第189回(10月1日)天下分け目の決戦へ 麻生政権誕生
麻生政権が発足し、天下分け目の解散・総選挙に突入します。自民党の5候補による総裁選はサッカーで言えば総選挙前半戦のハーフ。オープンな政策論争に燃えた総裁選は、テレビの露出度も高く、国民に厳しい環境下での経済認識と政権党に対する期待感を一層高めました。野党は「自民の表紙を替えても中身は変わらない」などと口惜しがっていますが、総選挙本番の後半戦はこれから。原油の値下がりで諸物価高騰には一応歯止めがかかり、内閣支持率は上々です。この勢いに乗り自民党は「安心実現の総合対策」をマニフェスト(選挙公約)に掲げ、本番の後半戦を戦います。だが、悪質業者による汚染米の転売が食の不安を増大させ、政府のチェック機能が厳しく問われています。米国4位の証券会社リーマン・ブラザーズの破綻も世界の金融不安を招きました。305議席の現状維持は難しいとしても、単純過半数の241議席を目指し、自民党は一丸となって戦う態勢を固めています。どうかご支援下さい。なお、選挙戦に突入すれば公選法の規定に触れる恐れもあるので、その間のメッセーは中断させて頂きます。悪しからずご了承下さい。

圧勝し「勝って天命果たす」
「まるでパン食い競争のようだ」と塩爺こと塩川正十郎元財務相がテレビ番組で冷やかしたように、9月22日の総裁選には多数の候補が参戦し、熱気をはらみました。財政出動で景気浮揚を図る「積極財政派」の麻生太郎幹事長、消費税10%への引き上げもやむなしとする「財政再建派」の与謝野馨経済財政相、歳出削減と経済成長で小泉改革路線を継承する「上げ潮派」の小池百合子元防衛相、同じ改革路線で政策新人類と呼ばれた若手の石原伸晃元政調会長、外交・防衛政策重視の石破茂前防衛相の5氏。それに加えて、若手の棚橋泰文元科技担当相、河野太郎衆院議員、山本一太参院議員の3氏が一時は出馬の意欲を燃やしましたが、推薦者20人が得られず断念しました。結果は「選挙の顔」として当初から本命視されていた麻生氏が第1回投票で地方票、国会議員票を合わせ全体の67%を獲得し圧勝、第23代総裁に選ばれました。麻生新総裁は両院議員総会で「衆院選に勝って初めて天命を果たすことになる」と決意を表明、幹事長には細田博之幹事長代理を昇格させ、他の3役や大島理森国対委員長は続投させました。

対立候補も処遇し挙党態勢
24日召集の第170臨時国会で、第92代、59人目の首相に指名された麻生氏は直ちに組閣本部に入り、官房長官に河村建夫元文科相(伊吹派)、財金一体化の財務相兼金融相に中川昭一元政調会長(同派)、行革相に甘利明前経産相(山崎派)、国交相に中山成彬元文科相(町村派)、総務相に鳩山邦夫前法相(津島派)農水相に石破茂前防衛相(同)を起用、新人では防衛相に浜田靖一元防衛副長官(無派閥)、少子化相に小渕優子元文科政務官(津島派)、法相に森英介元厚労副大臣(麻生派)、国家公安委員長に佐藤勉元総務副長官(古賀派)、文科相に塩谷立官房副長官(町村派)の5人を抜擢、二階俊博経産相(二階派)、与謝野馨経済財政相(無派閥)、舛添要一厚労相(同)、野田聖子消費者相(同)斉藤鉄夫環境相(公明党)を再任しました。このように閣僚には総裁選で麻生氏を支援した伊吹、津島派や勝利に貢献した推薦人を選び、論功行賞人事が目立ちました。首相が文部政務次官を務めた経歴から文相経験者が5人もいて「文教族のお友達内閣」との指摘もあります。幹事長代理には石原信晃元政調会長を既に起用しており、総裁選の対立候補も小池百合子氏を除きすべて閣僚、党役員で処遇、総選挙に向けて挙党態勢を固めました。

総選挙は11月2日が最有力
臨時国会には福田前内閣がまとめた「安心実現の総合対策」の08年度補正予算案が提出されました。“真水”の予算総額は約1兆8100億円で、物価高対策を柱に中小・零細企業向けの金融支援や省エネルギー、非正規雇用、医療などのほか、燃料負担の大きい農漁業者への支援策を中心に、高速道料金の引き下げなどの具体策も盛り込み、事業規模は総額約11兆7千億円の景気刺激策です。麻生首相は25日に訪米、国連総会に出席した後、29日に国会で所信表明演説、これに対する代表質問が10月1日から3日間行われます。各紙の世論調査は内閣支持率が50%前後とまずまず。このご祝儀相場が冷めない内に解散・総選挙に打って出るのが政界の常識です。朝日新聞は代表質問直後の3日に衆院解散、26日総選挙を報道しましたが、民主党は補正予算案を5,6日に衆院、7,8日に参院で審議して採決する「話し合い解散」を提案。公明党は11月2日投票を主張しました。オバマ民主党優位の米大統領選(同月6日)の影響を考えれば2日が最有力です。

