第172回(1月16日)緊迫の通常国会 テロ特措法再可決
 延長国会は、首相と小沢一郎民主党代表の党首討論が新春早々の9日に開かれた後、11日に懸案の新テロ対策特措法案が衆院で再可決されてようやく成立、閉幕しました。

 3日後の18日には会期150日間の通常国会が召集されます。新法成立で国際公約を果たした首相は、政局の最大焦点である衆院解散・総選挙を7月の洞爺湖サミット以降に先送りする意向で、当面は08年度予算案の年度内成立に全力を挙げています。厳しい国会運営を配慮して与党内で期待が高まっていた国会前の内閣改造は断念しました。
 対する民主党は、予算関連法案に徹底抗戦し早期解散に追い込もうとしており、通常国会は4月の“話し合い解散”を含め、冒頭から解散ムード一色の中で緊迫した攻防が展開されます。前号で予告した通り、揮発油税の暫定税率と年金照合作業の期限が切れる3月末が最大のヤマ場となりそうです。
 
 常在戦場の中で私は腹をくくって国政と取り組んでいますが、総選挙の年に当たり、今年こそ倍旧のご支援、ご鞭撻を賜りますよう重ねてお願い申し上げます。

日程不足で居抜き内閣継続

「今の閣僚は一生懸命、政策課題に取り組んでいる。就任して日が浅いし、これから実力を発揮する人もいるかも知れない。通常国会と(臨時国会)の間隔も短い。現閣僚に引き続きやって頂きたい。08年度予算案を3月末前に成立させたい。政策実行のため民主党とも十分話し合う機会を持たなければいけない」――。首相は4日の年頭記者会見で内閣改造を見送る考えを表明しました。
 通常国会前の内閣改造論は昨年末、政権浮揚策の1つとして与党内から出ていました。福田内閣は安倍内閣の17閣僚のうち13人を再任、2人のポストを変更、新人は2人という、第1次佐藤内閣と同様の“居抜き”で発足したことから、森喜朗元首相が「自分の思う通りの内閣を作って国民に訴えるべきだ」と進言。入閣待望組を抱える各派閥の領袖を中心に党内でも改造の期待が膨らんでいました。首相もこれに配慮し、新テロ対策特措法案が12日までに成立するかどうかを党幹部に確認し、通常国会開幕前の改造を検討、昨年末の訪中では同行記者団に改造を示唆していました。


改造、解散はサミット成功後

しかし、@臨時と通常国会のすき間は2日間しかなく、改造は日程的に苦しいA閣僚候補の身辺をめぐる「身体検査」には時間的余裕がないB長丁場の国会に向けて新閣僚の答弁準備が間に合わない――などの懸念が生じ、断念せざるを得ませんでした。
 とりわけ、安倍内閣のように新閣僚に「政治とカネ」の問題が発覚すれば、福田政権の命取りとなるため、党内にも「やむを得ない」との受け止め方が広がり、「サミットを成功させ、内閣改造で清新なイメージを打ち出して衆院選に臨んだらどうか」と、福田氏自前の内閣作りも解散と同様、サミット後に先送りする見方が強まっています。首相は7月7〜9日に北海道洞爺湖で開くサミット(主要国首脳会議)の議長国としての責任を強く意識しており、解散はサミット以降にしたいと考えています。
 09年夏の東京都議選を重視する公明党も「衆院選と都議選の準備が重なることは避けたい」(創価学会幹部)との意向で、太田昭宏代表は4日の党幹部会で、「解散は秋以降が望ましい」と述べています。


民主はカタログ・ネット販売

一方、小沢民主党代表は元旦、都内の自宅で開いた新年会で「衆院で過半数を実現する。体力の及ぶ限り全力で頑張る。政権を変えない限り日本の将来は暗澹たるもので国民にとって最終選択の機会だ。火の玉になって、何が何でも衆院で過半数を制する決意だ」と闘志をむき出しにしました。
 4日の伊勢神宮参拝後の記者会見でも衆院選での政権奪取の決意を表明し「候補者擁立を出来るだけ速やかに進めたい」と強調、自民党との大連立については「政権を変える以外に方法はない」と否定しました。鳩山由紀夫幹事長も「洞爺湖サミットの議長は我が党の小沢代表だ」と息巻いています。これに対する自民党の伊吹文明幹事長は6日のNHK番組で、「今年は『偽』から脱却の年。政治、政治家にとって公約は品質表示だ。必ず実行せねばならない」と述べ、年金問題での内閣の説明不足が支持率を下げたと釈明しつつ「野党はカタログ、ネット販売で、誰も、1度も商品を手に取ってみたことがない。商品はクーリングオフできるが、選挙ではオフが出来ない。野党政策の財源も約束手形に過ぎず税法の改正なしでやれるものはない」と選挙戦術を酷評しました。


