第220回(1月16日)財相辞任で反転攻勢 大波乱の国会
 通常国会は1月18日に召集され、09年度第2次補正と10年度の予算案審議で与野党が論戦の火蓋を切ります。自民党は鳩山首相の偽装献金事件、小沢一郎民主党幹事長の西松建設事件など秘書がともに政治資金規正法違反で立件された「政治とカネ」など献金、景気、基地の「3K」問題を厳しく追及します。景気では、麻生政権置き土産の緊急経済対策を換骨奪胎・改悪して生じた「鳩山不況」の責任を徹底的に糺す方針です。7月参院選で衆院同様の単独過半数を確保し安定政権を目指す民主党は予算案の年度内成立と官僚答弁禁止の国会改革関連法案や政治主導確保法案なども成立させようと懸命。だが、92兆円超と史上最高に膨れ上がった予算案はマニフェスト(政権公約)違反の羊頭狗肉の詐欺的政策ばかり。おまけに予算編成を仕切った藤井裕久財務相が健康上の理由で突如辞任。裏には権勢を強める小沢氏との摩擦が取り沙汰されて与党は動揺しており、わが党は反転攻勢のチャンスです。基地では、米軍普天間飛行場移設問題の決着を先送りし、米側の信用を著しく失墜させました。海自佐世保基地の皆さんが猛暑の中で身命を賭して働き、国民に感謝されたインド洋上での給油活動もテロ特措法の期限が切れた15日に終了しました。世界でも高く評価された国際貢献だけに残念でなりません。日本の安全保障、平和と繁栄を誰よりも願ってきた私は、日米同盟を危機に陥れる鳩山外交を糾弾し、国会では大いに安保論議を深めたいと思っています。変わらぬご支援、ご叱正をお願い申し上げます。

マザーゲート事件を徹底追及
 国会の会期は150日間ですが、今年改選となる参院議員の任期満了は7月25日。参院選は会期を延長しない場合、6月24日に公示、7月11日投票となります。参院選直前の国会は短期決戦が多く、波瀾万丈型が常です。首相の偽装献金事件は「マザーゲート事件」と呼ばれていますが、母親から提供された資金は1ヶ月1500万円、年1億8千万円、7年間で12億6千万円の巨額。日割り計算では1日50万円の“子ども手当”です。この不景気に子供のお年玉が5千円、パパの居酒屋代が5千円とすれば、首相の1日分で親子の百人分が賄われる勘定。首相は記者会見で「私腹を肥やしたわけではない」と釈明しましたが、企業からの裏金でなくとも明らかな脱税です。脱税も1億円を超えれば刑事事件になるケースが多いのに、首相が6億円の修正申告で済ませたなら国民は黙っていないでしょう。時あたかも税の確定申告期。「バレたら修正申告すればいい」と国民が首相の手口を真似たら、37兆円に落ち込んだ税収はさらに目減りするのは確実です。「運動不足解消に公邸庭でウォーキングを始めた。観客は鳩1羽」――首相は年初からネットに投稿・閲覧サイト「ツイッター」(つぶやき)を始めましたが、そんな人気取りは通用しません。

母親・小沢氏らを参考人に要求
 小沢幹事長の資金管理団体「陸山会」が04年に購入した土地を巡る問題で、事務担当者で元秘書の石川知裕衆院議員=民主党、北海道11区=と後任事務担当者の池田光智・元私設秘書、公設第一秘書の大久保隆規被告(西松建設違法献金事件で公判中)の3人が政治資金規正法違反(虚偽記入)で逮捕されましたが、東京地検特捜部の任意事情聴取に対し、土地取引は小沢氏の指示で始まり、購入原資の4億円は小沢氏の資金だったと認めていた、ことが報じられています。自民党の谷垣禎一総裁は4日、伊勢神宮参拝の記者会見で、「鳩山政権の政策を厳しく追及するが、特に政治とカネの問題は内閣総辞職、衆院解散によって国民に信を問うところまで求めなければならない」と述べ、徹底追及の構えを鮮明にしました。
 西松建設の違法献金事件で先に逮捕された大久保隆規被告(陸山会の会計責任者)の公判は間もなく判決が出ますが、自民党は小沢、石川、大久保3氏や首相母親、鳩山家の資産管理会社「六幸商会」幹部らの参考人招致と首相の預金通帳の国会提出を求め、首相の巨額資金が何に使われたか、小沢氏の新たな土地取引疑惑の実態はどうか、など政権トップとNO2の疑惑まみれの政治資金関係について説明責任を明確にさせる考えです。公明党の山口那津男代表も新春幹部会で「清潔な政治にもとる首相や与党議員の姿勢を糺していかねばならない」と述べ、献金など「3K」を徹底追及する構えを示しました。


