第153回(4月1日)地方選前半戦がヤマ場 政党色薄まる
 第16回統一地方選の前半戦は真っ盛り。13都道県知事選には東京の14人を含め計44人が立候補。札幌、静岡、浜松、広島の4政令市長選には計12人が届け出ました。政令市長は大きな権限と財源を握るため、候補者のうち5人は元国会議員の転身組です。44道府県議選には3773人、15政令市議選には1378人が名乗り上げ、激戦を展開中です。いずれも4月8日に投開票されます。統一地方選の結果は、無党派の動向を探る手がかりとなり、天下分け目の参院選に大きく影響します。自民、民主両党幹部は国会審議の合間を縫って統一地方選の応援を兼ね、参院選の勝敗を握る「1人区」を重点に地方遊説を続けています。

 知事選では、中央と地方の格差解消、地域経済の活性化や財政再建、少子高齢化への対応などが争点です。首都決戦の東京は、3選を目指す石原慎太郎氏に浅野史郎前宮城県知事、吉田万三元足立区長、建築家の黒川紀章氏、発明家のドクター・中松氏らが挑戦。五輪招致を唱える石原都政の継続か、刷新かを巡り激しく戦っています。自民、民主の両党が対決する構図は、実質的支援や県レベルの支援を含めても北海道、岩手、東京、神奈川、福岡の5都道県だけで、従来よりも政党色は薄まっています。

魔物が棲む東京、無党派が鍵
 無党派層がタレント知事を当選させた宮崎県の「そのまんま東現象」が響き、石原、浅野両陣営とも表向きは政党の推薦・支持を辞退したからです。しかし、対立陣営から「都政私物化」、「再選後は傲慢だ」と集中砲火を浴びる石原氏は危機感を強め、自民党の区・市議や党員の集会にはこまめに足を運び、「力を貸して下さい」と低姿勢に変身しています。
 
 また、石原氏は民主党出身で再選を目指す松沢成文神奈川県知事と告示日に相互応援をし、首都圏票の掘り起こしに懸命です。昔から都知事選には「魔物が棲む」と言われ、1995年には官僚出身の5政党相乗り候補が無党派で選挙活動を一切行わなかった青島幸男氏に惨敗、99年には政党が推した候補を石原氏が破っており、気まぐれ無党派が勝敗に大きな影響を与えています。
 
 北海道も実質は自公与党が推す現職の高橋はるみ氏と民主・社民・新党大地が推す荒井聰前衆院議員の「政党対決」の構図ですが、無党派層の動向を意識して自民党は「道民党」、民主党は「どさんこ党」を標榜し、政党色を薄めています。民主党は福井と三重県の知事選で与党に相乗りし、6県では候補も立てられず不戦敗です。

首長選にマニフェスト配布OK
 福岡では、自民党が多選を理由に麻生渡現知事の推薦を見送ったため、自公両党の県議らが支援する麻生氏と、民主、社民両党推薦の稲富修二元民主県副代表が対決しています。
公職選挙法の改正で今春の首長選から、地域が目指すビジョンや具体的な政策についての数値目標・達成期限・財源を示したローカル・マニフェストの配布が可能になりました。政策により候補者の選択を促す選挙公約で、冊子は駄目ですが、知事選は各都道府県内の衆院小選挙区数に応じて10万〜30万枚のビラが配布出来ます。

 東京、神奈川など11都道県では、ビラ作成費を公費で負担。1候補当たりの負担額は鳥取、島根両県で上限68万3100円、東京都で上限158万7000円と言いますから、泡沫候補がやたらに出る東京は税の無駄遣いになるでしょう。福岡、大分両県は公費負担を行わないようです。気懸かりなのは投票率の行方です。前回の都知事選は石原氏が優勢で関心が薄く、99年より10ポイント落ち込み、過去2番目の低さでしたが、今回は石原・浅野対決が白熱しているため57〜58%台に回復、それにつれて知事選全体の投票率もアップしそうです。


与野党首脳が各地で舌戦展開
 東京で政党色が薄まったため、自民党の中川秀直幹事長は公示日の3月22日、札幌市内で街頭演説し、「自公連立政権が自治体のリーダーを選出し、地方財政を立て直している」と強調、民主党の菅直人代表代行も同日、同市内で「(安倍政権の政策が)あらゆる分野の格差に繋がっている」と応酬、舌戦の火蓋を切りました。中川氏は同24日、小沢一郎民主党代表の牙城・岩手に乗り込み、「岩手県は『民主党王国』の名の下で暗黒の時代を迎えてしまうのか。それとも、成長の時代を作っていけるのか。その分かれ道が知事選だ」と攻撃しました。

 青木幹雄議員会長ら参院幹部が、中央と地方の格差是正に取り組むよう強く求めたため、首相も2月から東北、信越、北陸、関西、中・四国と地方行脚を繰り広げています。中・四国の商店経営者らとの懇談では「内閣の基本方針は、地方の活力なくして日本の活力はない。地方の再生を目指したい」と訴えました。こうした中で安倍内閣は26日に就任半年を迎え、それを祝うように同夕、07年度予算が成立しました。

