第218回(12月16日)献金・基地・不況 政権は三重苦
 鳩山政権は臨時国会を4日間延長、強引に郵政株式売却凍結法案を可決、政府提案10法案と肝炎対策基本法案など議員立法2法案を成立させ、2法案を継続審議としました。政府はリーマン同時不況、ドバイ・ショック、円高デフレのトリレンマ(三重苦)に直面する中で景気の2番底を回避しようと09年度2次補正予算、これに連動する来年度予算の事実上15ヶ月予算編成に取り組んでいます。政府がデフレを宣言したように物価下落―消費の停滞は深刻で、不況のしわ寄せを受ける中小企業が年を越せるかどうか危ぶまれています。しかし、3兆円圧縮を目指した先の「事業仕分け」でも半分の1・6兆円の効果しか上がらず、政府が積極的な財政出動をしようにも財源捻出は困難な状況です。加えて首相は偽装献金、米軍普天間飛行場移設の大問題を抱え、上記の円高デフレを加えると政権もまた三重苦に直面しています。連立政権内では、追加経済対策で国民新党の亀井静香代表が、普天間移設では社民党の福島瑞穂党首が言いたい放題の注文をつけ、民主党が強く反発し、きしみを生じています。自民党は鳩山三重苦をテーマに3プロジェクトチームを立ち上げました。年明けの通常国会で鳩山政権を追い詰める方針です。ご期待下さい。

自民欠席のまま11法案可決
 臨時国会会期末の11月30日、参院本会議では自民党欠席のまま、中小企業や住宅ローンの返済猶予を促す中小企業等金融円滑化法案、新型インフルエンザ対策特措法案、給与法改正案など政府提案の9法案と、議員立法のウイルス性肝炎の患者支援・医療体制の整備を図る肝炎対策基本法案、衆院で原爆症訴訟原告救済法案を成立させました。27日から審議拒否していた自民党は、肝炎対策基本法案についてのみ「人命に関わる問題」として参院厚生労働委での採決に応じ賛成しましたが、審議復帰の条件に出していた延長問題で折り合わず、参院本会議を欠席したものです。民社国の与党3党が残る3法案成立を目指して合意した4日間の延長方針は同日朝、山岡賢次民主党国対委員長から伝えられましたが、自民党は党首討論、予算委での首相の偽装献金・普天間移設・円高不況を巡る集中審議、参院決算委での総括審議の3セットで18日間の延長を要求したため折衝が決裂し、同日午後の衆院本会議で自民党が欠席する中、与党だけの賛成で延長を可決しました。

子ども手当9億円の献金疑惑
 自民党の大幅延長要求には、小沢幹事長を団長とする民主党の大訪中団が10日に出発するのを阻止する狙いがありました。また、延長後の会期末までの欠席戦術は、自民党内で郵政株凍結法案の賛否が別れ、造反者が出る恐れもあったことから、国対幹部ら執行部の賢明な判断で大事をとって審議拒否を続けたものです。谷垣禎一自民党総裁は30日夜、「鳩山家では毎月1500万円、5年間で9億円の『子ども手当』があるのかとびっくりした。疑惑献金隠し、普天間隠しのために小幅延長とした」と都内で街頭演説し、「政治とカネ」の徹底解明を訴えました。谷垣氏は翌日から新潟など地方遊説に出ています。与党はこの間に郵政株式売却凍結法案を成立させ、北朝鮮貨物検査法案と独立行政法人地域医療機能推進機構法案を継続審議としました。「郵政と中小企業」の2法が成立し、悲願を達成した亀井静香郵政担当相は「4年前に郵政問題で地獄の底に叩き落とされ、『小泉政治をひっくり返してやる』と頑張ってきた」と記者団に興奮気味に喜びを語っています。


