第131回(5月1日)総裁選向け政策連携 補選敗北で緊迫
4月23日の衆院千葉7区補選で自民党が敗れたことは、9月の同党総裁選に大きな影響を与えています。連休明けの終盤国会では行革推進法案、医療制度改革法案に加え、新たに提案の教育基本法改正案、予定の憲法改正手続きを定める国民投票法案、防衛省昇格関連法案など重要法案が目白押し。小泉首相は全法案の会期内成立を目指し、会期延長を否定していますが、民主党は補選勝利に乗じて反転攻勢に出る構えで、与野党攻防が激化すると予想されます。小泉政権は03年10月以降の衆参両院補選で7連勝し、今回は久々の黒星。衆院では単独過半数を維持し国会乗り切りに支障はありませんが、党総裁最後の国政選挙で有終の美を飾れなかったことは、求心力に陰りが生じそうです。逆に小沢一郎民主党代表は9月の再選が確実となり、来年春の統一地方選、夏の参院選でも勝利し、政権交代を迫ろうとしています。選挙ベテランの小沢氏に若手の安倍晋三氏が対抗できるのか。自民党内では各派が政策提携を図るなど総裁選に向けた新たな合従連衡が始まっています。


幹事長名代で4回応援
千葉7区補選は、自民党の旧通産官僚OBで前埼玉県副知事の斎藤健氏(46)と民主党の前千葉県議で最年少の太田和美氏(26)の事実上の一騎打ちでした。『最初はグー、サイトウケン』の斎藤陣営と、自転車に乗って若さをアピールする太田陣営が、いずれもパフォーマンスで選挙戦の幕を開けました。「偽メール」問題で失速した党勢立て直しに必死の民社党に比べ、候補決定で出遅れた自民党は懸命に追い上げ、国会議員はもとより秘書団まで繰り出し戦いました。私も幹事長名代として公示前と公示後に計4回、7区に足を運びました。公明党も全面支援してくれただけに敗北は真に残念です。週刊誌が「キャバクラ嬢」と書きたてた醜聞候補に斎藤氏がなぜ敗れたのか。各紙の解説や出口調査によると@無党派票の半数以上が太田氏に流れたA公募だが、斎藤氏は初めから内定の“出来レース”とされ、落下傘候補では勝てないB自民党前職が自派の公選法違反で辞職し、受身の選挙では不利C小泉チルドレンを動員しても選挙民は劇場型選挙に興醒めした――などが挙げられます。


参院選では候補公募見直し
選挙当日早朝のTBS「時事放談」で、日本政治通のジェラルド・カーチスコロンビア大教授が「(小泉チルドレンのような)政治経験もなく地域密着度の薄い公募候補を立てても地元の信頼は得られない」と述べたのを受けて対談相手の山崎拓前副総裁は選挙後、「公募候補は地元のことを考えない。地元密着型でなかったのが最大の弱点」と自派出身の武部勤幹事長を暗に批判しました。武部氏は参院選でも昨年の総選挙同様、公募を活用したい考えですが、青木幹雄参院議員会長は「これを教訓として、参院選まで未だ1年あるから」と記者団に語り、候補者選定を見直す考えを示しました。それよりも、小沢氏は代表就任後真っ先に、千葉7区の有力企業、キッコーマン醤油(野田市)や全国特定郵便局長会を訪問、その後に日本経団連など財界に挨拶回りし、まずは組織固めに躍起でした。これと対照的なのが我が党。朝日新聞は20日、「自民党本部から担当者が電話で『ご協力願えませんか』と尋ねたのに対し、大樹(特定郵便局長OB会)の幹部は『右手で頬を張っておいて左手で握手するのは難しいんじゃないですか』と突っぱねた」と熱の無い要請を批判、大樹が江戸(郵政民営化)の仇・自民党を長崎(補選)で討ったことを紹介していました。


