、鳩山首相が「民主党らしさ」をキーワードに政権浮揚を図ろうとしていた矢先の解任劇だけに、党内からは公然と批判の声が上がりました。生方氏が「国民が納得しなければ、幹事長辞任は当たり前というのが党内の多数派だ」と指摘したのを初め、水戸黄門こと渡部恒三元衆院副議長が「執行部批判でクビになるなんて聞いたことがない。そんなことしたら民主主義を語る資格がない」と同調。渡部氏が「7奉行」と名付けた前原誠司国交相が「言論封殺があってはならない」と述べ、枝野幸男行政刷新相が「副幹事長を直ちに辞めなければならない(発言)部分がどこにあるのか」と擁護。野田財務副大臣も「もっと自由闊達に感想や意見を述べて然るべきだ」と批判を繰り広げ、若手は「これでは北朝鮮と同じだ。言論封殺の党と思われる」と抗議しました。マスコミも「民主党の文化サークル・同好会的な体質が小沢流・上意下達の体育会的体質に変わり、国民世論に大ダメージを与えた」と報じ、産経、時事通信の内閣支持率は30%に急落しました。加えて、郵政改革法案を巡る閣内対立、週刊誌報道の「中井国家公安委員長の知人女性が赤坂議員宿舎のカードキーを使って中井氏の同宿舎に出入りしている」との醜聞がダメージを高めました。そこで、参院選に危機感を抱いた小沢氏は生方氏と会って「もう一度一緒にやろう」と続投を要請、23日の常任幹事会で解任を撤回、「融和、団結、挙党一致が第一」を強調しました。

鳩山竜馬、新党目指し離党
 解任劇を好機と捕らえた自民党の谷垣禎一総裁は、19日の記者会見で「かねがねあそこの党の運営は強権的、独裁的だと思っていた。その表れと思う」と反転攻勢の姿勢を強め、みんなの党の渡辺喜美代表も「民主党には、独裁体質からの脱却、そういう勇気ある行動を起こす人が続出して欲しい」と歓迎しました。だが、自民党内にもお家騒動が起きています。鳩山邦夫元総務相が15日、大島理森幹事長に「近く新党を結成する」考えを伝え、離党届を提出したからです。離党のきっかけは前日のフジテレビ番組で「自民党は賞味期限切れだ。未だに派閥政治をしている」と新党結成の意向を表明、「覚悟は完全に出来ている。新党がいかに大変か経験しているが、その苦労をもう1回やってみる」と述べ、結党時期は参院選を堂々と戦える連休前の4月末を示唆、「与謝野さん、舛添さん、皆が一緒になれるよう坂本龍馬役をやりたい」と強調しました。このあと、福岡県で記者団に「民主党のポピュリズム(大衆迎合)政治では、景気、財政は悪化する。政界再編の力を借りないと、日本を安定軌道に戻せない」と語り、民主党との連携は否定しました。

与謝野、舛添両氏は慎重姿勢
 前号で触れた通り、与謝野馨元財務相は4月号文春の寄稿で、執行部の刷新を求め新党結成の可能性に言及、同氏に近い園田博之元官房副長官が15日、幹事長代理職の辞任を申し出、了承されました。舛添要一前厚労相も執行部批判を強めていますが、鳩山邦夫氏は離党後、「日本一、頭のいい政治家は与謝野。国民人気が一番高いのは舛添。この2人を結びつけたら最高だ」と記者団に両氏との連携を強調、16日の衆院本会議場内で、与謝野氏と平沼赳夫元経済産業相に離党の挨拶をしましたが、両氏は第3極政治勢力結集を評価しながらも、邦夫氏の「見切り発車」に戸惑いを感じ、慎重な態度を示しています。舛添氏も「誰であれ、時間の許す限り意見交換したいが、今は予算委員会で体が空かない」と話し合いを断っています。第一、消費税大幅引き上げも含め財政再建に積極的な与謝野氏と、成長戦略重視の舛添氏とは路線が違い、邦夫氏はこれと言った政策を持たず、「薩長同盟」の労を取ると言っても見通しは暗そうです。しかも、政党助成法の政党要件である国会議員5人参加の目途はまだ立っていないと言われています。

マザコン渡り鳥に党内不快感
 「季節外れの渡り鳥だ」――谷川秀善参院議員会長は不快感を示しました。確かに邦夫氏は93年に自民党を離党―94年の新進党結成に参加―96年に由紀夫氏(現首相)とともに旧民主党を結成―自民復党―と「出たり、入ったり、また出たり」の渡り鳥でした。自民党内には「首相の“マザコン”資金提供を追及している最中に、同じ穴のムジナの邦夫氏についていけるはずがない」との批判が多く、若手には「邦夫氏を倫理委員会にかけ離党勧告すべきだ」との強硬論も前からあって、邦夫氏が先手を打って離党したとの見方もあります。ともあれ、民主党に逆風が吹いている時だけに、「邦夫の乱」には皆うんざりしています。国民が新政権のバラマキ政策に不安を感じ、内閣支持率は低下の一途にあるというのに、自民党は拙劣な国会対策や信頼回復のための党改革でも新味が出せず、党支持率が低迷し政界には閉塞感が従来以上に高まっています。無党派層が5割に達した世論調査もありますが、自民、民主両党の内紛で漁夫の利を占めたのがみらいの党。支持率が公明党を追い抜き、渡辺代表は邦夫氏の連携呼び掛けを断り意気軒昂です。

衆参両院懇で挙党態勢固め
 昨年の今頃は「麻生降ろし」や新党結成、政界再編の動きが強まり、結果的に総選挙は敗れました。「谷垣降ろし」の内輪もめが再発すれば、国民の目には「まだ懲りない自民党の権力闘争」としか写らないでしょう。党内の中堅・若手はこうした危機感から、国民の目線に立って信頼を回復出来る政権公約を掲げ、民主党が投げ出す「政権の受け皿」を早急に整えるよう、執行部の刷新を要求しました。大島幹事長ら執行部は「今最も大事なことは一致団結して参院選に勝つこと」と強調し、1、2の両日は現職、5日には落選中の衆院選挙区支部長と参院選候補者を集めて衆参両院議員懇談会を開くことを決めました。懇談会では若手から国の将来像、ビジョン実現の具体策など参院選必勝に向け活発な意見が出され、挙党態勢が固まると思われます。