第194回(12月16日)予算編成に全力 再編のうごめき
 臨時国会の最大懸案である金融機能強化法改正案と新テロ特措法改正案が12日の衆院本会議で再可決・成立したため、再延長の越年国会はなくなり、政府与党は第2次補正と09年度本予算の編成に全力を挙げています。暮れから春にかけて深刻化する非正規労働者らの追加雇用対策は既に確定。予算編成の基本方針では世界的な金融危機に対処し、小泉政権以来の財政再建路線を事実上転換し、景気回復を最優先に取り組んでいます。野党は5日と10日の衆参両院予算委員会で第2次補正予算案の今国会提出を見送った麻生首相を厳しく批判、民主党が多くの法案を提出するなど対決姿勢を強めました。マスコミが相次ぐ首相の失言、発言のブレ(迷走)、読み間違いなどのバッシングを続け「麻生政権は失速気味」などと企画で取り上げるせいか、内閣支持率が急降下。与党内では解散への危機感が高まり、総選挙後の政界再編を意識したうごめきが始まりました。最も党の団結が必要な時に困った現象です。これを見て民主党代表が「麻生退陣を前提に全党参加の連立政権を作れ」と揺さぶりをかけるなど「場外乱闘」も盛んですが、私は防衛副大臣として国土防衛、危機管理の予算編成に打ち込んでいます。温かいご支援をお願い申し上げます。

半年で非正規失職者3万人
世界的な金融危機は雇用を直撃しました。来春卒業予定の大学生や高校生のうち、11月25日現在で87社、331人が採用内定を取り消され、厚生労働省の調査では10月から半年間に職を失う非正規労働者は3万人に達する見通しです。首相は1日に日本経団連など経済団体に雇用の維持を求めましたが、驚くことに、3日後の4日には御手洗冨士夫経団連会長が会長を務めるキャノンと、岡村正日本商工会議所会頭が会長を務める東芝が人員削減を発表。ソニーも9日、全世界で1万6千人の人員整理を発表するなど大手が続々とリストラを断行しました。雇用情勢の急激な悪化が社会問題化しています。与党の「新雇用対策に関するプロジェクトチーム(PT)」は5日、追加雇用対策をまとめました。PT座長の川崎二郎元厚生労働相は「失業率が6%くらいになった時、165万人の失業者が新たに出るかも知れないとの考え方でまとめた。今回の不況は5年前の不況より深い。国が財政出動をきちんとやるというメッセージを強く出すことが大事だ」と述べています。

2兆円規模の追加雇用対策
追加対策は今後3年間で2兆円規模の事業費を投入し、雇用の確保策や新規創出策により140万人の雇用の下支えを目指しています。財源は雇用保険料の事業主の積立金である雇用安定資金と一般財源から各1兆円を確保し、雇用創出に向けて過去最大規模となる4000億円の基金を設定します。一般財源分の1500億円は年明けの通常国会に提出する08年度第2次補正予算案に計上し、残りの8500億円は情勢を踏まえて順次支出します。具体的には@派遣社員を正規社員として採用した企業に1人当たり100万円(大企業は半額)を支給する雇用維持対策A地方自治体が職を失った非正規労働者や中高年者に一時的な就業機会を作る制度を創設するほか、雇用保険制度を見直し非正規労働者の適用範囲を拡大して受給資格を緩和するなど再就職支援対策Bハローワークに相談窓口を設置し悪質な場合は企業名を公表するなど内定取り消し対策――の3本柱からなっています。

小泉財政再建路線を転換
政府は12月3日の臨時閣議で、09年度予算編成の基本方針を決定しました。焦点は福田前政権が決めた7月の概算要求基準(シーリング)の公共事業費3%削減などの財政再建目標をどこまで踏襲するかにありましたが、これまでの「堅持」から「維持」に表現を弱め、景気の一層の悪化に備え、「果断な対応を機動的かつ弾力的に行う」と明記して柔軟に財政出動する考えを示しました。これは自民党総務会が「財政再建の方向を定めた06年度の『骨太の方針』を3年程度凍結する」よう首相に申し入れたことが反映されたもので、小泉政権以来の財政再建路線を事実上転換し、景気回復を優先する姿勢を打ち出したものです。これにより、「骨太の方針」の社会保障費の自然増を5年間2200億円ずつ抑制する方針は見直され、公共事業費は上積みされ、11年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する財政再建目標は前年度の「確実に達成する」から「達成すべく努力する」との表現に改められ、単なる「努力目標」に後退しました。

