第204回(5月16日)補正予算衆院通過 争点に世襲制限
民主党の小沢一郎代表が辞任するなど、政局は激変しています。その中で、15・4兆円という過去最大の09年度補正予算案は13日に衆院を通過、1カ月後に自然成立の運びとなりました。総選挙に影響をもたらすかに見えた新型の豚インフルエンザは幸いにも拡散せず、不況下のゴールデンウィークも“善政”の高速料金値下げが功を奏し、列島各地で大変な賑わいを見せました。首相は4月末の訪中、訪欧に次いで11日に来日したプーチン露首相との首脳会談で原子力・シベリア開発協力などを進展させ、一連の外交日程を無事こなしました。首相は目下、減税など予算関連法案の処理に全力を挙げていますが、民主党が審議を引き延ばす場合、直ちに解散・総選挙を断行する構えです。6月3日の会期末が迫れば、会期を大幅に延長して重要法案はすべて成立させる方針です。内閣支持率も30%台に回復しており、首相は政局運営に満を持して取り組んでいます。与野党とも選挙公約作りに懸命ですが、政治資金問題と絡み「世襲制限」が争点に浮上してきました。私は防衛副大臣として海賊対処法案の参院審議でも相変わらず委員会答弁に駆り出されていますが、大過なく務めを果たせるよう、皆様のご指導ご支援を切にお願い申し上げます。

対決姿勢取らず「安全運転」
09年度補正予算案の国会論戦は4月28日、衆参両院の各党代表質問で蓋を開けましたが、西松事件で国民の批判にさらされた民主党の小沢一郎代表は野党のトップに立つことが出来ず、鳩山由紀夫幹事長が代わって攻撃を仕掛けました。鳩山氏は「1段目は飛ばずに失敗、2段目はタイミングが遅れて墜落、今年度当初予算は燃料切れで目標に届かず、今回の補正予算は方向性が狂って暴発だ。子育て手当も民主党の政策をサルまねした、その場しのぎの場当たりで、似て非なるもの」と、首相が自慢する景気対策の4段ロケットに対し、皮肉たっぷりに悪態をつきました。これらの野党攻勢に対し、首相は「景気の底割れを絶対に防ぎ、雇用を確保し、未来の成長力強化に繋がる」と経済効果を強調、「規模は大きなものだが、時宜を得た時限的なもので、バラマキの批判は当たらない」と反論しました。首相はことさら対決姿勢は示さず、失言予防に用意された原稿を淡々と読み上げ、「安全運転」に終始しました。このため、衆院予算委は連休明けの7日から集中審議を展開、13日の同委と衆院本会議で可決後参院に送付。今後の参院では補正関連法案、国民年金法改正案、消費者庁設置法案、海賊行為対処法案など重要法案の攻防に移りました。

政権交代達成に身を捨てる
補正予算案が順調に衆院を通過したのは、小沢民主党代表が13日に予定された党首討論を嫌って、ついに「辞任カード」を切ったからです。小沢氏は11日夕、突如記者会見を開き、「総選挙の必勝と政権交代の実現に向け、挙党一致体制をより強固にするため、敢えてこの身をなげうつことにした」と辞意を表明しました。公設第1秘書が西松建設からの違法献金事件で3月に起訴されて以来、世論調査では国民の6、7割が小沢氏の続投に反対、同党内でも辞任論が収まらず、渡部恒三、藤井裕久両最高顧問がともに小沢氏辞任の環境づくりを進める動きを示し、小沢氏と距離を置く前原誠司副代表や仙谷由人元政調会長らが進退問題で早期の決断を要求していました。小沢氏は「政治資金について1点のやましいところもないが、政権交代の大目標を達成するために身を捨て、必ず総選挙を勝利する。私の覚悟、決断はその1点にあり、連休中、熟慮を重ねて結論に達した」と訴えました。だが、ゼネコンから巨額の政治献金を受け取る金権体質についての釈明は一切なく、与党幹部、閣僚や他の野党から「説明責任を果たしていない」との批判が続出しました。新代表を選出する16日の両院議員総会では、“親小沢”の鳩山幹事長と“非小沢”で若手が待望する岡田克也氏元代表の一騎打ちとなりますが、接戦の展開になりそうです。

