第149回(2月1日)参院選向け攻防激化 宮崎は分裂選挙で敗北
 熱い政治の季節に入ったせいか年頭は暖冬異変。雪のない上越のスキー場ではゴルフを楽しむ姿も見られました。1月25日に通常国会が開幕し、今月から衆院予算委員会を舞台に与野党は、4月の統一地方選、7月の参院選に向けて、激しい攻防を展開中です。
 安倍首相が保守の原点に返り、改憲・教育改革を参院選の争点に掲げれば、民主党の小沢一郎代表は支持母体の労組を意識し、格差解消・生活維新を公約に掲げ、対決姿勢を強めています。時あたかも春闘たけなわ。いざなぎ景気を越える好況とあって、労組は賃上げ、パート労働改善、教育改革反対などの運動を強め国会外の活動も激しくなりそうです。
 
 「選挙イヤー」を占うプレ統一地方選では自民が分裂選挙を演じた結果、保守王国の宮崎県知事選で無党派層の支持を受けたタレントが当選、同じく分裂の山梨県知事選でも現職が新人の元衆院議員に敗れました。官製談合など不祥事が続発する地方政治に対する県民の怒り、不信の表れですが、既成政党は民意を厳粛に受け止めざるを得ません。
 参院選は、自公連立政権が盤石の基盤を固めるか、それとも過半数を失って政権交代の1里塚となるか、まさに天下分け目の決戦場で国民は国会論戦を例年以上に注視しています。参院選を控えて国会延長も難しく、改憲手続きを定める国民投票法案や教育改革関連法案など重要法案は短期決戦で成立させなければなりません。我々は闘志を燃やし戦う決意を固めています。

無党派のタレント知事誕生
 4月統一地方選の前哨戦となる宮崎、山梨、愛媛の3県知事選は1月21日に投開票されました。官製談合事件で逮捕・起訴された前知事の辞職に伴う宮崎県知事選は、元タレントの、そのまんま東(本名・東国原英夫)氏が元経産省課長の持永哲志氏(自、公推薦)、前林野庁長官の川村秀三郎氏(自民の1部と民、社支援)ら新人4人を破って初当選。任期満了に伴う山梨県知事選は元衆院議員の横内正明氏が初当選し、愛媛県知事選は無所属現職(自、公、社推薦)の加戸守行氏(元文部省官房長)が3選を果たしました。

 宮崎県は保守王国ですが、選挙のたびに地元で派閥単位の争いを続ける典型的な分裂選挙で、自民共倒れとなりました。東氏は過去に後輩タレントへの暴行や風俗店での不祥事が発覚していますが、抜群の知名度を生かして「しがらみの無さ」を訴え、無党派層や若年層、保守層の支持を集め、大勝しました。 無党派層が生んだタレント知事には、1995年当選の青島幸男(東京)、横山ノック(大阪)の両氏がいますが、芸能人を総動員した横山氏とは対照的に、東氏は高校時代の友人などによる地味でカネをかけない"草の根選挙”を展開、勝利しました。
 青島、横山両氏と同様、ブレーンも持たず、行政経験ゼロの「無党派知事」の前途は多難ですが、タレント活動の合間に早大(2文卒、政経中退)に7年間も通い、地方自治を勉強した頑張り屋。県民の行政不満、政治不信の解消に向けて、活躍が期待されます。

改憲など正攻法の保守本流
 「国の骨格、形を為すのが憲法だ。立党の精神に立ち返り、憲法改正に取り組みたい。政治決戦の参院選に正攻法で臨み、堂々と目指す方向を論じ必ず勝ち抜く」――。1月17日の自民党大会で安倍晋三総裁は「正攻法」の保守本流政治で戦う姿勢を強調しました。

