第159回(7月1日)1週間延期の参院選 首相は背水の陣
 国会の12日間会期延長で、参院選は7月12日公示、29日投開票と1週間延期されました。
会期延長は「公務員制度と社会保険庁の改革は、まさに戦後レジームからの脱却だ」と執念を燃やす首相が、自民党執行部を説得してようやく実現したものです。
 投票日の1週間繰り下げは、ポスター日時の手直し、演説会場の変更など経費増を伴ううえ、過去の会期延長後の参院選でも宇野宗佑、橋本龍太郎両内閣が退陣するなど与党が苦戦したケースが多いことから、参院の反対意見が強く、青木幹雄参院議員会長らは「参院選敗北なら首相が責任をとる」ことを“暗黙の了解”として会期延長に応じています。
 谷垣禎一前財務相も「与党が過半数を目指すのは当たり前。出来なかった時にどうするかは当然議論される」と講演で述べ、首相の結果責任が問われるとの見方を示しました。それだけに首相は6月中旬に我が地元の長崎、佐賀両県にも応援演説に来るなど1人区を重点に回り、背水の陣で臨んでいます。
 しかし、年金問題で急落した内閣支持率はなかなか回復せず、苦しい闘いを続けています。私も県連選対本部長として、長崎選挙区の小嶺忠敏候補、比例区の丸一芳訓候補の当選に全力を挙げているところです。なお、公示後、選挙関係の記事は公選法に触れるため、投開票日までメッセージを休載致します。どうかご理解下さい。

延長した宇野、橋本内閣退陣
 「苦労知らずの『仲好し官邸団』の諸君よ。参院は官邸の下請けと違うんやで。会期延長したときは2回とも大敗してるんや。これぐらいの事、知っときや」――。鴻池祥肇元防災相は6月20日付メールマガジンで、国家公務員法改正案を通すために会期延長した官邸サイドを痛烈に批判しました。89年にリクルート事件で退陣した竹下登内閣の後を継いだ宇野内閣は遅れた予算関連法案を処理するため25日間延長して改選69議席が36議席に激減、98年の橋本内閣は総合経済対策の補正予算案を通すため8日間延長して同60議席が44議席に落ち込み、大敗しています。
 兵庫選挙区で戦う鴻池氏は同法案を審議する参院内閣委の筆頭理事として、選挙日程を変更してまで同法案をごり押ししてくる官邸に強い不満を表明したものです。前回のHPで説明したように、首相は同法案の今国会成立を一時は断念し、ドイツのG8サミットに出発しました。青木氏が衆院審議大詰めの5月末、参院出身の鈴木政二官房副長官を国会内に呼び出し「会期内はもちろん、5日間の延長でも成立は保証できない」と述べ、衆院段階での継続審議を求めたからです。

公務員・社保庁改革で信問う
 しかし、首相がそれなりの外交成果を挙げて帰国しても、年金問題が燃えさかり、内閣支持率の低下は一向に止まりません。そこで、首相は「内閣支持率に一喜一憂はしない。愚直に戦う」との決意を固め、反転攻勢の材料として官製談合の温床である天下り規制のための公務員制度改革と社保庁改革を断行、国民の審判を仰ぐことにしました。首相は15日夜、公邸に青木氏、中川秀直幹事長、片山虎之助参院幹事長を密かに招き「官製談合、天下りは国民の関心が高いので、国家公務員法改正案は何としてでも通したい。社保庁の改革とともにどうしてもやりたい」と要請しました。
 参院自民党内には、@参院民主党とのパイプを生かして話し合いを進め、参院選日程に影響のない5日間延長に止めるA委員会審議を打ち切り、中間報告を求め、本会議で強行採決する――の2論がありましたが、参院内閣委は民主党が委員長を占めていて国対折衝は難しく、青木氏も「きちんと審議時間をとらないと参院無用論につながる」として、最終的には首相の懇請を受け入れました。

首相の責任担保に青木氏了承
 その代わり、青木氏は翌日の講演で「責任者は安倍総理。勝敗ラインは過半数。責任の存在をはっきりして戦うのが今度の参院選だ」と「首相の責任論」に言及しました。
 桝添要一参院政審会長も「投票日をずらすなんて百害あって一利なし。首相は裸の王様だ」と毒づいていましたが、会期延長決定の22日には「首相がお決めになったわけだから(敗れたら)トップが責任をとるし私も執行部の一員として責任をとる」と述べ、お手並み拝見の姿勢です。
 これに対し、中川幹事長は「参院選は政権の中間評価の選挙だから、過半数を割ったくらいで退陣はあり得ない」とテレビ番組で首相を庇いました。森元首相、小泉前首相も同様の考えを示しています。
 中川氏は、前回の参院選では当時の安倍幹事長が僅差で敗れても引責辞任し幹事長代行に降格したことを念頭に、「私は政治責任を賭けてやっている」と述べ、敗北した場合は引責辞任する考えを示しました。一方、民主党の小沢一郎代表も同じ決意を表明しており、敗北の場合は潔く責任をとる姿勢を示唆しています。

