第190回(10月16日)政治決戦近し 11・23投票か
 08年度補正予算と関連法案が17日に成立、新テロ対策特措法改正案の成立にも民主党が協力する姿勢を示したため、政局は「10月下旬衆院解散―11月中・下旬総選挙」の有無に絞られてきました。
 麻生首相はまず、米国発の金融不安に備えた大型の追加景気対策を発表、24日―25日の外交日程をこなした後、27日の週にも衆院を解散、11月23日か、30日投開票とする意向を固めた模様です。
 しかし、自民党が最近実施した各選挙区の情勢調査は厳しく、「こんな経済情勢で解散するのは好ましくない」として総選挙を年明けに先送りする声が強まっています。民主党が突如、補正予算に賛成しインド洋上の給油活動を容認したのは、景気が悪化する中で抵抗し国民に悪印象を与えるのは得策でないと考えたことと、米大統領選の結果が同党の戦いにプラスになるとの判断に立ち、自民党内で高まった解散先送り論を封じ込めようとしたものです。
 世界の金融不安、国内景気の動向次第で年内解散が見送りとなる流動的要素もありますが、総選挙に向け早くもデスマッチの様相です。皆様の一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

多様ケース想定し3党綱引き
 総選挙の日程を巡る与野党の駆け引きは、創価学会の組織固めの関係から11月2日の投開票日を主張する公明党。11月4日の米大統領選前で優勢のオバマ民主党が勝利すれば、同じ政党名にあやかって勝てると期待し同9日を主張する民主党。米国発の金融不安、汚染米騒動、年金改ざん問題など予期せぬ難題が続出したため、冒頭解散を断念し政治空白が生じないよう08年度補正予算成立後を主張する自民党――の3党が綱引きを演じました。特に補正予算案は衆院通過後1ヶ月経てば自然承認されますが、予算関連法案やテロ特措法改正案などが参院で審議引き延ばしに遭えば、60日の「否決見なし規定」により衆院3分の2の多数決で再可決しなければなりません。そこで、自民党は野党が審議を引き延ばす場合は「景気対策の足を引っ張る野党」と批判し即時解散するか、参院で否決すれば2ヶ月後の衆院再可決という2段構えを取らざるを得ず、クリスマス選挙か年明け選挙、場合によっては来年の通常国会冒頭の解散まで、多くのケースを想定していました。

外交日程の前後に解散決断か
 ところが、選挙が先送りされると選挙事務所など選挙資金に不安が生じるのはむしろ民主党の方で、突如、懸案処理の協力に戦術を逆転換。事実上の「話し合い解散」の様相を深めてきました。麻生政権もインド洋上での海自の給油活動を継続して国際信用を高め、国際金融危機に対処する内需拡大など本格的な追加経済対策を掲げ総選挙に臨むことができます。公明党も早期解散なら、創価学会を提訴している矢野絢也元公明党委員長の証人喚問を避けられます。首相は24,25両日に北京で開くアジア欧州会議(ASEM)と11月の22,23両日にペルーで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席を希望しており、ASEMから帰国後の27日の週に解散を決断すれば、大安吉日の11月23日(勤労感謝の日)か30日の投開票が可能です。24日は振替休日で3連休となりますが、連休中日の投票は無党派層が行楽に向かうため、組織政党の与党には有利です。しかし、党内には麻生政権がお祝儀相場の割に内閣支持率が低く、株価暴落が続くなど景気の先行きに不安が増大しているため、日増しに年内解散アレルギーが高まっています。首相の所信表明に対する3日からの衆参の代表質問と、6日からの衆参両院予算委での補正予算案審議は、与野党双方が対決姿勢をむき出しにして、激しい論戦を展開しました。

「臣茂」彷彿の型破り所信表明
 「わたくし麻生太郎、かしこくも、御名御璽を頂き、第92代内閣総理大臣に就任いたしました。……この言葉よ、届けと念じます。ともすれば、元気を失いがちなお年寄り、若者、いや全国民の皆さん方のもとに」――。10月29日の首相所信表明演説は祖父・吉田茂の「臣茂」を彷彿とさせ、終始一貫、型破りで通しました。「総理の職務に一身を擲って邁進する。日本は強く、明るくなければならない。変化を乗りきり、大きく脱皮する日本人の底力を信じて疑わない」と決意を表明した後、「国会運営について申し上げる」と切り出し、民主党を12回も名指しして攻撃しました。「先の国会で民主党は税制法案を参院で2ヶ月も店晒しにし、政局を第一義とし、国民生活を第二義、第三義とする姿勢に終始した」「民主党の抵抗によって、一ヶ月分穴が空いた地方道路財源を補填する関連法案を速やかに成立させる必要がある」「民主党に合意形成のルールを打ち立てる用意はあるのか」「日米同盟と国連と、両者をどう優先劣後させようとするか。民主党には国民と世界に明確にする責任がある」――。所信表明と言うより民主党を挑発しつつ、お役所言葉や格言、故事来歴などを引用せず平易な言葉でお年寄りにも分かるよう語りかけました。