 しかし、プレ統一地方選の結果を見ても、「よみうり寸評」が「自民党は分裂選挙の内輪もめ、民主党は独自候補の擁立を断念。プロ政党の信頼が失墜、そのお粗末を『そのまんまにしておけない』とタレント候補の草の根選挙が突いた」と書いたように、有権者は既成政党に失望感を抱き、「政党不信」が広がり、無党派層が政治を動かしつつあります。これが参院選にも飛び火し、無党派層を狙うタレント候補が増えることも予想されます。
 安倍首相が保守本流のエースとして、国の基本となる憲法改正、教育改革に真正面から取り組むことは極めて大事ですが、小泉流劇場型政治に折角なびいていた無党派層が自民党を離れないよう、政府与党は、国民が共鳴できる生活密着の具体的な政策を早急かつ明確に示さなければなりません。中川幹事長は「成長と格差是正は対立軸にあらず。改革のための情熱と政策を示し、成長による『生活底上げの国会』にしたい」と主張しています。


 荒波に耐え新国家像描く使命
 安倍首相は1月26日の施政方針演説で、憲法を頂点とした行政システム、教育、経済、外交・安保などの枠組みが時代の変化についていけなくなっているとの認識を示し、「戦後レジーム(体制)を大胆に見直し。新たな船出をすべきだ。次の50年、100年の荒波に耐えうる新たな国家像を描くことが私の使命だ」と改革の決意を強調。 
 @成長力の強化 A再チャレンジ可能な社会の構築 B魅力ある地方の創出 C国と地方の行財政改革 D健全で安心できる社会の実現――などを公約に掲げ、憲法改正手続きに関する国民投票法案の今国会成立に強い意欲を表明しました。

 特に教育再生は内閣の最重要課題と位置づけ、「社会総がかりで『教育新時代』を開いていく」と宣言、教員免許更新制導入、教育委改革を行う考えを示しました。外交・安保の関しては自衛隊海外派遣の恒久法制定、集団自衛権行使に関する個別事例の研究、安保理事会の常任理事国入りを目指す国連改革――などを引き続き進める意向を表明。最後に福沢諭吉が武士の気風を解説した言葉の「出来難き事を好んで之を勤(つとむ)るの心」を引用し、「未来を切り拓いていこう」と訴えました。


 自公政権に終止符の生活維新
 「野党が過半数を獲得することで地域、国民生活を疲弊させる法案は参院で一本も通さない。それで自公政権を倒す」――。片や民主党の小沢代表は1月16日の党大会で、格差是正を参院選の争点に掲げ、「弱者切り捨ての政治に終止符を打つ“生活維新”だ。政治生命をかけて参院選を戦う」と対決姿勢を強めました。29日から3日間、衆参両院本会議で行われた代表質問のトップに立った小沢代表は「小泉・安倍内閣は地方と都市など地域間、企業間、個人間格差を増大させた。就労者の3分の1は非正規社員となり、所得2百万円以下という最貧層が増えて、先進10か国中でも最悪だ」とし、これを是正する同党の生活維新の理念と政策をぶち上げました。

 確かに派遣社員400万人を含め、パート・アルバイトなどフリーターは1633万人に達し、正規社員の半額程度の給与しか受けていないし、掛け金を払えず年金ゼロのお年寄りが約40万人もいるのが実情です。税の確定申告期でもあり、野党は春闘の労組運動と呼応し、「労働国会、格差是正国会」と位置づけ、パートタイマー労働法改正、最低賃金法改正などで政府攻撃を続ける構えです。

 野党は労働・格差是正国会
 国会はまず06年度補正予算案を成立させた後、衆院予算委で07年度予算案の審議に入りますが、民主党は雇用など生活に密着したテーマで論戦を挑み、支援労組と一体になり参院選での国民の支持を取り付けようと、「格差是正」特別委員会の設置を要求しています。労働問題では、政府が提出を予定しながら断念した「日本版ホワイトカラー・エグゼンブション」制についても質すと思われます。同制度は財界の要望を入れて、管理職に近い年収400万円以上の事務職を労働時間規制から外し自由度の高い勤務制とするもので、政府は当初、時間外勤務手当の嵩上げとセットにして労働基準法改正案に盛り込む考えでいました。