1人区は10勝も出来ないか
 「23日の閉会は決まっているのに、衆院から不安定なまま法案を持ってこられた。いつも最後のしわ寄せが参院にきて、落ち着いた審議が出来ないのは不本意だ」――。今期限りで引退する扇千景参院議長は21日、与党幹事長の会期延長申し入れにこう苦言を呈しました。
 参院には、政治資金規正法改正案、社保庁改革法案、年金時効特例法案、国家公務員法改正案などが目白押しですが、民主党はこれら重要法案が本会議で採決する前に、他野党と組んで首相問責決議案を、衆院では内閣不信任決議案を提出、徹底抗戦する構えで数日間は荒れ模様です。
 果たして会期延長は与党にとってプラスかどうか。党内には「1週間経てば年金の逆風も多少は和らぐし、夏休みに入れば投票の出足が鈍り、野党に流れる無党派層の批判票が減る。組織政党の自公にとっては有利だ」との楽観論もあります。
 だが、会期延長が決まった日の夜、都内の料亭で開かれた自民党各派の事務総長の会合では、「現状のままでは29の1人区は19どころか10勝もできない」との見方で一致し、無党派層、若手層や地方を重視した対策が必要だとする意見が相次いで出されました。

タレント、スポーツ選手も打診
 各党にとっても無党派層の支持取り込みは最重要課題です。国会の攻防をよそに、各党の候補者選びは大詰めを迎えています。安倍首相は5月16日、テレビ朝日の丸川珠代アナウンサー(同日付けで退職)を首相官邸に呼び、改選定数が4から5に増えた東京選挙区からの出馬を自ら要請、中山恭子首相補佐官(拉致問題担当)にも比例区の出馬を求めました。自民党はテレビでおなじみの丸山和也弁護士、ヤンキー先生こと義家弘介氏も比例区で擁立、サッカーJリーグで100得点をマークした得点王の三浦知良選手らスポーツ選手や歌手にも出馬を打診しましたが、三浦選手は所属する横浜FCの広報を通じて断り、「カズなら200万票は軽かったのに」と期待する党の幹部を失望させています。首相が党総裁選で言及した「勝ち目の薄い候補者は差し替える」問題は、参院自民党が強く反発しましたが、佐賀選挙区で立候補を予定していた現職の陣内孝雄元法相が5月15日に辞退を表明してようやく差し替えに成功。首相構想が実現しました。

首相の「候補差し替え」成功
 成功の理由は陣内氏が73歳と高齢のうえ、本人が理事長を務めた佐賀商工共済協同組合の破産を巡る訴訟の判決が6月22日に出され、損害賠償が命令されて情勢が厳しくなると判断した党執行部が辞退を促していたからです。本人が自発的辞退の形を取ることで、首相の強権発動はしなくて済み、差し替え問題は陣内氏1人で決着。後任には川上義幸佐賀県副知事が決まりました。一方、党執行部の説得で昨年末に石川選挙区への出馬断念を表明した現職の沓掛哲男前国家公安委員長は無所属で立つ意向を示し、執行部を慌てさせましたが結局断念しました。野党も著名人のスカウトには力を入れており、民主党は女子プロゴルファーの横峯さくらさんの父親横峯良郎氏を比例区に擁立したほか、郵政解散で敗れた衆院議員を比例区に鞍替えさせて8人が出馬します。社民党は前東京都国立市長の上原公子氏を比例区に立てるほか、首相が改憲を参院選の争点にしたため、同党は党是の「護憲平和」を掲げて対決姿勢を鮮明にし、「100万票取れる人」として土井たか子前党首(元衆院議長)に比例区出馬を要請しました。だが、かつては参院選の勝利で「山が動いた」と歓喜した土井氏も、今は50万票取れるかどうかも難しいといわれ、さらに「谷が割れる」事態となって党が消滅する恐れもあると感じたのか、出馬を断念しています。

小泉氏に比例区出馬を期待?
 参院選後のキャスティングボートを狙う国民新党は民主党と同じく元衆院議員7人、競走馬主で有名な関口房朗氏、ペマ・ギャルポ大学教授を比例区に立てたほか、日本の国籍も併せ持つアルベルト・フジモリ元ペルー大統領にも立候補を打診しました。新党日本は代表の田中康夫前長野県知事が知名度のあるジャーナリスト・有田芳生氏とともに比例区に出馬。このほか、都知事選に敗れた黒川紀章・共生新党党首は東京選挙区から、妻の女優・若尾文子氏は比例区から出馬、無所属では、おなじみ発明家のドクター・中松氏、東京HIV訴訟の元原告・川田龍平氏、東条英機元首相の孫でNPO法人理事長の東条由布子氏らが東京選挙区から立候補します。自民党内には、年金問題で政権イメージが悪化したのを懸念し「参院選に絶対勝つには小泉前首相が衆院選挙区を息子の孝太郎氏に譲って参院比例区に立ち、数百万票稼いでもらうしかない」(町村派幹部周辺)といった自嘲的な声も聞こえてきます。小泉氏はトヨタ、キャノンなど大手企業が20億円出資したシンクタンク「国際公共政策研究センター」の最高顧問に就任しており、出馬は冗談としても、実質的に“影の選対本部長”として全国遊説に担ぎ出されています。小泉内閣で環境相や外相を務めた比例区の川口順子氏や上野公成元官房副長官の応援演説を予定しています。