北村からのメッセージ

 第18回(5月16日) 1.小泉政権順調な船出  常在戦場

 「今の痛みに耐えて明日を良くする“米百俵の精神”で改革を進めたい」――。小泉首相は、所信表明演説で“新世紀維新”を目指して取り組む「改革断行内閣」の決意を示しました。米百俵の名を冠した長岡市(新潟)の酒、銘菓、饅頭に全国から注文が殺到、“改革ブラ”なる珍品も売り出されるなど小泉人気は上々。個人消費に貢献しているようです。

 最高の内閣支持率

 「日本を変える救国内閣」(首相)の新鮮さに国民が期待し、組閣直後のマスコミ世論調査では、内閣支持率が軒並みに森内閣の9%(2月)から9倍の80%台に跳ね上がり、細川護煕内閣の74%、田中角栄内閣の62%(以上朝日)を上回る過去最高の支持率を得ました。野党は「一時的なフィーバー状態」(菅直人民主党幹事長)と悔しがっていますが、国民の政治不信と閉塞感がいかに高まっていたかを世論は物語っています。新世紀を拓く我々若手政治家は、民意を深く受け止め、新政権を支えたいと肝に銘じています。

 聖域なき構造改革

 国会は衆参両院本会議での代表質問を終え、5月14、15の両日、衆院予算委で論戦の火蓋が切られました。小泉首相は所信表明で、時には絶叫調となって持論の郵政民営化や「聖域なき構造改革」をまくし立てました。これには同じ改革路線の民主党が、首相にお株を奪われたくないとばかりに、具体的課題で細かく追求しました。予算委に舞台が移っても野党は、首相が唱える経済・財政改革、靖国神社公式参拝、集団的自衛権、有事法制整備、首相公選制など、主として首相のタカ派的姿勢を攻撃しました。とくに内閣の看板・田中真紀子外相の人事権を巡る外務官僚との抗争は、格好の材料として叩きました。

 衆参同時選挙論

 国会での与野党攻防は、今夏に迫った参院選を意識して日を追って激しくなっています。
総裁選で1ヶ月の空白が生じ、政府提出法案95本のうち、成立したのは28本だけ。自民党の国会対策委員としては、7月29日の会期末まで緊張の毎日が続きます。政策面でも構造改革の「総論」を肉付けする「各論」の検討が急がれています。自民党内では、内閣支持率とともに党の支持率も10%ほど上昇したことから、小泉ブームに乗って「夏に衆参同時選挙をやるべし」との声が一部に高まっています。しかし、「最高の支持率なら今後は下がるだけ」と首相が達観しているように、この2ヶ月が小泉・構造改革の真価が問われる勝負どころ。その結果、仮に解散風が強まることがあろうとも、私は常在戦場の覚悟で国政に従事したいと決意しています。よろしくご声援をお願いいたします。

 第18回(5月16日) 2.輸入野菜特集 第3回 食料安保
  
 前2回は洪水的な輸入野菜の実体をレポートしましたが、今回は対応策を報告します。
政府は4月、中国からの輸入農産物に一般セーフガード(緊急輸入制限)を発動しましたが、米国はこれに神経をとがらせています。米国は玉葱、トマト、木材で計2億4千万ドル(約2百60億円)という大量な産品を対日輸出しているからです。ブッシュ政権は日本がセーフガードの対象をこの3品目にも拡大するのではないかと警戒を強めています。

 米もセーフガードへ関心

 米通商代表部(USTR)は4月末、米通商法スーパー301条に基づく報告書で、農業、自動車、板ガラス、公共事業の4分野にわたり日本を強く批判し、市場開放を迫りました。セーフガードの拡大には、日本国内でも「価格の上昇で消費者の利益が損なわれる」との慎重な意見や、「保護貿易の規制が強まれば農業の国際競争力が低下する」などの主張があります。行天豊雄元大蔵省財務官は「日本経済の問題は、建設、不動産、流通、金融サービス、農業などの問題業種に国際競争力がないことだ。長年にわたって政府の保護と規制の下で生きてきた業種が変化に対応せず競争力を失ったのは当然」と、読売新聞で厳しく指摘しています。農業のグローバル化は、幅広い視野で再検討すべきでしょう。

 車と農産物の土地争い

 読売の「地球を読む」シリーズでは、「新世紀は自動車と農作物の土地争いが激化する」という興味深い記事が出ていました。それによると、「米国内では、車1台につき平均7百平方メートルの舗装された土地が、道路や駐車場に必要とされる」「中国とインドには世界人口の38%が住んでいる。この両国内での車と農地の争いの行く末は、世界中の食糧安全保障に影響を与える」と述べています。また、中国は産児制限を続けていますが、2030年頃には人口が増大、2千万トンの食量を輸入することになりそうです。そうなると野菜の生産より穀物増産に切り替え、野菜の対日輸出にもブレーキがかかるでしょう。

