第146回(12月16日)道路財源見直し合意 首相は人気挽回に懸命
 安倍政権にとって初の臨時国会は、4日間会期を延長し教育基本法改正案、防衛庁の省昇格法案など2重要法案を成立させて12月19日に閉幕します。政府・与党は07年度予算案の編成に全力を挙げていますが、首相は郵政造反組の復党問題で内閣支持率が下がったため、「改革政党」にふさわしい新政策を打ち出し人気を挽回しようと懸命です。

 首相が所信表明でぶち上げた「揮発油税の一般財源化」は、地方の疲弊につながり参院選にマイナスだとして自民党内の反対が強く、法改正は08年度に先送りされ、政府・与党合意の具体策についてもマスコミは「玉虫色の決着」などと批判しました。だが、道路特定財源に改革の道筋がついたことは半世紀ぶりで画期的な出来事です。税制改正でも求心力を高めたい首相と党側が対立するケースが多く見られ、参院選対策が絡んだ予算折衝は難航気味です。

造反組復党で支持率急降下
 郵政「造反組」の復党問題は、4日夕の党紀委員会(笹川尭委員長)で掘内光雄元総務会長ら11人の復党を満場一致で正式決定、党所属の衆院議員は305人に増えました。首相は11人と会談し今後の政局運営に協力を要請、首相官邸では記者団に「最終的には私が責任を持って判断した。批判は甘んじて受ける。新しい仲間と政策を推進することで国民の理解を得たい」と語りました。

 しかし、各紙が社説で「有権者の理解を得られない」などと書き立てたため、就任時78%あった内閣支持率は各紙とも軒並み50%前後に急降下しています。一方、党内では「造反組」に厳しい“踏み絵”を迫った中川秀直幹事長の手法を「独裁的」と批判するなど余震が続き、とりわけ、復党組と小選挙区支部長を務める「刺客」議員との間では小選挙区での“棲み分け”を巡り骨肉の争いが続いています。

予備選でコスタリカ方式
 小泉チルドレンの「83会」は11月末、復党に反対する「復党問題を考える会」を結成しましたが、“非情”が売り物の小泉前首相は、「首相だって使い捨て。甘えちゃダメだ」などと「83会」に冷ややかな態度を示し、「(造反組は)反対の信念を降ろし、反省し、白旗を掲げて土下座したのだから認めてやれ。政治は権力闘争で出たり入ったりは当たり前」と造反組の復党を支持したため、支柱を失った「考える会」は三日間で反旗を降ろしました。

 森喜朗前首相も局面打開に「地元で予備選をやり、勝った方が小選挙区、負けた方が比例選に回ればすっきりする」と予備選でコスタリカ方式を採用するよう提案しています。深刻なのは参院幹部と中川幹事長の確執が強まっていることです。中川氏が首相の意向を受けて、参院選の党公認見直しに関し「勝てる態勢であるかどうか、検証を年内に始める」と言及したのに対し、片山虎之助参院幹事長は「県連が選んで公認した。判定は極めて慎重を要する。幹事長1人で選挙に勝てるわけがない」と、1時は厳しく批判しました。自民党の復党騒動で安倍内閣の支持率が低下したことについては、民主党の“黄門様”こと渡部恒三最高顧問はテレビ番組で「参院選までに人気暴落だ」と予言しています。


一般財源化に道路族猛反発
 綿貫民輔前衆院議長と国民新党を作った亀井静香元政調会長も、「選挙が弱いから、大坂城に浪人をかき集めろといっている。落城が決まっている城に入っていく方もいく方だ。7月に必ず落城させる」と、政局の節目では必ず自民党を批判、攻勢をかけています。こうした中で、安倍首相は、復党で「改革後退」の印象が広がって内閣支持率が下がったと受け止め、インターネットの自民党ビデオで「決して古い自民党には戻らない」と訴えるとともに、07年度予算編成では「改革加速」の新機軸を出そうと人気挽回策を色々模索しています。

