第221回(2月1日)3人逮捕で支持急落 自民は起死回生
 1月18日開幕の通常国会はいわゆる献金、景気、基地の「3K」問題で、冒頭から緊迫した与野党攻防を展開しています。特に開会直前に小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の購入土地を巡り、元秘書の石川知裕衆院議員ら3人が逮捕されたことから、鳩山首相の偽装献金事件に加えて小沢氏にも国民の批判が集中、自公共3党は民主党首脳2人の疑惑にまみれた「政治とカネ」問題を徹底追及しました。09年度補正予算は1月末に成立しましたが3野党は集中審議を要求しており、2月以降に本格審議入りする10年度本予算案の年度内成立は難しく、景気の2番底が到来し春闘は激しくなる情勢です。一方、1月24日の沖縄県名護市長選では反対派の新人、稲嶺進前市教育長が当選、辺野古移設は困難になり安保改定署名50周年を経た直後の日米同盟に深い亀裂が生じています。各紙世論調査で内閣支持率が急落したように国民の不安感は強まり7月参院選に向けて自民党には起死回生の風が吹き出しています。変わらぬご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

4億円はタンス埋蔵金と釈明
 前回のHPでは首相の「マザーゲート事件」、つまり偽装献金事件を取り上げましたが、今回は小沢氏関連の4億円土地購入問題を検討しましょう。東京地検は1月13日午後、小沢氏の資金管理団体「陸山会」が04年10月29日に購入した東京都世田谷区深沢の土地の代金を政治資金収支報告書に記載しなかった政治資金規正法違反の疑いで、同会の事務担当者だった石川知裕衆院議員の議員会館内事務所や港区の大手ゼネコン「鹿島」本社など5カ所を一斉捜索。15日夜から翌朝にかけ石川議員と後任担当者の池田光智・元私設秘書、元会計責任者で公設第1秘書の大久保隆規被告(西松建設の違法献金事件で公判中)の3人を同法違犯(虚偽記入)で逮捕しました。同会は土地を手数料込み3億5200万円で購入し簿外の現金4億円を代金支払いに充てましたが、04年分の収支報告書に記載しなかった疑いが持たれています。石川議員は昨年末の事情聴取で、「ミスだった」と犯意を否認する一方、「4億円は小沢先生から受け取り、陸山会口座に分散入金、土地代金に充てた」と供述。小沢氏も「自らの資金だ」と主張、妻子名義の信託銀行口座から97年と01年に計3億6千万円を引き出したタンス預金(埋蔵金)であると釈明しました。

ゼネコン資金解明で強制捜査
 しかし、西松事件では国土交通省発注の胆沢ダム(岩手県奥州市)の「堤体盛立工事」を共同企業体(JV)で受注した鹿島の下請け中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県)の幹部らが04年10月中旬、石川議員に5000万円を渡したと供述。逮捕された大久保被告がこの受注で小沢氏の「天の声」を代弁したとされることから、大久保被告への金銭の授受や、元請け工事をJVで受注した鹿島についても不透明な資金提供がなかったか、など4億円の資金調達を解明するため、特捜部が強制捜査に踏み切ったと見られています。小沢氏側近議員らを逮捕したのは、@小沢氏に任意の事情聴取を1月5日に求めたが、小沢氏は多忙を理由に応じなかったA国会議員には会期中の不逮捕特権があるため、逮捕許諾請求の必要がない国会召集前に石川議員を逮捕したB文春2月号に石川議員の元私設秘書・金沢敬氏(不動産賃貸業)が小沢事務所の証拠隠滅工作を暴いたため、隠蔽工作が進まないよう関連の捜査を急いだ――が挙げられます。


田中金脈にそっくりと立花氏
 田村建雄氏(ジャーナリスト)の「西松事件元秘書の告発=消えた5箱の段ボール」と題する文春の記事は、金沢氏の証言に基づき、昨年3月の大久保公設第1秘書逮捕の日に小沢事務所で側近たち(石川議員や元小沢氏秘書の樋高剛衆院議員=民主党副幹事長ら)の手で行われた驚くべき証拠隠滅工作を暴き、側近たちが「これを特捜部から隠せて本当に良かった。間一髪だった。2時間遅かったら全部特捜部に押さえられて、みんな逮捕だったな」「中には鹿島の資料も入っている。西松建設なんか問題じゃないよな」などと生々しく再現しています。これが鹿島本社などに地検の一斉強制捜査が入った最大の理由でしょう。金沢氏は14日、自民党の勉強会に呼ばれて、さらに詳しく事情を説明しました。参考人の意見聴取にも応じる姿勢です。評論家の立花隆氏は長崎新聞に特別寄稿し、「ロッキード事件で、田中角栄に疑惑の目が集中したとき、田中が新聞記者を集めて行った鼻息荒い潔白宣言を思い出した。<中略>小沢の公共工事を利用しての『天の声』による利権の分配構造は田中、金丸信がやっていたこととそっくりだと思う。政治家としての末路が田中とそっくりにならないことを祈るのみである」と述べています。

