第178回(4月16日)首相、権力乱用批判 4月末決戦へ
 日銀総裁人事は、白川方明副総裁(58)の総裁昇格について9日の衆参両院本会議で同意を得、3週間ぶりに空席が解消されました。しかし、渡辺博史一橋大教授=前財務官(58)の副総裁起用案は民主、共産、社民3党が拒否、副総裁は片肺飛行の出発となりました。日銀人事3度目の不同意は、民主党が「財政・金融の分離」「財務官僚の天下り廃止」の2点に固執したからで、同党は「霞が関(官僚)支配の打破、中央集権反対」を錦の御旗に政権交代を迫る姿勢を明確に打ち出しました。1ヶ月以上空転した国会は8日からようやく税制関連法案の実質審議に入り、道路財源を巡り本格的な攻防を展開中です。政府与党は、参院財政金融委を舞台に、ガソリン税暫定税率の復活と道路特定財源の一般財源化を目指す修正案を提示し与野党協議会設置を要求、忍耐強く協議を続けています。対する民主党は、4月1日からのガソリン代値下げ実現で国民を味方につけたと判断、解散・総選挙の好機到来とばかりさらに対決姿勢を強め、審議引き延ばし作戦を継続しています。このため、「否決見なし」規定の60日ルールが適用できる29日以降、まず暫定税率の関連法案を、5月中旬に道路特定財源制度を定めた道路整備費財源特例法改正案を相次ぎ衆院の3分の2で再可決する方針です。野党は当然、首相問責決議案の参院可決で対抗、国会は4月末決戦を迎え緊迫します。重ねてのご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

渡辺副総裁賛成が民社の大成
 日本は世界2位の経済力を持ち、世界経済の安定に責任を負う立場です。「金融の司令塔」不在で11日からワシントンで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)に白川氏を「総裁代行」のまま送り出せば、世界の笑いものになる場面でした。このため、首相は3度目の人事案でG7に間に合うよう、民主党と接点を見出すことを最優先に考え、 「国内金融に強い白川、国際金融に強い渡辺」のセット案を密かに同党に提示しました。渡辺氏は国際金融担当の財務官を3年間務め財務相らとともにG7に出席した経験があり、07年に退官後は国際金融情報センター顧問となり、4月から一橋大教授に転身。財務官就任前は主税局長などを経験し政治とのパイプもあります。首相は民主党の「財・金分離」よりも「むしろ財政と金融が『財金連携』して、日本の経済は適切な運営が出来ると信じている」ことを強調しました。民主党の鳩山由紀夫幹事長も「総裁は次官OBの武藤敏郎氏より財務官OBの渡辺氏が適任」と評し、伊吹文明幹事長との折衝では「副総裁に同意できる5人」の1人として与党側に内示していた人物です。民主党の財務金融部門会議や同意人事検討小委でも前原誠司副代表、仙谷由人元政調会長らが「何でも反対していると政権担当能力が疑われる」などと発言、賛成論が8日夕まで大勢を占めていたようです。

路線対立で民主7人が造反
 しかし、小沢氏は@08年度から道路特定財源の一般財源化Aガソリン暫定税率の即時廃止B官僚天下りの完全廃止――を「小沢3原則」として打ち出し、元財務事務次官の武藤副総裁の昇格と元大蔵事務次官の田波耕治国際協力銀行総裁の総裁就任を拒否するよう指示。3日から6日にかけ、本来は苦手の民放やNHKの報道番組に出ずっぱりで、「霞が関(官僚王国)と徹底的に闘う」「中央集権体制の打破」の姿勢をブチ上げました。これに山岡賢次国対委員長、輿石東参院議員会長らが、「国民に『天下りポストの既得権化だ』と説明すれば、理解が得られる」と同調し、渡辺副総裁に最後まで反対を唱えました。結局、鳩山氏が「代表の発言は我々の発言より極めて重い」と小沢代表のメンツを立て、不同意を決めました。こうした党内の路線対立から亀裂が生じ、渡辺秀央元郵政相が「組織内の意向を無視した政局絡みの判断は国民の信が得られない」と主張。同氏ら3人が造反して国民新党とともに参院本会議では渡辺副総裁に賛成、棄権または欠席者が4人も出ました。

