第214回(10月16日)補正見直し難航 水産部会長再任
政権交代から1ヶ月が経過しました。鳩山首相が訪米、五輪招致の訪欧、日中韓首脳会談など外交デビューに明け暮れる間に、各閣僚は先陣を争うように政策を発表。百家争鳴の感を呈しています。しかし、各閣僚は政権公約(マニフェスト)をバイブルかコーランのように振りかざし、八ツ場ダム建設中止を地元に押しつけるなどで地方との対立が激化、09年度補正予算の見直し作業も削減目標の3兆円になかなか届かず難航しました。政治主導の目玉とされた司令塔の「国家戦略室」と無駄遣い目付役の「行政刷新会議」の設置が法制化を待たず見切り発車したため、財務省は予算編成の役割が果たせず、来年度予算の年内編成作業も遅れる見通しです。一方、亀井静香金融・郵政担当相が提案した中小企業の借金返済猶予策(モラトリアム)に藤井裕久財務相らが異を唱えるなど連立政権内に確執が生じています。鳩山首相の資金管理団体を巡る虚偽献金問題の捜査に東京地検特捜部が着手したことでも民主党内には動揺が走っています。臨時国会は参院神奈川・静岡選挙区補選直後の26日に召集されますが、問題を多く抱える民主党は、短期国会で切り抜けようと提出法案を絞り込む構えです。このように攻撃材料は豊富にあり、自民党は鳩山政権の弱点を徹底的に追及します。私は総選挙後、2度目の長崎県連会長に就任、党人事では水産部会長に再任されました。皆さんの温かいご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

ダム中止・4車線凍結に反発
「コンクリートから人へ」――。子ども手当、高校無償化などを政権公約に掲げた民主党がよく使うキャッチフレーズは生活第一主義。公約の旗振り役が前原誠司国交相です。前号でも触れたように前原氏は就任早々、群馬県の八ツ場(やんば)ダム、熊本県の川辺川ダムの建設中止と計画段階の全国143カ所のダム事業見直しを宣言、八ツ場、川辺川両ダムを視察しました。これには群馬県や下流の1都5県が強く反対しました。また、補正予算見直しのために全国6区間で予定されていた高速道路4車線化を全面凍結しました。館山道(千葉)、上信越道(長野)、東海北陸道(岐阜)、阪和道(和歌山)、高松道(香川)、長崎道(長崎)の6区間で予算は3255億円です。国交相の諮問機関である国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)が去る4月に着工を決めていますが、前原氏は「費用対効果の厳格な基準を設け、透明性を持った事業選定の仕組みを作る」と述べ、道路改革の第1弾として「国幹会議を廃止し、新たな制度設計を作る」考えを打ち出しました。しかし、事故防止のためにも4車線化は必要です。各自治体は地元負担分を計上した補正予算を議会で可決しており、長崎県も約40億円の県負担分を議決しました。「地方主権」を唱える民主党が、地元には一切説明せずに凍結したため、各地では不満が増大しています。自民党の大島理森幹事長は国会で「凍結あって構想なし」の民主党政策を叩く方針です。

前原国交相、八面六臂の活躍
前原氏は、公的資金による救済を求めた日本航空に対しても、「再建計画の実現性に納得できない」と突き返し、日航の経営再建を指導する専門家チームを設置しました。メンバーは高木新二郎野村証券顧問、冨山和彦経営共創基盤社長ら5人で、うち4人はカネボウ再建などを手掛けた旧産業再生機構に関わってきた事業再生の専門家ばかり。11月末ごろに計画案を提出する予定です。前原氏はさらに、羽田空港を国際的拠点のハブ空港化し、空港整備特別会計を見直す考えを示しています。同特会は航空会社が払う空港使用料や航空機燃料税の1部が主な財源ですが、前原氏は「採算の合わない空港もこの特会によって作られ続けてきた」と強調。こうした地元の陳情や“政治路線”と呼ばれる空港の不採算路線建設が日本航空の経営不振の一因であると指摘しています。沖縄・北方領土担当、宇宙開発担当を兼務する前原氏は、沖縄を訪問し普天間基地移転について独自の見解を述べたり、宇宙関連予算は一元的な財政を行い「日本版NASA」を作り、有人ロケットの開発に踏み込むべきだと発言するなど、元党代表らしく八面六臂の活躍です。若手の長妻昭厚労相も負けじと生活保護1人親世帯の母子加算復活、後期高齢者医療制度の廃止、年金記録問題は4年間で全て照合――などとぶち上げています。だが、後期医療制度を以前の老人保険制度に戻すわけにいかず、さりとて同制度を抜本的に改めると、保険料を徴収する自治体の準備期間が必要になるため、新制度への移行は13年度まで先送りしました。

要求大臣改め査定大臣が督励
首相は9月末、福島瑞穂社民党党首、亀井国民新党代表ら党首脳級による「基本政策閣僚委員会」の初会合を開き麻生前内閣が決めた概算要求基準(シーリング)を廃止し、民主党のマニフェストや連立合意の内容を反映した概算要求を10月15日までに出し直すよう決定、閣議で指示しました。これをもとに本格的な来年度予算の編成作業に入り、年内に政府案を決める方針ですが、行政刷新会議(仙谷由人担当相)は新しい施策の財源に充てるため、12月初旬までに総額3兆円を目標に今年度予算の無駄を洗い出し、来年度予算に反映させようとしています。各省ではマニフェストの実現を至上命題とし、大臣・副大臣・政務官の「政務三役」がスクラムを組んで執行状況など聴取、削り込みを主導しました。首相や藤井財務相は「今までは1円でも多く予算を持ってこいという要求大臣だったが、これからは必要でないものを切る査定大臣だ」と述べ、09年度補正予算14兆6630億円については3兆円削減するよう求めました。だが、仙谷行政刷新相が6日に発表した補正予算の見直し額は2兆5169億円で目標に届かず、鳩山首相は「かなり頑張った数字だと思うが、さらに工夫を呼びかけたい」と各省庁に上積みを督励しました。