政権奪取に政策勉強会
「散りぬべき 時知りてこそ世の中の 花も花なれ 人も人なれ」――。首相は4月15日、フィギュアスケートの浅田真央選手ら1100人を招き新宿御苑で開いた「桜を見る会」で、細川ガラシャの辞世の和歌を引用して、「花はパッと散るからきれい。人も引き際が大事。任期までは総理の職責から逃げることなく、精一杯頑張りたい」と述べ、ご満悦でした。だが、引退後もキングメーカーの影響力を保持し参院選に勝利したいなら、選挙上手な『小沢神話』の復活を警戒し、総力を挙げ組織を再構築しなければなりません。小選挙区比例代表並立制が定着して2大政党制に移行、実力者の資金収集能力による「カネとポストの配分」が大きくものを言った派閥の効能が廃れてきました。執行部に党運営の権限が集中してきたからです。とくに、小泉首相は派閥推薦の人事には目もくれず、トップダウンの党運営で派閥を形骸化しました。そうなると政権は政策で争うしかありません。総裁選を睨んだ政策勉強会や派閥パーティが今や花盛りです。各派は小泉改革の負の部分とされる格差社会に光を当て、東アジア外交を修復する方向で政策提言をまとめつつあります。派閥が政策連携し、それを推進する候補を擁立するのが政権奪取の早道です。


伝統宏池会が盛大パーティ

          地元からの参加者の皆さんと
我が宏池会は4月19日、「二人代表制」となって初めての「宏池会と語る会」を赤坂プリンスホテルで開きました。出席者は2500人という盛大なパーティでした。まず代表の古賀誠元幹事長が「宏池会は昭和32年に池田勇人先生が名付けたが、会長5代で50年の歴史を持ち、先達の努力により栄光と伝統を誇ってきた。(小泉政権では)ポピュリズム、『劇場政治』など政治の貧困が心配されている。転換期の激動政治を迎えているが、常に政権の中枢としての責務と使命を果たすため、我々に力を与えていただきたい」と開会の挨拶。続いて来賓の今井敬日本経団連名誉会長、山口信夫日本商工会議所会頭、久間章生総務会長、中川秀直政調会長、伊吹文明元労相が祝辞を述べ、新派女優の水谷八重子さんが「どうしましょう。芸能生活51年で最大のミスキャスト。 先生方の前で足がガタガタ震えていますが、勇気を振り絞って…。ゆとりある生活が出来て劇場に足を運んで貰えるよう、日本の元気と宏池会のがんばりを願って乾杯!」と乾杯の音頭を取りました。


保守本流の存在感ある派閥
 主催者を代表して丹羽雄哉代表は「衆参48人の宏池会は、保守本流の自負を持ち、誤りなき進路を選択してきた伝統ある集団だ。共有する政治認識を持つため研鑽を積んできたが、秋の政局に向け存在感のある派閥にならなければならない。少子高齢化・人口減少社会に入ったが、低迷を続けた景気にもようやく明るい兆しが見え、デフレ脱却も視野に入ってきた。だが、格差問題が生じ、一億総中流意識は過去のものになった。国民が不公平感を持ち始めたことは謙虚に受け止めねばならない。構造改革に光と影があるなら、影の部分に光を当てる責務がある。社会の安定につながると確信するなら、厳しい財政状況の中でも社会的弱者を重点的に救済する真のセーフティネットを張らねばならない。中韓両国とは経済、文化面で固い絆があるが、政治的には不幸な状態が続いている。日米を基軸としながら、大平、宮沢政権が日中国交正常化に心血を注ぎ、友好・協力の基礎を築いたことを忘れてはならない。国のリーダーは国際平和・友好を意識してやるべきで、行き過ぎたナショナリズムを是正する勇気が必要だ。我々が最も関心を持つことは、格差社会への対応とアジア外交の解決策だ。国益追求と日本の将来を担うため力を合わせ頑張るので、ご指導、ご鞭撻をお願いしたい」と挨拶しました。
               パーティー終了後の懇親会場にて


