第174回(2月16日)火種多いガソリン国会 成るか修正協議
 ガソリン税(揮発油税)の暫定税率を巡る与野党の攻防は1月末、衆参両院議長の斡旋を受けて与党が“つなぎ法案”を撤収、危機を脱しました。しかし、斡旋案は「年度内に一定の結論を得る」「合意を得たものは立法府で修正する」など玉虫色の表現が多いため、租税特措法改正案の年度内成立を明確に担保したとはいえず、修正協議も難航気味です。08年度の本予算案とともに同改正案の2月内衆院通過は難しくなってきました。 道路財源が不確定なため地方自治体も予算案が組めず混乱しており、与野党ともに政治の責任は重大になっています。 つなぎ法案撤回の与野党合意で福田政権の危機はひとまず回避され、総選挙も洞爺湖サミット以後に遠ざかったと見られますが、民主党の言う「ガソリン国会」は火種が多く、依然として炎上・爆発(解散・総選挙)の危険をはらんでいます。 自民党は世論の支持を得、一刻も早く予算・関連法案を成立させようと努力しています。私も国政に没頭していますが、皆様の深いご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

担保疑問の“玉虫”議長斡旋
 1月30日に示された両副議長立ち会いの議長斡旋案は、@総予算及び歳入法案(税制関連法案など)の審査では、公聴会や参考人質疑を含む徹底した審議を行ったうえで、年度内に一定の結論を得る  A国会審議を通し、税法について各党間で合意が得られたものは、立法府で修正する  B1,2について両院議長の下で与野党間の明確な同意が得られた場合は、セーフティネット(ブリッジ=つなぎ)法案は取り下げる――と言う内容で、河野洋平衆院議長は「年度内に一定の結論を得るとは、衆参両院で従来の審査の慣例に従う趣旨である」と口頭で補足説明しました。つまり、本予算案と関連歳入法案はここ50年来、年度内に採決(成立)していることを担保したものです。自民党の伊吹文明幹事長は記者会見で「(年度内採決は)当然だ。そうならない場合は議長が何らかの処置をとるだろう」と述べ、年度内採決は担保されたと判断、参院が税制関連法案を否決すれば、衆院の3分の2以上で再可決し、暫定税率が失効するのを回避する方針です。本予算案は参院が否決しても衆院の議決が「国会の議決」となるため、衆院通過後30日が経てば成立します。

功奏した伊吹幹事長の奇策
 両院議長の斡旋案は、伊吹幹事長が年明け、河野氏に対し、税制関連法案が年度内に成立しないとガソリン税の暫定税率が失効して国民生活に重大な影響を与えると説明し、「江田五月参院議長も入れて斡旋案を考えて欲しい」と要請。これを受けた河野氏が衆参の議長、副議長に呼びかけて会談し「与野党協議が行き詰まった場合、正副議長が協議する」ことで合意し、これが30日の斡旋の布石となりました。福田首相は幹事長に任せっきりで深く関与せず、結局は幹事長の強気の“奇策”が功を奏しました。これに対し、民主党の鳩山由紀夫幹事長は「年度内に全て終えると確約したことではない」と記者団に語り、食い違いを見せています。輿石東参院議員会長ら党幹部は「徹底審議したうえで修正合意が出来なければ、参院で否決する。与党が参院で再可決すれば年金記録漏れ問題と併せ、首相問責決議案を提出することもある」と3月末に勝負を賭けています。同党は道路特定財源の一部が道路整備に従事する国交省職員の住宅やレクレーション施設のマッサージチェア、カラオケセットなどの購入に充てられた“親方日の丸”体質も批判しています。

小泉元首相の参考人求む
 同党はガソリン税の暫定税率上乗せ分約25円の20円へ引き下げや、道路特定財源の一般財源化、暫定税率期間の短縮などを要求。同党の岡田克也副代表は衆院予算委で「公明党から2代続けて国交相を出しているのに期待を果たしていない。高規格幹線道路構想の1万4千キロは1987年のもので道路公団民営化決定後の議論で整備計画区間の9342キロ以外の道路建設について、当時の小泉首相が『すべて白紙だ』と断言した。いつの間に生き返ったのか」と質し、渡部恒三最高顧問も「小泉氏の考えが間違っていたなら考えを聞く機会を作って欲しい」と小泉氏の参考人招致を求めました。議長斡旋の「参考人の質疑を含む徹底審議」を盾に徹底的に追及する構えです。本予算案と歳入法案(税制関連)を年度内に成立させるには、30日前の2月中に衆院を通過させなければなりません。今年は閏年で2月は29日と例年より1日ゆとりがありましたが民主党が参院での07年度補正予算案の成立を2日間遅らせたこと、14日に予定した衆院本会議での税制関連法案の審議入りに抵抗したため、2月中衆院通過は日程的に厳しい状況が続いています。

