第156回(5月16日)天下分け目の参院選 70日が勝負
 統一地方選と参院選が重なる亥年は12年に1度の選挙イヤー。前哨戦の統一地方選と参院福島・沖縄補選が終わり、各党は天下分け目の参院選に全力を挙げています。
 参院選は7月5日に公示、同22日が投開票日と見込まれ、残り2カ月余に迫りました。参院は定数242で3年ごとに半数が改選され、都道府県ごとの選挙区選(改選定数73)と比例区選(同48)を合わせた121の議席で争われます。改選議席は自民党が(扇千景議長を含む)66、公明党は13。両党で過半数を維持するには65議席が必要です。
 この勝敗ラインは4月22日の参院福島・沖縄両補選で与党が1勝1敗したため1つ下がり、64議席になりました。公明党が改選議席13を維持しても、64議席のハードルは高く、自民党は51議席が必要です。前のHPで述べた通り、自民党が最近の参院選で50議席を越えたのは1992年と2001年の2回だけです。
 終盤国会の法案審議に追われる中、私は自民党の長崎県連会長、水産部会長として、長崎選挙区第一支部長(県サッカー協会会長)と水産団体代表の比例区候補(全漁連顧問)の必勝を期し、昼夜フル回転しているところです。

1人区の攻防が勝敗左右
 比例選の改選議席48のうち自民は最低でも15、民主は前回並みの19を目指しています。公明、共産、社民、国民新党を含めると、与野党の勢力は拮抗しそうです。
 選挙区は人口規模に応じて定数が配分されるため、「複数区」と「1人区」に分かれています。選挙区選の改選議席73のうち2〜5人区に分かれている18都道府県の「複数区」でも、大半の2人区では自民と民主が議席を分け合うと見られ、3人区では自民、民主、公明というケースが多くなることから、与野党の議席差はあまり開きそうにありません。
 そこで、29県の「1人区」の攻防が全体の勝敗を左右するとして俄然注目されています。01年と04年の参院選で、自民、民主の2大政党が獲得した議席(旧保守は自民、旧自由は民主に合併)はほぼ100議席で、前回の04年は民主党が1議席差で自民党を抑えました。
 今回も2大政党が100議席を奪い合う展開になりそうです。民主党は非改選(04年選挙)で自民党を上回っており、40議席台後半でも第1党となる可能性があり、脅威です。

地球温暖化対策も争点に
 自民、民主両党とも勝敗のカギを握る1人区対策にしのぎを削っています。青木幹雄参院議員会長らは、都市部と地方の格差が目立っていることから、安倍首相に「格差是正」を訴えるよう強く求めています。
 首相が来年の北海道・洞爺湖でのサミット開催を決めたのも地方重視の表れですが、首相はサミットの主要テーマである地球温暖化・環境対策を持論の憲法改正、教育再生と並べ、参院選の争点に取り上げています。
 6月の経済財政諮問会議では、08年度予算編成に向けた「骨太の方針」を策定しますが、これにも安倍カラーをふんだんに盛り込み、参院選のマニフェスト(政権公約)に活かす方針です。
 一方、民主党の小沢一郎代表は、「参院の過半数を制し、近い将来の政権交代に追い込みたい」との一念から、都市部の無党派層獲得に加え、農山村地域住民の支持を広げようと、農家への個別所得補償制度導入など実現性の乏しい“ばらまき”政策をぶら下げて1人区を重点に2度も回り、我が出身地の長崎県・小値賀島など離島にまで足を延ばしています。

気懸かりは地方選の民主躍進
 比例区選は、党名に加え、候補者個人名でも投票できる非拘束名簿式になって3度目です。自民党は従来の官庁OBよりも丸一よしのり全漁連顧問ら水産、農業団体や建設業界など支持団体の組織内候補を多く内定しました。
 民主党も労組出身候補に加え、05年衆院選で落選した前衆院議院の転出を図っています。しかし、自民党は先の総裁選で、前回(03年)約140万人だった党員数が約106万人に2割以上減少し10年間では3分の1に萎んでいると指摘されました。
 マスコミは当時、「華やかな総裁選の裏側は映画の撮影セットのようにお粗末」と揶揄し、総裁選が湧かない理由に党の劣化現象を挙げています。
 党員の減少など既成政党の退潮は自民、民主両党に共通ですが、気懸かりなのは先の統一地方選の県議・市議レベルで民主党が躍進したことと、先の宮崎知事選で無党派層がタレント知事を当選させたように、参院選でも “そのまんま東現象”が起きないかと懸念されることです。

