第158回(6月16日)小幅延長あるか 国会大詰めの攻防
 天下分け目の参院選は7月6日告示、22日投開票と1カ月後に迫りました。国会では「宙に浮いた年金記録」に火がつき、各紙の内閣支持率は一気に急落し安倍政権を痛撃しています。首相はこれまで憲法改正や教育再生を参院選の争点に掲げていましたが、すかさず「年金問題と医師不足対策を公約の最重要政策」とするよう指示。中川秀直自民党幹事長も「記録が宙に浮く原因を作ったのは、平成8年当時の菅直人厚労相(現民主党代表代行)だ。自治労出身者を比例区公認する民主党が政府を最大限攻撃するとは漫画」と大量のPRチラシを配布して反撃に転じています。
 首相は独・ハイリンゲンダムのG8サミットで、世界の温室効果ガスの排出量を首相が提唱した「2050年までに半減させる」ことに合意を得、すっかり自信を回復、積極的な国会運営に乗り出しています。社会保険庁改革関連法案はもとより、一時は断念した天下り規制の公務員改革法案や「政治とカネ」の政治資金規正法案」など重要法案の成立を目指し「小幅の国会延長も辞さず」の構えです。このため、最悪の場合は参院選が初めて真夏の8月にずれ込むことも予想されます。

菅元厚労相、組合攻撃で逆襲
 終盤国会は「宙に浮いた年金記録5千百万件」に新たに1430万件の“迷子”の記録が加わり、社保庁の杜撰な体質が改めて浮き彫りにされました。社保庁改革法案は本来「社保庁から噴き出た不祥事のウミを切除し、ぬるま湯的公務員体質を改める」ため同庁を解体するもの。 中川幹事長は「社保庁労組の自治労・国費協議会の怠惰が諸悪の根源だ。厚生年金加入者情報に基礎年金番号を導入したのは、平成8年の菅厚労相当時だ」と、逆襲に出ました。自民党は「宙に浮いた年金記録の照合を1年以内に完了。並行して紙の記録など元資料とコンピューターにある記録を照合、内容を確認。受給漏れが判明すれば5年の時効を越えて全額受給可能とする」ことを骨子とした年金時効特例法案を緊急提出、4時間のスピード審議を経て、社保庁改革案とともに6月1日未明の衆院本会議で強行可決しました。
 さらに、公務員制度改革法案についても、1日に委員会と衆院本会議で採決の構えでしたが、野党が「日替わり強行採決は許さない」と反発。河野洋平衆院議長も難色を示したため7日の衆院本会議で採決、11日から参院審議入りで与野党が合意しました。

小沢氏の巨額不動産も攻撃
 官邸側が「官製談合の温床・天下り規制は『安倍カラー』には欠かせない。廃案なら首相のメンツが潰れる」として首相のサミット出発前の強行採決を迫ったのに対し、国対幹部は「残り少ない会期でごり押しすれば世論の反発を招くだけ」と応酬、怒鳴り合う1幕もありましたが、参院内閣委は民主党が委員長であることから、首相出発前の採決を断念しました。政治資金規正法改正案は、松岡利勝農水相の自殺で「なんとか還元水」など事務所経費の不透明支出問題が宙に浮き、逆に小沢一郎民主党代表の不動産問題に焦点が移ったことから、不動産所有規制を盛り込んだ与党案をもとに、小沢氏の資金管理団体による巨額の不動産取得をあぶり出してダメージを与えるなど攻勢をかけ成立を図る構えです。
 
 首相はG8サミットで、日本の温暖化対策「美しい星50」を説明、ポスト京都議定書の13年後以降、米中インドなど主要排出国を含め「50年までに世界の排出量を現状から半減させる」との実効性ある枠組み作りで合意、拉致問題の早期解決でも支持を得たことから政権の求心力が回復できたとし、数多くの重要法案を成立させて参院選に臨もうとしています。

天下り規制法案で小幅延長?
 このため、首相は社保庁改革関連法案と年金時効特例法案について「丁寧に誠実に説明、不安を解消していく」と参院での国会答弁で誠意を尽くすとともに、社保庁に命じ年金相談の体制を強化しました。 その一方で、1時は断念しかけた公務員制度改革法案についても会期延長を視野に全力を挙げて成立させるよう中川幹事長に指示。行動隊長の渡辺喜美行革担当相は「ナロウパス(狭い道のり)だが、是非とも成立させたい」と張り切っています。
 会期延長の場合は4,5日間の小幅なら参院選の期日を動かさずに済みますが、野党の抵抗を考慮すれば1,2週間の延長が必要です。12日間なら1週間後の29日投票、それ以上なら参院選は8月に繰り延べとなります。延長が冷却期間となって年金問題の世論が好転すればプラス要因ですが、8月の行楽シーズンでは投票率が下がり、選挙にマイナス要因となります。その当たりを首相と与党首脳がじっくり検討して、延長是か否か、の結論を下すでしょう。野党は重要法案阻止のため衆院で内閣不信任決議案、参院では首相問責決議案を繰り出して抵抗する構えのため、大詰めの国会は緊迫してきました。