年内解散に両にらみ作戦
首相は政治の空白を避けるため、補正予算案を早急に成立させて総選挙に臨もうとしており、民主党が補正予算案審議に協力する場合は「話し合い解散」に応じて6日に衆院通過を図りますが、野党が参院で審議引き延ばしに出た場合は「野党が景気対策の邪魔をした」と批判し、即座に衆院を解散できるよう「両にらみ作戦」を取る方針です。その場合は10月初旬解散・21日告示・11月2日(友引)投開票か、10月中旬解散・28日告示・11月9日(先負)投開票です。遅れる場合は、同月16日の仏滅を避けて「勤労感謝の日」(大安吉日)の23日に投票日が延びる可能性もあります。2日、23日はともに3連休の中日で、無党派層が行楽に出かけるなど投票率が気がかりですが、期日前投票が国民に浸透しているので支障はないと思われます。日本でサミットが開かれる年には必ず総選挙が行われるというジンクスがあります。ただし、これまで自民党の成績は1勝3敗なので、党内には来春1月の通常国会冒頭か、来年度予算成立後の4月解散・総選挙を望む声もあり、内閣支持率の変化によってはなお流動的要素もあるでしょう。

民主、財源無視のばらまき公約
総選挙の争点は物価対策、年金・長寿医療制度、汚染米不正転売など食の不安、金融危機、消費税率引き上げ問題などです。麻生首相は日本経済の現状を「全治3年」と見立て、緊急経済対策を中心に景気浮揚に全力を挙げる構えです。これに対し、民主党はマニフェストに児童手当2万6千円支給、農家への個別所得補償に1兆円支援、ガソリン暫定税率廃止、高速料金の撤廃などで、総額22兆円のばらまき政策を掲げています。小沢一郎代表は「一般会計と特別会計を合わせた純支出212兆円のうち、約1割に当たる22兆円を政策実行財源に組み替える」と述べ、特別会計の余剰金などいわゆる「霞が関埋蔵金」の活用策を唱えています。しかし、伊吹文明元幹事長が、「民主党はカタログ・ネット販売で財源の保証がない不渡り手形の政策提示だ。商品ならクーリングオフが出来るが、選挙ではオフが出来ない」と指摘した通り、財源論を無視したデタラメ公約と言えます。そんな無責任政党に政権をゆだねることは、断じてあってはなりません。

215ベースに互角の戦い
民主党は社会保険庁の年金を巡る杜撰な仕事、同庁のカラオケセットや国交省の道路特定財源から親善旅行費補助などを浪費した役所の無駄遣い、汚染米不正転売のチェック機能を失った農水省の欠陥行政、大分県の教職員採用試験・昇進を巡る汚職を見過ごしてきた文教行政の怠慢など「霞が関(官僚)政治の打破」と「地方分権国家の実現」を“錦の御旗”に国民の支持を訴えています。前回の総選挙は閉塞感からの脱皮を求める国民が、郵政民営化というより、劇場型の小泉政治に何らかの変革を期待して支持を与えてくれたというラッキーな面が見られました。しかし、今回の総選挙は物価高、雇用不安など悪条件が重なる中で、自民党には近来希に見る厳しい戦いが予想されます。マスコミの多くは、「衆院480議席のうち、公明25〜30、民主を除く野党は共産、社民、国民新、無所属合計20〜25で自民、民主以外は50議席。差し引くと、両党間で430議席を争うほぼ互角の戦いとなり、これを2で割れば双方とも215議席をベースにプラス・マイナス15の激戦になる」とシビアーな予想を立てています。

危険な共産・郵政票の相乗効果
今回の総選挙では、共産党が候補者を半分の138選挙区に絞り込み、全国郵便局長会の郵政20万票が民主党支援に回るといわれています。仮に公明党の自民党への選挙協力が十分に得られない場合は、それらが相乗効果を生んで選挙区で戦う自民党候補は大打撃を受けかねません。そうなると単独過半数にはならず、比較第1党を中心とする連立政権になり、キャスティングボートを握るのは相変わらず約30議席を確保する公明党となります。与党9年間の実績がある同党は、新進党解体時に小沢氏(現民主党代表)から煮え湯を飲まされ、しかも、今回は大田昭宏代表の東京12区から立つとの噂を流されるなど小沢氏に対する憎しみもあり、民主党との連立を目指すことはあり得ないと思います。だが、仮に自民党が210議席を割るような場合は連立がなり立たず、下野する以外ありません。政界再編は急ピッチに進むと予想されますが、第1党の圧勝がなく、衆院3分の2で再可決の「否決見なし規定」も適用出来なくなれば、“ねじれ国会”はさらに混迷し「政治不在の日本」として世界から笑われます。そんな混迷事態に陥らぬよう背水の陣で臨む覚悟です。これらの事情を十分ご賢察のうえ自民党に絶大なご支援をお願い申し上げます。