フリーハンド解散の姿勢強調
首相は外遊先のチェコで3日夜、同行記者団に対し、連休明けの国会について「09年度補正予算並びに関連法案の成立が優先順位の1番」と重ねて強調、民主党が抵抗する場合は「色々なことを考えないといけない」と述べ、国会会期の大幅延長を示唆しました。延長幅に絡む解散時期について首相は「選挙(に向けて)一生懸命やっている人なら(解散は)来月でも8月でもいい」と指摘、7月12日の都議選に近い日程を避けたいとする公明党の意向については「衆院選と都議選と、どちらを優先するかと言われたら衆議院だ」と語りました。民主党が採決に応じない場合は補正関連法案が未成立でも解散で対抗する可能性に言及、同党を牽制しています。これら一連の発言は、フリーハンドで臨む姿勢を強調したものです。こうした中、各党の間では次期衆院選の政権公約(マニフェスト)作りが活発化してきました。その中で脚光を浴びているのが世襲制限論議です。民主党の小沢代表の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件を契機に企業・団体献金の是非が問われ、「世襲政治家が有利な条件で選挙を戦えるのは不公平」との論議が高まりました。

世襲政治家に反発強まる
選挙の3基盤である地盤(後援会組織)、看板(知名度)、カバン(資金力)を親族の政治家から譲り受ける候補者は、有利に選挙が戦え、地元活動に割く時間が少なくて済み、新人の頃から政策立案に取り組めます。後援会も若年で当選でき当選回数を重ねる後継者に、地元への利益還元を期待するようになります。しかし、従来の中選挙区制と違って小選挙区制では他の優秀な人材が立候補する妨げになり、「派遣切り」など雇用不安が続く中では庶民生活の苦しみを知らず、生まれながら将来が約束される世襲政治家に対する反発は強まっています。まして、体調不良や国会運営に行き詰まり「政権を投げ出し」た安倍晋三、福田康夫両首相や一頃は失言を多発した首相に対し、世襲政治家の資質を問う世間の目は厳しくなりました。加えて民主党が提案する企業・団体献金の全面禁止ということになれば、政界の登竜門は地盤を持つ世襲政治家、知名度のある芸能人、資金豊かな闇成金に限られ、地方議員や官僚OB、マスコミ、労組出身者にはますます狭き門となります。

政府与党の要職に世襲12人
小泉、安倍、福田、麻生とここ4代続いた首相、河野洋平衆院、江田五月参院の現両議長の親や祖父が国会議員を務めたことは皆さんご承知の通りです。首相は明治の元勲・大久保利通、竹内綱、吉田茂、麻生太賀吉と4代続いた名門政治の家系。2、3世議員の現職閣僚は中曽根弘文外相、鳩山邦夫総務相、森英介法相、金子一義国土交通相、石破茂農水相、浜田靖一防衛相、塩谷立文科相、野田聖子消費者担当相、小渕優子少子化担当相と首相を含め10人、党3役の細田博之幹事長、保利耕輔政調会長も2世です。読売新聞の調べだと自民党の世襲議員は107人で党所属衆院議員(303人)の3分の1を超えます。伯父など親族・姻族を加えると120人(37%)に達します。民主党も小沢代表、鳩山由紀夫幹事長、横路孝弘副代表、松本剛明前政調会長、赤松宏隆、小平忠正、松野頼久、小宮山泰子各氏ら衆院議員111人中16人、親族・姻族を含むと20人を数えます。

