第184回(7月16日)サミット成功 改造・解散は秒読み
 7月7〜9日間の洞爺湖サミットが終わり、政局の焦点は内閣改造、衆院解散・総選挙に移りました。無事ホスト役を務めた福田首相は政権浮揚の手応えを感じ、8月末の臨時国会召集前に内閣改造を断行、人心一新を図る構えです。現内閣は安倍改造内閣の13人を再任、2ポストを変更した「居抜き内閣」であるため、1年以内に行う衆院解散・総選挙に備え、「福田カラー」を念頭に月末まで時間を掛けて有能な人材を発掘し、大幅刷新を図ると見られます。
 通常9月開幕の臨時国会を8月に繰り上げるのは、インド洋での給油活動を継続する新テロ対策特措法の期限が来年1月に切れるためです。日本で開催された過去4回のサミットは必ず衆院選が行われ「政変の年」になったジンクスがあります。
 だが、自民党内には消費税増税論議やスタグフレーション(不況下のインフレ)が進行する中での解散を避けたい気持ちが漂っています。とはいえ、臨時国会はこの新テロ対策延長法案のほかに消費者庁設置法案など重要法案を巡り与野党が激突、攻防に弾みがついて解散になる可能性が多分にあります。
 いずれにせよ衆院の任期切れは来年9月に迫っており、解散はもはや秒読みの段階です。解散が年内であれ、来年の通常国会であれ、私は豊かで安全な国民生活を目指し、来年度予算案編成と取り組んでいるところです。保守政治は危機に直面していますが、例年以上のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

史上最大参加、成功裏に閉幕
 史上最大規模の計22カ国首脳が参加した洞爺湖サミットは7日から3日間、洞爺湖町の「ザ・ウインザーホテル洞爺」で開かれ、地球温暖化対策や重油・食料の高騰、投資など世界経済問題を討議して成功裏に終わりました。
 初日は主要8カ国(G8)とアフリカ諸国首脳らによる拡大対話が行われ、飢餓に苦しむアフリカへの食料援助、農業生産性向上の中長期支援と技術協力などを議論しました。2日目はG8首脳会議で世界経済、環境・気候変動、北朝鮮・イラン・中東和平・アフガニスタンなど地域情勢を討議し、首脳宣言を発表しました。3日目はG8と中国・インドなど新興国を交えた主要排出国会議(MEM)の計16首脳が会合を開き、気候変動に関する宣言を発表。拡大対話では投資、エネルギー、世界経済、途上国支援の討議を行い、福田首相が議長総括を発表して締めくくりました。8日のG8首脳宣言は、50年までに温室効果ガス排出量を半減する長期目標について、「世界全体の目標として共有し、採択を求める」と明記。20〜30年頃の中期目標も「米国を含むG8各国が国別総量目標を設ける」ことを初めて打ち出しました。

金融・燃料・食糧の3Sに絞る
 9日のMEM首脳宣言はこのG8合意を踏まえ、「世界全体の長期目標を採択することが望ましい」と記し、中国、インドなどの新興国も抑制に取り組む姿勢を示しました。
 今回サミットの中心議題は3S(金融・投資=Finance、燃料=Fuel、食糧=Food)に絞られましたが、議長総括では「特に原油及び食料価格の上昇、世界的インフレ圧力の高まり、金融市場の安定性、保護主義との闘いに取り組む必要性で合意した」などと明示。首脳宣言でも原油・食料高については「強い懸念」を表明し、G8が協調して対応することで合意したと明記しています。
 首相は閉幕の記者会見で「立場や違いを乗り越えて共通認識を示し、国連での交渉に弾みをつける貢献が出来た。中国、インドなど新興国に対しても長期目標採択に向けてリーダーシップを発揮したい」と成果を強調、サミットの成功で内閣支持率が好転することを期待しています。政府与党は、直ちに09年度予算案の編成と岩手・宮城内陸地帯地震対策など臨時国会に提出する補正予算案の編成に取り組んでいます。

見なし否決を想定し大幅会期
 自公与党は自衛隊の海外派遣に関する恒久法を臨時国会へ提出しようと与党チームで検討しましたが、公明党が憲法九条との関連で武器使用基準の見直しに慎重姿勢を示して合意出来ず、やむなく恒久法提出は断念。新テロ特措法を1年延長することにしました。
 昨年は野党が同法審議に抵抗し旧法の期限が切れ給油は2ヶ月も中断、国際信用を失墜したため、「見なし否決の60日規定」を適用してでも来年度の予算編成までに衆院で再可決・成立出来るよう、臨時国会を8月召集としました。会期は100日程度になる模様です。
 民主党の鳩山由紀夫幹事長は「参院の首相問責決議は1国会ではなく、1内閣に対してのものだ」と述べ、臨時国会でも審議拒否を継続する構えでした。ところが、通常国会を延長した後の終盤国会でも、岩手・宮城内陸地震対策を討議した衆参両院の災害対策特別委員会や衆院拉致問題特別委員会には、「人道上の問題だ」として審議に応じました。
 同党は臨時国会に、高騰する農漁業用重油の差額補填対策法案など5法案の提出を予定しているほか、野党提出の後期高齢者医療制度廃止法案が継続審議となっていて、欠席戦術どころではありません。総選挙を意識して与野党の攻防は例年以上に激化しそうです。