与党内に日銀法改正PT設置
 自民党は「独裁的な小沢氏を巡る党内抗争」と受け止め、この分だと税制関連法案や首相問責決議案を採決する参院本会議でも造反組が出ると想定、民主党の切り崩し戦略を視野に入れています。党内では「政府の重要人事決定権を民主党の党利党略によって握られてよいのか」「会社の社長が労組の了解を得ないと役員が決められないという異常な状況はおかしい」「国会同意人事は政争の具にならないようにすべきだ」などの不満が続出しました。8日の総務会では国会同意人事に衆院議決の優越規定を設ける法改正を求める声が強く出され、与党は日銀法改正など国会同意に関するプロジェクトチームを設置しました。一方、小沢氏は意気軒昂で「首相や自民党首脳は大混乱すると言っていたが、物価高の中で国民はガソリン代が下がって良かったと言っている。世論が反対し、再可決なんてできっこない」とテレビ番組でうそぶき、菅直人代表代行も暫定税率の失効を鬼の首でも取ったように喜び、街頭演説で、「道路族は『力があるんだ』という顔をしているが、国土交通省から餌を貰って、国交省の利益を守る番犬だ」と言いたい放題。これには伊吹自民党幹事長が「品性がない発言だ。こういう言葉を使う代表代行のいる政党は恥ずかしい政党で、こういうことが進むと本質的な議論はできなくなる」とすかさず記者会見で反論しました。

低姿勢捨て首相の怒り爆発
 「適材適所の場に官僚であった者が就くのがそんなに悪いのか。正直言って翻弄された。人事権は政府にある。(参院第1党の民主党が)1つの権力を握っているんだと、人事権をフル発動するかの如く、4人も不同意で否定した。権力、人事権の乱用だ」――。首相は9日の党首討論で、日頃の低姿勢はかなぐり捨て、「逆質問」を連発し、民主党の対応をなじりました。政府与党は暫定税率が失効しないよう、@2カ月前にセーフテフィネットの繋ぎ法案を準備 A激突回避のために両院議長の斡旋依頼 B十分な審議時間を掛けて予算と関連法案の衆院通過――など入念周到な国会戦術で臨んだにも拘わらず、民主党は勝手に「強行採決だ」と決めつけ、議長斡旋を反古にして日銀人事に盾突き、1ヶ月以上参院審議を空転させ、政局一辺倒の国会運営に終始してきました。まるで比叡山の山法師たちが参院の砦に立てこもるような姿です。内閣支持率低下に苦しむ首相は堪忍袋の緒が切れ、激怒しました。日銀人事やガソリン税を政権獲得の道具として解散に追い込もうとする、民主党の露骨な政局本位の国会運営に対し、マスコミを初め国民の批判は高まっています。

解散風匂わせ出鼻くじく
 自民党内では民主党が思い上がっている今こそが反撃のチャンスであると、同党をけん制する発言が目立ってきました。我が派会長の古賀誠選挙対策委員長は7日夕、党神奈川県連のパーティで、「県連はいつ選挙があってもいいという備えのパーティを開いた。素晴らしい政局観だ。私も『年内の選挙はない』と言わずに、『もう危ないぞ』とそろそろ言わなければいけない」と挨拶。小泉純一郎元首相も「そろそろ『なんとか風』(解散風)が吹き出したという気がする」と語りました。両者はこれまで「衆院選は来年9月の任期満了に近い方がいい」(古賀氏)、「来年のサミット後の可能性もある」(小泉氏)と遅い解散を唱えてきましたが、主戦論の小沢民主党に自民党の戦う姿勢を十分に示し、出鼻をくじく狙いがあったようです。だが、石原伸晃前政調会長が7日、「2度の再可決は政治論としてなかなか難しい。首相問責決議案の可決なら国会で何も決められなくなる。民意を問えとの世論が高まる」と都内で講演したように、4月決戦の在り様に不安を感じる向きもあります。さて、税制関連法案は8日から実質審議に入りましたが、総選挙で国民がどちらの党に軍配を挙げるかは、4月末まで2週間の国会攻防と世論喚起が勝負どころになります。

協議機関巡り駆け引き活発化
 双方の論点は、党首討論でほぼ尽きています。首相は「給油所では大変混乱し、地方自治体で予算執行できない部分が出てきた。2・6兆円の財源がなくなれば、社会保障や教育分野にも食い込んでくる。財政再建しようという時に赤字国債の発行が許されるのか」と述べ、審議の促進と話し合いの機会を作るよう求めました。小沢氏は「道路はかなり整備されており、巨額の道路財源は必要ない。物価が軒並み値上がりし2・6兆円の還元は大きな効果を持つ。道路特別会計の繰越金は1兆円近い。一般予算でも繰越金が1千億円以上だ。市町村の道路財源分3千億円はそこから交付出来る。公務員の天下り先に税金が12兆数千億円支出されている。一般財源化は大賛成だが、最終的に政府与党の正式決定のないものを協議するわけにいかない」と突っぱねました。このため、政府与党は11日、首相が3月末に提示した「09年度から一般財源化」などの修正方針を「政府・与党合意」の形に明確化しました。ただし、「これ以上突っ込むと党内逆噴射しかねない」(古賀氏)との発言もあって民主党の出方を見守り、正式な党議決定や閣議決定は見合わせています。民主党もまた、じらし戦術で値下げ感定着の時間を稼ぐなど駆け引きは活発化しそうです。