第199回(3月1日)麻生降ろし再燃 小泉の乱・中川辞任
09年度予算案が27日に衆院を通過、年度内成立が確定したため、国会の攻防は新局面を迎えました。首相は窮屈な審議日程の合間、18日の日ロ、24日の日米両首脳会談をこなし一定の成果を挙げました。しかし、首相の郵政発言を巡る「小泉の乱」、中川昭一財務・金融相の「もうろう会見」による引責辞任など政府与党は激震に見舞われています。「小泉の乱」で息を吹き返した中川秀直元幹事長ら「上げ潮派」が構造改革議連を立ち上げるなど、一部では「麻生降ろし」が強まり、再び党内亀裂が拡大しつつあります。一方、昨年10−12月期のGDPの実質経済成長率は12・7%減と35年前の石油ショックに次ぐワーストを記録。経済危機は深刻で、20−30兆円規模の補正予算編成に取り組まねばなりません。米国の上下両院は13日、野党共和党の一部も協力して過去最大の約7870億ドル(約72兆円)規模の景気対策法案を1日で可決しました。日本では衆院通過した第2次補正予算案が1ヶ月以上経っても野党の抵抗でまだ成立していません。解散時期は依然不透明ですが、麻痺状態のねじれ国会を解消するためにも次の総選挙は極めて重要です。自民党に対する皆さんの厚いご支援とご鞭撻を切にお願い申し上げます。

小泉氏「怒るより笑い呆れる」
 「怒ると言うより笑っちゃうくらい、ただただ、呆れている」――。首相の「郵政民営化には反対だったが、内閣の1員なので賛成した」との軽率発言に頭にきたのが小泉元首相。小泉氏は12日、議連「郵政民営化を堅持し推進する集い」が開いた役員会でこのように痛烈に批判、久々に小泉節を炸裂させました。首相が軽率発言に次いで9日、「変人、奇人が…」と追い打ちを掛けて小泉氏の民営化をけなしたことに怒って逆襲したものです。
「総理や執行部の方針に批判的な意見を述べれば『後ろから鉄砲撃つな』って抑え込みがあるが、総理が前からこれから戦おうとしている人たちに鉄砲を撃ってんじゃないか。…ねじれ国会はそんなに悪いことではない。お互いが納得できる案を協議してもいいんじゃないか。総理は定額給付金に『さもしい』とか言っているが、私は3分の2を使っても成立させなければならないとは思わない。…(麻生総理のように)『あの時賛成したけども、実はそうではなかった』とは言いたくない。政治に一番大事なのは信頼感だ。特に総理の発言を信じなければ、選挙は戦えない」と皮肉たっぷりの大演説。小泉チルドレンの小野次郎氏や世耕弘成参院議員がブログで首相批判した文書を首相に送りつけ「こういう意見をよーく読んどいてくれ!」と直接電話したことも紹介し、本気で怒りをぶっつけました。

300議席の財産使わせない
役員会には中川秀直、武部勤両元幹事長、石原伸晃幹事長代理、小池百合子元防衛相ら18人が出席しましたが、08年度2次補正の関連法案が参院で否決され、衆院の3分の2以上で再可決する場合、与党の16人が造反すれば成立できず、給付金は支給できなくなります。小泉氏は「民営化は構造改革の本丸」として捨て身で「郵政選挙」を断行、300議席を獲得した郵政民営化生みの親です。小泉氏は18日、訪問中のモスクワ市内で記者会見し、定額給付金について「2兆円の税金を使うんだったら、ほかにも違う方法がある。給付金の法案を成立させることには若干異論がある。与党は3分の2の多数の力を借りるのが当然と言う考え方があるが、そのよって立つ原点をよく考えていただきたい」と述べ、衆院再議決には欠席して棄権すると明言しました。これは小泉氏が「圧勝した300議席の財産は、麻生内閣の延命には使わせない」と宣言したようなものです。自民党内では小泉氏に共感する声も少なくないですが、小泉チルドレンを率いる武部氏は給付金には賛成すると明言しており、造反者は少ないと見られます。採決に棄権した場合、党執行部は「元総理であっても処分する」と述べ、最低でも「戒告処分」は免れないようです。

中川氏ら構造改革議連発足へ
小泉発言は、「消費税政局」が終息し、派閥人事で降格の憂き目に遭って、攻め手を失いつつあった中川氏ら反麻生勢力にとっては息を吹き返す瞬間でもあったようです。中川氏は翌日夕、神奈川県川崎市の会合で、「小泉さんはすごいことを言った。“純ちゃん講話”として日本の発展の転換点になると思う」と称え、「改革をしっかり進める勢力が必要だ」とし、09年度予算が衆院を通過した後、構造改革を旗印とした新たな議員連盟を発足させる考えを示しました。自民党各派の総会でも首相批判が噴出、「麻生降ろし」が再燃の兆しにあります。それに輪を掛けたのが、もう1人の中川氏の「もうろう会見」です。14日にローマで開いた主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)後に、酩酊していたような状態で記者会見した中川昭一財務・金融相は「風邪薬の過度の症状でああいう状態になった。罷免されない限り大事な時期なので職責を全うしたい」と記者団に語り、衆院財務金融委で「乾杯のワインをたしなむ程度に口にちょっと含んだだけ」と釈明しましたが、野党から国辱者との猛烈な批判を浴びて17日に引責辞任しました。

