第151回(3月1日)選挙イヤー本番へ 予算は参院が舞台
 07年度予算案は3月2日にも衆院を通過する見通しで、年度内成立が確実となりました。これにより「選挙イヤー」は本番を迎え、22日の13知事選告示から統一地方選前半の火蓋が切られ、4月8日には同知事選、道府県議選、政令市長・市議選の投開票が行われます。同22日には後半戦の市区町村長選、市区町村議選と参院福島・沖縄補選が実施されます。2回の統一地方選は7月参院選の前哨戦となるだけに、各党とも懸命に選挙態勢を固めつつあります。

 自民党は2月22日、統一選と参院選の選挙対策本部を設置し、推薦候補のいる知事選には複数の副幹事長を割り当て、大勢の議員派遣を決めました。とりわけ、福島、沖縄の参院補選は、過半数確保でしのぎを削る夏本番参院選の帰趨を占ううえでも極めて重要であるため、我が党は必勝を期しています。参院予算委では、改選期を迎えた与野党議員が衆院と同様、格差、雇用、福祉を巡り激しい論戦を展開しそうです。

ジョブカード制度を推進
 安倍内閣は教育再生を最重要課題としていますが、衆院予算委では格差問題で集中審議が行われるなど、国民の最も関心の高い地域間・企業間・個人間格差の解消を巡り論戦を繰り広げました。野党は小泉・安倍内閣が弱肉強食の市場原理主義を信奉する政策を取り続けた結果、大企業優遇、福祉切り捨てが進んで貧富の差が拡大、パートなど非正規雇用者は月収200万円以下で、生活保護者と変わりないワーキングプア(働けど暮らせず)層が激増していると追及。時給平均673円を1000円に引き上げる最低賃金保障制の確率などを要求しました。

 確かに英国は時給1010円、フランスは1100円と高水準にあります。だが日本の中小企業が時給1000円に踏み切れば、人員削減か、安い労働力を求めて企業の海外移転をしなければ倒産の恐れが出てきます。そこで政府が最も力を入れているのは、「成長力底上げ戦略構想」チームが描くジョブ・カード制度の推進です。

似た会議沢山作るなと苦言
 これは国会答弁でも明示しましたが、政府が補助金を出して企業に委託して、フリーターや母子家庭の母親、子育てを終えた女性などを対象に就業訓練を実施。修了者にはジョブ・カードを与え、正規職員に登用するか、他の職業を斡旋する制度です。政策に「安倍カラー」が見えないと批判される首相は、こうした具体的な施策を国民に示すことで、競争至上主義ではなく、誰にでも再チャレンジのチャンスがあることを証明しようとしています。

 ところが、中川昭一政調会長は2月14日、成長力底上げ戦略構想チームの提唱者である塩崎恭久官房長官に電話し、「似たようなものをいっぱい作りなさんな。マスコミに叩かれるよ」と、苦言を呈しました。官邸は成長力底上げ戦略のほか、少子化対策、アジア・ゲートウェイ…など、10近くも政策会議を乱立させており、成長戦略チームの設置は、格差問題担当の山本有二金融・再チャレンジ担当相にも知らされていなかったからです。


くすぶり続ける内閣改造論
 「首相が閣議室に入っても起立しなかったり、私語を囁く閣僚がいる」――。中川秀直幹事長は同18日の講演で首相への絶対的忠誠と自己犠牲の精神が足りないことを暴露。翌19日の政府・与党連絡会議でも「政府、与党、閣僚とも、首相を先頭に団結して取り組んでいくべきだ」と注意しました。党首脳のこれら一連の閣内引き締め発言は、安倍内閣の支持率が低落を続けていることから、地方統一選や参院選に向けて危機感を強める与党の官邸に対する不満、苛立ちが高まっているからです。森喜朗元首相も訪問先のインドで「山本金融相も甘利経産相も菅総務相も、若い人が後を付いてこない。首相より当選回数や年齢が上の久間防衛相、麻生外相、尾身財務相にも、首相を立てる姿勢がにじみ出ていない」と閣僚を名指しで同行記者団に不満をぶちまけました。

 このように閣僚批判が公然化する中で、党内では「予算成立直後に人心一新すべきだ」との内閣改造論がくすぶっています。小泉政権は世論をバックに党を抵抗勢力に仕立て、「政高党低」の姿勢を採りましたが、今や「党高政低」。小泉前首相は安倍政権の窮状を見かねてか、珍しくも国会内の幹事長室を訪ね、「目先のことには鈍感になれ。『鈍感力』が大事だ。支持率は上がったり、下がったりする。いちいち気にするな」と首相を援護射撃しました。党幹部は今月下旬から1カ月間、統一地方選で“政治休戦”となるため、重要法案の絞り込みに入りました。

石原3選阻止で黒川氏出馬
 さて、統一地方選の取り組みはどうか。自民党が知事の推薦候補を決めたのは北海道、岩手、奈良、鳥取、島根、徳島の6道県で、福井、佐賀は現職を推薦する予定。無党派層の多い東京、神奈川、福岡と大分の4都県は県連などによる実質的な支援に止めています。三重は自民、民主両党の相乗りとなりました。東京は息子の石原伸晃幹事長代理が都連会長である関係から、当初は石原慎太郎知事(74)の推薦を決めましたが、石原知事が辞退したため、推薦は白紙撤回となりました。石原氏は、3万人参加の東京マラソンを成功させ、2016年夏季のオリンピック招致を唱えるなど3選に意欲を燃やしていますが、贅沢な海外出張費や都の文化施策「ワンダーサイト事業」に4男を関与させて批判されたことに危機感を強め、幅広い無党派層を取り込もうと自民推薦を辞退したようです。

