第186回(8月16日)防衛副大臣拝命 脱小泉改革で出発
 福田首相は8月1日、内閣改造と党役員人事を行い、「安心実現内閣」をスタートさせました。安倍政権幹事長の麻生太郎氏を幹事長に再起用、伊吹文明幹事長を財務相に、与謝野馨前官房長官を経済財政相に充てるなど財政再建重視型人材を配置しました。首相が精魂込めた洞爺湖サミットは、原油高や諸物価高騰の陰にかすんで成果が目立たず、内閣支持率が微増にとどまったため、政権浮揚の切り札として人事を断行しました。派閥バランスを重視、各派領袖クラスの重鎮を取り込んだ挙党一致体制の重厚・実力者内閣に改造した結果、各紙の内閣支持率は上昇に転じ、総選挙を戦う態勢が整ってきました。注目されるのは小泉元首相が郵政相当時に政務次官の辞表を叩き付けた笹川堯衆院議運委院長を総務会長に、「郵政造反組」の保利耕輔元文相を政調会長に配置して党三役を固め、同じ造反組の野田聖子元郵政相を消費者相に起用し、小泉構造改革「上げ潮」路線と決別したことです。お陰様で私は防衛副大臣を拝命しました。多年にわたる皆さまのご支援の賜と深く感謝しております。臨時国会の焦点は佐世保からインド洋上に派遣された海自の諸君の給油活動を継続する特措法延長法案の攻防です。常在戦場の中で答弁に立つこともあるかと思いますが、精一杯重責を果たす覚悟です。倍旧のご支援ご鞭撻をお願い申し上げます。

民主党をナチスに例え早舌戦
 「かつてドイツは『ナチスに1回(政権運営を)やらせよう』と言ってああなったこともある」――。就任挨拶回りで江田五月参院議長と会談した際、麻生幹事長はナチスを引き合いに民主党出身の議長をけん制しました。ドイツの議会は昔、野党が多数で審議拒否を乱発したため国政が動かず、『1回ナチスにやらせてみよう』とヒットラーに政権を委ねた結果、独裁政権が生まれ、第2次世界大戦に突入したとされます。現在の日本も参院で多数を占める民主党が審議拒否を乱発していますが、「政権を渡せば日本も同じ運命をたどる」と暗に警告したものです。鳩山由紀夫民主党幹事長は「民主党が暴虐極まりない政治を行うかのような発言で許されない。撤回を求める」とカンカン、麻生氏は記者団に「きちんと参院で審議することが大事だという話をしただけだ」と涼しい顔。早くも舌戦が始まりました。首相はこうした、弁舌巧みで国民的人気の高い麻生氏を党三役に取り込んで「福田降ろし」を封じ込めると同時に、選挙の顔に利用する狙いが改造にはありました。麻生氏の方も、ナンバー2の幹事長職を得ることで「ポスト福田」の地位を不動のものにできるわけで、当初は幹事長権限強化のため選挙対策委員長の格下げを要求しましたが、党規約改正の必要もあって首相の一存では難しく、麻生氏も要求を取り下げました。この点、党4役の間に少しは“しこり”が残ったようです。

禅譲密約流れ謀略放送の季節
 今回の人事では幹事長人事を巡って自民党内に「密約説」が流れました。1日の1時間にわたるサシの福田・麻生会談で、麻生氏が「自分の手で解散するんですか」と尋ねたのに対し、首相は「お任せしますよ」と答えたという説です。党内では、「お任せする」のが党の選挙対策なのか、それとも、首相が自らの手で解散しないで麻生氏への政権禅譲を確約したのか――に関心が集まりました。禅譲なら“密室談合”で、党内で了承されるはずがありません。こんな微妙な会話が漏れることはあり得ないし、麻生氏も4日のフジテレビ番組で「自分の都合だけで(要請を)受けないのは、男がすたると考えた。これから先、何が起きるか分からないが、何があっても総裁選は必ずすべきだ」と述べ、密約説を否定しました。ともあれ、各陣営が意図的に「謀略」を流す政局の時節に入ったようです。

狙いは全特20万票の懐柔策
 安倍政権の「居抜き内閣」であったため、改造では「国民生活重視」「経済活性化」の福田カラーを出すことを意識し、17閣僚のうち13閣僚を入れ替える大幅改造となりました。町村信孝官房長官、高村正彦外相、舛添要一厚生労働相、増田寛也総務相の主要閣僚は留任させ、公明党からは初入閣の斉藤鉄夫政調会長を環境相に充てました。新人では拉致被害者家族の信頼が厚い中山恭子参院議員を首相補佐官から少子化・拉致問題相に抜擢、臨時国会の焦点となる新テロ対策特措法の延長法案や防衛省改革に取り組む防衛相には野田氏と同じ47歳で最年少の林芳正参院議員を起用しました。今回のハイライトは、郵政造反組の復党を党規委員長時代に支援した笹川氏と復党した保利氏の三役入り。それに野田氏の再入閣です。首相は穀物高騰など食の問題を極めて重視しており、党内きっての農政通の保利氏は政調会長のハマリ役。臨時国会では消費者庁設置法案を提出しますが、野田氏は党消費者問題調査会長として同庁設置に貢献しており適任です。こうした表向きの理由は別として、首相の狙いは総選挙の小選挙区で民主党に流れそうな全特(全国特定郵便局長会)とそのOB・家族「大樹の会」の二〇万票の懐柔策にあるのでしょう。