補正合わせ百兆円の大盤振舞
 政府は通常国会に7・2兆円の09年度第2次補正予算案と、過去最大という一般会計総額92・3兆円の10年度予算案を提出します。双方合わせると100兆円に迫る参院選目当ての大盤振舞の予算です。「コンクリートから人へ」を掲げ、公共事業費を18%以上削減する半面、社会保障費は約10%増の27・2兆円と急拡大、各省庁が政策に使う一般歳出53・4兆円の半分を初めて超えました。子ども手当の月2万6千円(初年度は半額の1万3千円)支給に国費1・7兆円を計上したほか、診療報酬を10年ぶりにアップ、年金・介護・雇用の予算増、高校授業料の無償化などで歳出が急増するからです。しかし、歳入面は火の車で、10年度の税収は約19%減の37・4兆円。新規国債発行額は過去最大の44・3兆円に上り、首相公約の「約44兆円以内」は辛うじて守られましたが、戦後初めて借金が税収を上回りました。鳩山政権は「一般会計と特別会計の計207兆円予算を全面組み替え、無駄をなくせば、1割ぐらいはどこからでも捻出できる」と豪語してきましたが、「霞が関埋蔵金」と呼ばれる特会の剰余金など税外収入は10・6兆円しか確保できず、「事業仕分け」による削減額は約6900億円止まり。公約で7・1兆円とした必要財源は、減税分を含め半分の3・1兆円しか確保できませんでした。

国民要望にすり替えた小沢裁定
 これに助け舟を出したのが民主党の小沢幹事長。「全国民の要望」にすり替えて、@子ども手当の所得制限は設けないA暫定税率は廃止するが、特例措置で課税水準は維持する――など、前号のHPに載せた通りの“小沢裁定”です。これにより、子ども手当は、現行の児童手当(小学生まで月額5千円、3歳未満と第3子以降は1万円=総額約1兆円)は廃止せず、新旧2制度が併存する形となり、予算ではその差額を計上、地方自治体(約5700億円負担)と企業(約1800億円)の計7500億円の肩代わり負担が継続されることになりました。地方自治体は「2枚舌的な処理だ」と反発しています。子ども手当や高校無償化の財源確保のため、15歳以上の子供を対象にした扶養控除を廃止し所得税や市民税は増税となります。ただし、所得制限について首相は「児童手当には制限があるが、06年度から制限を緩和したところ、事務が繁雑になり支給を終えるべき6月中に全市町村で支給できなかった」ことを理由に制限を設けず、小沢氏の意向に逆らいました。

暫定税率維持に首相飛びつく
 予算編成で、財政規律を重んじる藤井財務相は「要求大臣でなく査定大臣になれ」と閣僚に呼びかけましたが、各省の概算要求総額は95兆円まで膨れ上がりました。そこで早くから、自治体や企業に子ども手当の負担を求めたり、暫定税率廃止に伴う財源問題では「繋ぎ税」か環境税の導入など税収維持の腹案を懸命に模索していました。ところが、小沢裁定が出ると、首相は待ってましたとばかり、「公約に沿えなかったことは率直に詫びるが、地球環境を守る国民の意思も大事にして、廃止はするが当面の間、措置される税率を見直す」との表現で、「2・5兆円の減税」と宣伝し国民に廃止を約束したガソリン税の暫定税率を繋ぎ税とし実質維持することに公約を修正しました。暫定税率の廃止は「地球温暖化対策税」(環境税)導入とセットで検討されますが、2兆円規模の負担増となる大型新税であることから経済界の反発が強く、「11年度実施に向けて検討する」ことになります。

メンツ丸つぶれの藤井財務相
 それでも税収は足らず、藤井氏が工面した結果、たばこ税は1本当たり約8・7円から3・5円引き上げ、たばこ会社の利益などを上乗せして1本5円程度の値上げ。標準銘柄で1箱400円程度になります。92兆円予算が数字通り“苦肉”の予算と揶揄されるゆえんです。谷垣総裁や大島理森幹事長らは「『コンクリートから人へ』と耳触りの良い標語を並べたが、社会保障費の増高を見れば消費税アップなしでは済まされない。政治主導で『内閣に1元化』でなく、『小沢幹事長へ1元化』だ」と公約詐欺を批判、藤井氏の辞任について大島氏は「途中から小沢氏が出てきて様々なプレッシャーをかけ、嫌気がさしたのではないか。鳩山政権のリーダーシップなき姿が現れた結果だ」とこき下ろしました。確かに、藤井氏は国会答弁で暫定税率の廃止を明言しており、これでメンツは完全に潰れ、舞台裏の苦労は水泡に帰しました。藤井氏は小沢氏の側近NO1でしたが西松事件が明るみに出た際、渡部恒三最高顧問とともに「小沢氏の代表辞任」を促したため2人の関係はぎくしゃくし始め、小沢氏に財務相人事を“黙殺”され両者の対立は決定的になりました。

