第208回(7月16日)麻生降ろし封じ 8月30日総選挙
 静岡県知事選に続き12日の東京都議選も大敗した首相は13日、自民党内に高まる解散先送り論と麻生降ろしの動きを封じるため衆院解散を決断、与党連絡会議で合意を得ました。21日にも解散、8月18日公示、同30日(大安吉日)投開票の日程です。懸案の臓器移植法改正3案は13日に成立しましたが、都議選大躍進の追い風に乗る民主党は麻生政権の弱体化を印象づけようと同日午後、衆院に内閣不信任案、参院に首相問責決議案を提出しました。この揺さぶりに対し、与党は解散直前まで鳩山由紀夫代表の資金管理団体による虚偽記載問題を徹底追及し、同党首脳の金権体質を暴こうとしています。総選挙は2大政党ががぶり4つで争う初の政権選択選挙。世界同時不況の中で麻生政権が懸命に取り組んできた景気・雇用対策と中長期の政策をマニフェスト(政権公約)に高々と掲げて戦い、国民に正しく理解して頂くと同時に、財源の裏打ちのないばらまき政策を推進する民主党の政権担当能力のなさを浮き彫りにするチャンスです。決戦は50日内に迫りました。限りない自民党へのご支援と、倍旧のご指導、ご鞭撻を切にお願い申し上げます。

都議選結果は総選挙へ大影響
 13日の都議選は民主党が34議席から54議席に伸びて初の都議会第1党になりましたが、共産党の8議席と東京・生活者ネットワークの2議席を足してようやく過半数の64議席に達するわけで、マスコミが「民主圧勝、自民惨敗ショック」――と大見出しで報じるほどのインパクトはありません。しかし、冷静に見れば、民主党が20議席も躍進し、自公両党が勝敗ラインの過半数を維持できなかったことは確かに大敗でした。特に、民主党が@衆院の小選挙区に当たる7つの1人区のうち5選挙区で当選A全42選挙区中16選挙区ある2人区で公認した全員がトップ当選B得票率も約40%と約25%の自民党に大差をつけた――ことは、都議選が総選挙に前哨戦と位置づけられていただけに、小選挙区比例代表並立制の総選挙にはもろに影響すると予想され、与党にとって衝撃は深刻でした。都議選と国政選挙が近接して行われた過去の例では、都議選が国政選挙の「予行演習」、「先行指標」となったケースが多く、89年の都議選でリクルート事件の影響もあり惨敗した結果、社会党が参院選で躍進、土井たか子党首の「マドンナ旋風」が起きています。

麻生降ろし、総裁選の大合唱
 「静岡知事選に続く連敗のまま、衆院選に突っ込むのは集団自殺だ」(鳩山邦夫前総務相)、「政策課題はきちんと決着をつけることが重要だ。その上で解散の決断を」(高村正彦前外相)、「首相は名誉ある、日本の将来を考えた判断をなさると信じる」(中川秀直元幹事長)、「国会閉会後に総裁選をやらないと混乱は避けられない」(武部勤元幹事長)――。自民党内では12日夜、解散先送り論、首相の自発的辞任論、総裁選前倒し論など様々な大合唱が起きました。総裁選の前倒しには、前回戦った与謝野馨財務相、石原伸晃幹事長代理、小池百合子元防衛相に加え、年金問題や郵政人事で知名度を高めた舛添要一厚労相と鳩山前総務相、それに町村信孝前官房長官、谷垣禎一元財務相らの出馬が噂されました。塩崎恭久元官房長官らは同日夜、ホテルで会合し、両院議員総会を開き、都議選敗北の総括が必要だとの認識で一致し、総裁選前倒しの具体案として「各候補が次期衆院選のマニフェスト案を競い合うべきだ」と提唱しました。首相が13日、解散を決断したのは、こうした党内の「麻生降ろし」を封じ、一刻も早く混乱の芽を摘み取ろうとしたものです。