無党派が95年後の流れ決定
 自民党は92年の参院選で68議席を確保しましたがそれが最高。94年6月に自民、社会、さきがけ3党連立の村山政権が出来て以来、無党派層が選挙の流れを決めるようになり、それまで3〜4割だった支持政党なき層は95年の参院選を境に急拡大。自民党は95年、98年の選挙では40議席台に転落しました。
 01年は小泉ブームで64議席を回復したものの、安倍幹事長で戦った前回(04年)は再び40議席台に落ちています。自民批判の無党派票は民主党が受け皿になりました。
 ここで統一地方選を振り返ってみましょう。今年は「平成の大合併」で地方議員の定数が減るなど市町村大合併の功罪、北海道夕張市に見られたような財政難の自治体の再生策、官製談合の後遺症などが吹き溜まった形の中で戦われ、変化が大きい統一地方選でした。夕張市では、市民がチェック機能を怠った元市議らの候補を市長に選ばず、地元出身の元会社社長に市の再建を託しました。

自立の芽生え、脱政党強まる
 高知県の東洋町では高レベル放射性廃棄物の最終処理場誘致を目指した現町長に町民が「ノー」の意思を突きつけ、政府から支給される億単位の持参金を拒みました。
 各地では着実に自立の芽生えが起きています。今回から首長選でもマニフェスト(公約)選挙が認められ、有権者は情報公開制度のもとで公約が達成されたかどうかを精査出来るようになりました。
 後半戦の一般市長選では「脱政党」の流れが強まる中で5選以上の多選市長が全員当選し、女性市長も前回と同じ3人が当選しています。
 一般市議選では前半戦の44道府県議選と同様に民主党は374人も当選し、当選者に占める割合は前回統一選の2.6%から4.7%に急増しました。自民党が598人で、7.9%から7.5%に微減、第11回以降5回連続減少しているのに比べ、民主党は上り調子で躍進中。最も無所属は5080人で保守系が圧倒的多数を占め、救われています。公明は974人の全候補者が当選、主要政党で当選者数トップを守りました。共産は772人、社民143人の順です。

組織選挙崩れ投票率低下
 投票率では東京区長選、区議選が微増だったのを除いて低下、戦後最低を更新しました。道府県議選、市長選ともに平均投票率は史上最低でした。
 テロで全国注視の長崎市長選が過去最低、夕張市も前回を下回った傾向について、朝日新聞は社説で「争点を明示すべき政党が地方政治での地道な政策づくりを怠り、存在感を発揮できないのが理由だ。 政党を支えてきた業界や団体による旧来型の組織選挙の崩壊が原因だろう。組織の決定ではなく、有権者が自らの判断で投票しなければならなくなった。 そこで迷い、立ち止まっているのだ。選挙も有権者自立型に進化しつつあるのだとすれば、低投票率は産みの苦しみかも知れない」と指摘しています。
 しかし、安倍首相は大型連休中に米国、中東5カ国を訪問し、日米同盟の再構築、資源外交を推進。
「主張する外交」と「美しい国作り」「戦後レジームからの脱却」を唱え、憲法改正、教育再生、公務員改革を堂々と争点に掲げ戦っています。
 外遊先のカタールでは「特別に無党派対策をやる考えはない。愚直に政策を分かりやすく説明し、実行する」と記者団に語り、地方遊説では愚直に安倍カラーを売り込む考えです。

異なる3紙論調に民意どう動く
 「小泉政権は政治の漂流を5年間安定させたが、政策的成果は郵政、道路公団の民営化しかなかった。安倍政権は憲法改正、教育再生を唱え、国家統治の本流を歩もうとしている」――。
 中曽根康弘元首相は6日のテレビ番組で、持論の「戦後の総決算」を首相が「戦後レジームからの脱却」で引き継いだと受け止め、首相を保守本流の政治家と褒め上げました。内閣支持率も50%台に回復しつつあります。
 だが、前回の参院選は「小泉(総裁)・安倍(幹事長)」の最強コンビで臨みながら、残り1,2カ月になって年金未納問題に焦点が当たり、「人生いろいろ」の小泉発言もあって、自民党が民主党に僅差で敗れました。
 憲法還暦の特集で読売は改憲、朝日は「安倍首相による改憲には反対」の護憲、毎日は「当面は見守る」論憲を明解に打ち出しました。オピニオンリーダーの3大紙が異なる有様では、民意が1,2カ月間にどう動くか全く予断を許しません。天王山の闘いが続きます。