第213回(10月1日)谷垣総裁選出 政権奪回の口火国会
 自民党は9月28日の総裁選で、谷垣禎一元財務相を第24代総裁に選出、党再生に向け出発しました。鳩山由紀夫首相は同21日に訪米、国連の気候変動会合、オバマ米大統領との首脳会談、G20金融サミットなどに出席して外交デビュー。帰国後は09年度補正予算の見直しと10年度予算編成の骨格作りに入ります。民主党は来年の参院選を意識し、10年度からの子ども手当て支給とガソリン税暫定税率の廃止、生活保護母子加算の年内復活など財源無視のバラマキ政策を並べ立てています。10月下旬から開く臨時国会には補正予算の組み替え案などが提案されますが、自民党は谷垣総裁を代表質問のトップに立て論戦を挑み、欺瞞に満ち政策を徹底的に叩き政権奪回の口火を切ります。委員会の正式配属は新執行部が決定しますが、それまで私は衆院の文部科学委員会と災害対策特別委員会に暫定的に配属されました。文科委の在籍が永く続くなら、民主党が総選挙中に日の丸2枚を横に引き裂いて繋ぎ、党旗を作ったことなど国旗掲揚・君が代斉唱問題で日教組的体質を追及したいと思います。さらなるご支援ご叱責を賜るようお願い申し上げます。

ベテランに若手2人が挑戦
 9月18日告示の自民党総裁選は、派閥の会長らベテラン組に支持された当選10回の谷垣元財務相(64)に、若手の当選5回、河野太郎元法務副大臣(46)と同3回、西村康稔前外務政務官の2人が挑む世代間対決の戦いになりました。谷垣氏は所属する我が古賀派の古賀誠元幹事長や青木幹雄前参院議員会長らの重鎮に加え、石破茂前農水相、石原伸晃幹事長代理、小池百合子元防衛相の前回出馬した3氏ら有力者の支持を受けました。河野氏は派閥解消や世代交代を全面に掲げ、所属する麻生派の議員や小泉改革を支持した中堅・若手のほか、派閥主導を批判する中川秀直元幹事長や古賀派離脱を表明した菅義偉選対副委員長らが後押ししました。西村氏は最大派閥・町村派に属し、森喜朗元首相や町村信孝元官房長官も出馬を容認、前回出馬の与謝野馨財務相や鳩山邦夫元総務相の支持も取り付けています。西村氏は正式に出馬表明後、町村派を離脱する考えを示しました。

党員意識し重鎮名指しで攻撃
 日本記者クラブが主催した19日の公開討論会で、「党再生の捨て石になる」決意で出馬した谷垣氏は「衆院議員が100人ちょっとしかいないのだから、全員野球でやるしかない。」と党の結束重視を訴えました。河野氏らの世代交代論に対しては、「適材適所にしないと永遠に与党には戻れない。若い人を積極的に登用し、女性の出番も増やす」と強調しました。これに対し、河野氏は「全員野球には反対だ。悪しき体質を引きずっている人はスタンドで見ればよく、ベンチに入れるべきではない」と森元首相や青木氏ら重鎮を名指しして退場を迫ったほか、最大派閥の町村会長らを念頭に「派閥の親分でありながら、小選挙区で当選されず比例代表で上がった方は、比例の議席を次の順番の若い世代に譲って頂きたい」と挑発。谷垣氏優位で決選投票になったら、中堅・若手候補の2,3位連合を模索する姿勢を示しました。これには西村氏が「河野さんとは政策や手法の違いがある。若手だけでは民主党に対抗できない。老壮青が力を合わせたい」と連携を拒みました。今回は地方票(300)が国会議員票(衛藤征士郎衆院副議長を除く199)を上回るため、河野氏は世代交代の世論を喚起することで、党員投票に重きを置いた戦略に出たものです。

「大きな政府」対「小さな政府」
 各地の討論会や街頭演説でも河野氏が「古い自民党」の切り捨て、「派閥重鎮の排除」を主張すると、谷垣氏は「総選挙敗北の原因は総理大臣を選んだはずの国会議員が排除や区別の議論をして党内で争った(こと)。排除の論理を乗り越えて、みんなで一丸となって自民党を変えていく」と反論するなど、「重鎮排除」と「党内融和」の対決がより鮮明になり、民主党を凌駕すべきはずの政策論争は影を潜めました。総裁選で最も肝心なことは「大きな政府」か「小さな政府」かの過去の政策路線を総括し、再生自民党が志向する新規政策を打ち出すリーダーを選ぶことでした。残念ながら規制緩和の小さな政府に突き進んだ小泉構造改革路線は弱肉強食の格差社会を生み、地方経済が疲弊しました。それを谷垣氏は消費税の増税は恐れず、地方にカネが流れる仕組みを作るよう財政支援策を講じるなど、「小さな政府」を軌道修正する手法を訴えました。谷垣氏が唱える「絆(きずな)」の理念によるものです。これに対し小泉改革派の中川、菅氏らの支持を受けた河野氏は「方向性では官から民へ、中央から地方へという動きは正しかった」と改革路線を評価しました。

