第166回(10月16日)新法の攻防激化 総選挙対策も
 安倍前首相の退陣で3週間近く空転した臨時国会は、福田首相の所信表明演説が行われた10月1日から再開され、テロ対策特措法の延長を巡って与野党が激突しています。首相は参院の与野党逆転を踏まえ対話路線を進めていますが、野党は解散・総選挙に追い込むとの執念から重要政策の話し合いに乗ってきません。政府与党はテロ特措法の延長を諦め、インド洋上での給油活動を継続する「新法」について提案前に協議を申し入れましたが、民主党は「談合には応じない」と拒否しました。衆院決算行政監視委では、首相と田中真紀子元外相の論戦もあり、“親子・角福戦争”の見せ場があって国民の関心を高めました。私は衆院テロ対策特別委に属し、新法の衆院通過に全力を挙げています。また、解散風が吹き出した中で、九州担当の副幹事長として総裁直属の党4役である古賀誠選挙対策委員長のもとで、九州地区の公認候補調整や組織固めなど総選挙対策を補佐する役割を果たしています。緊迫政局が続きますが、皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。

まず野党に協力呼びかけ
 首相は所信表明演説で「国民生活を守り、国家の利益を守ることこそ政治の使命である。野党の皆様と、重要な政策課題について誠意を持って話し合いながら国政を進めたい」と述べ、政権構想や政策課題に言及する前に、まず野党に協力を呼びかけました。小泉元首相の「自民党をぶっ壊す」や、安倍前首相が「戦後レジーム(体制)からの脱却」と大見得を切ったのに比べるといかにも地味。プライマリーバランスも「基礎的財政収支」と日本語で表現するなど安倍氏が好んで使ったカタカナ語や派手なキャッチフレーズは消え、新機軸の政策メニューも見当たらない堅実な演説でした。政策面では小泉、安倍両政権が掲げた構造改革路線を維持するとの基本姿勢は示しながらも、改革の影の部分である格差問題に「きちんと処方箋を講じていく」と述べ、「自立と共生」を基本に政策を実行していく決意を表明しました。福田流の協調姿勢と飄々とした穏やかな物言いで安倍路線からの転換を鮮明に打ち出していますが、これが国民に安定感を与え、内閣支持率も上昇中です。

鳩山氏は談合せずと対決姿勢
 代表質問のトップに立った民主党の鳩山由紀夫幹事長は「首相指名では衆参の意思が分かれた。直近の民意は(民主党が第1党になった)参院側にある。首相の最初の仕事は衆院を解散し、総選挙で国民の審判を仰ぐことだ」と切り出し、「民主党は談合のような密室協議にはお付き合いしない。国会の場で議論し協議する」と対決姿勢をむき出しにし、首相の唱える「自立と共生」は、友愛精神を謳った民主党のマニフェスト(選挙公約)の盗用であると指摘しました。参院の代表質問でも同党の輿石東参院議員会長は、福田首相が昨年の総裁選で、安倍前首相の有力対抗馬と目されながら出馬を見送った経緯を取り上げ、「今回はみんなが担いでくれて勝てそうだったから立候補したのか。負ける戦いはしないのが貴男の政治哲学か」とのっけから意地悪質問し、「首相としての明確な政策も強い情熱もないのか」と噛みつくなど、これまた対決ムードに終始しました。

伊吹氏はばらまき政策批判
 これに負けずに、自民党の伊吹文明幹事長は、小沢一郎民主党代表に矛先を向け、「日本政治の一翼を担う参院第1党の党首に国会で質問は出来ないが、敢えて国民に判断をお願いするために指摘する」と前置きして、インド洋上での自衛隊の給油活動に反対する小沢氏に対し、小沢氏著書の「日本改造計画」の中にある「外交の1つの信念は、米国との緊密な関係の堅持にある」という1節を取り上げ、「著書の通りならば、給油活動の継続で国際社会の信頼に応えるべきだ」と迫りました。また、同書が「国民に構造改革の痛みを強いる内容だった」と指摘し、民主党が参院選で掲げた農家への個別所得補償など“ばらまき政策”を例示して、「小沢代表は今、席を立たれたようだが、国民にはうれしい公的助成策で、『日本改造計画』のお考えから見事な変身を遂げられた」と皮肉たっぷりに攻撃しました。ところが、当の小沢氏は「あんな質問に付き合って聴いていたってしょうがない」と周囲に漏らして退席し、伊吹氏が質問している間は党役員室に籠もってしまいました。

