第155回(5月1日)1勝1敗で求心力増 政局運営に自信
 7月参院選の前哨戦として注目された参院統一補選は、4月22日投開票され、福島は民主党公認候補が、沖縄は自公与党の推薦候補が初当選し、1勝1敗と星を分けました。統一地方選後半戦の96一般市長選と310一般市議選、21東京区議選、それに全国の町村長選、町村議選も同日行われました。前半戦と合わせた地方選の総件数は1120件です。一般市議選では、前半戦の44道府県議選と同様に民主党が躍進、自民党の組織固めの停滞に警告を発しました。

 それでも安倍首相は、与党が野党から1議席を奪還したことで、求心力を取り戻し、今後の政局運営に自信を深めています。首相は26、27両日の駆け足訪米でブッシュ大統領と首脳会談を開き、「拉致問題の進展」など対北朝鮮政策での日米連携、日米自由貿易協定(FTA)、米牛肉輸入条件緩和など懸案事項について意見を交換、従軍慰安婦問題などで最近“すきま風”が吹いていた日米関係を修復してきました。

 いよいよ5月連休明けから、夏の参院選に向けて終盤国会の攻防に移りますが、教育関連3法案、イラク特措法改正案、公務員制度改革関連法案、社会保険庁改革関連法案など重要法案が山積しています。国民投票法案は残念ながら憲法記念日前の成立は見送られましたが、米軍再編特措法案とともに参院審議中でまもなく成立する運びです。労働関係など予算関連の重要法案も会期内にどしどし成立を図りたいと、我々は挙党態勢で頑張っているところです。

テロ撲滅と銃社会拡散防止
 統一地方選の終盤に、4選を目指していた伊藤一長・長崎市長が山口組系暴力団幹部の凶弾に倒れたことは痛恨の極みであり、衷心よりご冥福をお祈り申し上げます。伊藤氏は被爆地長崎の市長として核廃絶運動の先頭に立ち、95年には国際司法裁判所の法廷で証人として「核兵器使用が国際法違反である」ことを世界に訴えました。私とは早大の同窓であり親しい県議仲間でした。17年前にも当時の本島等市長が右翼の男に銃撃され、重傷を負いました。選挙中の凶行は民主主義に対する挑戦であり断じて許せません。

 米大学でも32人殺害の銃乱射事件が発生、東京・町田市でも暴力団組員が仲間を射殺して都営アパートに籠城するというおぞましい事件が起きました。警察庁が昨年1年間に押収した拳銃は458丁ですが、暴力団の銃隠匿は巧妙になっているといわれます。政治の手でテロ行為の撲滅と銃社会の拡散防止に全力を挙げなければならないと痛感している次第です。漆間巌同庁長官は24日、銃規制を徹底するよう全国の警察に指示しました。

 長崎市長選は、補充立候補した長崎市統計課長の田上富久氏(50)が伊藤氏の娘婿で「弔い合戦」を唱えて出馬した西日本新聞記者の横尾誠氏(40)を破り、初当選しました。投票では死を悼むあまり無効を承知で伊藤市長の名を書いたり、期日前投票で1万5千票以上の無効票が出ましたが、総務省はテロ事件発生などに備え、投票日の延期や補充立候補、期日前投票制度の在り方などを再検討する公職選挙法見直しの研究会を近く立ち上げます。

福島は公募の出遅れ祟る
 参院福島・沖縄補選は、昨年11月の県知事選に出馬した野党系参院議員の辞職・失職に伴うもので,自民党が2勝すれば過半数維持に必要な参院選の勝敗ラインを2議席下げる効果があるため、安倍首相、中川秀直幹事長ら党首脳や太田昭宏公明党代表が何度も現地に乗り込み総力戦を展開しました。野党統一候補を立てた民主党にとっても、夏の参院選の勝敗を左右する「1人区」の沖縄で議席が守れない場合は手痛い1敗となるだけに、小沢一郎代表は党首討論に1回も応じず現地入りし、鳩山由紀夫幹事長、菅直人代表代行ら幹部も沖縄を主戦場として対決しました。

 福島補選は、民主党公認の前衆院議員・益子輝彦氏(59)=国民新党推薦=が、自民党公認の元県会議長・山口勇氏(69)=公明党推薦=と共産党公認の前福島市議・宮本しずえ氏(54)を破って初当選。山口氏は郡山市議、県議など地方議員を36年間も務めたベテランですが、公募で候補になるなど出馬が2月下旬と出遅れました。それに引き替え益子氏は渡部恒三民主党最高顧問のいる福島で代議士を3期努めるなど知名度は抜群。「生活しやすい国づくり」を掲げ、格差是正や財政再建を訴え、農協、建設業界や無党派の票が多く流れ、自民支持層にも浸透しました。

