第130回(4月16日)小沢対抗の総裁選へ 参院選で激突
 第78回選抜高校野球大会での清峰高校準優勝城島健司捕手・マリナーズが開幕本塁打などで大活躍佐々町・佐世保勢が主役の球春はすばらしい展開ですね。おめでとうございます。 さて、「メール問題」で国民と国会の信頼を失った民主党は、前原誠司執行部が総退陣し、小沢一郎氏(63)が菅直人元代表を抑え、後継の党代表に選ばれました。この代表選を横目に4月5日、小泉首相は在任1806日を突破、中曽根康弘元首相を抜いて佐藤栄作、吉田茂両氏に次ぐ戦後第3位の長期政権を樹立しました。26日には内閣発足6年目に入ります。首相は3日の衆院行革特別委で菅氏が「小泉政権5年間の負の遺産」を批判したのに対し、「5年間に民主党の方が逆にどんどん辞めて行っちゃう。不思議なことです」と度重なる代表交代劇を持ち出し、切り返す余裕を見せました。しかし、小沢氏は「政権交代こそが日本の真の構造改革だ」とし、来年の統一地方選と参院選で必勝を期すとの“のろし”を上げています。自民党は、剛腕で選挙上手なベテラン政治家を相手に来夏の参院選を戦うだけに、9月は「小沢氏に対抗出来る人物」を主眼に総裁を選出することが重要になってきました。


戦後3位の長期政権
 小泉長期政権の秘訣は中曽根内閣に類似した点にあります。共通項はポピュリズム(大衆迎合的)の国民的人気に支えられた高い内閣支持率と民営化の看板政策、強固な日米関係などが挙げられます。スタート時点では最大派閥の支援を受け、「田中曽根内閣」「角影内閣」と不評を買った中曽根首相でしたが、就任直後の電撃的訪韓による日韓関係打開や訪米の「列島浮沈空母」発言でレーガン大統領に密着、「ロン・ヤス」関係を誇示するなど外交で成果を上げ、国鉄、電電民営化を実現。衆参同日選で衆院の304議席を獲得した功績で総裁任期を1年延長し、新総裁に竹下登氏を指名して退陣しました。小泉首相も2度の訪朝で国民の支持を得、イラク戦争の開戦を支持して自衛艦を中東海域に、自衛隊をサマワに派遣するなどでブッシュ大統領の信頼を得て日米同盟関係を堅固にし、昨秋の「郵政解散」で国民に信を問い、296議席で圧勝。道路公団と郵政民営化を実現しました。


TVは“小沢劇場”演出
 そして、就任直後の85%を最高に、絶えず50%台の内閣支持率を維持し、40%を割ったことがないことは驚異的実績です。小泉首相はこの「望月の世」と「党内求心力」を任期切れの9月まで持続しようと、小泉改革の総仕上げである行革推進法案の早期成立と、歳出・歳入一体改革の工程表「経済財政運営と構造改革の基本方針」(骨太の方針)を6月までに策定しようと懸命です。だが、民主党は崩壊一歩手前の崖っぷちから、旧社会、民社系議員までが小沢氏を再生の切り札に担ぎ上げ、危機を乗り切りました。小沢氏が7日の両院議員総会の代表選で獲得した119票は、消防の緊急呼び出し番号と同じですが、「偽メール」の業火を消し止めるには小沢消防士の荒療治が必要だったようです。視聴率競争のテレビ各局も1週間に渡り「真打ち登場」などと大サービスで、今度は“小沢劇場”を演出。同党の「災いを転じて福と為す」ほど、失態のダメージを回復させました。


