第176回(3月16日)年度末の熱い攻防 日銀人事も難航
 野党の反発で約10間空転していた国会は、13日から参院で08年度予算案の審議に入り、ようやく正常化しました。政府与党は予算関連法案のガソリン税暫定税率の維持について民主党と精力的な修正協議を重ね、3月末の年度内成立にこぎ着けたいとしています。対する民主党は暫定税率の期限が切れる4月まで審議を引き延ばし、同税率の廃止(ガソリン値下げ)と道路財源の一般財源化を実現する構えで、与野党折衝は難航すると見られます。同党は日銀の正副総裁人事承認についても、財政・金融分離の立場から、政府が提示した武藤敏郎副総裁(元財務次官)の総裁昇格に不同意で、福井俊彦現総裁の任期が切れる19日までの決着は困難になりました。このため、衆参両議長に局面打開策の再斡旋を要請するなど、3月末にかけて政局は再び緊迫するもと見られます。花見シーズンですが私は精一杯国政に取り組んでいます。変わらぬご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。

謝罪求め10日間審議拒否
 「一部マスコミが言うような強行採決では決してない。予算審議は昨年が66時間だが、今年は80時間を超え、一人当たり4時間近く質問したが重複が多かった。集中審議も4回やり、異例の地方公聴会もやった。議長裁定の“徹底した審議”は確保されている」――。自民党の伊吹文明幹事長は2月末の記者会見で、予算案の衆院通過についてこう説明、福田首相も役員会で「手順を踏んでやって頂いた。参院でも我慢比べだが、よろしく」と参院での一致団結を求めました。予算案は3月2日までに衆院を通過すれば、憲法の規定で参院が議決しなくても年度内に成立するが、3月1,2日が休日だったため「2月通過」がぎりぎりの一線でした。自民党は「歳入に関わる税制関連法案を年度内に成立させ易くするには、予算案と一体で採決させるべきだ」との戦略を立てています。だが、参院で主導権を握る民主党の鳩山由紀夫幹事長は「徹底審議という議長斡旋の条件が完全に反古にされた。強行採決の謝罪をしない限り審議には応じられない」と述べ、山岡賢次国対委員長も「1週間の審議拒否」を宣言。共産を除き社民、国民新両党もこれに同調しました。

対案先議と定例日審議を要求
 これには町村信孝官房長官が「国会議員の責任放棄だ」と厳しく批判、参院予算委の鴻池祥肇委員長(自民)も「司令塔が賢くないからこういう結果になった」と民主党批判を繰り返し、4日以降4日間、委員長職権で連日予算委を開きました。徹底審議を求めながら審議拒否を続けるのは矛盾した行動で、国民の理解が得られないからです。連日の予算委には首相と全閣僚、与党議員が着席し20〜30分間待機した後、流会になりましたが、この光景が連日テレビに映し出され、世論の批判が野党に向かったため、民主党は欠席戦術を約10日間で打ち切り、13日から予算案の審議に応じました。しかし、空転の結果、関連法案審議は苦しい状況です。通常なら税制関連法案審議は予算案の総括審議が終了次第始めますが、予算審議が遅れた分、税制法案審議は後回しにされ、しかも、民主党は法案が付託される参院財政金融委員会では、定例日(火・木曜)以外の審議や予算委とダブル日の審議には応じない構えです。さらに、同党提出の対案を先議するよう求めています。

暫定税率失効し混乱の恐れも
 民主党は2月末日、道路特定財源の一般財源化と暫定税率の廃止を柱とする道路特定財源制度改革法案、租税特措法改正案、所得税法等改正案の3法案を対案として、参院に提出しました。対案には@ガソリン税の税収の1部を地方に配分する「地方道路整備臨時交付金」の配分割合を4分の1から2分の1に改めるA国直轄の公共事業で事業費の1部を地方が負担している国直轄事業負担金制度を廃止する――などを盛り込んでいます。この対案を先議すれば、税制関連法案の審議入りは3月下旬になりかねず、野党が多数で否決すると予想される年度内採決は難しく、与党が3分の2で可決する衆院での再議決も遅れ、一時的にも暫定税率は失効し、混乱を招く恐れがあります。このため、与党内では首相も了承している「野党との修正協議」を急ぎ、道路整備中期計画の見直しや一般財源化、環境税化など、審議促進に向けて大胆な妥協策を講じるべきだとの声が高まっています。