党改革し政権奪還の決意表明
 投票の結果、谷垣氏が国会議員票120票、党員票180票、計300票と投票総数の6割を押さえ圧勝しました。河野氏は総数144票、西村氏は同54票でした。谷垣氏は「麻垣康三」と騒がれたポスト小泉の最後の候補。ベテラン勢と党員の過半数の支持を得て2度目の挑戦で念願の総裁に就任しました。谷垣氏は「総選挙は結党以来の大敗だったが,党の改革は待ったなし。『政治は国民のもの』との結党の原点に立ち返り、国民の信頼を勝ち得、政権奪還に向け全身全霊を捧げたい」と挨拶。選挙中に谷垣氏が各地で発信した合い言葉、「みんなでがんばろうぜ!」の檄を飛ばしました。3役人事では幹事長に高村派の大森理森前国対委員長、総務会長に山崎派の田野瀬良太郎元財務副大臣、政調会長に額賀派の石破茂前農水相を起用しました。谷垣氏は誠実で地味なタイプですが弁も立ち、外交、内政課題の山積する臨時国会の代表質問での論戦が期待されます。まず外交では首相訪米がやり玉に上がります。

首相訪米やり玉に国会論戦
 鳩山首相は5日間の訪米で、国連の気候変動会合、オバマ大統領が議長を務める核不拡散・核軍縮の安保理首脳会合、ピッツバーグで開くG20金融サミット、その間にオバマ米、メドベージェフ露両大統領、胡錦濤中国国家主席らとの首脳会談など精力的に日程をこなしました。22日の国連気候変動ハイレベル会合開会式では、20年までの温室効果ガス(CO2)削減の中期目標として「90年比25%削減を目指す」と英語で演説。民主党が公約で掲げた「25%減」が、13年以降の国際的枠組み(ポスト京都)への「国際公約」に格上げされました。これは05年比で30%減となり、6月に麻生前首相が表明した「05年比15%減(90年比8%減)という政府方針を大きく上回る数値です。鳩山政権はこの削減を、米中やインドなど主要排出国のポスト京都議定書への参加を前提としていますが、これに伴う途上国支援策を「鳩山イニシアチブ」と名付け、国内排出量取引の導入も明言しました。だが、国民負担が重くなるのは確実。日本の製鉄、電力業界などが強く反発しており、今後、企業献金問題なども絡み財界との調整が難航しそうです。

普天間、地位協定、給油活動
 米中両国との首脳会談で鳩山氏は「緊密で対等な日米関係」、「東アジア共同体」を提唱しました。欧州連合(EU)を模して、日中韓・東南アジア諸国連合(ASEAN+3)の共同体を創造し、「アジア共通通貨」の創設を目指すもので、不等辺三角形の日米中関係を正三角形に変え、「友愛」を基調にアジア重視の政策に切り替えようとしています。具体的には、普天間基地をはじめ米軍再編計画の見直し、日米地位協定の改定、来年1月に切れるインド洋給油活動を延長しない方針を政権公約(マニフェスト)に掲げ、民・社・国連立政権の合意事項にも取り入れました。しかし、オバマ政権はアフガニスタン情勢をイラク以上に重視しており、給油活動継続への期待感が強く、地位協定も日米だけでなく米韓など多くの国と結んでいて基本的な方針は変えられません。また、普天間基地の移転は、米軍再編が進む前の橋本政権からの懸案で、国際信義上、二度も修正した日米合意を今さら変更することは極めて困難です。国内でも民主党が公約に沿って県外、海外の移転を求めるなら「鳩山氏の選挙区・北海道に持って行け」と皮肉な声が起きているほどです。 

