第215回(11月1日)国会論戦火花 羊頭狗肉の政策追及
 関門海峡で10月27日午後、佐世保基地を母港とする海上自衛隊の護衛艦「くらま」と韓国のコンテナ船が衝突・炎上し、消火中の自衛隊員6人が負傷されたことは真にお気の毒で、まず冒頭に心からお見舞い申し上げます。さて、臨時国会は同26日に開幕、鳩山首相の所信表明に対し、自民党の谷垣禎一総裁らが代表質問に立ち、民主党のバラマキ政策で肥大化する来年度予算や政権公約に違反する日本郵政社長人事などを厳しく追及、激しい論戦を展開しました。残念ながら神奈川・静岡の参院統一補選は敗れましたが、首相の資金管理団体を巡る虚偽献金問題、オバマ米政権との間に亀裂が生じかけた普天間飛行場の移設問題など攻撃材料は豊富。今週から始まる衆院予算委も自民党が主導権を握り、政府を追い詰めようとしています。政府は野党追及を恐れて、提出法案を船舶検査法案、郵政株売却凍結法案など12法案に絞り、11月末の36日間で閉幕。予算編成に全力を挙げる構えです。特に行政刷新会議の「事業仕分け」で95兆円の概算要求額を数兆円削減する方針ですが、無駄事業のカットは容易でありません。政府・与党一体化といいながら、首相と小沢一郎幹事長との間には微妙なすきま風が吹いています。私は党の水産部会長を再任され、衆院水産委の理事に就任。政府の個別所得補償政策の欠陥を突き、農水産業を成長産業に変身させるべく努力しています。ご支援、ご叱正をお願い申し上げます。

冗長で感傷的、成長戦略なし
 首相は26日の所信表明演説で「友愛の社会」実現への決意を示し、行政刷新会議を中心に徹底的な無駄の排除に努め、国民生活と命を守る政治、地域主権を重視した政策への転換を強調しました。内政では政権公約(マニフェスト)に基づく子ども手当の創設、中小企業支援や新型インフルエンザ対策、景気の「2番底」回復のため経済合理性に偏らない経済対策などに万全を期す姿勢を示しました。外交では先進国と途上国、欧米とアジアなど世界の「架け橋」の役割を果たすことを重ねて表明。持論の「東アジア共同体」構想や、20年までに温室効果ガスを90年比25%削減する日本の中期目標に触れ、核軍縮の取り組みでも世界の先頭に立つ決意を表明しました。しかし、52分間という最長の演説は自民党の谷垣総裁が「冗長で感傷的、成長戦略など国の目指す方向を示す明快なメッセージはない」と酷評したようにお粗末な内容でした。28〜30日の代表質問で谷垣総裁は,民主党のバラマキ政策により肥大化する来年度予算編成を「大きな政府を志向するもの」と財源確保策の不備などを挙げて糾弾。西村康稔政調副会長は「鳩山不況の到来」と指摘、首相が日本郵政社長に斉藤次郎元大蔵事務次官を起用したことが、同党のマニフェストに掲げる「脱官僚依存、天下り・渡りの根絶」に矛盾すると激しく追及しました。

方向と実態は政権公約に逆行
 今週から始まる衆院予算委では大島理森幹事長、町村信孝元官房長官らが質問に立ち、鳩山首相の虚偽献金問題、09年度補正予算の執行停止、八ツ場ダムの建設中止など公共事業の見直しが地方経済に与える悪影響、財政再建への道筋、沖縄の普天間飛行場の移設問題を巡る各閣僚のブレた発言――などを多角的に追及。首相の偽装献金では解任された会計担当の公設秘書を参考人として招致することも検討しています。また、早急に党首討論の開催も要求する予定です。特に普天間は結論を先送りしたい首相、嘉手納飛行場との統合を目指す岡田克也外相、辺野古への移設容認の北沢俊美防衛相、県外・国外移転に固執する福島瑞穂少子化対策相(社民党首)とバラバラ発言で迷走気味。この問題は別紙のHP「北村の政治活動」に詳しく述べてあるので、ぜひお読み下さい。鳩山政権40日の足取りは各閣僚がマニフェストを金科玉条のように唱え政権交代のお題目を国民に訴えながら、その方向性は政権公約に逆行する実態を如実に示しています。その典型例が郵政人事です。

