第216回(11月16日)日米同盟を深化 国会延長は必至
 13日に来日したオバマ米大統領と鳩山首相の首脳会談は、最近高まった日米緊張関係に配慮、最大懸案である沖縄・普天間飛行場の移設問題を主題とせず、日米関係の再構築に向けて「日米同盟の重層的な深化」で合意しました。従って日米関係は一見、小康状態に入ったかに見えますが、優柔不断な鳩山政権に対し、辺野古への移設と駐沖海兵隊のグアム移転をワンセットと考える米側の不満は大きく、米議会が海兵隊のグアム移転経費を認めず、過去の合意全体が頓挫する恐れが強まるなど両国のぎくしゃくした関係は一層深まっています。衆参両院の予算委審議で、自民党は首相の匿名献金問題、政権公約違反の郵政人事、外交政策などを厳しく追及しましたが、今後は人事院総裁への天下り人事や閣内の迷走で日米間に亀裂が生じた普天間問題をさらに徹底的に糺す方針です。臨時国会の延長は必至ですが、民主党のバラマキ政策と一体の税制論議も政府税調で始まっており、子ども手当と扶養控除の廃止、ガソリン税暫定税率の廃止と環境税の関連など国民の関心が高いことから審議は難航し、来年度予算案の年内編成はますます難しくなってきました。

米は普天間の結論先送り容認
 オバマ大統領は、5日に起きた米陸軍基地(テキサス州)の銃乱射事件追悼式に出席のため1日遅れて来日。13日の日米首脳会談では、2010年の日米安保条約改定50周年に合わせて日米同盟の将来をどう再構築するかをメインに討議、「未来志向で21世紀の日米関係を強化する」ことで合意しました。米側は、普天間飛行場の移設について日本側が過去の合意事項を検証している努力を見守り、結論の先送りを容認しました。日本側は来年1月にインド洋給油活動から撤退する代わりに、元タリバン兵士に対する職業訓練や警官の給与肩代わりなどアフガニスタンの復興に5年間で50億ドル(約4500億円)の民政支援を行うことを説明、米側の評価を得ました。同盟再構築は今後、外務、防衛担当閣僚による日米安保協議委(2プラス2)や事務レベル協議などで伝統的な同盟の課題や、新たな日米協力に関する協議を加速させる方針です。これは両国がそれぞれ政権交代したため、新たな視点に立って日米共通の理解を深め、日米関係の幅を広げ、拡大・深化させようとするものです。

オバマは合意履行が焦点とクギ
 首相は会談で、日米同盟が「日本の外交の基軸」としたうえ、「米国の核の傘を含む拡大抑止や情報保全、ミサイル防衛、宇宙開発といった安全保障の分野に限らず、新しい課題も含めた協力の強化を進めたい」と述べ、具体的には防災、医療・保健、教育、気候変動・環境などの分野を挙げました。普天間問題で首相は「日米合意を非常に重く受け止めている」とし、閣僚級(ハイレベル)作業部会を通じて「早期に解決する」と述べたものの、総選挙で県外、国外移設を訴えた経緯を説明。「沖縄の期待も高まっている」として、見直し作業への理解を求めました。終了後の会見で両首脳は、気候変動とクリーン・エネルギー技術協力、核軍縮に関する3本の共同文書を発表しました。共同会見で首相は「乱射による悲劇にもかかわらず、バラクに日本へ(真っ先に)来ていただいたことは、国民すべてにとってうれしい。『バラク』と『由紀夫』という呼び方も定着してきたようだ」と笑みを浮かべましたが、普天間で大統領は「作業部会は日米合意履行に焦点を絞る」との認識を示し、「作業を迅速に完了したい」とクギを刺しました。ところが首相は翌日、APECに出席したシンガポールでの記者会見で、「日米合意が前提なら作業部会を作る必要がない」と述べ、合意見直しを含め検討する意向を示し、米側の不信感を強めました。