ふらふら酩酊内閣と野党攻撃
中川氏は前から酒のトラブルが多く、会見では隣席の白川方明日銀総裁のコップの水を飲もうと手を伸ばしたり、ろれつの回らぬ状態が何度もテレビの大写しで世界にも放映されたため、「世界第2位の経済大国の舵取り役が無能な酔っぱらいのようだった」(英タイムズ紙)と多くの海外メディアからも酷評され、野党は「ふらふら酩酊内閣」と激しく攻撃しました。中川氏は16日、首相から1度は続投を言い渡されましたが、野党の辞任要求は日を追って強まるばかりで、中川氏は審議ストップを懸念し、17日昼の緊急記者会見で「予算や関連法案が衆院を通過したら私自身のけじめとして、直ちに辞任したい」と国民に謝罪しました。それでも野党は中川氏の即時辞任を要求、財務相問責決議案を提出したため、同日夜、再度記者会見し辞任しました。後任は与謝野馨経済財政相が兼務しました。中川氏は「もうろう会見」の約15分後にバチカン博物館を観光した際、触ることが禁じられている貴重な美術品に素手で触ったり立ち入り制限場所に入って警報が鳴るなど破廉恥行為も重ねていることが分かり、国会では首相の任命責任が厳しく問われました。

マイナス成長は先進国中最大
首相の長年の盟友で重要閣僚を務めていた中川氏の辞任だけに反響は大きく、各紙の内閣支持率は14%を切る危険水域に落ち込み、自民党内では「麻生氏の看板」では選挙が戦えないとして首相と2ショットのポスターを貼り替える動きが強まっています。そこへきて、内閣府が16日に発表した08年10―12月期の国内総生産(GDP)速報によると、実質GDPは前期比3・3%減、年率換算では12・7%に落ち込み、第1次石油危機の74年1―3月期(13・1%)以来、2度目のワースト記録となりました。米国の3・8%減(後に5%台へ下方修正)、欧州ユーロ圏の5・7%減と比べても落ち込み幅は遙かに大きく、GDPがざっと500兆円とすれば、そのうち約60兆円が消えたことになります。政府は「リーマンズショックの震源地・米国や欧州に比べれば日本の傷は浅い」と見ていましたが、主要国で最も打撃を受けていたのは日本と分かりました。「蜂が刺した程度」と評していた与謝野経済財政相は、「戦後最悪、最大の危機」と言い直しています。

濡れ手に粟のかんぽの宿転売
急激に悪化したマイナス成長の最大要因は、自動車、家電製品など輸出に頼り過ぎていた経済構造がもろくも崩れ、設備投資や雇用の急減な削減を招き、消費が冷え込み金融も収縮しているからです。セーフティネットは不十分で失業対策は最大の課題。公共事業など財政出動により国内需要を喚起することが肝心で、予算成立後に30兆円規模の追加景気対策が必要になっています。そうしたなかで、財界総理こと御手洗富士夫経団連会長と同郷で家族ぐるみの仲だった会社社長がキャノンの工場建設をめぐる30億円の脱税事件で逮捕されました。かんぽの宿を巡っては、野党議員が「旧日本郵政公社時代に安く売却された178件のうち、121件が早くも転売されて間に立った業者が巨額の転売益を得ている」と追及しました。これに対し鳩山邦夫総務相は「1千円が4000万円になる時代。そういう錬金術みたいなものが世の中に存在したら、本当に教育上良くない。典型的な土地転がしだ。濡れ手で粟の専門家がいたと思うと非常に腹が立つ」と述べ転売の実態調査を確約しました。企業倫理の荒廃は経済危機の猛吹雪と相まって日本を襲っています。

得意外交で政権浮揚の反転攻勢
こうしたなかで首相は外交に力を注ぎ、日帰りで18日に訪ねたロシア・サハリンでのメドベージェフ大統領との日露首脳会談では、領土交渉の加速で一致、ロシアの石油・天然ガス供給の新エネルギー戦略を日本の技術と資本で支える経済協力も確約しました。オバマ大統領から世界首脳のトップを切って招かれた24日の日米首脳会談では、世界的な経済危機に共同対処し日米同盟強化で合意。アフガンの平和構築でも協力を確認、米国の高速鉄道計画に新幹線技術で協力する意向も伝えました。首相就任以来、中国の胡錦濤国家主席とは2度会談し、福岡で日中韓首脳会談を開くなど、得意の外交で党内の「麻生降ろし」に反転攻勢を強め、政権浮揚のきっかけを掴もうとしています。しかし、党内の8派閥領袖の会合でも「首相を支えるのは予算成立までが暗黙の合意」にされたと言われ、「麻生離れ」が目立ってきました。マスコミも「総裁選の前倒し」や「与野党話し合いによる選挙管理内閣」などを盛んに書き立て、麻生政権を崖っぷちに追い詰めています。