第135回(7月1日)2大懸案が決着 海外派遣の恒久法を
政府は6月下旬、小泉内閣の残された2大懸案に決着をつけました。陸上自衛隊のイラク撤退と米国産牛肉の輸入再開です。防衛庁長官政務官を務めて以来、私は派遣された陸上自衛隊諸君の困難な任務遂行と安全をひたすら祈り続けてきましたが、1人の死傷者も出さず、一発の弾も撃たず、8月下旬にも無事帰還が実現することは、慶賀にたえません。まず皆さんのご苦労に感謝し、ご努力に敬意を表したいと思います。米牛肉の方も衆院農水委理事として、食生活の安全を絶えず懸念していましたが、査察の徹底で合意し、7月中の輸入再開にこぎ着けたことは喜ばしい限り。重たい政治の梅雨空に明るい日差しが差し込んだ気持ちです。首相も在日米軍再編と米牛肉輸入再開を手みやげに訪米、6月29日にはブッシュ大統領と会い、北朝鮮が発射準備を進めている長距離弾道ミサイル「テポドン2」の対応策を協議するなど、首相にとって最後の日米首脳会談を締めくくりました。次期臨時国会では国際平和協力活動を本来任務とする防衛庁の省昇格関連法案を審議しますが、私は党の国防部会副部会長として、自衛隊の海外派遣は特別措置法によらず、恒久法を制定すべきだと考えており、次期通常国会で是非とも法制化したいと念じています。

空自の輸送支援を継続
総裁選の動きも気懸かりでしょうが今回のHPは小泉政権の2大懸案処理に絞りました。
「米国をはじめ多国籍軍、英豪などと協議した結果、陸自部隊の復興支援活動は一定の役割を果たしたと判断し、撤収することを決定した」――。首相はよっぽどうれしかったのか、国会閉幕の記者会見をしたというのに翌6月20日、再度会見し派遣の成果を強調。民主党の小沢一郎代表は拒否したものの、野党にも党首会談を呼びかけて報告しました。陸自の撤収は、サマワを含むムサンナ県の治安権限が7月、英国からイラク政府に移譲されることを踏まえたもので、7月末から遅くも9月上旬にかけて帰国が実現します。首相は陸自撤収後も、「国際社会の責任ある一員として、イラクの国づくり、安定化に何が出来るか支援を続けたい」と述べ、国連の要請に沿って、クウェートを拠点とした航空自衛隊によるイラク向け輸送支援を継続する意向を表明、輸送先をバクダッドに拡大しました。

医療、給水、施設復旧に貢献
自民党の武部勤幹事長も、「イラク人による復興と国造りに貢献できて、1人の死傷者もなく、1発の銃弾も撃たず、高い評価と感謝の意を受けた。誇りに思っていい」と記者団に胸を張りました。確かに、治安が安定していたサマワを活動拠点に選んだとは言え、イラク戦争開始以来の死者が2500人を突破した米軍とは対照的で、幸運でした。陸自のイラク派遣はイラク復興支援特別措置法に基づき、2004年1月にスタート。現在の派遣隊員は、第10次支援群の約500人ですが、延べ5500隊員が2年半に実施した支援活動は医療、浄水・給水、公共施設の復旧が3本柱でした。医療支援では、ムサンナ県内4カ所の病院で現地医師らに診断、治療方法の指導などを実施。サマワ母子病院では新生児の死亡率が陸自駐留前の約3分の1に低下しました。浄水・給水支援では政府開発援助(ODA)無償資金協力の浄水設備が稼働した昨年2月までに、約1189万人分の水を供給。公共施設は道路補修が30カ所、学校補修が36カ所に上っています。

イ首相“善意の使者”に感謝
陸自が雇用した現地住民は、延べ約47万5000人で、公共施設整備の作業には現地企業を活用、宿営地の通訳、ゴミ収集作業も現地の人を採用し、1日当たり最大1100人を雇用したというから、現地の人への技術伝達や雇用確保などで経済に多大な貢献をしています。額賀福志郎防衛長官は、撤収命令を出した後の記者会見で「行政や生活基盤、社会発展に極めて役立ったと思っている」と成果を誇りましたが、イラクのマリキ首相は、発表前にバクダッドの首相府で山口寿男イラク大使と会い、「自衛隊の貢献には深く感謝している。イ日の友好関係が今後も強化されることを切に願う」と述べました。派遣時の防衛庁トップだった石破茂元防衛長官は読売新聞に、「陸自は@サマワの安定Aイラク復興への国際協力を盛り込んだ国連決議の誠実な履行Bイラク国民の日本人に対する願いに応えるC日米同盟の信頼性向上――と言う4項目の目的を見事に果たし、自衛隊は“善意の使者”の役割も果たし、国益を十分確保した。最後まで安全に使命を完遂して欲しい」と語っています。

