第206回(6月16日)鳩山総務相更迭 8月30日投票か
 国会は7月28日まで55日間大幅延長され、総選挙を意識した論戦が激しくなっています。鳩山邦夫総務相と西川善文日本郵政社長の半年間に渡った人事バトルは12日、鳩山氏が事実上、更迭された形で辞任、首相の政権運営に大打撃を与えました。一部に総裁選繰り上げ署名運動が起きるなど、麻生降ろしの火種がくすぶっています。与野党はともに政権公約(マニフェスト)作りに懸命ですが、政府与党は政権公約に反映させ、同時に平成22年度予算編成の骨格となる経済財政改革の基本方針「骨太の方針09」策定に本格的に取り組んでいます。その中では、景気回復と消費増税を両立させるシナリオを責任政党としてどう描くかがポイントです。民主党は財源無視の国民受けする政策を並べ立て、消費増税論議を封印したまま、政府の無駄排除だけを主張しています。自民党は民主党に公開質問状を送り、国会では同党の政権担当能力の無さを徹底追及しています。私はHPの「北村の政治活動」で毎回特集しているように国会答弁に常時駆り出されているほか、年末に向け防衛計画大綱、中期防衛力整備計画の改定に尽力しています。皆様に親しく国政報告する機会がないほど多忙ですが、相変わらぬご指導、ご支援をお願い申し上げます。

8月を7月下旬へ首相巻き返す
 国会の延長幅は7月中旬、同下旬、8月上旬と二転三転しました。首相の総選挙の基本戦略は、8月9日の長崎原爆忌や16日のお盆休みを避け、大安吉日の2日を投開票日にする意向でしたが、難点は解散詔書に署名される天皇陛下が7月3日から17日までカナダ・ハワイを訪問されることです。陛下が留守でも衆院解散は可能ですが過去に例がなく、訪問前に解散するなら、8〜10日のイタリア・サミットや12日の都議選が解散中となり、ダブリ都議選には公明党が反対します。そこで、延長最終日の解散を想定して延長は7月18日までの45日間に止める方針でした。しかし、民主党の代表選で鳩山由紀夫代表への世論の期待が高まったのに加え、鳩山VS西川の「鳩の乱」で内閣支持率が低下、自公両党内では「解散は出来るだけ先送り」との空気が広がり、5月末の自公両党幹事長の協議では8月上旬までの60日間以上の大幅延長で一致しました。そうなると9月10日の衆院議員任期満了期日に近づき、首相の解散権が封じられる恐れもあり、首相は大田昭宏公明党代表と密かに会い、「7月28日までの55日間」に巻き返しました。これにより会期末に解散、8月30日(大安吉日)か9月6日の投開票が有力視されています。

審議引き延ばさず問責決議案
会期の大幅延長に対し、民主党は重要法案の審議引き延ばしはしないで早期解散を迫り、首相が応じない場合は「解散から逃げる首相」を印象づける方針です。4日には09年度補正予算関連の政策投資銀行法、銀行株式保有制限法、商工組合中央金庫法の3改正案を衆院通過させました。税制関連法案も6月末には参院で否決し、与党が衆院で再可決するのに合わせ首相問責決議案を参院に提出し、野党の過半数で可決すれば、その後は審議拒否に転じ「空白国会」を演出する構えです。同党は1日、企業団体献金の3年後全面禁止と政治団体の「世襲」制限を柱とする政治資金規正法改正案を提出、「政治とカネ」で与党との違いを示そうとし、与党の政策を「選挙目当てのばらまき予算」と批判。2500人が天下っている独立行政法人4500団体の12兆円予算を無駄の標本として解体を迫っています。これに対し、与党は民主党提出の政治資金規制法改正案審議に合わせ、同法違反容疑で秘書が起訴された小沢一郎前代表の参考人招致を求めることを検討、無駄の排除では同党に公開質問状を出しました。中身は「独立行政法人は国民生活金融公庫,国際協力銀行などへの財政融資金貸付4兆円や日本学生支援機構への奨学金などが含まれ、本来の政府機関が行革で特殊法人に姿を変えた」とし、無駄でないことを強調しています。