民主党に対応迫る「果たし状」
 首相は補正予算案とその関連法案、消費者庁設置法案、新テロ対策特措法改正案に対する賛否など今国会の焦点である諸問題について民主党の対応を明確化するよう迫るとともに、与野党協議も呼びかけたものです。この“果たし状”に対し、民主党の渡部恒三最高顧問は「中身は何もないな。『政権は民主党になる』と言う意味で、民主党に質問したんだと思う」と痛烈に批判、鳩山由紀夫幹事長も「小沢首相に対する麻生さんの代表質問という感じ。予行演習をしたのではないか」と皮肉り、小沢一郎民主党代表は1日の代表質問で、「1年足らずの間に2人続けて政権を投げ出した自民党の総裁が、総選挙も経ないで3度、首相の座に坐っているのは信じがたい光景だ。与党が政権を担う能力を失ったならば、直ちに野党に政権を渡し、総選挙を行うのが議会制民主主義の筋道だ。……演説で首相が野党に質問するのも39年間の議員生活で初の経験だ。私の所信を答弁としたい」と一矢報いました。小沢氏は政権に就けば@最低賃金の全国平均を時給1千円に引き上げA1人当たり月額2万6千円の子供手当を中学卒業まで支給B農業の個別所得補償制度の創設――などを段階的に実現する工程表を示した政権公約(マニフェスト)の骨格を示しました。

民主党、5本柱で予算委追及
 民主党は@年金記録改ざん・記録漏れ問題A農薬などに汚染された事故米B後期高齢者医療制度C金融危機D政教分離や閣僚の事務所費など疑惑追及――の5本柱で予算案審議に臨んでいます。とりわけ記録改ざんについて、鳩山由紀夫幹事長は「厚生労働省か社会保険庁の幹部が拘わっていたことは間違いない。全ての幹部職員から事情を聴取し、国の責任で被害救済に当たらねばならない」と述べ、年金問題を深く追及してきた長妻昭政調会長代理を6日の衆院予算委の質問トップバッターに立てました。これに対し、自民党の世耕弘成参院議員ら若手衆参議員約100人は、民主党攻勢に対抗意識を燃やし、衆院選の政権公約(マニフェスト)に@国家公務員の職務怠慢に対して「信賞必罰」で臨むための法律・制度の整備A国会議員や有識者による「社会保障制度改革国民会議」の設置――を盛り込むよう、名簿を添えて園田博之政調会長代理に申し入れました。

2兆円超の追加景気対策発表
 首相は9日、自公両党の政調会長を呼び、金融危機に伴う株価下落などの追加景気対策として「内需拡大や為替変動による産業界、国民生活への影響を考え、政策をまとめるよう」指示しました。追加対策は、公明党が求める定額減税のほか、@証券優遇税制拡充A企業の設備投資を促す減税B住宅ローン減税の延長・拡充――などが柱で、08年度補正予算(総額1兆8080億円)を上回る2兆円超となる見通しです。首相は慎重ですが、保利耕輔政調会長は「赤字国債発行も場合によってはやむを得ない」と、首相に伝えたことを明らかにしています。追加対策はASEMへの出発前にも発表される予定です。首相が月刊文春11月号に寄せた手記には、「私は決断した。国会の冒頭、堂々と私とわが自民党の政策を小沢代表にぶつけ、その賛否をただしたうえ、国民に信を問う。野党は政局優先の姿勢だ。……小沢代表よ、堂々の闘いをしようではないか。公約の正しさを2大政党が正面から競い、選挙後に国会で智恵を集約して国民的な政策合意を達成することが我々政治家に課せられた最大の共通の責務だ」と呼びかけています。さあ国民はどのような審判を下すでしょうか。決戦は目前です。