支持率低落から浮揚できるか
 安倍政権は電撃的な訪中・訪韓で幕を開け、教育基本法改正、防衛庁の「省」昇格など目覚ましい成果を上げましたが、困ったことに、内閣支持率は低落しっぱなしです。大平内閣以降3番目の高支持率(70%)でスタートしながら、最近の各紙世論調査は軒並み40%台すれすれ。しかも、不支持率が支持率を逆転しています。
 郵政造反組の復党が支持率低下のきっかけですが、佐田玄一郎前行革相の政治資金を巡る辞任、柳沢伯夫厚労相の「女性は産む機械」発言、松岡利勝農水相の光熱水費問題への首相の対応ぶりなどが支持率低落を加速しています。中川幹事長は「(40%台は)巡航速度で問題ない」と弁護していますが、世論調査によると、国民は首相に「親近感」は感じるものの「実行力」、「指導力」については看板倒れでさほど実績を上げていないとの評価が多いようです。

 党内では、「チーム安倍の側近政治が機能せず、首相が、折角『戦後レジーム(体制)からの脱却』を掲げ、憲法改正、教育再生に取り組んでも、その意欲が国民に伝わっていない」との不満が高まっています。安倍内閣の政権浮揚策はあるのか。首相は政官業癒着の根源に省庁による天下りの斡旋があると見て、これを全面禁止する公務員制度改革に乗り出しました。

安倍包囲網のニューYKK
 首相は戦後レジーム脱却の中核に掲げ、再就職斡旋を「人材バンク」に完全移行することとし、豪腕の渡辺喜美行革相が官僚の抵抗を抑え、「バンク設置後3年内に一元管理するよう」指示、最終調整に入りました。公務員制度改革に懸ける首相の決意は相当なもので、「じわり効く漢方薬だ」と“開き直り”の政局運営に転じています。中曽根康弘元首相も小泉純一郎前首相と同様、「参院選は政権選択の選挙ではない。仮に負けても堂々と改革を成し遂げるべきだ」と激励しています。
 
 そうした中で党内では、“安倍包囲網”を形成する新YKKのような動きが出てきました。かつて田中支配の自民党を刷新しようと結成した山崎拓前副総裁、加藤紘一元幹事長、小泉純一郎前首相のYKKは、小泉政権発足後、小泉改革に対する加藤氏らの批判から崩壊。
 代わって加藤、山崎両氏と我が派の古賀誠元幹事長、二階俊博国会対策委員長のN(ニュー)YKKの連携が深まっています。NYKKは3月12日夜の会合で、アジア外交を中心に意見を交換しましたが、加藤氏は同14日、山崎氏とともにCSテレビの収録番組に出演し、古賀氏と3人で昨年から何度か会ったことを明かしたうえ、「アジア外交と戦争の反省、A級戦犯の取り扱い問題などで通じるものがある」と強調。山崎氏も「(二階氏も含め)我々はアジア外交重視派だ」と述べ、福田康夫元官房長官、高村正彦元外相の名も挙げて結集を呼びかけることを明らかにしました。

「新しい風」も設立パーティ
 加藤氏はさらに同18日朝のTBS番組でも、「YKKは目的を達成し2年前に解消した。NYKKはアジア外交を推進していく」と述べ、今後も活発な活動を展開する姿勢を示しています。憲法9条堅持を持論とする古賀氏は、安倍首相が意欲を示す憲法改正とは若干距離を置く立場です。派閥領袖クラスのこうした連携は、参院選後に安倍政権が行き詰まった場合、政局の主導権を握る思惑があると見られていますが、気をつけなければならないのは、党内には「既に終わった人たち」、「YKKは、かつて世代交代を訴えたが、今のニューYKKは世代交代に逆行している」、「存在感アピールに必死なだけ」と冷ややかに見る向きが多いことです。

 それより注目されるのは、山崎派に籍を置いたままの武部勤前幹事長が同15日、若手議員育成を目指して結成した「新しい風」の設立資金パーティを開き、1千人以上を集めたことです。「新しい風」には中堅議員や小泉チルドレンなど30人が参加、山崎派をしのぐ勢力です。
 
  一方、谷垣禎一前財務相は同24日、我が選挙区の長崎県佐々町に講演に訪れ、「安倍首相は福田派、岸派の流れで(同派は)右的な主張をしてきた。(古賀派と谷垣派の)宏池会の流れは思想的にはリベラルだ。津島派もそうだ。自民党もいろんな考えがあるぞ、と示していかなければ、参院選でやせ細ってしまう」と、古賀派、津島派などとの連携、さらには大宏池会の復活に意欲を示しました。このように、政治大乱に結びつきかねない参院選を睨み、色々な動きが出始めています。首相にとって統一地方選、参院選はまさに正念場ですが、我々も負けられない一戦を闘い続けています。