第219回(1月1日)3K・公約違反追及 小沢支配の政局
 明けましておめでとうございます。
 60年安保から半世紀。冷戦時代に安保の「核の傘」の下、自民党政権は日本を右肩上がりの高度成長に導きましたが、冷戦構造の終焉、バブルの崩壊、国際同時不況など数々の試練を経て、残念ながら政権交代を許しました。しかし、節目の大事な年に、鳩山政権は先の日米首脳会談で「日米同盟の重層的深化」で合意しながら基地移転問題で米国の不信感を高め、予算編成ではマニフェスト(政権公約)の根幹部分を改変、国民を裏切りました。マスコミは鳩山不況の到来と警告しています。民主党内では小沢一郎幹事長の二重権力構造が顕在化し、党主導型の政局運営が強まる一方、弱小政党の言いなりで連立政権には軋みが生じています。1月末召集の通常国会は7月参院選を意識し激しい論戦が予想されますが、自民党は献金・基地・景気の三Kを徹底追及する方針です。2月には1足早く長崎県知事選があり、自民党は中村法道副知事の出馬を支援しています。私は党県連会長として必勝を期し、永田町と選挙区をトンボ返り往復する忙しさです。年頭に当たり旧年に倍するご支援、ご鞭撻を賜るようお願い申し上げます。

支持率急降下、命脈保てるか
 米国の政権交代では「世論とのハネムーンは100日間」が相場。ノーベル平和賞授与の栄誉に輝きながら、オバマ大統領は外交ではアフガニスタンへの3万人米軍増派に対する国民の不満、内政では失業率が10%に達する深刻な経済不況と医療保険制度改革などに手を焼き、支持率は50%台を低迷しています。鳩山首相の政権100日はクリスマスイブでしたが、内閣支持率の低下はオバマ氏よりずっと早く政権3ヶ月余で70%前後から48%(朝日)へ急降下しました。就任早々から首相自らの偽装献金、沖縄の米軍普天間飛行場移設、リーマン同時不況に次ぐドバイ・ショックが招いた株安・円高デフレ――の三重苦(トリレンマ)に喘いでいるからです。おまけに基地、景気対策では連立政権が足枷となり、社民、国民新両党の要求に振り回されています。小泉純一郎元首相が「今のような朝令暮改(の政策)では参院選まで持たない」と予言したことは前号で触れましたが、首相が最初の通過点の7月参院選まで無事に命脈を保てるかどうか、まさに正念場です。

母親が12・6億円を提供
 偽装献金から発覚した首相側に対する実母・安子さん(87)の提供資金は毎月1500万円(1日50万円)ずつ年1億8千万円、02〜08年で計12・6億円に上ることが判明。首相は「私自身、驚いている」と人ごとのように言い、麻生前首相が「驚いたのはこっちだ」と苦笑したほどです。東京地検は24日、政治資金規正法違反容疑で元公設第1秘書を在宅起訴、元政策秘書を略式起訴しましたが、首相本人が直接関与した形跡は見当たらず、事情聴取を見送って上申書の提出だけで不起訴処分にしました。地検特捜部の調べに元秘書は「母親からの貸付金だった」と説明したものの、金利を含めた返済実績や借用書もなく貸付金とは認め難いようです。贈与と認定されれば税率は最大50%で納税額は延滞税などを含め6億円超となります。同じく資金提供を受けた実弟の鳩山邦夫元総務相は修正申告を宣言しており、首相も贈与形式に修正申告して切り抜ける構えです。


党首脳2人の政治とカネ追及
 首相は同日の緊急記者会見で「検察の判断を重く受け止め、責任を痛感。国民に改めて深くお詫びする」と陳謝しましたが、進退に関しては、「私服を肥やしたことはない。政治家の使命を果たすことが私の責任」と述べ辞任を否定しました。しかし、首相はかねてから「秘書の罪は政治家の責任」と述べてきており、なぜ巨額の資金が必要だったか、何に使ったかなど国民への説明責任と、譲与税逃れ(脱税)の道義的責任を明確にする必要があります。西松建設から小沢幹事長側への違法献金事件で、政治資金規正法違反に問われた公設第1秘書・大久保隆規被告の公判が12月18日から始まりました。検察側の冒頭陳述によると、小沢事務所は岩手・秋田両県の公共工事で、大手ゼネコン「鹿島」を仕切り役とする談合組織に介入、大久保秘書は本命業者を決定する「天の声」を出す役割を担っていたそうです。早ければ3月頃判決となりますが、我が党は通常国会の冒頭から、民主党首脳2人がどっぷり浸かった「政治とカネ」に絡む疑惑を厳しく糺していく方針です。