シーリング巡り党内で激論
3日午前の同党政務調査会全体会議では、「ボロボロになっても財政規律の旗は守るべきだ」と首相に進言した園田博之政調会長代理が、シーリングの必要性を指摘したのに対し、尾身幸次元財務相は「片方で定額給付金をやっておいて、何で(公共事業費の)マイナス3%を続けないといけないのか。それで自民党が選挙で勝てるわけがない」と反発し、米国初の金融危機で経済状況が変わった以上、シーリングにこだわるべきでないと主張するなど、激論が交わされました。公共事業と社会保障の削減目標は、小泉構造改革路線の象徴であり、中川秀直元幹事長に代表される「上げ潮派」にとっては、「改革逆行と受け止められて、有権者の批判を受けかねない」との懸念がありました。しかし、首相は国際金融危機を「100年に1度の経済危機」、「全治3年の大不況」と位置づけ、積極的な財政出動を主張してきました。間近に総選挙を迎える党内でも、公共事業、社会保障、雇用対策など財政支出の拡大を求める声が高まっています。

国庫負担引き上げに埋蔵金
首相は、首相が使い道を決定する総額3300億円規模の「重要課題推進枠」の総額を拡大して、公共事業や社会保障関連予算を重点的に配分する方針です。だが、景気低迷が続き、今年度予算で見込んだ約54兆円の税収は、6〜7兆円不足する見通しにあり、財源の不足分は赤字国債の増発で賄うしかありません。来年度予算も同じ傾向が続くと見られ、国債発行額は2年連続30兆円を超す可能性が高まっています。社会保障費2200億円抑制方針については、たばこ税引き上げなどで財源を確保し、抑制額の圧縮に充てることも検討されましたが、タバコ農家や日本たばこ産業(JT)などが反発しており、党税制調査会でも「増税しても売り上げが落ちるので、税収増は見込めない」との冷めた見方があって結局、断念しました。09年度から基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げるために必要な約2兆3000億円の確保策については、消費税率の引き上げ案が有力でしたが、与党税制調査会は「2010年代半ばまでに行う」との表現にとどめ、引き上げ時期の明示は見送り、財政投融資特別会計の金利変動準備金(埋蔵金)から充てる案などが検討されています。政府は12日、総額23兆円規模の追加景気対策「生活防衛のための緊急対策」を発表しました。10月30日に発表した総事業費27兆円の「生活対策」に続くもので、単純計算では50兆円を超えますが、重複部分を差し引くと追加景気対策の総事業費は40兆円半ばの規模に拡大される見通しです。

小沢氏超大連立で与党揺する
予算編成が進む中で“場外乱闘”も活発化してきました。民主党の小沢一郎代表が党首討論を終えた11月28日夜、党幹部との会食で「あんな調子じゃ、麻生君は通常国会持たないな。自公で4人目の総理を出すのはおかしいだろう。麻生退陣を前提に、全党参加の選挙管理内閣を作れば良い。超大連立だ」と発言しています。首相は2日昼、記者団に聞かれ、「選挙管理?意図が分からないから答えようがない」と首を傾げましたが、細田博之幹事長はすかさず記者会見で「昨年、それ(大連立)を実行していれば、いろんな事があったかも知れないが、『またか』という感じだ」と指摘。笹川堯総務会長も「選挙の前に連立と言うことは、国民の権利を侵害することになる」と批判しました。細田発言は小沢氏が昨年11月、当時の福田康夫首相に「大連立」を持ちかけ、民主党内の反対で頓挫した経緯を皮肉ったものです。小沢氏の「超大連立発言」は、「自民党の反麻生の動きがどこまで本物か見極めるための揺さぶりだ」と小沢氏周辺は見ている、と読売は報じています。