不信感強める米、業煮やす地元
 首脳会談に先立つ2〜10日の衆参両院予算委で自民党は大島理森幹事長、町村信孝元官房長官、加藤紘一元幹事長、石破茂政調会長、菅義偉元総務相ら論客が質問に立ち、政府の普天間問題先送りについて厳しく批判しましたが、首相は「いつまでも結論を引き延ばしていいものではないが、いつとは言えない」と逃げの答弁に終始しました。先号のHP「北村の政治活動」で指摘したように、結論を先送りする首相、嘉手納飛行場との統合を目指し検証中の岡田克也外相、辺野古への移設容認の北沢俊美防衛相、県外・国外移転に固執する社民党首の福島瑞穂少子化対策相などの発言は、町村氏が「閣内はバラバラだ」と非難した通り食い違っていました。こうした鳩山内閣の姿勢に米側は不信感を強め、沖縄県民は業を煮やしています。オバマ大統領の来日が迫る7日には統合反対の嘉手納町民大会が約2500人を集めて開かれ、実行委員長の宮城篤実町長は「いかなる理由、いかなる説明があっても統合案には乗らない」と明言、鳩山政権への不信感を露わにしました。

嘉手納町・宜野湾市で反対集会
 朝日によると、宮城町長は「外相になって岡田さんは沖縄の基地問題について解決の努力をした足跡があるのか」と不満を述べたそうです。8日には県内移設反対の県民大会が普天間飛行場のある宜野湾市で約2万人を集めて開かれ、翁長雄志那覇市長ら13の首長が参加しました。沖縄県の仲井真弘多知事と島袋吉和名護市長は代替飛行場を50メートル沖合に移動する修正を条件に辺野古移設を容認していましたが、両大会で「普天間は県外移転して貰うのが県民の総意だ」との要求が高まったため、仲井真知事は煮え切らない首相に苛立ちを見せ、島袋市長周辺でも方針転換を求める声が出始めています。首相は来年1月の名護市長選の結果を見て結論を出す構えですが、島袋現市長の対抗馬には「新たな基地は作らせない」と訴える元市教育長が出馬を予定しており、島袋陣営では「我々が基地を誘致しているかのような構図になれば市長選に勝てない」と焦燥感を強めています。

海兵隊のグアム移転に影響
 おまけに読谷村では米兵によるひき逃げ死亡事故が発生、基地の対米感情がさらに悪化しています。オバマ氏もこうした現地事情を考慮して首相の結論先送りを容認した模様ですが、現行計画が進まなければ海兵隊8000人のグアム移転が止まり、普天間の危険な状態は続くわけで、このジレンマをどう解決するか。鳩山政権は苦境に立たされています。
一方、首相の資金管理団体の偽装献金問題について、首相は6月末の記者会見で、「追加調査しいずれ説明する」意向を示しましたが、予算委答弁では「検察の捜査に影響を与える」ことを理由に、一切の説明を控える考えを繰り返しています。だが、6月以降、小口の匿名献金の偽装、所得税控除の証明書の不適切な取得など多くの問題が発覚。特に2004年から08年までの政治資金収支報告書に記載された1億7717万円の小口匿名献金の大半が鳩山家の資産管理会社である「六幸商会」の管理資金だったと報道されています。

贈与税逃れなど参考人招致
 資金源について、柴山昌彦氏(自民)が「政治資金規正法では年間1000万円超の寄付は、政治家個人の資金管理団体でも出来ないと、罰則付きで定めている」と量的制限の違反を突いても、首相は「地検の捜査で全容が解明されると信じている」と逃げるのみ。虚偽献金の原資に母親や企業・団体のカネが混じっていれば、贈与税逃れや、資金管理団体への企業・団体献金を禁ずる政治資金規正法違反の疑いが出てきます。個人献金が「故人献金」に化けていたのが偽装献金問題の発端ですが、自民党は説明責任を放棄する首相に対する集中審議や、六幸商会社長(元秘書)の参考人招致を求めています。谷公士前人事院総裁の後任人事官に、7月退官したばかりの江利川毅前厚生労働事務次官を起用する国会同意人事案を示したことについても、大島幹事長は「政府が(天下りを)斡旋どころか自分で任命している。日本郵政も(同様だ)。明解なマニフェスト違反だ」と記者会見で強調。みんなの党の渡辺喜美代表も衆院予算委で「谷氏の後任がまた次官。鳩山内閣は公務員制度改革の優先順位が低い」と批判したのに対し、首相は「省庁が権益を守るため役人OBを配置するような天下りとは違う。公務員制度を知り尽くしている人が最低1人いないと大改革は出来ない」と答えました。同意人事は野党の反発で遅れ、17、18両日の衆参本会議で決まりますが、人事院勧告を受けた一般職と特別職の給与法改正2法案の成立がさらに遅れる見通しから、1週間〜10日間程度の国会延長は必至の情勢です。