低調・迫力不足の党首討論

このような対決ムードで激動の子年は明けましたが、9日の党首討論は迫力不足に終わりました。読売は社説で、「政治の停滞打破のため、2大政党の党首は何をすべきと考えているのか――。喫緊の課題での真剣な議題を期待した有権者はさぞ多かったろうが、党首討論はそれを裏切る結果に終わった」と書き出しています。
 確かに、昨年5月の前回党首討論から200日以上が経過し、「空白期間」は過去最長となった福田政権発足後初の党首対決でしたが、小沢氏は45分間の討論のうち、冒頭から約30分間を年金記録問題に費やし、残りを自衛隊海外派遣に充て、昨年11月の党首会談で浮上した「大連立」構想などは封印する低調ぶり。これに首相が「ごもっともな話」と丁寧語を連発して応答するなど、論戦は全く盛り上がりを欠いていました。町村信孝官房長官は「首相と小沢氏らしい、落ち着いた大人の雰囲気だった」と評価しましたが、伊吹幹事長は「極めて事務的な、厚生労働委員会でやるような話で、もう少し大局的な話が欲しかった」と批判しています。


期限の3月末が最大ヤマ場
 さて、越年国会は11日朝、懸案の新テロ対策特措法案を、野党が参院本会議で否決したため、憲法の規定により与党が3分の2以上の勢力を持つ衆院で再可決し、同日夕に成立しました。再可決は57年ぶりです。
 一方の薬害C型肝炎被害者の一律救済法案は僅か5日の審議で与野党が賛成し、同日成立しました。民主党が福田首相の問責決議案の参院提出を見送り、温存したことから延長国会は15日閉幕。3日後に通常国会が開かれます。会期は6月15日までの150日間で、18日の首相の施政方針演説など政府4演説、21〜23日まで衆参両院で代表質問を行った後、07年度補正予算案の審議、続いて08年度予算案の総括審議など切れ目ない日程が組まれています。国会は揮発油(ガソリン)税の暫定税率維持を含む租税特別措置法案や年金の記録漏れなど、国民生活に直結する問題を巡り激しい攻防が展開されますが、揮発油暫定税率と年金照合作業の期限が切れる3月末が最大のヤマ場となります。民主党はこれに照準を合わせ、首相問責決議案を「切り札」として温存しており、タイミングよく提出して解散・総選挙に追い込む構えです。


揮発油税で欠席・造反期待

 与党内、特に参院自民党は、暫定税率が3月に期限切れとならないよう、予算関連法案のうち道路関連だけを分離して提出し、野党が抵抗して参院で採決しなくても、憲法で定めた「否決と見なす」60日ルールを適用して成立させるため、1月末までに租税特別措置法案の衆院通過を図るべきだとの声を高めていました。
 だが、伊吹幹事長は「租税特措法案は通例、2月提出だが、これを1月25日に出す」と日程を早めながらも、6日の
テレビ番組では、「1月いっぱいに(衆院で)議了することは国会対策上無理だ」と厳しい認識を示したうえ「2月中旬までに通すよう民主党にお願いしたい」と協力を呼びかけました。
 伊吹氏は「暫定税率が切れると国税収入は1兆7000億円減り、道路特定財源から地方に譲与する税は9千億円もあり、地方税収にそれだけ穴が開けば、救急医療、災害時救援に必要な地方の道路整備は出来なくなる」と記者会見で述べています。
 自民党執行部は@民主党の一部も含め国民新党など野党の道路族には民主党提唱の暫定税率廃止に反対する層が多いA新テロ特措法では民主党が呼びかけた継続審議を他の野党が拒否した――などから、参院本会議で野党の欠席・造反組が出て足並みが乱れることを期待しています。



古賀・谷垣派合流し態勢固め

こうした中で、旧宮沢派の流れを汲む我が古賀派と谷垣派が合流し、5月13日に新派閥の政治資金パーティを開く方向で、幹部間の大詰め調整が進んでいます。
 古賀派(46人)と谷垣派(15人)は、宮沢派を継承した加藤派が2000年11月の森内閣不信任決議案の対応を巡り分裂して別れていました。
 合流すると町村派(84人)、津島派(68人)に次ぐ第3派閥の61人の勢力となります。
 同じく宮沢派を分裂した麻生派(旧河野派)を含む大宏池会の復活ではなく、中宏池会の結成となります。新派閥の会長には所属議員の多い我が派の古賀誠選挙対策委員長が就任、事務所も古賀派事務所のある東京・赤坂の日本自転車会館に置く案が有力です。総裁選出馬の経験がある谷垣禎一政調会長は、新派閥の総裁候補格と見なせるよう、ナンバー2の代表世話人となる見通しです。このように我が派も総選挙に向けて臨戦態勢が固まってきました。