同一選挙区から連続出馬規制
民主党の鳩山幹事長も、和夫衆院議長、一郎首相、威一郎外相と4代続く国会議員で、邦夫総務相は実弟ですが、親の選挙区を継いでいないせいか、4月23日に「わが党は政権公約に世襲禁止か制限を盛り込みたい。自民党は世襲議員が多いので、相当な混乱が予想される」と規制を表明、岡田副代表も地方公演で「世襲は日本の民主主義を弱めている。世襲を求めない民主党、認めるべきだという自民党と違いが出ている」と訴えました。そして、同党は小沢代表の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件で傷ついた党の負のイメージを払拭する狙いから、同27日の政治改革推進本部(本部長・岡田副代表)の総会で、国会議員の子や配偶者ら3親等以内の親族が同一選挙区から連続して立候補することを禁止する「世襲制限」を決めました。また、5年以内に企業・団体の政治献金とパーティ券購入を全面的に禁止する方針を決定、資金管理団体の代表者を3親等以内の親族に引き継ぐことを禁止する政治資金規正法改正案を今国会に提出することを確認しました。

民主案に2世閣僚一斉に反発
民主党の世襲制限案に対し、2世議員の閣僚たちは同24日、閣議後の記者会見で一斉に反発しました。鳩山総務相は「私も兄も『超』のつく世襲政治家だが、(民主党案のように)自分たちは(世襲でも立候補して)いいが、後は駄目というのは愚の骨頂だ。小沢代表も鳩山幹事長も麻生首相も鳩山邦夫も出るな、としないと中途半端だ」と批判、中曽根外相も「私は2世だが、世襲じゃない。父(康弘元首相)と18年間、衆参で議員を重ねてやっている」と語り、石破農水相、浜田防衛相、野田消費者相も民主党案に疑問を呈しました。自民党内で世襲制限に最も意欲を見せているのが菅義偉選挙対策副委員長です。秋田県から高卒で神奈川県に集団就職、働きながら大学を卒業し、国会議員秘書、横浜市議などを経て衆院議院になった苦労人だけに「党の体質が国民に嫌われている。民主党がやるのに自民がやらなかったら選挙で勝てない」とテレビ番組で発言し、「同じ選挙区内での親族候補の出馬は、次の次ぎから制限する」世襲制限の具体策を考える100〜200人規模の議連「新しい政治を拓く会」(仮称)を21日に発足させようと動いています。

領袖・幹部クラスも2世多数
菅氏に対し、国会議員4代目の小坂憲次衆院議運委員長は4月17日の党役員連絡会で、「私は世襲制の権化みたいなものだ。世襲に害があるなら、我々も害があることになる。世襲禁止を決めるなら、それなりの覚悟を決める」と、噛みつきました。憲法22条の「職業選択の自由」もあり菅氏の案には反発が強く、同27日の役員会では、当初浮かんでいた選挙公約作成委員会プロジェクトチーム(PT)の座長に菅氏が就任する案は消えて、メンバーの互選で選ぶことになりました。PTメンバーは10数人ですが、菅氏のほか、いずれも2世議員の石原伸晃幹事長代理、園田博之政調会長代理、船田元総務会長代理、それに村田吉隆国会対策筆頭副委員長ら各部門のナンバー2クラスが中心です。伊吹文明元財務相は7日の伊吹派総会で「(制限は)憲法上難しいので、特権を剥奪したらいい」として、「子や孫などにそのまま政党支部や資金管理団体のお金を継承することを禁止し、政党に寄付する仕組み」の導入を提案しました。

世襲制限巡る党内調整は難航
古賀誠選挙対策委員長も衛星放送番組で、同一選挙区での世襲候補禁止などを議論すべきだと、選対女房役の菅副委員長の肩を持ちました。だが、派閥領袖でも高村正彦前外相は「(中国の)ケ小平は『黒い猫でも白い猫でもネズミを捕る猫が良い猫だ』といった。2世だろうが、たたき上げだろうが、国民のためになる政治家は良い政治家だ」と述べ、町村信孝前官房長官も記者団に「もっと重要なことがいっぱいある」と語り、世襲制限の議論そのものに否定的考えを示しました。高村、町村氏や谷垣禎一元政調会長ら領袖クラスも2世議員であることから異論が多く、世襲制限を巡る党内調整は難航が予想されます。