西郷隆盛の心境で総務相辞任
「今の政治は正しいことを言っても認められないことがある。西郷隆盛が征韓論で潔く政府を離れた。私も政府、内閣を去ることに躊躇しない」――。鳩山総務相は12日、西郷隆盛が「政府に尋問の筋これあり」と抗議して政府を去り、「西南の役」で反旗を翻し自刃した心境に喩え、記者会見で辞任の弁を述べました。鳩山氏は10日前の3日、記者団に「私に認可権限がある。認可はしない」「政治家の言葉は重い。私は信念を曲げることはしない」と述べ、首相に解任されることも覚悟で西川日本郵政社長の続投を認めない考えを強調していました。首相は3日夕、「鳩山総務相は所管大臣、株主は財務大臣、人事のあれ(協議)をやるのが官房長官。その3者で話し合うということだ。『たら』『れば』と言った仮定の話はしないよ」と記者団を煙に巻いていました。首相は当初、経営改善策を徹底させるなどの条件付きで西川氏を続投させる方向で軟着陸を目指し、12日午前に官邸で鳩山氏と会談した際も、西川氏の謝罪などを条件に続投を受け入れるよう求めましたが、「義」を重んじる鳩山氏は「謝罪するのは私にではなく、国民に対してだ」と西川氏の続投を拒否、同日午後、自らの辞表を提出、受理されました。最終局面では渡辺恒雄・読売新聞グループ会長が「喧嘩両成敗で双方辞任」を進言したり、安倍晋三元首相も動いたようですが、人事バトルでは自民党内の5,60人が鳩山氏を激励。小泉構造改革派は「民間会社の日本郵政を政治がひっくり返すべきでない」(中川秀直元幹事長)、「1閣僚が民間人事を言うのは好ましくない」(石原伸晃幹事長代理)と鳩山氏を批判するなど党内は騒然とし、総選挙前に首相の求心力は低下し、リーダーシップの欠落が心配されていました。

郵政文化否定と鳩山総務相
 半年に渡り揉め続けた日本郵政社長の更迭劇の発端は、鳩山総務相が1月6日、「オリックス不動産への『かんぽの宿』一括売却は出来レースで不正義だ」と怒った反対表明です。その後も「李下に冠を正さず、瓜田に履を入れずだ」「錬金術みたいで典型的な土地転がし。濡れ手で粟の専門家がいたと思う」と激しく宮内オリックス社長と西川社長を批判しました。鳩山氏は「郵政記念日」の4月20日、帝国ホテルの記念式典で、「かんぽの宿を不良債権とするのは、郵政文化を根本から否定することだ。加入者の福祉施設は企業社員の厚生施設と同じ発想だった。日本が心と心の結びつきを持った国である証明だ」と挨拶、民間流経営に偏る西川日本郵政社長を批判しました。民営化後の昨年から記念式典には政治家や郵政OBも招かなくなりましたが、顧客だけ招待するバンカー的経営手法は同社内でも評判が悪いようです。西川氏を後押しする竹中平蔵元総務相はかんぽの宿について@1年に40億円も赤字を出した不良債権A2400億円の資産を100億円で売るのが問題ではなく100億円の評価施設に2400億円も投じたことが問題B売却価格が低いのは「雇用維持」を決めた国会決議があるからだC「競争入札」に疑義を差し挟む余地はないD民営化企業の経営判断に政治介入するのは根本的な誤り――と弁護しました。

平成の尾去沢銅山私物化事件
これには、亀井静香国民新党代表代行が「かんぽの宿は天網恢々疎にして漏らさずだ。小泉・竹中路線がブッシュ=ネオコンの言うなりに郵政事業を民営化した。平成の官有物払い下げ事件を断固糾弾!」と怒り、稲村公望元郵政公社常務理事が「明治の開拓史官有物払い下げ事件よりも、長州出身の井上馨・大蔵大輔が職権乱用して尾去沢銅山を差し押さえ、私物化した事件に近い」と雑誌「月刊日本」3月号で解説しました。野党3党の共同追及チームも「国民の財産を私物化した」と追及、鳩山総務相は「かんぽの宿」売却問題の立入検査をした結果、16項目の問題点を暴き出しました。社長再任の許認可権を持つ鳩山総務相には民営化見直し推進の野党三党が、西川社長には民営化元祖の小泉元首相と竹中平蔵、菅義偉両元総務相コンビや財界が、それぞれ応援団となって展開され、バトルは凄まじいものでした。鳩山氏は不透明な入札手続きが明らかになった以上、トップの辞任は当然と考え、国会で西川氏の経営責任を度々言明。水面下では郵便局会社の社外取締役の井上修一NTT東日本シニアアドバイザーらを後任に充てようとし、首相も一時は後継人事を奥田碩前経団連会長に相談するなど調整に動きました。さらに、障害者団体向け郵便料割引制度の悪用事件が発覚し、鳩山氏の西川氏に対する不信感は頂点に達しました。

