第162回(8月16日)改造で人心一新 激突の臨時国会
 猛暑お見舞い申し上げます。与党惨敗の参院選を受けた臨時国会は8月7日に召集され、参院議長に民主党の江田五月氏(元科技庁長官)、副議長に自民党の山東昭子氏(同)、参院議運委員長に民主党の西岡武夫氏(元文相)を選出、4日間の会期を終えました。参院運営の主導権は野党に握られ、「ねじれ国会」が浮き彫りになりました。秋の臨時国会で、野党は11月1日に期限切れとなるテロ対策特措法改正案に反対するほか、郵政民営化凍結法案などを提出、徹底抗戦する姿勢です。続投を貫く安倍首相は、8月19日〜25日までインドネシア、インド、マレーシアを訪問、帰国翌日の26日に党役員人事、27日に内閣改造を一気に断行、人心一新を図り体勢を立て直す構えです。このため、自民党内では、続投批判を絡めた非主流派のけん制、安倍支持派の猟官運動などが活発化しています。会期100日程度の臨時国会は9月中旬にも開かれますが、冒頭から激突、解散・総選挙含みで推移しそうです。まさに常在戦場。大敗の後だけに心を引き締めて政局と立ち向かいますが、皆さんの倍旧のご支援、ご鞭撻を賜りますよう、切にお願い申し上げます。

党内に首相退陣論高まる
 「総理は一度身を引いて、どこが悪かったのか議論しないと難しい」(中谷元・元防衛庁長官=谷垣派)「国民は政権の交代を求めたのではなく、ピッチャー交代を求めたと思う」(小坂憲次・前文科相=津島派)――。臨時国会召集日の代議士会で、非主流派の議員が「退陣論」を炸裂させました。その直前の両院議員総会でも、「特に政治とカネの問題について、国民が1票に託した声に耳を傾けねばならない」と力説する首相に対し、石破茂・元防衛庁長官=津島派)が「どこに反省しているのか、具体的に明らかにして欲しい」と迫っています。石破氏は参院選直後の党総務会でも「総理は『私か、小沢民主党代表の選択だ』と何度も訴えた。これを有権者にどう説明するのか。挙党一致は答えにならない」と首相の退陣を促しました。首相続投には各派閥の領袖が支持を与えましたが、このように首相の面前で退陣論が噴出するのは異例なこと。マスコミも一致して「首相が『安倍か小沢か』の政権選択を追って結果、国民は不信任票を突きつけた」と報じたことから、党内では首相の責任論が日を追って高まっています。小坂氏や園田博之・元官房副長官ら非主流派議員6人は8月8日に会合を開き、政策転換を促す派閥横断グループを結成することを決めました。これをマスコミは、「反安倍的な行動を起こした」と見ています。

ガス抜きか、人事けん制か
 代議士会での発言は、党執行部が暗黙の了解を与えた“ガス抜き”か、それとも非主流派が「挙党一致内閣」人事を目指す首相をけん制した動きか、判然としませんが、人事や政策に対する各派の注文が増えているのは事実です。首相の続投については、森喜朗元首相、青木幹雄参院議員会長、中川秀直幹事長の3人が参院選投開票日の29日午後、都内のホテルで会い、「30台後半の議席では首相の辞任は必至」との見方を一時固め、青木、中川両氏の辞意表明と同時に、「続投は難しい」と伝えていたことが明らかになっています。首相の進退が問われる「責任ライン」について、投票前の党内では「橋本龍太郎首相退陣の44議席(98年参院選)はグレーゾーン、30台議席(宇野宗佑首相退陣の89年)なら総辞職」という声が多かったことから、3者会談では「続投困難」と判断したものです。しかし、首相はテレビが惨敗を伝える中で、「どういう事態になっても辞めない」と素早く森氏に電話し、「反省すべき点は反省するが、改革を進め、新しい国造りのために総理としての責任を果たさなければならない」と続投の意向を記者団に表明しました。

ジンクス意識し続投宣言
 続投決断の裏には「長期政権の後には短期政権が続く」というジンクスが首相の脳裏をかすめたからでしょう。7年8カ月の佐藤栄作政権の後は82年の中曽根康弘政権の誕生までの10年間に5人の首相が誕生。中曽根政権5年間の後は竹下登氏から森喜朗氏まで14年間に10人の首相が生まれては消えています。5年5カ月の長期政権を担った小泉前首相の後継者となれば短命説が喧伝されてもおかしくはありません。仮に安倍退陣なら8月のお盆前にも短期決戦の総裁選が行われ、衆参両院議員と都道府県代表により「ポスト安倍」が選出されていたはずです。首相の続投決断には、小泉純一郎前首相が「辞めろなんてとんでもない。(私が)1年か2年で辞めていたら(実績を残せず)こんなところへ来れなかった。首相には鈍感力が必要だ」と鹿児島市内の遊説で述べたこと。中川氏が「参院選は政権の中間評価の選挙で、退陣なんてあり得ない」と続投を支援していたことが、首相の大きな精神的支えとなっています。