 増えるベジタリアン

 英国は、狂牛病に続く「英国発の家畜伝染病」の口蹄疫が確認されてから、最大百万頭の家畜を処分する方針を打ち出しました。この影響で欧州全体にベジタリアン(菜食主義者)が増え、野菜相場は上がっているようです。近隣諸国の野菜輸出の標的も日本から欧州に向かうでしょう。こうした事象をみても、輸入野菜の洪水に恐れを抱かず、長期的視野で生産の省力・機械化、流通機構の改善、安定供給など農業の構造改革が必要です。

 厳格な植物検査

 さて、政府は現在、輸入野菜激増にどのような対応策を採っているか。まず、植物検査があります。農業生産に重大な被害を及ぼす病害虫が発生している地域からの野菜、果実の輸入は禁止。土が付着した物は全地域からの輸入を禁止しています。特に中国からのきゅうり、トマト、ピーマン、スイカ、メロン、カボチャ、唐辛子、なす、インゲン豆、ささげ、サツマイモなどは、ウリミバエ、ミカンコミバエ種群、アリモドキゾウムシ、イモゾウムシの被害が予想されるため、輸入禁止となっています。780人余の植物防疫官は目視、顕微鏡、生物学的方法で入念に検査、土の付着や病害虫が見つかった場合は、廃棄または生産地への積み戻しなど厳格に検査しています。

 野菜の原産地・品質表示

 野菜の原産地表示にも力を入れています。昨年7月から生鮮食品の原産地表示が義務づけられ、4月からは加工食品、遺伝子組み替え食品、有機農産物の品質表示も実施。さらに10月からは梅干し、らっきょう漬けの原料原産地表示を行います。1万2千5百店舗を対象とした1月(野菜表示遵守強化月間)の全国調査では、全野菜に表示している店舗の割合は約3割でしたが、店舗別ではデパートが約8割、スーパーが約5割、青果専門店が約1割で、依然として原産地表示の対応は遅れています。消費者の購買意識調査では、「国産」、「外国産」と表示している場合、国産を買う人は61・4%、外国産が0・9%、外国産が「安い・珍しい・おいしい」などと思った時に買う人が37・3%もいました。安い価格差を理由に、外国産の購入者が4割近くいることは農家にとっては脅威です。

 家計消費は45%

 野菜の受給動向をみると、農業の総産出額に占める野菜の割合は4分の1程度。平成11年度の野菜産出額は2・2兆円です。平成元年頃の野菜消費は1人当たり110キロ程度でしたが、近年は白菜、大根などの重量野菜が減ってきたため、生産・消費ともに減少傾向にあります。単身世帯の増加、高齢化の進展、生活スタイルの多様化を背景に、家庭での料理よりも外食や加工食品などの業務需要が55%に高まり、一般小売店などで購入する家計消費は45%に落ち込んでいます。それも身近な八百屋ではなく、スーパーなどの量販店で購入する割合が増加しています。

 流通コストで4倍に

 野菜の流通形態は、最近、加工・業務用を中心に多様化していますが、委託集荷が大勢を占める卸売市場経由が8割以上。量販店の需要拡大に伴う相対取引の割合も増加、相対販売とセリ入札の比率は5分5分となっています。しかし、小売店頭価格に対し生産者受取価格は30−60%、市場など仲卸しの中間経費は20―30%、小売り経費は20―40%と段階を経る度に流通コストが膨らんでいます。先号で紹介したように、ネギの庭先価格は101円に過ぎないのに、包装・荷造り費や運賃、市場手数料などが加算されると小売価格は4倍の428円になります。A級ネギの場合、L、M、Sなどの細分化された出荷規格があり、段ボールの包装など産地の出荷段階で手間とコストが掛かるからです。

 ITで流通情報化

 安い輸入野菜に対抗できる競争力を養うには、流通コストの削減が肝要です。国は出荷の標準規格の見直しや、大、中、小の通い容器・コンテナの普及を推進、作業コストを2割程度削減しようとしています。また、野菜の業務用需要を促進するため、産・消地提携野菜産地育成事業などで、加工適性品種の育成に取り組んでいます。流通コストの構成要素を調査・分析するIT(情報技術)活用の流通情報化を進めることも重要です。