首相にドラ息子!の痛烈ヤジ
 「今まで臥薪嘗胆だったが、起訴と逮捕者が続出する異様な事態をしっかりと追及しなければならない」――。谷垣禎一自民党総裁は18日の両院議員総会で、反転攻勢の狼煙を上げました。同党の大島理森幹事長も19日の衆院代表質問で、「小沢幹事長元秘書の石川議員が逮捕され、政治家の道義・倫理観が問われている。首相も母親からの生前譲与の問題がある。巨額脱税の認識はないのか。『検察と戦う』姿勢の小沢氏に、首相は『どうぞ戦って下さい』と応じたと聞く。誰と『戦う』のか。指揮権発動を言いたいのか」と厳しく迫りました。また、「陸山会」問題のポイントとして、@土地購入代金の原資A複雑な資金操作の理由B土地購入を翌年に(政治資金収支報告書に)記載した理由C購入後に銀行融資を受けた理由D証拠書類の偽装や隠蔽がないか――の5点を挙げました。首相は自らの秘書2人が起訴された偽装献金事件を、「検察捜査で全容が解明され、処分決定によって決着したと認識している」とし、母親からの資金提供も「私が知らなかったことは検察の捜査で事実として解明された」で押し通し、「知らなかった」発言には衆院本会議場の自民党席から『ドラ息子!』の痛烈なヤジが飛びました。

宇宙人だからニュアンス違う
 首相は大島幹事長の質問に対し、「小沢氏の『戦う』との表明は、自らの潔白を証明していく決意で、それを了とした」と答弁。「小沢氏も潔白を訴え、説明するのは当然の権利。国策捜査、拒否権発動は考えていない」と釈明しましたが、首相の軽率発言は多く、21日夜は記者団に石川議員の逮捕について、「起訴されないことを望みます」と語り、22日の衆院予算委で我が党の茂木敏充・元行政改革相が再び「検察に介入する姿勢」だと質すと、慌てて発言を撤回しました。首相は野党の幹事長時代に、『国策捜査だ』と西松建設違法献金事件で当時の小沢代表を援護しましたが、行政府トップの首相が厳正な捜査を旨とする政府組織の検察に対し「戦う宣言」をしたり、「不起訴を望む」などと圧力をかけたのは前代未聞。法と証拠に基づき公正・中立に捜査するのが法治国家の検察行政であり、それを正しく見守るのが行政の長の責任です。菅直人財務相は「宇宙人と称される首相だから、地球人と若干ニュアンスが違ったりする」とジョークで庇いましたが、相次ぐ首相の軽い発言と撤回は世論の激しい批判を浴びています。

小沢氏は事情聴取で裏献金否定
 母親からの多額資金提供を「知らなかった」で通した首相は、21日の衆院予算委員会でトップに立った谷垣総裁が「首相が承知していたと証明できたら首相を辞めるか」と質したのに対し、「発覚前に知っていたことが証明されたら、当然、バッジを付けている資格はない」と言明、議員辞職の考えを示して退路を断ちました。「忙しい」と言いつつ若い棋士相手に碁を打っていた小沢氏もついに23日、黙秘権を行使出来る被疑者扱いの任意事情聴取に応じました。聴取の骨子は、@報告書の記載は全く把握せず、実務は秘書に任せていたA4億円は昭和60年に文京区湯島の自宅を売却した個人資産を陸山会に貸し付けた。建設会社から不正な裏献金は一切貰っていないB土地代金を支払った後に定期預金を組み、それを担保に借り入れた理由は分からないC土地所有権移転を翌年に回した理由も相談がないので分からない――とし、マネーロンダリング(資金洗浄工作)の疑いがある「定期預金担保・借り入れ」のいきさつなど肝腎な部分は「分からない」を連発しました。