党再生に「劇薬」
 「党の再生を『劇薬』にゆだねたということだろう」――。こういう書き出しで、読売新聞の小田尚政治部長は8日朝刊の紙面に次のような解説を載せました。「劇薬は『副作用』も強い。小沢氏には『壊し屋』の異名がつきまとう。自民党竹下派、非自民連立政権、新進党のそれぞれの時代に、権力の中枢に坐りながら、自分に従わない同志を排除し、組織を分裂させてきた。<略>自分の考えを側近議員を通じて表に出す『腹話術』的手法。上意下達の体育会系スタイル…。小沢氏がそんな“剛腕”ぶりを発揮する場面は自由党の民主党への合流後は少なくなったが、サークル感覚が抜けきれない民主党若手議員にはまだ拒絶反応もある。小沢氏には、議論をオープンにし、説明責任を果たすことが真っ先に求められる」と指摘、民主党の直面する課題として、@小沢氏自身の“自己変革”による政権交代の「挙党体制」構築A参院選に備えた個人後援会、地方組織などの足腰強化B安全保障政策など基本政策の取りまとめ――を提言しています。


剛腕「壊し屋」が変身
 この提言に沿って小沢氏は、役員人事で菅氏をナンバー2の代表代行に、鳩山由紀夫幹事長、渡部恒三国対委員長、松本剛明政調会長ら党3役を揃って留任させました。     国会会期中の混乱回避と挙党体制・党内融和を理由に、本格人事は9月代表選の再選後に延ばし、前執行部体制をそのまま引き継いだわけです。代表選の報復人事や、支持グループの旧社会、民社両党系に対する論功行賞もなく、小沢氏の変身ぶりを示す人事でした。小沢氏は、自民党中枢の田中―竹下派でプリンス呼ばわりされ、47歳で党幹事長を務めましたが、93年6月に政治改革問題を理由に離党し、非自民の細川護煕連立政権を誕生させた政界再編の立て役者。2大政党制を目指し新進党を結成しましたが、内紛に嫌気がさして解党。次ぎは自由党を結成し、田中派と同根の小渕恵三内閣と連立政権を組みましたが、自民党との合併話が進展しなかったことから政権を離脱、自由党も分裂させました。



手強い相手と首相
 小泉首相は「自民党をぶっ潰す」勢いで改革を進めましたが、小沢氏は本当に2度も党を解体した本物の「壊し屋」。小沢氏は「公武合体では明治維新は出来なかった。幕藩体制を壊したから達成出来た」と平然と述べています。その強権的姿勢にアレルギーを感じる党内若手が多く、前原グループ(凌雲会)の仙谷由人前幹事長代理は「小沢さん(の手法)は(皇太后らが幼帝に代わって政治を行う院政の)垂簾政治だ」と批判していました。しかし、「偽メール」で地に墜ちた党の信頼を回復するには小沢氏の強力な政治手腕の発揮が求められたのでしょう。「自民党の手の内をよく知っているので、手強いと思う」――。小泉首相は小沢新代表の感想を記者団に聞かれ、率直にこう答えました。小沢氏が自民党幹事長として権勢を振るっていた当時、全国組織委員長として使えた首相は「全国の情勢にも詳しいし、(当時の)小沢氏は総裁候補で、よく懇談したが、私なんか全く相手にされなかった」と振り返りつつも、小沢氏が「私自身が変わらなければならない」と“変身宣言”したことについては、「人間はなかなか変わらないもの」と警戒しています。



「共生」と「公正な国づくり」
 小沢氏は代表選の政権演説で、「でたらめな小泉政治の結果、日本は屋台骨が崩れて迷走を続けている」と小泉政権を批判、明確な「共生」の理念と自民との対立軸を明示した設計図を作り「私が先頭に立つ」との決意を表明しました。人間社会の平和、自然と環境の2つの「共生」と「公正な国づくり」をキーワードとし、「年金・介護、高齢者医療の基礎部分を消費税で賄う」など、かなり強引な「改革8策」を公約に掲げました。設計図は師匠の田中角栄氏が書いた「列島改造計画」を手本に13年前に出版した「日本改造計画」をさらに具体化して9月の代表選までに再執筆。再選を果たせば、この著書を民主党の政権構想として、統一地方選と参院選で必勝を期すと意気込んでいます。このため、政府与党は「気を引き締めねばならない。国会では政策中心の建設的な議論が出来そうだ」(安倍晋三官房長官)、「(小沢氏の)演説に熱いものを感じた。改革競争をしっかりやりたい」(武部勤幹事長)と述べ、前原執行部時代の「対案・提案型」から「対立軸・激突型」の国会に変わることを予想し、緊張を高めています。首相は、政権奪取と党の再生を誓って登板した剛腕の小沢氏と今後の党首討論などで火花を散らしますが、民主党が「メール問題」で傷つけた「国会の品格と権威」をどう回復するか、国民は注視しています。