負けずに連立離脱の重大決意
 「辺野古の沿岸部に海上基地をつくる決定を内閣が行ったら、社民党としても私としても、重大な決意をせねばならない」――。福島瑞穂消費者・少子化担当相も亀井氏に負けてはいません。3日の社民党常任幹事会で、鳩山内閣が日米合意通りに米軍普天間飛行場の移設を決めれば、連立政権からの離脱も辞さないとの考えを示しました。社民党は野党時代から一貫して「県外・国外移設」を主張、連立政権の3党合意にも「基地のあり方の見直し」を盛り込ませ、国民新党とともに年内の早期決着に反対してきました。しかし、党内では、福島氏が閣内に取り込まれて辺野古反対を強く打ち出そうとしないなどと、対応に不満が高まり、月末の党首選では沖縄県連が対立候補を擁立する動きに発展しました。このため、4選を目指す福島氏は4日の告示前に決意を表明したものです。政権の枠組みを重視する首相は「重く受け止めないといけない」と記者団の質問に答え、直ちに3日、岡田克也外相と北沢俊美防衛相に対し、新たな移設先を検討するよう指示、年内決着を先送りしました。これで福島氏は県連の動きを封じ、無投票4選を確実にしました。

合意白紙なら日米同盟に亀裂
 社民党は11月25日、県外・国外への移設を求める緊急提言の中で「グアムや硫黄島への移転検討」を主張しています。記者団が「グアムは魅力的な案か」と聞いたのに対し、首相は「グアムへ全て移設するということが米国の抑止力を考えたとき、妥当かどうか検討する必要がある」と答え、選択肢の1つとして北沢防衛相をグアムへ派遣しました。もともと首相は「常時駐留なき安保」が持論。米海兵隊が沖縄に居続ける現状に極めて懐疑的で、先の総選挙では社民党と一緒に県外・国外移設論を唱えていました。自らの偽装献金問題を抱え、参院で単純過半数を持たない現状で来年の通常国会を乗り切り、来夏の参院選で選挙協力を得るには、民社国の3党連立は不可避と見ているようです。だが、日米合意を白紙に戻せば、日米同盟の亀裂は決定的になります。4日の読売ワシントン電は<複数の米政府関係者によると、11月の日米首脳会談の際、現行計画での年内決着を求めたオバマ大統領に、首相が「トラスト・ミー」と述べたにもかかわらず、翌日に年内決着を「(米側に)約束したわけではない」と翻したことで、「鳩山首相は信用出来ない」という強い不信感が広がったという>と報じました。先送り方針には米側が強く反発、岡田外相は8日、「日米間の外務・防衛当局の閣僚級作業部会の協議を停止した」と発表しました。

米軍再編の日米合意は破綻
 1月下旬の名護市長選では、現行計画を容認する島袋吉和・現市長に、反対派の新人が挑戦し、仮に現職が敗れれば県外移設を求める猛運動が起き、現行計画で早期決着を求めてきた仲井真弘多沖縄県知事の立場はより一層苦しくなります。グアムへの全移転が出来るぐらいなら、自公政権が13年も掛けて現行計画を積み上げる必要はなかったわけです。計画が頓挫すれば米海兵隊8千人のグアム移転計画は消え、2014年までの普天間飛行場移設は宙に浮いて基地の危険度は高まり、沖縄の基地負担軽減策はなくなります。一方、対日不信による日米関係の悪化で米中・米韓間の実務的協力関係が拡大され、日本防衛に関する米国の負担が今後減少していくものと予想されます。これを最も恐れるのが岡田外相と北沢防衛相。これまで嘉手納基地への統合を模索してきた岡田氏は5日、沖縄へ飛んで伊波洋一宜野湾市長や岸本正男沖縄タイムス社長らと会い、「米側との交渉はもはや限界。現時点で(米国に)辺野古沿岸部以外の選択肢はない」と述べ、交渉が平行線をたどれば、海兵隊のグアム移転を含めた米軍再編の日米合意は破綻するとの見方を示しました。