斉藤社長は民から官へ逆戻り
 「鳩山内閣は内政・外交、象徴的には日本郵政人事に至るまで、約束違反・言行不一致ばかり。民主党のマニフェストは羊頭狗肉だ」(谷垣氏)、「郵政社長人事には大変驚いた。明らかに天下り・渡りだ。脱官僚とは逆行する」(西村氏)――。自民党が代表質問で厳しく質した28日、日本郵政は人事を決める指名委員会(奥田碩委員長)の開催を省略して臨時株主総会を開き、斉藤次郎東京金融取引所社長(元大蔵事務次官)を社長に、坂篤郎元内閣官房副長官補(旧大蔵出身)、足立盛二郎元郵政事業庁長官ら4人を副社長とする、官僚OBが中核の役員人事を決定しました。亀井静香金融・郵政担当相が西川善文前社長に「自主的に辞任するよう」引導を渡し、西川氏が20日に辞任表明したのを受けて株主総会は開かれたものです。同日の就任会見で斉藤氏は「郵政は電力事業に並ぶ公共性の高い事業だ」と明治時代から国営事業として続いてきた歴史に敢えて言及、地方を中心にサービスの低下や職員士気の低下を招いた郵政の現状を批判し、「国民に奉仕する意識を持って事業を展開していく」と抱負を語りました。まさに「民から官へ」逆戻りです。

国民福祉税で小沢氏と連携
 斉藤氏は「10年に1度の大器」「ミスター大蔵省」と言われた逸材で、海部俊樹内閣の主計局長時代は、小沢一郎自民党幹事長が湾岸戦争で「国際社会への貢献」を唱えた時に「国際貢献税(湾岸増税)」創設に協力しましたが、自民党税調に拒否されました。次官就任直後に誕生した細川護煕連立政権の94年2月には、新生党の小沢代表幹事と二人三脚で、消費税に代える税率7%の「国民福祉税」創設構想を打ち出し、細川首相が深夜の記者会見で発表しましたが、武村正義官房長官にも知らせなかったため、内閣が混乱し細川退陣を速めました。後に政権復帰した自民党から、斉藤氏は「官僚支配」の象徴、「官僚批判」の標的とされ、次官の再就職先としては「格下」の東京金融先物取引所理事長(現金融取引所社長)に天下っていました。だが、小沢民主党代表が福田康夫首相と自民、民主両党の大連立構想を画策した07年には、官邸と小沢氏を繋いだ仲人役の一人とされ、小沢氏との親密な関係は持続しています。今回はまさに「一郎・次郎ライン」の復活です。

郵政改革法案成立期す亀井氏
 1月の通常国会で郵政改革法案の成立を期す亀井郵政担当相は、国民新党の代表としても連立政権の継続を望み、社長人事は「小沢人脈」に頼りました。財界の協力を得るため、西岡喬取締役会長は留任、社外取締役には奥田碩元経団連会長(トヨタ自動車相談役)も残し、石弘光元政府税調会長、井上秀一元NTT東日本社長ら経済人と作家の曾野綾子氏を起用しました。しかし、鳩山首相は幹事長当時の昨年の日銀総裁人事では、武藤敏郎副総裁(元財務事務次官)の昇格を含め、財務省OBの正副総裁候補を参院で3回に渡って不同意にするなど、民主党は官僚出身の「天下り・渡りの禁止」に積極的に取り組んできました。谷垣氏が指摘する「約束違反・言行不一致ばかり」で国民の信用が失墜したことは間違いありません。政府は@郵便、郵貯、簡保のサービスを全国で公平に、郵便局で一定的に利用できるようにするA郵貯、簡保のユニバーサル(全国一律)サービスを法的に担保。銀行法、保険事業法に代わる規制を検討――などを閣議決定しましたが、日本郵政が「親方日の丸」的な組織に逆戻りしないよう、国民は目を光らさなければなりません。

首相と小沢氏に微妙なすき間風
 こうした中で、党務を預かる小沢幹事長は前哨戦の神奈川・静岡参院統一補選に2勝したことで、来年7月の参院選に過半数獲得の手応えを感じたらしく、国会対策と選挙対策に没頭。本来は幹事長が立ってエールを送るべき衆院の代表質問を「太鼓叩きはしない」と辞退、予算委日程も衆参3日づつに縮め民主党の質疑も見送るなど、短期決戦の構えです。そして、政府が予算の無駄を洗い出すため「行政刷新会議」内に設置した「事業仕分けチーム」に対し、「40年の経験がある私でも予算書は理解しにくい。勉強会に出席させる新人議員を仕分け人に使うのは困る」とクレームをつけ、来年度予算概算要求についてのヒアリングを中断させました。仕分けチームは国会議員メンバー32人のうち14人を1年生議員に当て、首相が「必殺仕分け人」と期待していましたが、小沢氏と距離を置く仙谷由人行政刷新相は、メンバーを国会議員7人、民間人24人に差し替えることを余儀なくさせられました。このように鳩山政権の二重構造は強まり、首相と小沢氏との間にすきま風が吹き出したため、22日に首相と主要閣僚、幹事長ら党幹部で構成する「政府・民主党首脳会議」を新たに誕生させ、意思の疎通を図ることにしました。外交・防衛を巡る連立3党間の軋轢に加え、政府・与党内の不協和音など政権の弱体ぶりが露呈しつつあります。