鳩山兄弟連携で政界再編狙う
 しかし、西川氏は小泉、竹中両氏に三顧の礼で招かれ、菅元総務相が発令した人事です。官邸には「政治によるいちゃもん的介入」(竹中氏)、「民間にお願いして来て貰ったから、クビには出来ない」(菅氏)、「続投を認めないと政局になる」(小泉氏)など抗議の電話が殺到、鳩山、菅両氏の側近議員対立に首相も苦慮したようです。そうした中、日本郵政の「指名委員会」(牛尾治朗委員長)は西川氏の続投支持を決め、6月29日の株主総会での再任が決定。「かんぽの宿」の再建計画も提出する運びとなりました。三月期連結決算の純利益がNTTグループに次ぐ復調ぶりだったことも手伝い、西川社長は続投に意欲を燃やしました。しかし、民主、社民、国民新の「かんぽの宿」共同追及チーム(原口一博座長=民主)はオリックス不動産への売却を巡る一連の手続きなどが「特別背任未遂罪」にあたるとして、西川社長を東京地検に刑事告発しました。与党内には西川氏の更迭が国民に「改革後退」の批判を招くとの懸念があります。一方、鳩山氏の強硬姿勢の背景には郵政票をつなぎ止め次期総裁選へ出馬する思惑や、西川氏続投のまま閣僚を辞任した以上は、離党して総選挙の結果次第では鳩山兄弟連携の政界再編を狙う、との囁きが漏れ始めています。町村信孝前官房長官、森元首相ら町村派幹部の会合では「1政権で3閣僚が辞任すれば3アウトチェンジで内閣改造だ」と総選挙前の内閣改造論が早々と出されていました。

臨時国会召集し10月総選挙
鳩山氏は過去3回の総裁選で続けて麻生氏の選対本部長を務め、派閥横断で麻生氏を支える「太郎会」の会長。その論功行賞で総務相ポストを得た、まさに首相の盟友です。それだけに総務相辞任に続き、総選挙間際の改造に発展すれば、政権へ与える打撃は計り知れないものがあります。鳩山氏は新進党、民主党結成に参加し、都知事選に出馬・敗退して自民党に復党した「永遠の政界再編論者」。所属する津島派では自らの元秘書の5議員を引き連れ「派中派」の会合を持つなど、離党しなければ次期総裁選に意欲を燃やしていることは間違いありません。郵政人事バトルの火種がくすぶる中で町村派の山本拓衆院議員が2日、9月総裁選の前倒しを実現するための署名活動を始め、「麻生降ろし」の発火点になる可能性も出てきました。首相周辺ではほとぼり冷ましに「衆院議員任期満了数日前に臨時国会を召集し、冒頭解散すれば10月18日投開票も可能」との解散先送りのウルトラCが囁かれています。そんな事態は国民の政治不信を高めるばかりで看過出来ません。

障害者郵便料金悪用で逮捕続出
郵政では障害者団体に適用される郵便料金割引制度を悪用してDMを1億6千万通も郵送、通常との差額211億円をだまし取る事件が起き、郵政社員や厚労省職員、大手家電量販店員ら14人が続々と逮捕されました。郵政を取り巻く環境は梅雨空のようにグルーミーです。民営化と同時に組織がたるんで不正を見過ごし、「かんぽの宿」事件が起きたとしたら経営陣の責任は重大です。自民党は郵政古来の「ユニバーサルサービス」を支援しますが、民営化後に乱れかけた郵政社内のコンプライアンス(法令遵守)の確立とコーポレート・ガバナンス(企業統治)の徹底に向けて、経営陣は褌を締めて取り組むことが期待されます。福田赳夫元首相が生前愛用した、宮崎市の「シーガイヤホテル」は禿げたか・ファンドの犠牲になって安く転売され、全国2千施設に4千億円を投じた厚生年金の「グリーンピア」も「かんぽの宿」一括売却構想と同じく100億円程度で売却されました。鳩山氏が指摘するように「かんぽの宿」は歴史も古く、各地で愛好会が出来るほど愛されてきた簡保加入者、つまり国民の共有財産です。

かんぽの宿再興し地域振興貢献
内需拡大に観光振興が叫ばれ、ディズニーランド、テーマパーク、アウトレットなど人工的なハードツーリズムより、温泉、農村、エコ、寺社仏閣など旧来型のソフトツーリズムが再評価される時代。居酒屋チェーンや介護施設まで手を広げ実績を挙げている「和民」の経営者に頼んで経営ノウハウを吸収するなどして、今こそ再建に乗り出すべき時です。我々政治家も地元郵便局と協力し、地域振興に強く貢献したいと考えています。