1人区沖縄奪取の意義は大
 沖縄補選は、自公両党が推薦した前那覇市議・島尻安伊子氏(42)が、民主、共産、社民、国民新の4野党推薦の統一候補である前連合沖縄会長・狩俣吉正氏(57)を破り初当選しました。糸数慶子氏が昨秋の知事選に立候補したのに伴う補選でした。選挙戦では島尻氏が4人の子を持つ主婦の立場から「子育て支援」や「福祉の充実」を、狩俣氏が「格差社会の是正」を叫び、いずれも暮らしに密着した政策を訴えて、米軍普天間飛行場の移設など基地問題が争点になることは意図的に避けました。首相は2回も応援に訪れ、那覇空港の拡充計画など地域振興策を強調。地元経済界も島尻氏を支援し、戦いを優位に進めました。

 夏本番では自民、民主両党が分け合うと予想される「2人区」の福島と違って、「1人区」の沖縄を奪取したことは、普天間飛行場移設の面でも大変な成果で、中川幹事長は「沖縄の野党共闘と一騎打ちで勝った意義は大きい。2議席とも野党の議席だっただけに、沖縄に1議席を持つ意味は大きい。美しい国づくり、安倍カラーの政策を推進、夏の参院選を勝利したい」と終盤国会では強気の運営を貫く構えを見せています。

勝敗ライン1下がり64議席
 確かに与党は沖縄の勝利で非改選議席が1増えて、58議席になりました。これは過半数維持に必要な参院選の勝敗ラインが65から1つ下がり、64議席になったことを意味します。夏の改選議席121のうち、公明党が改選分の13議席を維持する場合、自民党は51議席を獲得すれば与党で総定数242の過半数となるわけです。

 首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」の一環として、天下り規制のための公務員制度改革関連法案を今国会に提出する腹を固めましたが、省庁の抵抗が激しく、塩崎恭久官房長官や渡辺喜美行革担当相ら政府側と官僚を支援する党側が対立、一時は険悪な空気が漂いました。

 しかし、参院補選の1勝1敗で「選挙の顔」の座と求心力を取り戻した首相は、訪米前に同法案の閣議決定をし、党内にくすぶっていた内閣改造論も封じ、同法案や憲法改正に必要な国民投票法案、7月に期限が切れるイラク支援特措法を2年間延長する同法改正案、教育再生の教育関連3法案などを今国会で成立させ、参院選に弾みを付けようとしています。

洞爺湖サミットに参院選狙い
 「北海道の美しい自然環境の中で、環境をテーマにサミットを行うことは極めて有意義だ。正直、京都をはじめ『美しい国』というイメージに相応しいところばかり。迷ったが、総合判断で政府としては地方重視の姿勢を示した」――。首相は23日、来夏に日本で5回目開催の主要国首脳会議(G8サミット)を北海道・洞爺湖のザ・ウインザーホテル洞爺で開くことを決め、北海道の高橋はるみ知事に伝えました。

 開催地は小渕政権当時の00年に九州・沖縄で開いた経緯もあり、「開港都市」(横浜市、新潟県・市)、「関西」(京都、大阪、兵庫3府県)、「瀬戸内海」(岡山、香川両県)が名乗り上げていました。
 外務省は、05年4月に総工費200億円をかけた「京都迎賓館」が完成したこともあり、主要議題となる「環境」についても、かつての「京都議定書」を策定したメッセージ性から、京都を強く推していましたが、首相は警察庁が主張するテロ対策を考慮し、山に囲まれて警備のしやすいリゾート地、しかも、環境に優しい洞爺湖地域を選んだわけです。その代わり、閣僚会合は、外相を京都、財務相を大阪、環境相を神戸、労働相を新潟、司法・内務相を首都圏で、それぞれ分散型で開く方針を決めました。

財界は首相の資源外交に期待
 だが、首相の狙いは参院選対策にあったようです。小泉政権は05年の郵政総選挙で、東京小選挙区が自民23勝・民主1勝、神奈川が自民16勝・民主ゼロ勝と都市部で圧勝し、ブームを巻き起こしましたが農村部では苦戦、北海道では自民4勝・民主8勝と大きく水を開けられています。そこで、10年前の北海道拓殖銀行の経営破綻が呼び水となった北海道のバブル経済崩壊を再生させるため、「負の遺産」の象徴ともなった高級ホテルでサミットを開催、道民の心を安倍政策に惹き付けようと考えたようです。北海道は知床半島が平成16年に世界遺産に決まったが、地元では早くも「素晴らしい環境の北海道を世界にアピールし、北方領土問題解決のきっかけにしたい」と期待感が強まっています。

 首相は訪米に次いで、28日から5月3日までの日程でサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カタール、エジプトの中東5カ国を歴訪中ですが、これには日本経団連の御手洗冨士夫会長(キャノン会長)を団長とする経済ミッション(財界約70社・約180人)を同行させています。使節団は各国の国王や政府首脳、経済人らと会談、石油・天然ガス産出国との関係強化を図っていますが、中東は首相の父親の故・安倍晋太郎元外相が最も力を注いだ国々。経団連会長の中東入りは94年の平岩外四氏(東京電力顧問)以来で、財界は資源外交面での首相のトップセールスに大きな期待を寄せています。