中川氏ら郵政民営化堅持の会
確かに、首相のブレ発言による“迷走”や失言で麻生内閣の支持率が50%台から半分の25%以下へ急落し、党内の中堅・若手に動揺が広がっているのは事実です。そうした中で中川元幹事長を中心とする「上げ潮派」が9日、60人を集めて「郵政民営化を堅持し推進する集い」の初会合を開き、小泉純一郎元首相が「3年前の(郵政)選挙がどういう選挙だったか、もう一度思い起こして貰いたい。不可解な行動をしている方々は『郵政民営化反対は間違っていた』と誓約書まで書いて復党したことを忘れてほしくない」と挨拶しました。これは11日の衆院本会議で、野党3党が提出、昨年に参院を通過していた郵政民営化凍結・見直し法案の採決で、自民の「郵政造反組」が再度造反する動きを予想し、牽制したものです。初会合では郵政民営化の根幹である『4分社化』『金融2社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)の将来の完全民営化』を堅持する方針を確認しました。

中堅・若手が反麻生勢力結集
さらに11日には、中川氏が音頭を取る議連の「生活安心保障勉強会」(中川会長)が設立準備会を開き、中川氏に近い小池百合子元防衛相、首相批判を強める渡辺喜美元行革相、塩崎恭久元官房長官ら中堅・若手57人が参加しました。麻生首相に近い安倍晋三元首相も出席しています。勉強会は社会保障制度改革を看板に掲げ、「あくまで政局ではなく政策を論ずるための集まりだ」と関係者は述べていますが、中川氏が自民、民主両党の改革派勢力結集を持論としているだけに、党内では「反麻生勢力」の結集との観測も出ています。特に渡辺氏は、無派閥であるのをいいことに、テレビに出ずっぱりで、「解散もしない、マニフェストも持たず、発言がブレ、首相に求心力がなくなった」と首相批判の急先鋒に立ち、“頭の体操“と断りながら、「自民、民主両党が分裂し、理念と政策の一致した政治勢力の結集が望ましい」と政界再編に意欲を示し、党内から「渡辺を総選挙の公認から外せ」との反発が起きています。

ニューYKKKの新党構想も
別働隊と見られ、11月に発足した「速やかな政策実現を求める有志議員の会」は渡辺、塩崎両氏、安倍内閣の世耕弘成総理補佐官(参院)、茂木敏充前行革相ら中堅・若手24人で結成、野党と同様に第2次補正予算案の今国会提出を首相に申し入れました。9日の2回目会合には2倍の48人が参加、今後は@天下り是正など公務員制度改革A中央省庁の無駄遣い排除――など構造改革の政策提言を活発に行っていく構えです。一方、先の総裁選に意欲を見せた棚橋泰文元科技相、山本一太参院議員ら中堅・若手も「道路特定財源の一般財源化を抜本的に進める会」結成の声を上げています。このほか総選挙後の政界再編を予想し、首相の政権運営に批判的な加藤紘一元幹事長が主催する超党派の「ラーの会」は「リベラル」「アジア外交重視」などをキーワードに民主党などとの接点を探っていると言われ、加藤氏、山崎拓元副総裁、亀井静香国民新党、菅直人民主党の両代表代行の「ニューYKKK」による新党構想などが、マスコミの間で囁かれています。

思惑捨て予算に全力投球を
こうした党内のぎくしゃくした動きに対し森喜朗元首相は11月末、兵庫県洲本市の講演で「どうして自分たちで選んでわずか2ヶ月の総裁をしっかり守っていこうという気持ちにならないのか。自民でなく自分党の発言だ。そんなにテレビに出たければお笑いタレントになればよい」と不快感を露わにしました。古賀誠選対委員長も11日の古賀派総会で、「後ろから鉄砲玉を撃つことだけは絶対にないように。これが一番支持率を下げる。選対委委員長として恥ずかしい」と語りました。もっともな発言です。金融危機よりも党の危機が増大している折に政権の遠心力をそそる行動は厳に慎むべきです。構造改革路線堅持の「上げ潮派」、混迷政権から距離を置こうとする「麻生離脱派」など会合の思惑は同床異夢のようですが、国民生活防衛のため党は予算編成に全力投球しなければなりません。