検察と全面対決を小沢氏宣言
 小沢氏は1週間前の16日、東京・日比谷公会堂で開かれた党大会では、「何ら不正なカネを使っているわけではない。積み立ててきた個人の資産だ」と強調して幹事長を続ける考えを表明、「党大会の日に合わせ逮捕が行われた。到底容認できないし、これがまかり通るなら日本の民主主義は暗澹たるものになる」と批判、検察当局と「全面的に対決していく」と宣言しています。同党内には「捜査情報漏洩問題対策チーム」、石川氏と同期(当選2回生)13人による「小沢幹事長の捜査を考える会」、参院女性議員中心の「4億円不記載の論点整理勉強会」の3チームが発足。足利事件の冤罪防止にあやかり、公正な捜査を担保するため録画や録音で取り調べを可視化する「刑事訴訟法改正案」の今国会提出も準備中です。また、放送免許権限を持つ原口一博総務相が「テレビ報道が情報源を『関係者によると』と表現するのは不適当」と報道規制を思わす発言をして波紋を描くなど、閣僚まで報道陣、検察に圧力を掛け、小沢氏支援の大政翼賛会的ムードが漂っています。小沢氏強気の背景には@西松事件後に国民の支持を受け、政権が交代した“総選挙洗礼論”A野党首脳には贈収賄事件に結び付くような職務権限はなく逮捕は不当で、政治資金規正法違反に問われても単なる記載ミスB収支報告書を修正すれば許される「形式犯」に過ぎない――との認識があります。政治資金で不動産を購入した後ろめたさは微塵もありません。

みかじめ料集め的な「天の声」
 93年に5億円ヤミ献金事件で逮捕された金丸信元自民党副総裁が選挙区・山梨県内の土建業者から莫大な政治資金を集めた時の手口について、マスコミは「暴力団が飲食店や風俗店の用心棒代かショバ代として『みかじめ料』を集めるケースに似ている」と批判しました。立花氏の言を待つまでもなく、田中角栄、金丸両氏の直弟子で政界実力者の小沢氏は、職務権限が無くとも、東北建設業界に絶大な権力を誇示し、東京地検の捜査では西松事件の談合事件などでも大久保被告を通じ「天の声」を発したと言われています。胆沢ダムの公共投資は莫大で、下請け業者・水谷建設から本当に5000万円が石川議員に手渡されていたなら、国民の税金の1部が小沢陣営に渡り、土地購入費に化けたことも考えられます。小沢氏は民主党と合併した際、解散した自由党の政党助成金を国家に返還せず、同党身内の政治資金団体に振り分けたとされますが、これまた血税の不当乱用です。にもかかわらず、小沢氏は党大会前の記者会見で「同じ質問ならまとめて答えるので先に聞こう」と断って、記者数人の質問を聞き、「検察当局が捜査中なので答えられないが、法に触れることをしたつもりはない」とだけ、木で鼻をくくった答弁で記者団を憤慨させました。

コンクリート体質見破る国民
 「議員を大挙率いての訪中といい、超特大の新年会といい、人を小ばかにしたような記者会見といい、なぜ、そんなに自分を巨大に見せようとするのだろう。隠れもない政界の最高実力者、存在感を誇示する必要などはあるまいに。憶測で物を言うのが許されるならば、答えは1つ浮かぶ。『陸山会』の土地購入を巡る出所不明の4億円について、『これほど巨大な俺に疑惑の目を向ける度胸をお持ちかい?』という世間への威嚇としか思えない」――。これは14日の読売「編集手帳」の1節です。マスコミも法治国家を守る検察に対決姿勢をむき出す小沢氏は横暴であるとして一斉に批判を始め、世論調査では読売が「小沢氏は国民に説明責任を果たしていない91%、幹事長を辞任すべき70%」、共同通信が「鳩山内閣を支持しない44・1%」で「支持する41・5%」を上回り、夏の参院選比例区代表で投票する政党は「民主党28・4%」に対し「自民党24・7%」と4%以内に迫りました。各紙も一斉に内閣支持率がダウンしています。国民は「コンクリートから人へ」の公約が偽りで、「人よりコンクリート(ゼネコン)依存」の体質は不変と見破ったからでしょう。谷垣総裁は24日の党大会で「日本の民主主義のために小沢独裁と闘う」と参院選必勝の決意を表明しました。2月から10年度本予算案の審議に入れば、経済政策の無策ぶりがさらに露呈され、我が党の反転攻勢は一層強まります。ご期待下さい。