完全トップダウンで党内統治
 「与党になったと張り切ったはいいが、忙しいのは大臣、副大臣、政務官、それ以外はみんな暇で…小沢クンが右と言えば右、左と言えば左。3足す5は15といえば『はい』といっていればいい」――。朝日は民主党の黄門さま・渡部恒三元衆院副議長が4日、福岡市の講演で小沢一郎幹事長を皮肉ったと報じました。小沢氏が完全なトップダウン方式で意思決定が出来る幹事長に党内統治システムを作り変えてしまったからです。小沢氏は組閣で色々と注文を付けたほか、政府・与党一元化の名のもとに党政策調査会や議員立法の廃止、衆院本会議の代表質問や衆参予算委での質問も廃止、政府への陳情取り次ぎを党幹事長室へ一本化――などを相次ぐ権力集中策を打ち出し、来年度予算概算要求では不要不急事業をあぶり出す行政刷新会議の「事業仕分け人」から当選2回以下議員の「引き揚げ命令」を下しました。渡部氏は小沢氏が西松建設の巨額献金事件が明るみに出た際、「小沢氏の代表辞任」を促したことから小沢氏に疎まれ、先の党人事では党最高顧問の肩書きを外されましたが、今回も強引な“小沢支配”が強まることに警告を発したと思われます。

研修会や紅衛兵的ヤジの特訓
 選挙と国会対策を取り仕切る小沢氏の念頭にあるのは、来年7月の参院選を勝利するため所属国会議員を地元回りに専念させることです。特に衆院の新人143人に対しては研修会、代議士会出席の点呼が厳しく、本会議や予算委でのヤジの仕方も特訓している様子です。谷垣禎一自民党総裁が「あのヤジはまるでヒトラー・ユーゲント(青少年組織)だ」と怒ったように、議場では毛沢東中国主席の紅衛兵さながらに喚声と拍手が湧き起こっています。「政務3役」としての入閣や党役員から外れた300人近い議員は議場でのヤジ要員と法案可決の「投票マシン」の存在でしかなく、若手の不満が日増しに募りつつあります。しかし、小沢氏の剛腕ぶりには恐怖感を感じるだけで、面と向かってモノを言う勇気がなく、不満は鬱積するばかりのようです。田中派時代から小沢氏を知り抜いている野中広務元官房長官は8日のTBS「時事放談」で寺島実郎日本総研会長を相手に、「小沢氏は小選挙区比例代表並立制や政党助成金の導入など、着々と政治改革の手を打ってきた。その“恐怖政治”的手法に民主党員は沈黙している。しかし、やがて党員が我慢できず離反する。その時こそ自民党が政権奪還できるチャンスだ」との趣旨で語っています。

通年国会で遅滞なく法案成立
 小沢氏は、学者や経済人らで作る「新しい日本を創る国民会議=21世紀臨調=」(座長・佐々木毅元東大総長)に国会改革に関する提言を依頼、同臨調は「国会運営では予算や法案の審議日程を巡る与野党駆け引きに終始している点が審議活性化の最大障害」と指摘し、通年国会を実現するよう緊急提言しました。通年国会なら、時間を気にしなくとも絶対多数の勢力を背景にあらゆる法案を遅滞なく成立出来るようになります。提言を受けて小沢氏は出来れば今国会に国会法改正案を提出、成立に意欲を燃やしています。こうした小沢戦略に対抗するには、自民党も常在戦場で選挙態勢を固めなければなりません。谷垣総裁は3日の大坂、4日の高知を皮切りに全国行脚を開始。時には自転車にまたがり「草の根政治活動」を展開しています。私は党水産部会長として、「越前クラゲ」が大量発生、定置網漁業の被害を受けた三陸沖を視察(「北村の政治報告」を参照)するなど、フル回転しています。末筆ながら、旧来以上のご支援、ご叱正を賜るようお願い申し上げます。