第198回(2月16日)予算年度内成立へ またも郵政政局
 09年度当初予算を巡る衆院予算委の攻防は3日から本格化し、与野党がエース級の論客を質問に立て、定額給付金、消費税、道路財源問題などで火花を散らしました。16日には公聴会を開き、20日頃には衆院通過を目指すなど審議は順調で、年度内成立が有望になってきました。08年度第2次補正関連法案も9日から参院で審議入りし,3月半ばの「60日ルール」適用を待たず、今月内に採決が行われる見通しが強まっています。しかし、麻生首相が「郵政民営化には反対だったが、内閣の一員なので賛成した」との軽率発言をしたため、「かんぽの宿」騒動が郵政民営化見直し論議にも波及。自民党内の対立を再燃させ、国会はまたも「郵政政局」の様相を深めてきました。民主党は「渡りに船」とばかり、後半国会では@かんぽの宿A民営化見直しB雇用C天下り・渡り5消費税――の五点セットで攻勢を掛け、早期解散・総選挙に追い込もうとしています。首相も補正・当初の両予算が年度内に成立し、総額75兆円の経済対策が効果を発揮する頃合いを見計らって伝家の宝刀を抜く構えです。4月上旬解散、大安吉日の同月26日総選挙説も浮上しており、解散風は再び強まってきました。何とぞご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

解散・道路で「やるやる詐欺」批判
 「衆院選も道路特定財源の一般財源化も『やるやる』といってやらない。“やるやる詐欺”の常習犯だ」(前原誠司民主党副代表)、「詐欺というのは犯罪者扱いだ。『間違っちゃいませんか』程度の話にして頂かないと。お互いに言葉はある程度抑えてしゃべらんといかん」(首相)――。4日の衆院予算委に民主党は菅直人代表代行、「消えた年金」追及の永妻昭政調会長代理ら論客を立て追及しましたが、前原氏とはこんな応酬で一時紛糾しました。「衆院選に勝って天命を果たす」と総裁選後に宣言した首相は、昨年10月末の所信表明演説で12回も民主党を名指しで批判、文春十一月号では早期解散を決意表明したため、民主党は08年度1次補正の成立に協力しましたが、世界同時不況に見舞われると、首相は「政局より経済解決」と早期解散を見送りました。「1兆円を地方に回す」と表明して始まった道路特定財源は、1兆円規模の「地域活力基盤創設交付金」を創設する形で決着しましたが、交付金の使途の8割が道路建設に充てられることに同党の中堅、若手が「骨抜き」と反発しています。前川発言は首相のブレを「やるやる詐欺」と批判したわけです。

郵政票狙いリップサービス
 「民営化された以上、儲からないシステムでは駄目だ。今のシステムで儲かりますか。3年後、5年後と、きちんと運営して、黒字になって貰わないといけない。今4つに分断した形が、本当に効率としていいのかどうか、もう一回見直すべき時に来ているのではないか。3年で見直すとか、5年で見直すとか言っているから、十分に見直しておかしくないんじゃないかと申し上げている」――。首相は翌5日の衆院予算委で民主党議員に対する答弁で問題発言をしました。ここまでの答弁なら、郵政民営化から間もなく1年半。郵政民営化法には見直し規定があって、政府の委員会が3月末に報告書をまとめる手はずであり、首相は「不都合な点があれば手直しするのは当然」と4社体制見直しに前向き姿勢を示したまで、といえます。度重なる失言、ブレ発言などで内閣支持率が急降下した首相は、道路特定財源の一般財源化や天下り・渡りの公務員改革、さらには「消費税政局」に発展しかけた消費税増税問題など、党内で起きた相次ぐ抗争の火消しに振り回されていた首相にしてみれば、選挙を意識して全国郵便局長会の郵政票への期待感から、リップサービスするのも無理からぬところ。ところが後の発言が党内批判の的になりました。

信念貫かない首相の資質問う
 「郵政民営化、小泉総理の下に、(私は)賛成じゃなかったので、解散の詔書にサインしないとかいって、えらい騒ぎになった。しかし、私は内閣の1員だから、最終的に賛成した。みんな勘違いしているが、(私は)郵政民営化の担当大臣ではなく総務大臣だった。民営化担当は、私は反対だと分かったので、私だけ外され、担当大臣は竹中さんだった。濡れ衣を被されると、俺も甚だ面白くないから…」――首相が総務相当時、民営化に慎重だったのは事実ですが、小泉政権とは一蓮托生で、発足時は党政調会長として03年4月の日本郵政公社発足を見守り、総務相当時に郵政民営化法が成立。その後も外相で小泉内閣の枢要ポストを歴任。「郵政選挙」で圧勝した300議席の遺産で“ねじれ国会”をどうやら乗りきり、自民政権の命脈を辛うじて保っています。「元々反対だったけど、閣僚だから解散に賛成したって?それを言っちゃおしまいよ」――。朝日新聞によると、自民党幹部は答弁の翌日、民営化反対だった当時の島村宣伸農水相が解散の署名を拒否して、小泉首相に罷免された例を引き合いに、信念を貫かず、“濡れ衣”と抗弁する首相を揶揄し、閣僚の1人も「答弁が出た瞬間、唖然とした。信念を貫けず、ブレたことを、敢えて話す必要があるのか。政治家としての資質に関わる」と首を傾げたといいいます。