与謝野氏に総合経済対策指示
 全特が今後の「郵政民営化見直し」闘争を進める上で、政策元締めの保利政調会長にかける期待は大きいと言えるでしょう。しかし、脱・小泉改革路線の改造に対し、「上げ潮派」の竹中平蔵元総務相(慶大教授)は「アンシャンレジューム(旧体制)の復活だ」と批判しました。首相も「上げ潮派」の中核・中川秀直元幹事長の動きが気懸かりな様子で、中川氏のために党国家戦略本部長代行のポストを新設し、経済政策の立案と、総選挙の公約(マニフェスト)作りに専念するよう要請、4日に発令しました。同時に、「財政再建派」の与謝野経済財政相を官邸に呼び、原油や食料価格の高騰など物価上昇や景気の減速に対応する総合的な経済対策を早急にまとめるよう指示しました。総合対策には、原油高に苦しむ農林水産業や中小企業への支援策拡充、省エネ・新エネルギー促進策などが盛り込まれる見通しです。これには衆院選を睨み、「生活者重視」の姿勢を国民にアピールする狙いが込められています。政府与党がこの経済政策を取りまとめる過程では、党内の「上げ潮派」と「再建派」の論争をいかに調整し、確執をどれだけ薄められるかが、注目されます。

財務相は増税論議に慎重姿勢
 改造内閣の主要閣僚は3日、NHKや民放テレビ番組に出演し、物価高騰や景気減速に対応するため、経済対策が必要だとの認識を相次いで表明。伊吹財務相は「乳母日傘で資源を乱費した日本は破綻しかけたが、小泉改革でガン摘出手術をやった。だが、後遺症が残っており、景気対策を検証して追加対策を打つ必要がある」と述べ、補正予算編成に前向きな姿勢を示しました。町村官房長官は「景気の下振れ感があるから09年度から消費税率を上げる、と決めるのは難しい」と述べ、谷垣国交相は「財政出動ではなく工夫できる余地がある」と主張しました。伊吹氏は、読売のインタビューで、「首相は公共事業の追加や大規模な所得減税は考えていないと思う。海外要因で日本はコストプッシュ・スタグフレーション(原材料高騰により同時に起きる物価上昇と景気停滞)のようになっている。赤字国債の発行はよほどのことがない限りあり得ない」とし、消費税率引き上げでは、「引き上げ時期の決定は、慎重な検討が必要だ。タバコ税増税も1つの選択肢だが、税収が増えるかどうか分からない」と述べ、「再建派」に多い増税論議には慎重姿勢を示しました。

9月召集で公明との亀裂修復
 臨時国会の開会時期を巡り、8月末召集を主張した自民党の旧執行部と、9月に先送りを唱えた公明党との間にきしみが生じていましたが、11日の両党幹事長・国対委員長会談では例年通り9月召集に決まりそうです。伊吹前幹事長(財務相)らは、新テロ対策特措法の期限が来年1月15日に切れるため、「否決と見なし60日後に衆院で再可決」の憲法規定を適用し、年内に同法改正案を成立させようと、8月末召集に固執していました。これに対し、もともと平和勢力の公明党は中東情勢の変化などから衆院再可決に慎重で、法改正にこだわらず、難題を抱える臨時国会は従来通り9月末に召集して短期間で閉会し、年末・年始に解散・総選挙を行うべきだと主張しました。これは国会進出の原点である都議選を重視、来年7月の都議選前後3ヶ月間は総選挙に反対を唱えているからです。それに矢野絢也元公明党委員長が政治評論家活動中止の強要などの人権侵害を創価学会から受けたとして損害賠償の訴訟を起こし、学会側も矢野氏を名誉毀損で訴えている問題について、野党が矢野氏や学会の池田大作名誉会長を参考人として招致を求めているからです。

総合対策で政権浮揚図れるか
 国民新党の亀井静香代表代行は4日の記者会見で、「当然、臨時国会で取り上げざるを得ない。言論封殺の指摘があった以上、民主主義の観点から事情を聞く必要がある」と述べ、参考人喚問の考えを示しています。公明党の大田昭宏代表と国民新党の綿貫民輔代表らは6日夜会談し、臨時国会への対応で意見交換しましたが、当然、矢野氏の喚問問題が話し合われたと思います。先に神崎武法前代表が「ポスト福田による解散」に言及したり、内閣改造でも福田政権に距離を置こうとするなど、公明党は微妙なすきま風を吹かし始めています。こうした点を十分考慮してか、麻生幹事長は就任早々、「『(否決見なし規定の)衆院3分の2再可決』ありき、ではない」と述べ、召集時期には柔軟な姿勢を示し、新執行部による2幹(事長)、2国(対委員長)会談で公明党要求に譲歩しました。はたして福田内閣は総合経済政策や来年度予算編成で「福田カラー」を国民にアピールして求心力を回復、政権浮揚が図れるのか。私も政府の1員として微力を尽くしたいと考えています。