米国に玉虫色の先送り通告
 「50年目の記念すべき歴史的な年。国民に向かって安保条約に関する基本的な構えを明確にする大事な時期。どう日本の安保を運営するか、決意を国民に告知すべきだ」――。大勲位・中曽根康弘元首相は、鳩山首相が12月15日、米軍普天間飛行場の移設先の決定を5月まで先送りする方針をルース駐日米大使に伝えたことを厳しく批判しました。
前号で詳しく解説した通り、この問題では嘉手納基地への統合を模索する岡田克也外相、日米合意の辺野古移設を推進する北沢俊美防衛相、党首4選に絡めて「県外・国外移設」を求める福島瑞穂消費者・少子化担当相とバラバラ。おまけに、首相は「沖縄県民の思いは大切、連立も大事、日米合意は重要」などと八方美人的発言を繰り返して閣内は不統一のまま。連立政権からの社民党離脱を何よりも恐れた首相はなかなか決断できず、散々迷走した揚げ句、14日に関係4閣僚と協議。さらに翌日、与党3党党首級の基本政策閣僚委に諮った結果、米国が求める年内決着を断念、5月までに移設先を決める考えを米側に伝えました。政府方針は@移設先は連立3党で協議して決めるA10年度予算に普天間の移設関連経費は計上するB辺野古の環境アセスの作業は続けるC来年5月までに移設先を決める――という内容。社民党には白紙還元を匂わし、米側には参院選終了まで待てば連立を解消し現行計画が実現できるため、「それまで待ったね」という玉虫色の先送りです。

北朝鮮が日米摩擦を一番歓迎
 これに対し、米海兵隊トップのコンウエイ総司令官は「日米合意の米軍再編計画では普天間の移設と在沖海兵隊のグアム移転は一体であり、14年完了が明記されている」と述べ、先送りに遺憾を表明、米国務省のクローリー次官補も「現行計画が最善」との見解を改めて表明しました。鳩山首相は、コペンハーゲンで開かれたCOP15(国連気候変動枠組み条約国会議)最終日の18日にオバマ大統領との首脳会談を希望しましたが、米側の対日不信感は強く拒否され、デンマーク女王主催晩餐会で臨席したクリントン国務長官と言葉を交わし、「(県外移設の)沖縄県民の期待感が高まっていて、辺野古移設の強行は危険」と釈明、泣きを入れたのが精一杯でした。「外交の継続性」は極めて重要であり、変革を求めるオバマ政権もブッシュ政権が残した日米合意を忠実に守ろうとしているのに、首相は日米首脳会談で「私を信頼して欲しい(トラスト・ミー)」と訴えながら現行計画を先送りし、事実上白紙状態に戻しました。日米摩擦を一番歓迎しているのが北朝鮮です。

小沢訪中団がさらに日米悪化
 勢いづいた社民党など県外移設派は「住民に危険度が少ない海上の関西空港、長崎空港などを移設先に」と勝手に唱え出しています。中曽根元首相はテレビ番組で、「社民党が連立を離脱しても、自公政権が合意した普天間移設に自民党が国会で反対するわけがない」と優柔不断な首相を批判しました。就任前に在韓米軍の撤退を提唱、就任後も「北東アジアのバランサー」を目指した韓国の廬武鉉・前政権はブッシュ政権との関係をこじらせたまま退任しました。持論の「駐留なき安保」をようやく封印した鳩山首相ですが、一方的に約束を破り、信頼関係を失えば修復するのは廬政権以上に困難です。それどころか、小沢幹事長を名誉団長とする民主党の衆参議員143人を含む600人超の大訪中団が11日に中国を訪問し、胡錦濤国家主席と次々に握手し、ツーショット写真に納まりました。選挙目当てとはいえまるで胡主席を敬う朝貢外交の光景でした。小沢氏が自民党時代から取り組んだ日中交流「長城計画」の一環だそうですが、日米関係が危機的関係にある中で、当てつけがましく「米国離れ、日中接近」を印象づけ、対米関係をさらに悪化させました。

