第217回(12月1日)強行採決の暴挙 羊頭狗肉策を追及
 来年度予算の年内編成を急ぐ政府民主党は11月20日未明、「中小企業等金融円滑化法案」を強行採決して衆院を通過させ、「インフルエンザ対策特措法案」など4法案も同日の衆院委員会で強硬可決しました。これに抗議した自民、公明両党は欠席戦術で対抗しましたが、会期は四日間延長されて与野党攻防は一段と激しくなっています。
 3兆円の無駄を洗い出す行政刷新会議(議長・鳩山首相)の「事業仕分け」は、17日に第1弾の作業を終え、約1兆円規模の財源を確保しました。だが、民主党のマニフェスト(政権公約)に盛り込んだ10年度の新規政策の必要額7・1兆円には到底足りず、首相は「公約の工程表で示した必要額の圧縮はやむを得ない」と逃げを打ちつつ、24日から第2弾の作業を行いました。政府のデフレ認定宣言で景気の2番底は必至の情勢です。郵政・人事院では公約違反の天下り人事、普天間飛行場移設では関係閣僚のブレ発言などがあり、各紙の内閣支持率は60%前後と10%程度下落しました。自民党は国会ルールを無視した強行採決の暴挙、首相の偽装献金問題、羊頭狗肉の新規政策などを今後も徹底的に追及します。

小沢氏がハッパと急ブレーキ
 中小企業や住宅ローン利用者の返済を猶予(モラトリアム)する中小企業等金融円滑化法案の実質審議は18日に始まったばかり。なのに与党は、辞任した谷公士人事院総裁の後任人事官の国会承認が遅れたことを理由に、19日昼の衆院財務金融委で参考人の意見聴取後に採決を強行、20日未明の衆院本会議で自公両党が欠席したまま可決しました。さらに同日、インフルエンザ対策特措法案(衆院厚労委)と裁判官報酬法・検察官俸給法・裁判官育児休業法の3改正案(衆院法務委)の計4法案を可決し、直ちに衆院本会議でも強行可決する姿勢を見せました。法案審議2日目で定例日以外の採決は前代未聞。民主党出身の横路孝弘衆院議長が積極的な議長斡旋に動かないため、自民党の大島理森幹事長は「国会のルールを政治主導で無茶苦茶に変えるのは許されない」と激しく批判し、公明党と審議拒否に入りました。田中派以来、数の力で突っ走る民主党の小沢一郎幹事長は「(会期末の)30日までに全法律を仕上げるのが務めだ」と国対幹部にハッパをかけ、20日午後の衆院本会議で国家公務員給与法案、郵政株式売却凍結法案、北朝鮮貨物検査法案など残る7法案も一気に強行採決して12法案の全てを参院へ送付する構えでした。この「毒食えば皿まで」方式には、「昨晩の国会ぐらい国民に恥ずかしい大騒ぎは無かった」と同党長老の渡部恒三氏を嘆かせたほど。さすがの小沢氏も世論の反発を恐れ、「丁寧にやれば、審議時間はまだ確保できる」と急ブレーキをかけ、全ての採決を連休後に持ち越しました。

パフォーマンスの仕分け作業
 行政刷新会議は17日、約3千事業のうち447件を対象とする第1陣の事業仕分け作業を終えました。来年度予算の概算要求は麻生前政権の要求額に、マニフェストで公約した子ども手当などをそのまま上乗せした結果、過去最大の約95兆円に膨れ上がりました。仙谷由人行政刷新相は事業仕分けで3兆円兆の削減を目指し、首相も「必殺仕分け人」に期待を掛けていましたが、5日間で46事業の総額1506億円の予算を「廃止」または「来年度計上見送り」に、公益法人などが持つ15基金の総額7256億円を国家へ返納するよう要請するなど、計約1兆円超の財源を確保するだけに終わりました。無駄な経費を洗い出す「事業仕分け」はこれまで地方自治体が実施し、成果を挙げてきたもので、政官業癒着のしがらみを断ち切り、予算編成の透明性を確保するのが狙いです。それゆえ、公開を原則に東京都新宿区の体育館で実施。誰でも入場OKで議論が聞けるヘッドホンを貸し出し、事業概要をまとめたA4判約100頁の資料も配るという熱の入れようで鳩山政権のパフォーマンスを優先させました。連日約500人が傍聴に訪れ、インターネット中継にいつも1万〜2万件のアクセスがあったほどで、内閣支持率の回復に役立ちました。


「公開処刑」と要求省庁反発
 「『刷新祭り』の公開処刑は1回きりの見せ物だ。肉を切られても骨を断たれなければ、生き残れる」――。読売によると、「財団法人の活用」を廃止された厚生労働省の幹部は周辺にこう漏らしたといいます。ネット中継の仕分け作業は「公開裁判」さながらの異例さで、予算削減に全力投入の仕分け人と、事業を死守する省庁側官僚がデスマッチを展開しました。仕分けの舞台は3つのワーキンググループ(WG)で、第1WGは「コンクリートから人へ」の改革を目指す公共事業(主な対象は国土交通・農林水産省)。第2WGは年金、医療・介護などの社会保障(厚生労働省)。第3WGは教育、研究開発、食の安全、安全保障など(文部科学、農水、厚労、防衛各省)の3班に分かれ、全WGを民主党の枝野幸男元政調会長が統括。国会議員はベテラン(各省OB)の「過去官僚」が多い副大臣・政務官計7人、民間有識者は各WG20人程度の大学教授やエコノミストらで構成。第1弾は11〜17日(5日間)、第2陣は24〜27日(4日間)の公開作業を終えました。