4派合わせ森派の2倍勢力
丹羽、古賀両代表が、パーティで「伝統ある宏池会と存在感ある派閥」をアピールしたのは、もちろん9月の総裁選に向けて主導権確保の意欲を表明したものです。パーティ前日の18日夜には、津島雄二元厚相の呼びかけで「宏池会代表就任祝い」名目の会合が開かれました。古賀氏は所用で欠席しましたが、集まったのは津島、丹羽、伊吹の3氏と高村正彦元外相の4人。自前の総裁候補を持たない4派の会長・代表が連携して情報を交換したわけです。津島派73人、丹羽・古賀派48人、伊吹派33人、高村派15人の4派合わせると約170人の強大さでほぼ森派の2倍の勢力。ポスト小泉候補の安倍氏、福田康夫氏の現・元官房長官を抱える森派(87人)、本人に出馬の色気がある山崎前副総裁の山崎派(37人)、谷垣禎一財務相の谷垣派(15人)、麻生太郎外相が属する河野派(11人)は、いずれも総裁候補を持っているため、津島氏は声を掛けなかったようです。


相対的に福田氏擁立へ比重
「清和会(森派)は『脱派閥』と言いながら、自分の派だけは候補を2人も抱えてけしからん。好き勝手だ」といった不満が、会合では噴き上がったといいます。党内では森、小泉両首相に続き3代連続で森派出身の総裁が誕生することに懸念が深まっており、とりわけ、国民人気絶頂で若手を中心に派閥横断的な支持を持ち、小泉路線を踏襲しようとしている安倍氏に対しては、次第に「安倍降ろし」、「安倍包囲網」形成の動きが強まっています。その安倍氏は、竹島問題の対韓協議で谷内正太郎外務事務次官を督励して円満解決に導いたものの、山口県岩国市長選では在日米軍再編の鍵となる空母艦載機移駐計画に反対の井原勝介氏が当選。岩国市は地元の下関市に近いだけに、内閣の要である官房長官としての力量が問われる結果を招きました。そうした中で起きつつある安倍包囲網には、東アジア外交の立て直しや、格差社会への対応などの基本政策を足掛かりにしたものが多く、相対的に福田氏擁立の比重を高めています。


宏池会は伝統のハト派路線
福田元官房長官は25日の都内講演で、父の福田赳夫元首相が77年に発表した東南アジア外交の基本方針『福田ドクトリン』を踏まえ、中国の台頭などに対応した新アジア政策を打ち出すべきだとの考えを表明、総裁選出馬の意欲を表明しました。さらに「党内での総裁選びと考えれば、人気などはどうでもよいし、長い時間は必要ない。小泉首相や小渕元首相も、手を上げたのは1ヶ月前だ」と述べ、人気先行の安倍氏を牽制、森派分裂の1断面を示しました。困惑しているのが森前首相。20日の森派総会で、新人議員でつくる「新政治研究会」に安倍氏に近い中川政調会長や山本一太参院議員が出席したことについて「何でも総裁選に結びつけられる。発言、行動には十分注意してもらいたい」と苦言を呈したり,首相との会談では国会閉幕まで総裁選の話はしないよう申し合わせるなど大変な気の遣いようです。党内では今後も政策提携を大義名分に多数派工作・合従連衡が進むと思われますが、宏池会は大平政権以来、伝統的にハト派路線を取ってきており、右寄りに振れつつある自民党を正常に引き戻す役割が望まれています。丹羽・古賀両代表のパーティ挨拶は、そうした点で総裁選の主導権を発揮したい気持ちを表したものです。今後も総裁候補を持たない丹羽・古賀、津島、伊吹、高村の4派は文字通り純粋な政策集団として政策論議や連携を深め、その政策を推進するリーダーを総裁の神輿に担ぐことになるでしょう。