全懸案はオバマ来日で解決
 これに加え、総選挙の終盤に「私の政治哲学」と題する鳩山論文がニューヨーク・タイムズ紙電子版に掲載され、米国流のグローバリズムに鳩山氏が懐疑的姿勢を示したことで疑心暗鬼が生じ、米国内にオーバーなリアクションを起こしました。「核密約問題」で岡田克也外相が「11月末に公表する」と調査に着手したことについて、来日したキャンベル米国務次官補は「米国の文書は過去に公開されている。日米関係に影響を及ぼすことではない」と表向きは問題視しない態度を表明しましたが、この時期の調査が米側をかなり刺激したことは間違いないでしょう。幸い日米首脳会談は短時間に終わり、首相がチェンジ(沿革)の先輩・オバマ大統領に敬意を表し「日米関係が外交の機軸である」との確認と「信頼関係の構築」に重点が置かれ、踏み込んだ協議にいたらず、諸懸案は11月のオバマ大統領来日の際に解決することになりました。給油活動の根拠法であるテロ対策法の延長法案を臨時国会に提案しないなら、オバマ氏来日までに給油活動を止めた場合の代替案を用意しなければなりません。鳩山政権は社民党の要望も入れ、現地の治安状況を睨みつつ、農業、雇用対策、医療、教育、など大規模、多角的な民政支援を行う意向を固めつつあります。しかし、治安悪化は深刻で官・民を問わず人材の派遣はリスクが大きく膨大な費用を伴います。これら外交・安保の課題は臨時国会で与野党攻防の最大争点になります。 

子ども手当など内政課題山積
 外交に限らず内政でも課題は山積しています。鳩山内閣は来年度創設を政権公約に掲げた「子ども手当」(2万6千円)支給、高速道路の無料化、高校授業料の実質無償化などの財源を確保するため、10月2日までに総額約14兆円の09年度補正予算執行の1部見直しを閣議決定しました。10年度に半額支給する子ども手当の必要経費は7・1兆円です。事業見直しに反発していた地方自治体に配慮して、地方自治体向けを除く基金事業(2・2兆円)の10年度以降の執行分を停止するほか、独立行政法人・国立大学法人向けの施設整備事業と官庁の施設整備事業(計6千億円)、官庁の環境対応車(エコカー)と地上デジタルテレビの購入費(計800億円)は停止を基本に見直す――など細かく定め、数値目標は設定しないものの、2〜3兆円以上の確保を目指して10年度予算に反映させる方針です。民主党が「無駄遣いの象徴」と批判してきた「アニメの殿堂」こと国立メディア芸術センターなど「ハコモノ」の新規建設も中止しました。これは官僚が下から予算を積み上げ、閣議で追認する従来の方式と違って、官邸主導のトップダウン型で号令し、官僚の「忠誠心」を競わせて予算を編成する形に改める狙いがあります。 

母子加算復活、八ツ場ダム中止
 しかし、長妻昭厚労相は4月に全廃された生活保護の1人親世帯への母子加算は「年内と言わず、なるべく早めに復活させたい」と明言しましたが、対象は全国で約10万1千世帯あり、10月から復活すれば約90億円の予算が必要になります。また、昨年4月に導入の後期高齢者医療制度も廃止の方針です。これは医療にかかる費用負担割合を明確にするとして、75歳以上を別建てにし財源の1割分を課したことで高齢者が猛反発したため、連立政権合意で「廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する」としたものです。これもまた財源をどのように確保するのか不明です。前原誠司国交相は就任早々、群馬県の八ツ場(やんば)ダムに続いて熊本県の川辺川ダムの中止を明言、さらに建設中または計画段階の全国143カ所のダム事業を見直す考えを示しました。八ツ場ダムは計画段階から57年が経過し総事業費は当初の倍に当たる4600億円の国直轄ダムです。水没予定地の墓場移転や住民の立ち退きが進行中のため、地元は建設中止に強く反対しています。 

材料多い臨時国会は重要緒戦
 下流の1都5県もこれまでに計約1985億円を負担しています。前原国交相は「中止の場合は住民への補償措置が必要になる」と述べるともに「1都5県負担のうち、利水分の1460億円は特定多目的ダム法に沿って全額返還し、返還規定のない治水分の525億円についても返還を検討する」方針を明らかにしました。「公共事業の無駄を省く」「脱官僚依存・政治主導」と言いながら、2千億円近い返還金や補償金を出すなら「これほどの無駄遣いはない」と言えるでしょう。鳩山政権はご祝儀相場の70%台の高支持率に浮かれていますが、各紙世論調査を見ても、@子育ての終わった家庭は増税になるA高速道路無料化は渋滞で温室効果ガスを生むほか、受益者負担の原則に反するBガソリン税の暫定税率廃止は地球温暖化対策税に衣替えする恐れがある――などで国民は政権公約を歓迎してはいません。補正予算組み替えなど攻撃材料豊富な10月の臨時国会は、党再生に結束する健全野党にとって重要な緒戦であり、来年の参院選で失地回復を目指す我々の力量が試される決戦場であります。末筆ながら、自民党へのご声援をお願い申し上げます。