 財界の主張は「産業の高度化に伴い能力のある者は時間の拘束なしに自宅でも研究に没頭させ、その成果に沿って処遇する高度専門職制度」というものですが、労組側は「残業代ゼロ制度」と反発、厚生労働省は1時、年収400万円を900万円以上に引き上げる案も検討しましたが、自民党内でも「参院選を前に残業代がゼロになると受け取られ、サラリーマンを敵に回しかねない」との批判が出て首相も慎重論に転じ、エグゼ提案を断念しました。民主、社民両党は「これぞ格差を助長するもの」と反対していました。

政治とカネ問題は痛み分け
 民主党が特に力を入れているのが「政治とカネ」の問題。鳩山由紀夫幹事長は、政治資金の不適切な会計処理の問題で辞任した佐田玄一郎前行政改革相の証人喚問を要求、「腐敗一掃という立場から徹底攻撃の姿勢を保ちたい」と意気込んでいます。伊吹文明文部科学相、松岡利勝農水相、中川昭一政調会長らの資金管理団体が、政治資金収支報告書に家賃のかからない議員会館を「主たる事務所」としながら、年に約3000万〜1億5000万円もの「事務所費」を計上していたことは不当だとし、事務所費の不透明さを取り上げ追及しています。

 ところが、民主党内でも小沢代表の資金管理団体が秘書の宿舎建設費など約4億1500万円を事務所費に計上していたり、松本剛明政調会長が閣僚らと同様、議員会館の事務所費に2千万円近くの多額を計上。おまけに、角田義一参院副議長(会派離脱中)の総合選挙対策本部が政治献金約2520万円を政治資金収支報告書に記載せず、北朝鮮系の朝鮮総連の傘下団体から50万円の献金を受けていた疑いも発覚し、26日に副議長を辞任しました。

 小沢、松本両氏とも代表質問に立ち、「政治とカネ」を追求しましたが、小沢氏は「事務所費は公表する必要はないが、私は領収書を添えて公表する用意がある」と違法性がないことを釈明しつつ追及したため、迫力に欠け、まさに「目くそ鼻くそを笑う」の類で相打ち・痛み分けとなりました。

労組と一体の民主党攻撃
 中川政直幹事長が「3本の矢」と称し、社保庁、教育、公務員制度の3改革関連法案を提出し、自治労、日教組などを「抵抗勢力」に見立て、“組合潰し”に躍起になっているのも、労組と一体で参院選を戦おうとする民主党に最大の攻撃を加えようとする狙いがあるからです。
 中曽根康弘前首相は1月21日のNHK番組で、「小泉改革は郵政、道路公団といった物中心の改革で、抵抗勢力を作って世論と対峙させる2分制の政治手法を採った。だが、安倍首相は憲法改正、教育改革など保守本流の政策を堂々と掲げ、長期政権を目指している。その決意と勇気を称賛したい。ただ、“美しい国”などというのは芸術的表現であって国民の生活実感には合わない。長期政権を達成した暁に国民から“美しき国の時代”と評価されるべきものだ」との趣旨で語り、年頭の読売新聞への寄稿に次いで、またも“安倍賛歌”を唱えました。
 
 内閣支持率が続落している背景には、郵政造反組の復党、教育改革タウンミーティングのやらせ、本間正明前政府税調会長や佐田前行革相の引責辞任に伴う任命責任、「政治とカネ」など多くの問題が相次ぎ、政権イメージがダウンしたことは事実です。
 しかし、首相が本気で一体何を改革しようとしているのか、説明責任が十分でなく、政策の姿が良く見えないところに国民の不安があるようです。我々は教育、憲法改正はもとより、福祉・高齢化、景気・雇用など国民の関心が最も深い政策に焦点を当てて国会論議を盛り上げ、政権浮揚を図り、参院選を勝ち抜きたいと考えています。