膠着すれば議長の再斡旋期待
 伊吹氏は「国権の最高機関の長である衆参両議長が合同で斡旋された。議長の権威を再認識せねばならない」と述べています。議長斡旋時にも伊吹氏は、「斡旋案は年度内採決(成立)を担保したもので、そうならない場合は議長が何らかの処置を執るだろう」と期待感を表明しており、国会が再び膠着状態に入れば、当然に議長の再斡旋案が提出されると確信しています。一方、日銀総裁の後継人事についても民主党は「衆参両院とも不正常な状況だけに、政府が言う人を素直に聞く状況にはない」(鳩山氏)とのっけから反対しました。
 日銀総裁など国会同意人事は、衆参両院で議決する10日程度前までに政府が候補を提示するのが慣例です。この「10日ルール」に従い、政府は7日午後に日銀正副総裁人事を国会に提示しました。福井総裁(72)の後任には武藤副総裁(64)、2人の副総裁には、元日銀理事で金融に精通し国際的に知名度の高い白川方明京大教授(58)と、経済財政諮問会議議員で旧大蔵省副財務官の経験もある国際派の伊藤隆敏東大教授(57)を起用する案です。国会は11日、衆参両院議運委で3候補の所信聴取と質疑を行いました。

 「財政・金融分離」理由に不同意
 民主党は終了後、小沢一郎代表も出席して国会役員会を開いた結果、@財務省出身の武藤氏の昇格は財政政策と金融政策を分ける「財政・金融分離」の観点から容認できないA伊藤氏の考え方を総合的に判断した結果、副総裁にふさわしくない――などの方針を決め、同党の西岡武夫議運委員長が職権で開いた12日の参院本会議で、武藤、伊藤正副総裁候補を不同意とし、共産、社民、国民新の3野党とともに人事案を否決しました。国会同意人事は衆参両院の同意が必要なため、衆参のいずれかが不同意の採決をした時点で白紙となります。19日の福井総裁任期切れまでに後任が決まらず、総裁が空席となる場合は、副総裁の同意を得た白川氏が総裁職務を代行することができます。政府与党は「武藤総裁」案を再提出するか、次善の策として人事案の差し替えを行うか、戦略の練り直しを迫られました。民主党内には武藤氏よりも山口泰前副総裁を推す声が以前から強くあり、差し替え案について幹事長会談、または党首会談で話し合い、決着を付ける考えもあります。

民主が5・18総選挙説流す
 伊吹幹事長は「国会同意人事は行政権を持つ政府が提案した総裁候補の人柄、識見をチェックして承認を与える行為だ。政党間の採決のやり方がかみ合わないから承認してやらないと言い出すのは、通貨当局の政治的中立を著しく犯すことになる」と民主党の党利党略を批判し、採決で民主党良識派の棄権を密かに期待していました。それが史上初めての総裁空席となります。日銀総裁はG7などに常時出席し国際金融を協議する要職だけに、国際信用の面からも長期の空白は許されません。候補差し替えはやむを得ないようです。このように、税制関連法案と日銀人事で国会が緊迫する中、民主党の小沢代表、鳩山幹事長らは「首相は選挙の洗礼を受けていない。今国会中の解散・総選挙を大前提として頑張る」と決意を表明、山岡国対委員長は「4月解散、総選挙は大安吉日の5月18日」と日程にまで言及し、気勢を上げています。だが、同党の小選挙区の公認はようやく237人を内定、社民、国民新両党の7人の推薦を決めたばかり。なお空白区は56も残っています。民主党が日銀人事などでことさら対決姿勢を強めていることについて、読売は「9月の党代表選をにらみ、小沢代表の求心力を保ちたいとの思惑がある」と報じましたが、中川元幹事長も講演で「民主党の解散論は、党の結束を維持できない状況にあるからだ」と批判、小泉元首相と同様、年内よりも衆院任期切れの来秋解散を唱えています。国会攻防の合間にも、解散・総選挙を巡る駆け引きは今後も活発化しそうです。