藤井氏が小沢政策の尻拭い嫌う
 小沢氏が官邸に乗り込んで予算の要望書を手渡した時は、藤井氏ら並み居る閣僚を前に、「政治主導になっていない。(閣僚は)研鑽の努力をすべきだ」とハッパをかけ、藤井氏は「やっていられない」とぼやいたと伝えられています。予算案を見れば、コメ農家に対する個別所得補償制度は当初の要求通り関連事業も含めて5618億円の満額を確保し、定額給付額は10アール当たり1万5千円を支給するなど、小沢流の選挙対策を重視した財政悪化無視のバラマキ政策であり、「事業仕分け」で見せたような透明性は欠如し、恒久財源は見当たらず、中長期の財政フレームや成長戦略に欠ける内容です。子ども手当を翌年度から満額に倍増するには5兆円の恒久財源が必要で今回ほぼ使い果たす埋蔵金はもはやなくなります。支出の拡大は続き、マニフェスト通りの政策を実現するなら11年度は12・6兆円、12年度は13・2兆円、13年度には16・8兆円と増えていきます。この小沢政策の尻拭いを国会答弁でやらされるのが溜まらず、藤井氏は逃げたようです。

角さん凌ぐ権勢示した新年会
 05年の衆院選で落選し引退を決意していた藤井氏は、鳩山氏の父、威一郎・元外相と旧大蔵官僚時代の先輩・後輩だった関係から、首相に請われて衆院比例区に出馬し三顧の礼で財務相に迎えられました。故に健康と言うより予算編成を巡る小沢氏との確執が強まっていたことが辞任の原因であり、財政規律を無視した予算案の国会答弁に嫌気がさし、「小鳩体制」と決別したのが真相でしょう。加えて、かつて小沢党首の下、藤井氏が幹事長を務めていた自由党の解散時、政党交付金が所属議員の政治団体に寄付されるなどして国庫に返されなかった問題でも、小沢4億円資金との関連で国会追及を受ける恐れもあり、敵前逃亡したとも見られています。小沢チルドレンなど143人の国会議員を引き連れ昨年末に訪中した小沢氏は元日、東京・深沢の私邸で恒例の新年会を開きました。過去最多の国会議員166人が集結したため異例の2部形式で行い 、菅直人副総理、平野博文官房長官ら5閣僚が出席、師匠の田中角栄元首相を凌ぐほど権勢の頂点にあることを見せつけました。このように傍若無人に振る舞う小沢氏に反発し、「政治とカネ」問題を批判する層が同党内には増えていますが、「物言えば唇寒し」で押し黙っているのが実態のようです。

与野党双方に分裂・再編の胎動
 しかし、小沢氏に最高顧問を解任されたご意見番・渡部元衆院副議長が竹下派7奉行になぞらえて「民主党7奉行」と呼んでいる岡田克也外相、前原誠司国交相、仙谷由人行政刷新相、野田佳彦財務副大臣、枝野幸男元政調会長、玄葉光一郎衆院財務金融委員長、樽床伸二衆院環境委員長は新年会に欠席。代わって小沢訪中団の留守中、渡部氏が都内料理屋に7奉行を招き歓談しました。渡部氏は朝日の取材で小沢裁定について「陰でこっそり電話するのが小沢の役割。鳩山のリーダーシップがないことを証明してしまった」と批判、「非小沢」派による党分裂の時限爆弾は仕掛けられつつあるようです。一方、自民党内でも7月参院選の地元調整がつかず、鳥取、茨城、香川、福岡の4選挙区で現職が離党を表明したのに続き、総選挙に敗れて参院比例選に出馬を求めた山崎拓前副総裁と保岡興治元法相を、谷垣総裁が定年制を建て前に公認しなかったため、山崎氏が他党からの出馬の意向を表明するなど混乱が生じています。また、民主党の非小沢派に呼応し参院選後の政界再編を睨み、中川秀直元幹事長らが行動を起こし始めました。小沢氏は政権安定に向けた「最終決戦」と称し独裁的な采配を振ろうとしていますが、国民の不安をさらにかき立てる「小沢支配」の政局は断じて粉砕しなければなりません。皆さんのご支援を期待します。