 予算編成の基本方針では「経済成長と財政再建の両立」に取り組み「活力に満ちたオープンな経済社会の構築」に施策を集中する姿勢を鮮明に打ち出しました。その目玉が道路特定財源の一般財源化や「再チャレンジ支援策」、技術革新の指針「イノベーション25」の策定などです。特に、道路特定財源の改革は、小泉内閣が積み残したもので、首相は今国会の所信表明演説で改革の決意を表明しました。しかし、道路特定財源の中で税収が最も大きい揮発油税などは、1954年に制定された「財源特例法」で使途を道路財源に当てると定められていて、与党内の道路族などが一般財源化に強く反発しています。

財源見直しは改革の試金石
 「今や道路特定財源の見直しは改革の試金石と見られている。改革が後退したとか、先送りとか言われては党にとってもいいことではない」――。党本部で6日開かれた道路調査会のプロジェクトチーム会合の冒頭、塩崎恭久官房長官が挨拶すると、「何を言っているのか」と怒号のようなヤジが飛び、満席の会場は熱気に包まれました。同会合には衆参両院から多くの議員が参加しており、「地方がどんどん疲弊している。一般財源化反対の声は地方の叫びだ」、「(ガソリン税を納める)納税者の理解を得られているとは思わない」など、60人近い参加者から反対意見が続出しました。

 同日午前の参院議員総会では舛添要一参院政審会長が「来年は私たちの大事な選挙がある。地域の活性化を念頭において参院の意見を示す必要がある」と檄を飛ばしたばかり。この日は根回し抜きで「一般財源化」を唱える官邸に、党側は一斉に態度を硬化させました。

08年国会で法改正に合意
 片山参院幹事長はこれに先立つ1日、塩崎氏に電話し「むちゃくちゃやったら全部ひっくり返す」と官邸にすごんでいました。こうした険悪な空気の中で、自民党の中川昭一政調会長と塩崎官房長官が7日、政府の「見直し案」と与党側の申し入れを調整、ようやく「道路特定財源の見直し具体策」で合意しました。

 具体策は、@07年度中に今後の道路整備の具体的な中期計画を策定するA現行税率を維持するB税収全額を道路整備に充てる仕組みは改め、08年の通常国会で所要の法改正を行うC毎年度の予算で道路歳出を上回る税収は一般財源とする――などが中心。与党側が要求した「地方の活性化や自立に必要な基幹道路整備や渋滞解消のバイパス整備、高速道路や高次医療施設への広域的アクセスの強化などを地域の自主性にも配慮しながら適切に措置する」という趣旨を明記し高速道路の料金引き下げなどのための法案を08年の通常国会に提出することも盛り込んでいます。

52年ぶりの画期的改革
 この政府・与党合意を閣議決定した8日、塩崎官房長官は記者会見で、「(首相が生まれた)1954年の吉田内閣時代に、田中角栄議員(後の首相)が中心となって議員立法された『自動的に税収が道路になる』という制度を、52年ぶりに初めて本格的に改めるものだ。困難な課題だったが、安倍内閣として所信表明演説以来、一貫して求めてきた成果が得られた」と胸を張りました。尾身幸次財務相は「揮発油税も含め一般財源化することになったわけだから、大きな歴史の転換になる」と喜び、中川幹事長も「安倍首相指示のポイントは全て実現し、改革の道筋はついた」と述べました。

 しかし、合意には「“真に必要な道路”整備は計画的に進める」と明記されているうえ、「揮発油税を一般財源化する」とは明確に書かれていないし、「一般財源に回るのは道路歳出を上回る分」など、マスコミが指摘する通り、読みようによっては解釈自由の、玉虫色表現が多いことは事実です。

5100億円の余剰金争奪戦
 画期的な改革ではありますが、このように、首相・官邸サイドが「一般財源化」の名を取り、党側が建設業や自動車関連業界が喜ぶ「道路建設」の実を取った内容で決着しました。従って、07年度中に策定する中期計画では政府・与党の調整が再度難航することも予想されます。

 公明党の太田昭宏代表は「地域格差にはよく目配りをしなければならない」と述べ、我が丹羽・古賀派会長の古賀誠元幹事長も「納税者の理解を得ることはなかなか困難だ。特定財源は道を造ることが基本」と強調しています。当面の予算編成では、07年度の道路特定財源が、旧本州四国連絡橋公団の債務返済の終了に伴い、約5100億円の余剰金が生じると見込まれていることから、そのうち1500億円〜2000億円を一般財源化する方向で検討しており、その使途の配分合戦が焦点になりそうです。