政界再編を予言
 細川首相特別補佐や橋本龍太郎内閣の経企庁長官を歴任した田中秀征・福山大教授(元衆院議員)は、「小沢氏はかねてから集団自衛権より集団安全保障を重視してきたが、国際協調の枠内での日米同盟を標榜するだろう。小沢氏にとって党は二の次ぎの存在で、この点は小泉首相とよく似ている。党より国家や国民、政治信条を優先するから国民的人気が衰えない。政治信条を貫けば、時には党が壊れるのも当然だ。“壊し屋”小沢の党運営を懸念する向きもあるが、政界再編の可能性も見いだせる。<略>場合によっては、秋の総裁選挙と首班指名が、党の枠を突破した“大政局”に発展する可能性もある。なぜなら『党は二の次』と考える両党首が政治信条を貫けば、待望の政策本位の政界再編もないとは言えないからだ。小泉首相も小沢氏も、心の底ではそれを狙っているのではないか」と読売新聞で政界再編を予言しています。小泉首相の国家ビジョンは不鮮明ですが、小沢氏の「日本改造計画」は明確なビジョンを示したものと評価され、80万部も売れました。


因縁試合で仕返し
 この改造計画を懐に自民党を飛び出し、非自民の細川連立政権を作ったのも、小渕内閣と連立政権を組んだのも、小沢氏の心底に強い政界再編の志があったからでしょう。その小沢氏が中核だった竹下派(経世会)を激しく攻撃したのが13年前の小泉首相、山崎拓元副総裁、加藤紘一元幹事長のYKKグループでした。攻守ところを変えて今、小沢氏は因縁試合で仕返しをしようとしています。小泉内閣産みの母とされる田中真紀子元外相も今回は小沢陣営につきました。「偽メール」騒ぎの最中、「当選同期(昭和44年)の会」と称し、小沢氏と綿貫民輔国民新党代表(前衆院議長)、羽田孜元首相(民主党最高顧問)、渡部恒三同党国対委員長の旧田中派4者が会食したことも、政界再々編の謀議が話し合われたと見られています。自民党内ではこうした民主党に対する批判と同時に、「古巣の最大派閥、竹下派が津島派に凋落したため、小沢氏は自民党内に密かに“逆刺客”を放ち、かつての権勢を奪回しようとしているのではないか」といった警戒の声が囁かれています。



潮目、風向き変わった
 先の「郵政選挙」では小泉首相の放った刺客に対抗して国民新党を結成した綿貫氏、亀井静香元政調会長、野呂田芳成元農水相や、離党処分を受けて謹慎中の平沼赳夫元経産相、野田聖子元郵政相ら郵政造反組が総裁選の行方と今後の政局を厳しく見守っており、参院選の結果次第では、政界再編の糾合勢力に変化する可能性を秘めています。小沢氏は菅氏に代表代行を要請した際、「自分は来年の参院選で与野党逆転を果たすために力を注ぎたいので、いろんな事をお願いしたい」と役割分担を申し出ています。先の総選挙で民主党は惨敗したとはいえ、2480万票を獲得しており、「オールオアナッシング」の小選挙区併立制による敗北でした。小沢氏は「参院選で自公過半数割れ、次期総選挙で非自民勝利、政権交代」は実現できると見ています。参院選の苦戦を覚悟する片山虎之助自民党参院幹事長は「メディアへの露出度が高い小沢氏の登板で潮目、風向きが変わってきた。小泉改革などと浮かれてはおられない」と一層の警戒を強めています。もはや安倍VS前原の若手対決は消えました。総裁選はマスコミが書き立てる「麻垣康三」候補にはこだわらず、小泉路線の継承よりも斬新な政策を打ち出し、いかに参院選を勝利するかを最重点に、政界再編も視野に入れて党内情勢を見極め、選考を進めることが重要になりつつあります。