かんぽ、民営化で解散迫る野党
 小泉政権の幹事長として民営化の旗を振った武部勤改革実行本部長は役員連絡会で「今(見直し)協議をやっている時に、何で寝た子を起こすようなことを言うのか。郵政票狙いのパーフォーマンスだ」と批判、細田博之幹事長は「法に基づく見直しは(首相に関係なく)党作業部会が検討していく課題だ」と応じ、記者会見でも「半官半民を維持するようなことは絶対ない」と民営化の後退にクギを刺しました。ともあれ、予算案審議が軌道に乗り、第2次補正と当初予算成立の展望が開けた時の首相の「民営化見直し」発言は、政府与党内に大きな波紋を描きました。麻生政権支持派と小泉元首相の上げ潮派で分裂の危機にあった最大派閥の町村派は亀裂がようやく修復した矢先の首相“軽率発言”に失望、他派閥でも発言の軽さに唖然とし首相資質を問う声が高まっています。逆に野党は勢いづき、利権絡みの「かんぽの宿」売却問題と、その根源となった郵政民営化に対する首相の姿勢を徹底追及することで衆院解散・総選挙に追い込もうとしている。

亀井氏が総務相を首相に担ぐ
 しかし、閣僚の間では鳩山邦夫総務相が「郵便事業会社と郵便局会社が別の方がいいのか、やっぱり一緒の方がより便利なのではないか、という議論は当然出てくる」と述べ、両社の統合問題を焦点に大胆に見直す姿勢を示し、かつて造反組の野田聖子消費者相も「見直しは法律に明記されており、当然やるべきだ」と経営形態見直しに賛成の姿勢を示しました。これを喜んだのが国民新党の亀井静香代表代行。6日の民主党との定例協議の冒頭、鳩山由紀夫幹事長に、「貴方の弟さん、しっかりしているねえ。超党派で首相に担ぐか」とべた褒め。鳩山総務相は民営化見直しに前向きなうえ、国民新党が反対する、保養宿泊施設「かんぽの宿」の一括売却に異を唱えているからです。日本郵政(西川善文社長)は昨年末、「かんぽの宿」の70施設と9宿舎をオリックス不動産(宮内義彦会長)へ一括譲渡すると発表しました。評価は141億円で負債を差し引いた価値は93億円ですが、2度の競争入札でオリックスへの譲渡額は約109億円でした。不動産価格が低落したとはいえ、2400億円を投じて建設した施設の譲渡額が24分の1とはあまりにも低価格です。

出来レース、李下に冠・桑田に靴
 「宮内氏は総合規制改革会議の議長をやり、郵政民営化の議論もそこで随分やられた。そこへ一括譲渡となると、国民は『出来レース』ではないかと受け取る可能性がある」――。鳩山総務相は年明け早々の記者会見でこう切り出し、「李下に冠を正さず、桑田に靴を入れずだ。私は市場原理主義者では全くない。宮内氏とは考え方が違う」と鳩山氏は述べ、一括譲渡見直しを唱えました。宮内氏は小泉内閣で同議長など規制改革関連の審議会長を10年も務め、小泉元首相や竹中平蔵元総務相らが主導した構造改革の旗振り役を演じてきました。「優勝劣敗」の市場原理主義の信奉者で神戸生まれ関学大出身。奈良生まれの西川日本郵政社長は奈良生まれの阪大出身で三井住友銀行の頭取を務め、「最終バンカー」と呼ばれた元全銀協会長です。2人とも関西財界の重鎮で、親交が厚いと言われています。西川社長は6日の衆院予算委で、「総務相の認可が得られないと契約更新が出来ない。白紙撤回もあり得る」と述べ、当面は40億円の赤字を覚悟のうえ、経営を維持しながら見直しに取り組む考えを示しました。野党の三党の国会議員は1月末、年間5万6千人が宿泊している温泉付き保養施設「ラフレさいたま」を視察しましたが、ラフレは00年に新築・開業した建設費300億円の豪華物件で、“不当廉売”に驚きの声を上げていました。

景気刺激に政府紙幣発行論
 野党3党はプロジェクトチームを作って、調査に乗り出しましたが、郵政民営化見直しに絡めて「かんぽの宿」で政府を徹底追及する姿勢です。自民党内では総選挙後の政界再編を睨んだ渡辺喜美元行革相の離党、古賀・麻生両派の「大宏池会」復活構想、中堅・若手議員集団の「反麻生」の動き、これとは逆に町村派内で麻生政権を揺さぶる中川元幹事長の降格人事による最大派閥の亀裂修復などがあり、マグマが沸々と煮えたぎっています。せっかく予算の年度内成立の視界が広がったものの、再び「かんぽの宿」、首相の軽率発言など新たな火種がくすぶり、官邸の調整力不足に不満が高まっています。後藤田正晴官房長官という名参謀に恵まれた中曽根康弘元首相は8日の民放テレビで「麻生はお友達内閣で、安倍、福田と同様、弁慶のいない牛若丸だ。祖父・吉田茂には直言する白洲次郎という侍の側近がいてマッカーサーを叱るなど堂々と進駐軍と対決し、吉田に講和条約の演説を日本語でやらせたのに」と揶揄しました。こうした中で、首相の盟友の一人である我が古賀派の菅義偉元総務相は党内の閉塞感打破と景気刺激のために、第二次大戦中に流通した政府紙幣の再発行や、相続税を免除する代わりに無利子とする国債を発行して、高齢者のタンス預金を内需に向けようと「政府紙幣発行の準備議連」(仮称)を発足させました。だが、伊吹文明元幹事長が「マリファナの危険がある」と批判し、「円天のネット貨幣か軍票と同じ」、「通貨への信認が低下しインフレを招く」などすこぶる評判が悪いようです。