 これに待ったを掛けたのが世界的建築家で文化功労者、女優若尾文子さんの夫でもある黒川紀章氏(72)だった、とは驚きでした。「石原知事を応援する気持ちは変わらないが、五輪招致や側近政治など弊害も目立つ。友人である石原氏にいい終わり方をして欲しい。石原氏が降りない場合は、私が出る」と、石原氏の3選阻止に向けて出馬の意向を表明。出馬宣言では、五輪招致の中止や首都機能の一部移転を積極的に支援することを公約に掲げ「私が当選したら任期は1期のみで無給でよい」と明言しました。

そのまんま知事の軽妙ギャグ
 「道州制は吸収(九州)合併ですね」、「宮崎、和歌山、福島は、談合(団子)3兄弟」――などと県議会の答弁で軽妙なギャグを飛ばす東国原英夫宮崎県知事は、「私は宮崎のセールスマン。百数十億円の広告費を稼いだ」と豪語するように、当選以来マスコミの引っ張りだこです。当選前後に頻発した鳥インフルエンザ事件を逆手にテレビで地鶏のキャンペーンをしたり、プロ野球の宮崎キャンプを覗き盛んにPRするなど、いつまでも人気は抜群。官製談合に対する県民の怒りは収まらず、無党派層の支持をかき集めたタレント知事の「そのまんま東現象」は続き、統一地方選、参院選にも影響を与えそうです。そのあたりを敏感に察知した石原知事が無党派票獲得に乗り出し、自民推薦を断ったのも無理からぬところ。

 だが都連に対しては密かに“苦しい事情”を伝え、選挙協力を要請しています。共産党は都知事選に元足立区長の吉田万三氏(59)を推薦していますが、民主党は、難航しています。当初は浅野史郎前宮城県知事や鳥越俊太郎氏、筑紫哲也氏の両キャスターら約50人をリストアップしましたが、浅野氏は25日の「出馬を求める市民集会」に参加したものの出馬の意思表示を避け、黒川氏への相乗りも一応検討したようですが不発。党外候補のすべてから断られました。

知事候補難に陥る民主党
 やむなく、同党は菅直人代表代行、小宮山洋子衆議院議員、海江田万里前衆院議員、円より子、蓮舫両参院議員らの出馬を打診しました。だが、菅氏は「太陽が西から昇っても出ない」と記者会見で否定しました。  しかし、2月28日に浅野史郎前宮城県知事が、都知事選出馬する意欲を明らかにした。これに民主党は支援する方向で進む模様。
 
 それにしても、民主党独自で知事候補の推薦・支援を決めたのは小沢一郎代表地元の岩手と東京、北海道、神奈川、福岡の5都道県だけで13都道県の半分以下。後の8県は参院1人区ばかりですが、小沢代表が「19の参院1人区で勝利して与党の過半数割れに追い込む」と豪語する割には、候補者難に陥り、お粗末な対決姿勢といえます。
 小沢氏は自らの資金管理団体の事務所費4億1千5百万円を公開し、「問題閣僚や与党幹部も公開すべきだ」と迫りましたが、与党内では「政治資金で集めた浄財4億円近くを数カ所の秘書の寮建設費に充てるとは非常識」と厳しく批判しています。

平成の大合併で激戦区多発
 統一地方選で見落とせないのが「平成の大合併」です。4年前に3190あった市町村は、4月1日で1804に減少します。合併直後の議員数は合併特例法の「在任特例」で定数を維持されますが、合併後初の地方選の場合は区割りや定数が変わり、激戦地区が多く生じます。「昨日の友は今日の敵」で、選挙区・定数を見直す結果、長年に渡り地盤を分け合ってきた無風地帯の仲間が一騎打ちになるケースも多いようです。

 読売新聞によると、4月の県議選で定数を超える自民党の現職県議が立候補を予定するのは、千葉、奈良、和歌山、岡山、山口、長崎、熊本、鹿児島の8県9選挙区で、現職同士のサバイバルが激化する一方、市区町村長選でも「有力新人が乱立する」と予測しています。財政が破綻した北海道・夕張市の例を見ても、放漫・マンネリ化した行政で長期負債を雪だるま化させた首長のツケを地域住民が自己弁済する不幸な事態を招いています。モラルが欠落した首長の責任は重く、地域代表の新陳代謝が進むことは、地域活性化にも役立つと期待されます。

2匹目泥鰌狙いタレント続出?
 しかし、無党派層が支持する「そのまんま東現象」の将来は今のところ未知数で、何ら実績を残さなかった青島幸男都政、横山ノック大阪府政の二の舞いにもなりかねません。6年前の参院選もタレント候補ラッシュで、各党のトップは舛添要一(自民)、大橋巨泉(民主)、田嶋陽子(社民)の3氏が抑えました。この時は、大衆迎合の「小泉・(田中)真紀子現象」と言われる小泉ブームで、格闘技家、芸能リポーターまでが総出で賑わい、自民党は66議席を獲得、圧勝しました。3年前の参院選でも、小泉首相のブレーンでタレント性の強い竹中平蔵前郵政担当・総務相(現慶大教授に復帰)がトップ当選しています。

 各党とも公認候補決定の大詰めに入っていますが、自薦、他薦の売り込みも多く、2匹目のドジョウを狙ってタレントの出馬は、7月の参院選でも強まる傾向にあります。だが、大橋、田嶋、竹中の3氏は国民の負託に応えず任期を大幅に残してさっさと辞任しました。国民はタレントの無責任さに呆れ、怒っており、候補者選びは慎重にならざるを得ません。