老壮青、適材適所の派閥均衡
 首相にとっては「進むも地獄、退くも地獄」の毎日ですが、1週間のアジア3カ国訪問直後の27日に人心一新のため、内閣改造と自民党役員人事を断行します。首相は従来通り、派閥の推薦人事は避けて内閣を全面刷新し、内閣の“要”となる官房長官には重鎮を起用する実力者内閣を目指していますが、残念ながら人材不足。結局は民間人も起用し、老壮青のバランスが取れ、適材敵所を軸とした派閥均衡人事となりそうです。民間人の許容枠は10人もあることから、政治記者は「岡山での“姫の虎退治”に敗れた片山虎之助参院幹事長を民間枠で起用し、バリバリ仕事させるような野党の意表を突く人事があってもいい」と気軽なことを言っていますが、国民の期待を集める新陣容で政権の求心力を回復し、しっかりと態勢を立て直して欲しいと願っています。さて、今後の政局はどうなるか。秋の臨時国会では私が理事を務める衆院安全保障委員会でのテロ対策特措法改正案が最重要課題です。国際社会の信用を維持するためにも必ず成立させなければなりません。

首相問責決議案提出で法案阻止
 しかし、参院第1党となった民主党は僅か4日の会期の臨時国会でも「年金保険料流用禁止法案」を提出、国民新党が期待する郵政民営化の実施時期を凍結する「郵政民営化凍結法案」を民主、社民、国民新党の3党共同で提出しました。これは全くのパフォーマンスであり2法案は一回も審議せず廃案になりました。野党は秋の臨時国会に再提出し2法案の成立を目指しますが、特に民主党は野党共闘でテロ特措法案を断固阻止する構えです。野党が過半数で法案を否決・修正しても、与党は衆院に差し戻して3分の2以上の多数で再議決すれば成立します。また衆院通過後60日間に野党が否決しない場合は成立と見なされます。そこで、特措法が1月1日に期限切れとなる2カ月前に審議入りしたいと、8月31日の国会召集を検討しましたが、改造で「新閣僚の準備期間が少ない」などの与党の意見を踏まえ、9月8〜9日に豪州・シドニーで開くAPEC首脳会議から首相が帰国するのを待って同月中旬に開催することになりました。開会と同時に首相の所信表明、各党代表質問、衆参両院での予算委を短期間で済ませ、直ちに特措法改正案の審議入りする方針ですが、大事をとって会期は100日間を予定しています。野党は首相や閣僚の問責決議案を提出してでも廃案に追い込む姿勢です。

解散3ケース、年内解散もあり
 「首相が狙うのは来夏の洞爺湖サミット後の解散、少し繰り上がって来年度予算案が衆院通過する来春解散、臨時国会が混迷する今秋解散の3ケースあるが、可能性が最も高いのは次期通常国会冒頭の1月解散」などと、政治記者は勝手な予測を立てていますが、臨時国会が荒れ模様になれば、年末解散も当然あり得るわけです。党では今月末までに参院選敗北の総括を進めていますが、年金記録問題で逆風が吹く中、自民党は相次ぐ談合事件でゼネコンなど建設業界や地方の農村など従来の支持母体の基盤を固められなかったのに加え、都市部ではフリーターなど無党派層からもそっぽを向かれたのが大敗の原因です。国民の間に広がった政治への「不信」と将来への「不安」が有権者の批判となって現れました。事務所費問題など「政治とカネ」を巡る閣僚の不祥事や相次ぐ失言など政治不信、「年金記録漏れ問題」が引き起こした行政不信、都市と地方間の格差、非正規社員が増大する雇用の格差、地方税の増額と消費税引き上げなど将来へ増大する生活不安が民意に表れたと言えましょう。国民は自民党に“お灸”を据えるべく内閣不信任を表明しました。

きめ細かい政策で総選挙闘う
 民主党は「全農家に戸別所得保障制度で1兆円支出」などと“ばらまき政策”で勝利しましたが、責任ある政権政党として我々は、これから始まる来年度予算編成で、農漁民の心を取り戻す温かい農漁村政策、地方のシャッター通りをなくす格差是正策、高齢化の福祉対策などきめの細かい政策をどしどし打ち出さなくてはなりません。射程距離に入った解散・総選挙は、まさに政権交代を賭けた天下分け目の闘いとなります。政府は8日、08年度予算の大枠を定める概算要求基準(シーリング)を決めましたが、この夏は私も精一杯、国民に安全と安心をもたらす新規政策の策定に貢献したいと考えています。