1勝3敗のサミット解散
 ジンクスと言えば、初めて日本でサミットを開催したのは79年。大平正芳政権はサミット後の総選挙で大敗し「40日抗争」のきっかけとなりました。2回目の86年は中曽根康弘首相が「寝た振り解散」の衆参同時選挙で圧勝。3回目の93年は宮沢喜一内閣に対する不信任決議案が衆院で可決され、解散に打って出ましたが、選挙期間中のサミット開催で総選挙に敗れ、細川護煕政権が誕生。自民党は野に下りました。00年の沖縄サミットはIT(情報技術)革命など新たなテーマを抱え、小渕恵三首相が意欲を燃やして準備しましたが急逝、開催1ヶ月半前に後継の森喜朗首相が衆院を解散しましたが敗北しました。
 このように自民党政権は1勝3敗で成績は良くないですが、衆院の任期も残り1年で解散が何時あってもおかしくありません。任期とジンクスが偶然一致して、総選挙の可能性はより高まっています。解散での政権交代に執念を燃やす民主党の小沢一郎代表は6月末、06年5月から始めた「全国行脚」を岐阜市内で一巡しました。同党はこれまでに243小選挙区で公認を内定、10選挙区で社民、国民新両党の候補を推薦しています。

代表選で小沢独走に赤ランプ
 小沢氏はさらに20〜30選挙区で両党候補の推薦を模索していると言います。行脚ではとくに社民党との選挙協力を睨んだ山形、宮城、新潟、福岡、大分、宮崎、沖縄などを重点的に回ったようです。国民新党との協力では、東京25区での民主党候補探しを諦めて、国民新党が擁立する候補を支援する構えです。
 ただし、同党内では鳩山幹事長ら党幹部が「小沢代表で総選挙を戦うべきだ」と支持しているのに対し、「小沢氏の無投票3選は望ましくない」との声があり、前原誠司副代表の「凌雲会」や野田佳彦広報委員長を支える「花斉会」などの中堅・若手には対抗馬擁立の動きが水面下で生じています。小沢氏の任期満了に伴う代表選は9月21日投開票と決まりました。新たな候補者が立てば小沢氏独走に赤ランプが灯ります。これが党内抗争に発展すれば自民党にはプラスとなります。

共産は小選挙区を絞り込む
 注目されるのは共産党の動きです。春の京都市長選では自民、公明、社民党が推薦した非共産「オール与党」の前市教育長が約15万7500票を獲得したのに対し、共産党はわずか951票差にまで肉迫、「大善戦、大健闘した」と自賛しました。
 京都は伊吹文明幹事長、谷垣禎一政調会長という三役メンバーの地元だけに辛勝には冷や汗をかきました。共産党は1月の大阪府知事選でも同党候補の得票が50万票を超え、京阪神地区での一定の集票力と存在感を見せつけています。同党は2005年の衆院選で275の小選挙区に候補者を擁立しましたが、次期衆院選から小選挙区の候補者を絞り込む方針で、小選挙区の立候補基準は、原則として先の参院選比例代表の得票率が8%以上とし、そのうえで各都道府県に1人は擁立する構えです。
 この立候補基準を適用すれば、大都市を中心に140選挙区程度に半減する見通しです。背景には、供託金の没収額が6億6000万円を超すという事情があり、巨額の供託金負担は「マイナスが大きい」と見ているからです。では共産党が各選挙区で獲得していた票はどこへ行くのか、といえば「自民党には行かない」ことだけは確かで、主に社民、または民主に向かうことは間違いないでしょう。

「伝家の宝刀」前に試行錯誤
 総選挙の最大争点は消費税率の引き上げと年金問題、長寿医療制度、物価対策などです。自民党の税制調査会(会長=津島雄二元厚相)は1日、例年秋からの議論を前倒しして総会を開き、09年度税制改正の討議を始めました。政府が社会保障国民会議で進めている財源を含めた社会保障制度の見直しや、道路特定財源の一般財源化に対応するためです。
 最大テーマは消費税率の引き上げですが、年金改革関連法では基礎年金の国庫負担割合を09年度までに3分の1から2分の1に引き上げるよう定めており、消費税率の約1%に相当する2・3兆円の財源が必要になります。
 しかし、97年4月に消費税率を5%に引き上げた際も、税制改革関連法の成立から実際に引き上げるまでには約2年半の歳月が掛かっています。福田首相は6月17日、主要国通信社首脳とのインタビューで「日本の消費税率5%は欧米に比べ非常に低い。日本は世界有数の高齢化社会だ。5%でやるからこれだけ財政赤字を背負っている。その辺のところを決断しなければいけない」と述べ、消費税増税に積極姿勢を表明しました。
 しかし、総選挙へ与える影響を考慮してか、その直後には日本の記者団に対し「2,3年とか長い単位で考えている」と補足説明し、決断時期を軌道修正しました。難問山積の剣が峰に立つ首相は臨戦態勢の中で色々観測気球を上げて国民の反応を探りつつ、伝家の宝刀を抜く機会を見極めようとしています。