見直しはハコモノより人重視
見直しは補正予算のうち緊急性がないと判断した無駄な事業の執行停止や自治体などに自主返納を求めたものです。麻生政権が4月に打ち出した15兆円規模の「経済危機対策」の中には地方自治体などに30基金を創設、既存の16基金も資金を上積みして46基金で約4兆4千億円の基金予算を組みましたが、過半が執行済みになっていて自治体向け基金の自主返納は難しい情勢です。各省庁の執行停止では、国交省の8875億円をトップに農水省4763億円、厚労省4359億円、文科省2814億円、財務省1250億円、総務省973億円の順。最低は環境省の61億円でした。削減トップの前原国交相は「政権交代の意味とは、税金の使い道を変えることだ。ハコモノ重視から人への重視へ、と変えていく」と記者団に胸を張ったそうですが、民主党がマニフェストに掲げた来年度の目玉施策は、子ども手当2・7兆円(来年度は半額、6月から支給)、高校授業料の実質無償化0・5兆円、ガソリン税など暫定税率廃止2・5兆円、高速道路無料化1・1兆円、雇用対策0・5兆円の計7・1兆円です。仙谷氏は行政刷新会議の事務局長に民間シンクタンクの加藤秀樹・構想日本代表(元大蔵省官房企画官)を任命しただけでスタッフも居らず孤軍奮闘していました。だが、同会議の民間主要メンバーとして小沢一郎幹事長に近い稲盛和夫京セラ名誉会長、茂木友三郎キッコーマン会長、片山善博前鳥取県知事、草野忠義元連合事務局長を起用。議長は首相、副議長は仙谷氏、政治家枠に菅直人国家戦略担当相、藤井財務相が加わり、強力な布陣としました。

税収上回る国債発行44兆円
仙谷氏が発表した見直し額の約2・5兆円は補正予算全体の約17%に相当しますが、公約実現には差し引き5兆円近くの財源が必要になり、不足分は赤字国債発行で賄うしかありません。麻生政権は経済危機克服のため、09年度はッ当初予算88.5兆円補正予算14.6兆円をプラスして計103兆円の超大型予算を編成、国債発行額も26兆円に18兆円上積みし、44兆円規模としました。46兆円と見込んだ税収は40兆円に落ち込むと見られ、国債発行額が税収を上回りそうです。平成元年度に254兆円だった国と地方の借金は積もり積もって同21年度は3倍以上の816兆円に達し、これに医療・介護・年金も膨らんで、孫子の代には負担が重くのしかかりそうです。鳩山首相は「来年度の国債発行は極力圧縮したい」と述べていますが、麻生政権が景気刺激のカンフル注射として打った補正予算がズタズタに削減されれば、折角持ち直しかけた景気が再び息切れし、経済の2番底を迎えるのは必至です。経済成長戦略の欠落したバラマキ政策では蛸が足を食い詰める「タコアシ経済」でしかなく、中国に市場を求める大手企業の産業空洞化が進んだり、中小企業の活性化が望めなくなり、雇用問題が深刻化します。失業率は最悪の5・5%に陥りました。内閣官房は予算見直し作業が難航したため、見直しの締め切りを10月中旬まで延期し、誤解を招かぬよう「各省庁が勝手なコメントをするな」と箝口令を敷きました。

ぎくしゃくしたマスコミ関係
報道各社が「予算編成プロセスの公正・透明化という方針に矛盾する」と質したのに対し、平野博文官房長官は「逆に説明して国民に不安を与えることはよろしくない。(各省から)バラバラ出回ると誤解を招くのでその過程は公表すべきでない」と答えました。首相は機嫌よくぶら下がり質問にも気さくに応じていますが、次官会議を取りやめ、官僚のブリーフィングを禁止して「政務三役」主体の記者会見にしました。岡田克也外相はこれまで記者クラブが主催してきた記者会見を不満とし、名刺1枚置けば雑誌記者もフリーランスも会見に出席できるようにしました。官僚の言論を統制する一方、閣僚の会見は自由裁量とするなど情報の発信にちぐはぐな面が出て来たため、政府とマスコミの間にぎくしゃくした関係が生じつつあります。「マスコミとの蜜月関係は100日間」が相場ですが、6日夕刊に朝日が「首相側、架空の税控除75人分手続き」と1面トップの大見出しで報道するなど、政権批判記事が踊るようになりました。首相も身構えて、臨時国会には国家戦略局格上げ設置法案や2次補正予算案などは提出せず、重要法案は亀井金融相の肝煎りの貸し渋り・貸し剥がし対策法案(モラトリアム)、郵政株売却凍結法案、新型インフルエンザ対策法案に限定。40日程度の短期国会で切り抜け、年内は本年度2次補正と来年度予算を連携する15ヶ月予算の編成に力を注ごうとしています。自民党は脱税容疑が絡む首相の虚偽献金問題を冒頭に取り上げるほか、各政策についても徹底的に追及する方針です。