天皇・習近平会見にも天の声?
 おまけに、「1ヶ月ルール」の慣例を破って15日に行われた天皇と習近平・中国国家副主席の会見の裏には、「大訪中団を歓迎してくれた胡主席に対し、お礼を果たす小沢氏の『天の声』が働いたのではないか」として波紋を描きました。発端は羽毛田信吾宮内庁長官が11日、記者団に「天皇と外国要人の会見は最低でも1カ月前に申し入れるのがルールだ。陛下のなさる国際親善は政府の外交とは次元を異にする。国の大小は政治的重要性で取り扱いに差をつけずにやってきた」と述べ、「大事な国だからと言って特別扱いすることは、天皇の政治利用に繋がりかねない」との趣旨の、懸念表明にありました。宮内庁は11月27日、外務省からの会見要請を「1ヶ月ルール」を理由に断ったのに対し、平野博文官房長官が12月に入って2度にわたり強く要請してきたため、やむなく受け入れました。小沢氏は「天の声」を否定したうえ、14日の記者会見で「憲法では(天皇の)国事行為は内閣の助言と承認で行われる。内閣の1部局の1役人が内閣の決定に(異論を)言うのは、憲法や民主主義を理解していない人間の発言としか思えない。どうしても反対なら、辞表を提出後に言うべきだ。陛下の体調が優れないなら、優位性の低い行事をお休みになればいい」と述べ、陛下の「公的行為」と考える羽毛田長官を激烈に批判しました。

天皇の意志忖度し不遜な発言
 さらに、「宮内庁の役人が作ったものが絶対だというバカな話があるか。陛下ご自身に聞いてみたら、『手違いで(手続きが)遅れたかも知れないが、会いましょう』と必ずおっしゃると思う」と陛下のお気持ちを勝手に忖度して、「代弁」する傲岸不遜な発言をし、党内外で批判が高まりました。自民党は14日、急遽外交部会を開き、外務省や宮内庁から事情を聴取、同日発表した谷垣禎一総裁談話では「鳩山政権の強硬な会見要請の裏に、小沢幹事長の権威を堅持する目的があったとすれば、許し難い暴挙だ」と抗議しました。小沢氏の「天の声」は予算編成にも現れています。小沢幹事長は16日、10年度予算と税制改正に関する民主党の要望書を首相に手渡しました。「陳情改革」と称する党の要望事項は、11月以降に自治体や業界団体などから、窓口を1本化した幹事長室に寄せられた約2800件の陳情を精査した計18項目。マニフェストの目玉に掲げた子ども手当には所得制限を導入するよう要求。来年度から廃止を約束していたガソリンなどの暫定税率は、石油価格の安定を理由に「現在の租税水準を維持」し、高速道料金無料化も大幅削減しました。

暫定廃止だが課税水準は維持
 概算要求額は95兆円。税収は9兆円落ち込んだ昨年の平成21年並みとして37兆円、それに税外収入(埋蔵金)の目標を10兆円とし、首相が公約した新規国債発行額を44兆円とすれば歳入総額は最大で91億円。「事業仕分け」では結局6900億円しか捻出出来ないため、歳出との間に3兆円以上のギャップが生じ、政権公約の新規政策に要する7・1兆円の財源を調達出来なくなります。そこで、小沢氏は「党というより全国民からの要望。政府主導でこの要望を実現するよう最大限の努力をして貰いたい」と述べて、要望書を提出、助け船を出したわけです。首相は「国民の思い。感謝したい」と党側の説明に4度も礼を述べ受け入れましたが、国民の反発を恐れて@子ども手当の所得制限は設けないA暫定税率は廃止するが、税収の落ち込みや環境へ配慮し1年かけて環境税を検討する間、特例措置で課税水準は維持する――との苦肉の策で、予算規模は92兆円に納めました。

二重権力の小沢支配顕在化
 しかし、先の総選挙で掲げた政権公約の根幹部分を改変した内容ばかりです。谷垣自民党総裁は「ガソリン価格は選挙の時と変わっていないのに、何故選挙の時に暫定税率廃止を唱えたか。もう1度信を問うべきだ」と衆院の解散を求め、伊吹文明元幹事長も「民主党は壮大な買収公約を表明して議席を取った。約束通り出来ないといって、党の言うとおりにやれば詐欺罪だ」と批判しました。確かに昨年はガソリン高騰時の1ヶ月間、暫定税率が期限切れで1時停止になり、国民はその味が忘れられず民主党の公約に期待をかけて投票しました。公約違反は詐欺に該当します。「政治主導、内閣へ政策一元化」と言いながら、「党主導、小沢氏へ選挙・国会対策・政策一元化」が進み、二重権力の小沢支配が益々顕在化しています。次回は論戦の焦点になるマニフェストの修正・改変を取り上げます。