仕分け効果は目標3兆円の半分
 鳴り物入りで行った無駄を洗い出す行政刷新会議の「事業仕分け」は11月27日、9日間の全日程を終え、447事業のうち、必要性や緊急性に乏しい事業の「廃止」(1300億円)、「予算計上見送り」(1600億円)、「削減」(4500億円)で計約7400億円をカット。多数の官僚OBが天下っている公益法人や独立行政法人の基金のうち約8400億円を国庫へ返納させることとし、「仕分け効果」は総額で約1兆6千億円に達しました。体育館でのあぶり出し作業を広く公開したことから、「パフォーマンス重視の公開処刑」「廃止、削減は筋書き通りの財務省主導」とマスコミに騒がれ、国民の高い関心を集めましたが、来年度予算の概算要求額は過去最大の95兆円で、仕分け効果は目標3兆円の半分に過ぎず、マニフェスト(政権公約)政策実現のための財源7・1兆円の確保には到底及びませんでした。しかも、「次世代スーパーコンピューターといった科学技術関連事業などは修正する方針であり、仕分け結果を予算にどれだけ反映出来るか疑問です。

またも亀井氏が予算で横やり
 政府は4日午後にも臨時閣議を開き、09年度2次補正予算に盛り込む経済対策をまとめる手筈でしたが、またも亀井金融・郵政担当相から横やりが入り、決定を翌週に持ち越しました。鳩山政権は当初、2・7兆円の補正予算を予定しましたが、世界的な株安や急激な円高を引き起こした「ドバイ・ショック」を受けて緊急経済対策をまとめることとし、事業規模は24兆円程度を見込み、予算規模は不況による地方交付税の減額分を国が補う財政措置を含めて当初計画の2・5倍の7・1兆円に拡充する方針を固めました。これに対し、11兆円以上を要求していた国民新党代表の亀井氏が納得せず、地方支援策を9千億円増額するよう求め、8兆円までの積み増しを主張、閣内調整は難航しました。結局、8日朝の基本政策閣僚委員会で1千億円を上積みし、総額は7・2兆円に決定しました。閣僚委の席上,菅直人副総理兼国家戦略担当相が「3党の連立政権であると同時に鳩山政権だ。亀井政権ではない。政権を支える自覚を持って欲しい」と怒気を込めて発言すれば、亀井氏は「連立内閣では3党対等だ。政治主導とは民主党主導ではないはずだ」と反論するなど激しいさや当てを演じました。亀井氏は記者団に対し、「小なりとはいえ、連立政権では安保常任理事国並みの拒否権を持つ」と豪語し、涼しい顔です。

参院選まで持たぬと小泉予言
 経済対策は急激な円高、物価下落が続くデフレに対処するため、雇用、環境対策、中小企業への金融支援に加え、地方支援策として電柱の地中化や都市部の緑化工事などの公共事業も挙げています。また、来年3月で期限が切れるエコポイント制度やエコカー(環境対応車)の購入補助など麻生内閣が置き土産にした優れた政策はちゃっかり継続、太陽光パネル設置住宅の補助など新たなエコ政策も取り入れる計画ですが、サルまね政策以外の何物でもありません。財源は1次補正予算の執行凍結分の2・7兆円や、国債の元利払い費の余剰分などを活用する考えですが、1次補正は自公政権が年末までの景気浮揚の緊急対策としてまとめた14兆6630億円の1部を、鳩山内閣が政権交代のイメージアップを図るため勝手に凍結したものです。不況対策を真剣に考えるなら、既に成立している1次補正の凍結を解除すべきだし、2次補正を提出するならば次期通常国会ではなく、国民が安心して年が越せるよう臨時国会で成立させておくべきでした。小泉純一郎元首相は4日夜、山崎拓元幹事長らとの会食で、「今のような朝令暮改では日米関係は完全に不信状態になる。鳩山政権は参院選まで持たない」と予言しています。確かに、何の定見もなくクルクル変わる場当たり発言の首相に国民は不安を感じ、選挙目当てのバラ撒き政策だけで経済成長戦略も政策の司令塔も持たない鳩山迷走政権の前途には暗雲が垂れ込めています。