民主は一般財源化と税率廃止
 「ねじれ国会」の厳しさを踏まえ、政府は、大型法案を国家公務員制度改革法案(仮称)などに限定し、提出法案を78本と例年に比べ絞っています。だが、激しい与野党の駆け引きが続く中での局面打開策は、修正協議しかありません。谷垣禎一自民党政調会長は衆院予算委で、「民主党は一般財源化すると言うが暫定税率を廃止すると2.6兆円の歳入欠陥が生じる。道路(整備)を半減すると言わないとつじつまが合わない」と指摘、民主党に対案の提出を求めました。首相も改正案の修正協議では、対案の提出が前提条件になると明言しました。これには、民主党の山岡賢次国対委員長が「対案を出すまでもなく、道路特定財源を一般財源化し暫定税率を廃止すると言っている。こんな明解なスタンスはない」とし、いつでも対案を提出できると広言していますが、審議引き延ばしを狙って出し渋っています。同党が準備している対案は、暫定税率の廃止で1兆円以上減る地方の税収対策として、@国直轄の公共事業で事業費の一部を地方が負担している制度(国直轄事業負担金)を廃止するA揮発油税の税収の一部を地方に配分する「地方道路整備臨時交付金」の配分割合を4分の1から2分の1に倍増する――などを盛り込んでいるようです。

期間短縮、一般財源化が焦点
 「宮崎では命の道路だ。暫定税率維持が一番の近道だ。ガソリン代も下げて、道路も造るという。そんなウルトラCが出来るのか」――。「宮崎・日本をドゲンカセントイカン」の東国原英夫宮崎県知事は6日、自民党本部で開かれた財政改革研究会(会長=与謝野馨前官房長官)の会合に招かれ、民主党の財源論を酷評しました。19日には財源問題をテーマに東国原氏と菅直人民主党代表代行の公開討論会が予定されていますが、民主党内にも暫定税率の存続や単なる引き下げ論、地方財源重視論、環境税振り替え論などがあって主張はバラバラです。伊吹幹事長は当初、「こちらからは修正を求めない」と述べていましたが、民主党の曖昧な主張を攻撃することが、世論の構築には早道と考え、対案の提出を要求しました。公明党もかねてから、自動車重量税の減税を主張しており、共産、社民両党も環境税化を唱えており、修正協議には応ずる気配があります。協議に入れば暫定税率の期間短縮や税率引き下げ、一般財源化、環境税へ部分振り替えなどが焦点になります。

新運動組織「せんたく」発足
 しかし、民主党は新テロ対策特措法案の時と同様、審議引き延ばしを計り、対案の提出は参院審議の大詰めまで遅らせる方針であり、予算案審議は紛糾しそうです。“3月危機”を迎える中で、政界では思惑を秘めた動きが目立ってきました。新たな政治運動組織「せんたく」=地域・生活者起点で日本を洗濯(選択)する国民連合=が1月20日に発足しました。佐々木毅前東大総長、北川正恭早大大学院教授(元三重県知事)、松沢成文神奈川県知事、東国原英夫宮崎県知事らが参加。これまで不偏不党を大原則とし、政治改革やマニフェスト(政権公約)の推進を提言してきた学者、知事、経済人などで構成する「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)が母体です。改革派知事の代表とされた北川氏は記者会見で「政府、与野党、国会の現状は国民の期待からほど遠い。今こそ霞ヶ関主導から脱却し、国民による国民のための政治を目指す」と平成の民権運動を唱えました。

再編・超党派議連呼びかけ
 「日本を今一度せんたくいたし申候」――これは幕末の志士・坂本竜馬が故郷の姉・乙女に宛てた手紙の一節ですが、「せんたく」はこの言葉にちなんで名付けられました。竜馬は勝海舟を「日本第一の人物で天下無二の軍学者」と持ち上げ、弟子になった喜びを乙女に伝えました。その時の感動した言葉がこれで、木村幸比古氏は「日本…申候」をそのまま題名にして祥伝社から出版しています。竜馬は土佐藩船「夕顔丸」の船中で、後藤象二郎に大政奉還の構想を語った「船中八策」でも有名です。「せんたく」は政界再編を睨み、次期衆院選を政権選択選挙とするため、政策論議を通じて超党派議連の結成を呼びかけています。これに呼応して、地方分権改革など政策論議を行うことを目的に、自公民3党の有志50〜60人が2月中にも「せんたく議員連合」(仮称)を発足させます。発起人は自民党から河村健夫元文科相、菅義偉前総務相、杉浦正健元法相、園田博之政調会長代理らの就任が内定、民主党からは野田佳彦元国対委員長、枝野幸男元政調会長,玄葉光一郎元選対委員長が参加、公明党にも発起人へ参加を呼びかけています。このように、今後も政界の激動を予測して、派閥や個人間の色々な合従連衡が強まるものと予想されます。