親子角福戦争、参院先議続出
 このように国会は冒頭から両党幹部らが白熱した論議を繰り広げましたが、民主党2番手の長妻昭氏は年金問題に絞って80項目もの質問を浴びせ、まるで予算委さながらの質疑を展開。それでも首相は、関係閣僚に答えさせず、質問以上に時間をかけて丁寧に答弁しました。9日からは論戦の舞台は衆院予算委に移りましたが、野党は年金問題、安倍内閣で起きた遠藤武彦前農相の辞任を巡る政治とカネの問題などで国政調査権をフルに発動して資料を要求、厳しく政府を追及しました。12日の衆院決算行政監視委では民主党・無所属クの田中真紀子元外相が「背水の陣内閣」と命名したことを取り上げ、「ほとんどが前の内閣の閣僚を引き継いだ『安倍康夫』内閣で難局をしのいでいけるのか」と厳しく指摘したのに対し、首相は「励ましと受け止めた。しっかりやっていきたい」と軽くかわしました。首相は田中氏が外相を更迭されたときの官房長官で、官邸から外務官僚に指示を出し、「影の外相」と言われたほど犬猿の仲でした。民主党は、参院先議の法案として年金保険料の給付以外への流用を禁じる年金保険料流用禁止法案、1円以上の事務所費などの領収書添付を義務づける政治資金規正法改正案、参院選のマニフェストに掲げた農業者戸別所得補償法案を提出し、優先的に取り組む構えです。ほかに、被災者生活再建支援法改正案、障害者自立支援法改正案、特定肝炎対策緊急措置法案、イラク特措法廃止法案の提出を予定。テロ対策特措法の関連ではアフガニスタンでの民生支援に関する対案を示し、前通常国会で廃案になった「天下り根絶法案」は来年の通常国会に先送りする考えです。

民主を協力勢力に取り込め
 「人生には上り坂も下り坂もある。もう1つある。『まさか』という坂だ。まさか安倍さんがあのような形で退陣するとは思わなかった」――。小泉元首相は4日、町村派の総会に約6年半ぶりに出席し、与野党政権交代もあり得る「まさか」の政局に常在戦場の気持ちで臨むようハッパをかけました。さらに、「我々(福田派)は反主流で、小沢さんのグループが(田中―竹下派の)主流派だった。今(町村派が)4代続いて総理を出して主流派になった。民主党が今(自民党の)反主流と考えてもいいのではないか。似たような政策がありながら、反対している面もある。国会で政策論争する場合は協力政党と思った方がよい」と述べ、小泉氏が自民党を郵政民営化の「抵抗勢力」と呼んだのとは対照的に、民主党を「協力勢力」として取り込むよう訴えました。首相も衆参ねじれ国会を意識し冒頭から野党の協力を求めて低姿勢で臨み、対話路線を我慢強く継続する方針です。

威力発揮するか民主党パイプ
 安倍改造内閣では民主党にパイプを持つ対民主党シフトを構築しましたが、首相はその人事メリットを生かし“居抜き”の組閣を行いました。例えば、小沢氏に担がれて建設官僚から小沢氏の牙城・岩手県で出馬し、同県知事を3期務めた増田総務相と、かつて民主党副代表を務め鳩山兄弟で政治塾を開く鳩山邦夫法相を留任させています。保守党を率いて自民党に合流した二階俊博総務会長は、小沢代表とともに自民党を離党後長く行動をともにして、一時は“小沢側近”と見られたほどに小沢氏の戦略を熟知しています。これら民主党とのパイプを持った多くの人材が今後、テロ対策特措法の延長問題や年金問題でも民主党と政策調整を図りますが、この民主シフトが小泉氏の言う「協力勢力」との舞台裏の駆け引きで、国会対策や総選挙対策にどのような威力を発揮できるか、注目されます。

私の衆院テロ対策委が主戦場
 さて、国会は閉幕の11月10日まで1カ月足らず。衆院ではテロ対策特措法の延長となる「新法」を、参院では民主党提出の年金保険関連法案が焦点となり、それぞれの成立を目指し論戦の火花を散らしています。9日から17日までの衆参予算委審議でインド洋上給油に関する問題点はほぼ出尽くしましたが、いよいよ衆院テロ対策特別委が主戦場となり、委員の私も質問に立ちます。テロ対策特措法は11月1日に期限が切れ、失効となるため、会期延長問題を含めてこれからの攻防が最大のヤマ場になります。政府は17日の閣議で新テロ特措法案を決定、国会に提出しますが、野党が参院で「新法」を否決または60日間に議決しない場合は、会期を延長して衆院で再議決しなければなりません。再議決すれば野党はおそらく参院で首相の問責決議案を提出し、それが可決されます。衆院の内閣不信任案と違って、問責決議案が可決されても解散・総選挙または総辞職の必要はありませんが、暮れに向けて世情は騒然とし、来年度の予算編成どころではなくなります。

まさかに備え総選挙対策強化
 現行法が失効すれば国際信用は確実に失墜しますが、それを避けるために衆院での採決を強行するか、それとも新法を継続審議とし来年1月の通常国会冒頭に処理するか、決断を要するところです。いずれにせよ、野党への政権交代などという「まさか」の事態を避けるため、野党との政策協議を進めるだけでなく、和戦両様の構えで総選挙態勢も固めねばなりません。民主党は解散を唱えながら、衆院の小選挙区は90数人の候補が空席で懸命に候補者を公募中ですが、有力な候補が見当たらず、やむを得ず野党選挙協力を呼びかけているのが現状です。我が党は参院選で民主党に流れかけた農村票を奪回するため、古賀選挙対策委員長が菅義偉・前選挙対策総局長(古賀派)を副委員長に起用、9派閥の幹部を選対委員に充てました。古賀氏は地方組織固めのため、早くも全国遊説に乗り出しましたが、私もテロ対策の新法が衆院を通過するのを待って、九州担当の副幹事長として古賀氏のお供で地方行脚しようと、委員会審議の傍ら、遊説計画を練っているところです。