財務省主導に要求側閣僚抗議
 仕分け作業では、事業官庁の説明後、議論に入る前に必ず財務省の担当主計官が論点を整理し、配付資料も作成したため、概算要求を査定する財務省にとっては、仕分け支持の世論を追い風に査定が進めることが出来、こんなに好都合なことはありません。ある主計局幹部は「仕分け結果は強力な武器。要求官庁に仕分け結果を覆すだけの説明責任が生じるので、今後の予算編成では、こっちが圧倒的に有利になる」とうそぶいた、と朝日は報じています。それだけに財務省主導の仕分けには要求官庁の強い反発が起きており、スーパーコンピューターの開発費など科学技術予算の大幅削減を連発された川端達夫文科相が「資源のない国で科学技術が非常に大切だと言うことは内閣一致の方針」と抗議すれば、地方交付税の交付金の見直しを求められた原口一博総務相も「決定するのはあくまで政治」と開き直っています。このため、スパコン予算は再検討の対象になりました。内閣支持率の下落を食い止めたほどの仕分け作業でしたが、第1陣の成果は目標額の3分の1しか見込めないうえ政府内に大混乱が生じました。この作業結果は予算編成に反映されます。

工程表修正や予算の圧縮示唆
 政府は国会閉幕後、本格的な来年度予算編成に入りますが、1ヶ月足らずでまとめた概算要求額は新規施策分を単純に積み上げただけで史上最大の95兆円。民主党マニフェストの工程表に盛り込んだ新規施策の必要額は7・1兆円です。内訳は子ども手当半額実施(2・7兆円)、ガソリン税のなど暫定税率廃止(2・5兆円)、公立高校の実質無償化(0・5兆円)などで、目玉政策の農家への個別所得補償や高速道路無料化などは段階的、部分的に実施するとして必要額を示していません。7・1兆円は一般・特別会計の総額207兆円を抜本的に組み替えて捻出する考えでしたが、事業仕分けの第1陣では1兆円程度の無駄しか洗い出せず、7・1兆円には遠く及ばない結果です。しかも、不況で来年度の税収は40兆円を下回ることは確実で、首相が来年度の国債発行額を44兆円以下に抑える方針を打ち出したことは、命取りになりかねない重い発言となりました。仙谷行政刷新相は助け舟を出そうと、18日の衆院内閣委で「マニフェストを実行するのに、景気悪化と税収の落ち込みをどう考えるかは我々の政治判断」と政権公約の工程表を修正する可能性に言及。首相も「(工程表は)政権を執る前にざっくりした計算で決めた額」とマスコミに早くも逃げを打ち、工程表の部分的な修正や公約関連予算の圧縮を示唆しています。

エコポイント・エコカー継続
 しからば、どの部分を修正し、新規施策予算をカットするのでしょうか。首都・阪神高速を除く料金収入は年1・8兆円もあることから、高速道完全無料化は12年度からとし、10〜11年度は地方から段階的に実施する方針です。国交省は東名・名神など基幹道路の無料化は渋滞を招き経済活動に響くうえ、CO2が増えるとして最後に回し、初年度の10年度は料金収入3分の1の6千億円を要求しています。コメや麦、大豆などに対する個別所得補償は11年度からで年1兆円が必要。農水省は10年度に、コメだけを対象に全国一律前倒しで実施、関連助成策も含め5618億円を要求しました。だが、藤井裕久財務相は各省の要求に対し、査定では大幅に切り込む考えを示しています。政府は菅直人副総理兼国家戦略・経済財政相のもとで、新規政策の優先順位などを協議していますが、菅氏は09年度2次補正予算に盛り込む経済対策の中に、麻生政権が残したエコポイント制度やエコカー(環境対応車)の購入補助などを環境分野で「即効性の高い施策」であるとし、来年3月に期限が切れるエコ制度などは10年度も継続する意向を表明しています。

暫定税率廃止と環境税は同時
 菅氏はさらに新聞・テレビを通じ、経済成長戦略にも言及。公共事業に依存した大型の財政出動や市場原理主義によらない「第三の道」を模索するとし、具体的には需要が多い介護・環境分野を中心に、@高齢者対象の雇用開発A太陽光パネル設置の住宅を補助し、発電の全量を電力会社が買い取る制度の創設B林業を生産性が上がり採算がとれる事業に改革――などを挙げています。とくに、菅氏は「暫定税率は下げますよ。しかし、新たに環境税としてガソリンにリッター20円かけさせて貰いますよ、という話を同時にやるかも知れない」と明言、暫定税率廃止による年2・5兆円の税収減は年2兆円の環境税創設で補う考えを示しています。政府税調は首相が温室効果ガス排出量を20年までに1990年比25%削減すると国際公約したこともあり、環境税の創設に意欲的です。また、税調はたばこ税を増税し、20本入り1箱300円前後から2倍の600円程度にまで引き上げる方針を示しており、相次ぐ増税路線に国民や産業界からの反発が強まっています。

税の看板すり替えを徹底追及
 このように民主党は、自民党政権の景気対策をこっそり踏襲したり、ガソリン減税の看板を環境増税にすり替えるなど公約違反の羊頭狗肉の政策を臆面もなく押し出しています。1月の通常国会で我々は厳しく叩かねばなりません。政府は20日に発表した11月の月例経済報告で「緩やかなデフレ状況にある」とデフレ認定を宣言しました。だが、実態は長期の物価下落―賃金カット―リストラ―消費低迷―物価再下落、のデフレ・スパイラル(負の連鎖)に陥りつつあります。暗い師走に入りましたが、自民党は健全野党の政策を打ち出し、世直しに努めます。末筆ながら皆様のご支援とご叱正をお願い申し上げます。