 リレー出荷、契約栽培

 野菜の安定供給には@端境期に輸入野菜に対抗する産地間のリレー栽培・出荷A加工・外食企業の原料野菜は生産者との間に契約栽培・周年供給体制を確立B地場野菜を活用した加工品の高付加価値化Cコールドチェーンシステムの確立――などが望まれます。現に宮崎、岩手両県の経済連は、ピーマンの周年出荷体制を確立しようと11月から6月中旬までを宮崎県が、6月下旬から10月までを岩手県が分担、首都圏にリレー出荷し、外国産の侵入を拒否しています。また、埼玉県和光市の農産物直売組合は、市内の11小中学校と年1回出荷調整会議を開き、15種類の野菜を学校給食に供給しています。

 生産者補給金

 このほか価格の安定では、指定野菜価格安定対策事業があることは皆さんご存じの通りです。指定野菜はキャベツ、きゆうり、里芋、大根、トマト、なす、人参、ネギ、白菜、ピーマン、レタス、玉葱、馬鈴薯、ほうれん草の14種類です。指定野菜の価格が著しく低落した場合、出荷団体(経済連等)が20%、国から60%、都道府県から20%の補助金を加えて生産者補給金を交付するものです。生産者補給金は対象野菜の平均販売価格が保証基準額を下回った場合、差額の9割を生産者に交付します。指定野菜以外でも、国民の消費生活や地域農業振興上の重要性から、アスパラガス、枝豆、ゴボウなど31種類の特定野菜についても価格が激安となった場合、価格差補給金が交付されます。交付対象の野菜は増加傾向にあり、平成12年度は254万トンで150億円を交付、特定野菜の価格差補給金を合わせると交付額は163億円に達しています。

 緊急野菜対策

 また、昨年11月末に緊急野菜対策を決定、高品質野菜生産の推進、共同出荷体制の整備など、積極的な産地の取り組みに対して、事業規模30億円(補助率は2分の1)の緊急支援を行っています。融資制度としては無利子の農業改良資金、低利(年1.7%)融資の農業近代化資金などがあり、いずれも80%の融資率です。

 漏れる企業秘密

 中国からの輸入野菜急増の陰に、開発輸入に結びついた種子の輸出問題があります。農業者団体は3月、日本種苗協会に「国内生産者・産地と種苗業界の共存共栄を図るため、節度ある事業展開と商社への理解促進」を申し入れました。日本の品種開発は、米、麦、大豆の主要農作物は公的試験機関が主体ですが、野菜は主に民間の種苗会社が国内産地に適した他品種を開発しています。中でもF1品種は1代限りの雑種で、そのまま増殖しても同じ種子が生まれないため、特定の親同士の交配により一般販売用種子を生産している企業秘密。この秘密が海外に漏れると農家にとって死活問題です。一部種苗会社による中国向けネギ種子の輸出は平成11年に急増しました。日本は採取農家の高齢化や採取時期に雨が多いことから、大半は海外に委託し採種、これを一旦日本に輸入し選別・加工・調整して国の内外に販売する「加工貿易」の形態をとっています。これが災いの元でしょう。

 種子の輸出自粛

 日本種苗協会は2月、開発輸入に結びつくような種子の輸出は行わない旨を申し合わせたほか@優秀なF1種子はもとより、国内産地と競合する固定種も輸出を自粛するため、検討チームを設置するA農業団体と国内産地を守る協力体制を早急に構築するーーなどを決めました。農林水産省も野菜種子の輸出状況を定期的に調査、厳正な指導を行う方針です。

 先進国最低の40%

 日本のコメや野菜を含めた食料自給率(供給熱量ペース)は、主要先進国内で最低の40%、穀物はわずか27%にまで下がっていますが、昨年3月に策定された食料・農業・農林基本計画では、食料自給率を10年後に45%まで引き上げる目標を立てています。とくに野菜は平成22年度の単収10a当たり2,750Kg、生産量1,498万トン、作付面積53万haとし、野菜自給率87%(平成9年度は86%)を目指しています。

 農業の構造改革

 問題は野菜生産に零細農家が多く、高齢層の増加と若年層の減少で、育苗から出荷までの労働時間が長くかかり、収穫・調整、出荷に労働コストがかかり過ぎていることです。
同基本計画では、生産、流通の機械化・省力化が遅れ、加工用・業務用への対応が不十分であることから、生産が減少傾向にあるとし、@担い手の生産規模拡大(路地野菜2倍、施設野菜1.5倍)A機械化一貫体系の導入による生産2割、流通1割の省力化、低コスト化B消費者や食品産業との連携や産地間の連携による周年供給の推進B食味や加工に優れた品種の導入――など、農業の構造改革で国内生産の維持増大を図ろうとしています。現在60億人の世界人口は2030年に81億人に増える見通しです。食糧不足や生産不安定から21世紀は「食の世紀」ともいわれますが、コメの減反拡大、輸入農産物の急増で日本農業は国内生産基盤が揺れ動いています。今こそ食料安保の戦略的取り組みが強く望まれます。