外遊前の首相解散戦略は失敗
 与党は21日の解散まで、14日に衆院を通過した北朝鮮制裁の貨物検査特措法案の成立を目指すとともに、鳩山民主党代表の「個人献金」ならぬ「故人献金」などの虚偽記載問題を暴き立て、同党の金権体質を国民に十分理解してもらう方針です。首相がイタリアサミットに出発する前の7月初旬に描いた解散戦略は、マスコミが指摘したように、不調に終わりました。この戦略は、安倍晋三元首相や菅義偉党選対副委員長らの進言を受け、党役員刷新による政権浮揚をテコに、静岡県知事選、都議選を勝ち抜き、一気に解散に踏み切る――というものでした。麻生降ろしを封じ込める“奇策”としては、イタリアサミット訪問中に同行記者団との「内政懇談」で帰国直後の解散を「予告」することによって、反麻生勢力も地元での選挙運動に散らざるを得ないようにするとの作戦でした。この線に沿って、6月30日の森喜朗元首相のとの会談では、選挙日程に8月2日、9日に加え、長崎原爆忌を避けるため土曜日の8日も候補に挙げたとされます。しかし、党3役刷新には森氏をはじめ派閥領袖の大半が反対して役員人事を断念。奇策についても公明党が「予告なんてあり得ない」と猛反発、首相は内閣記者会に「内政懇を実施しない」との異例の通達を出す始末で、解散戦略はのっけから崩れました。党人事を巡る混乱は内閣支持率の低下や静岡知事選の敗退にも大きな影響を及ぼしました。

伊サミット、日露会談も不首尾
 「経済と外交は得意」と自負する首相は、8〜10日にイタリアのラクイラで開かれたG8サミットに「積極的に議論をリードする」と意気込んで乗り込みましたが、存在感を発揮できず、記念撮影も末席に置かれて目立たず、念願の成果は挙げられませんでした。政治討議で、首相は「北朝鮮が、拉致問題を含む人道上の問題に対する国際社会の懸念に、直ちに取り組むことを要請する」と述べ、そのままG8首脳宣言に盛り込まれたものの、これに同調して発言する他の首脳は居らず、昨年の洞爺湖サミットで議長の福田康夫元首相がリードした地球温暖化対策でも、温室効果ガス削減の長期目標について新興・途上国の歩み寄りを引き出すことは出来ませんでした。日露首脳会談では肝心の北方領土問題で「新たな、独創的で型にはまらないアプローチ」で解決を目指す方針を再確認しましたが、新提案は引き出せずに終わりました。むしろ、メドベージェフ露大統領は別個に開いた記者会見で、「日露間の平和条約締結後に日本に歯舞群島と色丹島の2島を引き渡すとした、56年の日ソ共同宣言をもとに交渉を続けていく」考えを示し、後退姿勢を見せています。
まさに首相は本人が言う「どす黒いまでの孤独」にさいなまれ、内憂外患に陥っています。

波紋描いた東国原知事出馬劇
 こうした中で飛び出したのが東国原英夫宮崎県知事の総選挙出馬騒動です。仕掛け人は古賀誠選対本部長で、「内閣支持率の低迷にあえぐ首相に代わって『選挙の顔』として全国遊説に駆け回れば動員力は計り知れない」と考え、東国原氏や橋下徹大阪府知事らを担ぎ出そうとしたもの。民放テレビの時事放談で野中広務元幹事長は「さすがは古賀さん。目の付け所が違う」と誉めましたが、マスコミは、メディアジャックを狙った「出来レース」と酷評しました。それもそのはず、古賀氏がわざわざ宮崎県庁で出馬要請をした6月23日、東国原知事は「私を次期自民党総裁候補とし、全国知事会の地方分権方針をマニフェスト(選挙公約)に盛り込む」の2条件を提示したからです。窮状打破をタレント知事に頼りたいとしても、「首相のイスが欲しい」と高飛車に言われては古賀氏も答えようがありません。朝日のコラムでは「人々の耳目を集めたいコメディアン的な発言だが、総裁候補になれることは100%ない」、「地鶏やマンゴーを宣伝する、知事の最大武器である『情報発進力』の価値を下げた」と識者はけなしました。各紙の世論調査でも70数%が東国原氏担ぎ出しに反対しており、党内でも「逆に票が逃げる」との批判が高まっています。