7月末から9月にかけ帰国
サマワの夏は日中50度を超す暑さですが、復興支援を続けてきた陸自第10次群の部隊は、1カ月以内にサマワから隣国クウェートまで撤収します。ただ、サマワとクウェートを結ぶ国道8号線は、5月に陸自の食糧を運ぶ民間のトラックが路肩に仕掛けられた爆弾で大破したというテロの襲撃ポイント。このため、陸路は必要最小限の輸送にとどめ、物資や隊員輸送の大半は空路となる予定です。戦国時代から見ても伝統的に、戦闘の場合は撤退が一番困難を伴いますが、万が一にも何か起これば有終の美が飾れないため、防衛庁は梱包や輸送などの撤収作業が「素早く、安全に」進められるよう輸送・補給の専門部隊である100人規模の「後送業務隊」を派遣しました。隊員の多くは7月末から8月上旬にも帰国しますが、装備品の多くは日本国内に持ち込む際の検疫のため、クウェートでの洗浄作業に手間がかかり、陸自部隊の全てが帰国するのは、9月上旬になる見通しです。

「活動する自衛隊」の自信
自衛隊のイラク派遣に反対してきた民主党の鳩山由紀夫幹事長は「過酷な条件下で命令を遂行してきた自衛官の労は多とする」としながらも、@空自は活動範囲が拡大し、全面撤退は先送りされたA今後の任務は後方支援になるのに、政府は説明責任を果たしていないBサマワからの英軍撤退と合わせた撤退の決定は主体性がない――との批判談話を発表。共産、社民両党も、空自の活動拡大に反対し、空自も直ちに撤退するよう求めています。しかし、読売新聞の企画「イラク派遣の決算」は、「リスクを伴う人的貢献を成功させた陸自の派遣は、日本の国際協力活動の大きな転換点となった。今回の経験を今後にどう生かすかが問われる」(上)、「どんなに厳しい訓練であっても、訓練には情報が与えられるが“実戦”は違う。陸自にとってイラクでの2年半は、『訓練する自衛隊から、活動する自衛隊へ』と変容するための時間だった」(中)、「国際協力活動が多様化する中、イラクでの貴重な経験を生かし、実効性のある恒久法を制定することは、ポスト小泉の指導者の責任でもある」(下)と各編末尾の結び部分で強調しています。『活動する自衛隊』が国際社会で高い評価を得、国際的活動に大きな自信を持ってきたのは事実です。

防衛政策小委が恒久法案検討
先崎一統合幕僚長は「国際社会で通用する人材も育ってきた。感謝されながら撤収できることは有り難い。復興支援活動がODA、民間レベルに拡充すればいい」と、支援継続の重要性を強調しています。党の防衛政策検討小委員会(石破小委員長)は6月14日、@国連決議がなくても国際協調の下で特に必要な場合は自衛隊を派遣するA武器使用基準を緩和し、活動に必要な施設や物品の防御を可能にする――を骨子とした海外派遣に関する恒久法案の概要をまとめました。恒久法の制定やODA事業の策定などは喫緊の課題。私は次期通常国会での法制化を目指し、早急に法案を整備したいと考えています。

7月末にも米牛肉輸入再開
一方、日米両政府は6月21日、BSE(牛海綿状脳症)の危険部位である背骨の混入により、輸入を再停止していた米国産牛肉の輸入を、再開することで合意しました。これを受けて、厚労省や農水省は検査官を派米し、1カ月かけて35の米食肉施設の査察を始めましたが、問題がなければ7月末にも輸入を解禁する段取りです。1月20日の再停止以来ほぼ半年ぶりの再開となります。再開の条件として、米国は食肉施設の作業マニュアルを整備し、職員に日本向け輸出条件を徹底することと、輸入再開前に日本の検査官が米食肉施設を徹底査察し、再開後も米農務省が行う抜き打ち検査にも日本の検査官が立ち会うことで合意。国内対策としては、日本側が空港などの水際監視態勢を強化することも決めました。これで日米間に深く突き刺さった“トゲ”は一応抜かれましたが、消費者の米牛肉に対する不信感が根強いことから、食肉流通業界では慎重な対応をしているようです。