第129回(4月1日)総裁選へ合従連衡 候補の言動活発化
爛漫の春。05年度予算が年度内に成立し、国会の焦点は小泉行革総仕上げの行政改革推進法案、教育基本法改正案、国民投票法案の審議の行方に移りました。自民党総裁選を半年後に控え、内政では小泉改革の負の部分とされる格差社会の解消、外交ではアジア外交が争点とされ、ポスト小泉を競う候補たちの言動も活発になってきました。東シナ海のガス田開発を巡る日中協議など難問が山積。私の属する丹羽・古賀派の有志は3月15日、谷垣派、河野グループなどと派閥横断的な「アジア戦略研究会」を旗揚げし、41人が参加しました。これには津島派、高村派、無派閥の議員も顔を見せています。表向きはアジア外交の勉強会ですが、最大派閥森派の2人の総裁候補に対抗するため旧宮沢派の“大宏池会”復活または同派中心の合従連衡を狙ったものです。首相の靖国参拝に批判的な福田康夫元官房長官は翌16日に訪韓、日韓関係の改善に「革命的な進展」の努力をすることで廬武鉉大統領と一致するなど、外交面で小泉首相とはさらに距離が広がりつつあります。


総裁選占う4ポイント
9月の総裁選を占うポイントは、@来年7月の参院選を勝利するには誰を選ぶかAベテラン、若手の世代間抗争をどう決着させるかBタカ派、ハト派の外交政策のいずれを選択するかC「小さな政府」の歳出削減型、消費税アップの増税型のどちらを選択するか――の少なくとも4つがあります。昨秋の総選挙で自民党は圧勝しましたが、その振り子現象で、来夏の参院選は比例区より各県の選挙区で苦戦すると予想されていました。そこで、森喜朗元首相、青木幹雄参院議員会長らは若手候補の安倍晋三官房長官を温存する構えを見せていました。ところが「メール問題」で民主党が墓穴を掘って地盤沈下、参院選の勝利はおろか、安倍氏の対抗馬である若手の前原誠司氏までが引責辞任しました。小泉首相や側近の中川秀直政調会長、竹中平蔵総務相らは「躊躇なく戦える状況」と見て、安倍氏に出馬の決意を促しています。これに対し、急激な世代交代を恐れる山崎拓前副総裁や加藤紘一元幹事長らは首相より年長者でベテランの福田氏と連携、アジア外交重視の政策を推進しようとしており、福田氏の存在感は次第に高まっています。


山崎、福田両氏が連携
山崎氏は6月までに政権構想(マニフェスト)を発表、これに福田氏ら他候補が合意すれば総裁候補に擁立するもよし、辞退する場合は自らが出馬する、との意欲を漏らしています。これは新政権のキーマンとなって主流派を形成する意向を示したものと見られています。自民党群馬県連は、福田赳夫、中曽根康弘両元首相の永い「上州戦争」のあおりで30年来2分されてきましたが、3月に入って県議会での党1本化を決めたばかり。これには「息子の中曽根弘文参院議員が早晩参院議長に就任するための布石だ」などという穿った見方もありますが、山崎氏の出自は旧中曽根系の旧渡辺(美智雄)派。中曽根元首相は、総選挙で見せた「小泉劇場」に不快感を示し、首相が進める弱肉強食の市場経済原理主義やアジア外交に大きな懸念を抱いています。福田康夫氏と中曽根康弘氏が手を携え、ソウルでの交流・親善を目的とする日韓・韓日協力委員会の合同総会に出席し、盧大統領と会談したとなれば福田・山崎連携説は一層深まりそうです。大統領は民間交流などを通じて関係改善を図るべきだとの考えを示しましたが、韓国側がポスト小泉の有力候補である福田氏に期待を掛け、関係改善の強いメッセージを打ち出したことに間違いありません。


谷垣氏は大宏池会復活に期待
福田氏は総裁選出馬に沈黙を続けていますが、父親・赳夫元首相譲りの“アヒルの水掻き”(水面下工作)が得意なようで、各紙世論調査では人気トップの安倍氏をじわりと追い上げています。一方、谷垣氏は財務相就任当時から増税路線を明確に打ち出し、出馬の意欲を表明していますが、何しろ少数派閥の領袖であるため「アジア戦略研究会」など旧宮沢派の大宏池会復活あるいは同派を軸とした合従連衡に期待を掛けています。池田勇人元首相を源流に、軽武装・経済重視の路線を歩んできた我が宏池会は、宮沢喜一元首相が会長だった時代以降、2度分裂して48人の丹羽・古賀派、15人の谷垣派、11人の河野グループに分かれています。しかし、内情では小泉路線にやや好意的な丹羽雄哉元厚相と批判的な古賀誠元幹事長との間に温度差があり、古賀氏は2月中旬、福岡市の講演で「あの(小泉首相の)個性と政治手法がこれ以上続くことは、日本が将来滅びてしまう危うさを大きくしてしまう」と踏み込んで小泉政治を批判。さらに、3月24日には秋田市の会合で「保守本流の宏池会が政権にかかわり、影響を及ぼしてこそ、21世紀に誤りのない国家像を作ることが出来る」と述べ、宏池会が総裁選に絡んでいく意欲を表明しました。


日中韓の関係改善が焦点
親中派として知られる河野洋平衆院議長は、都内で開かれたアジア戦略研究会の設立総会で、「首相として靖国神社へ参拝することを『心の問題』とだけ説明して相手が納得するだろうか」と語りかけ、中韓両国との関係改善を強調。日本の国連安保理常任理事国入りが失敗した経緯についても、「中・韓という最も身近な国から賛同を得られなかったことが決定的な敗北の原因だ」と批判しました。河野氏に先立ち、来賓挨拶をした宮沢元首相も「米国との紐帯をしっかり握りながら、中国や韓国などとの対話をどう重ねていくかが国益の問題」と指摘しました。中国の唐家セン国務委員は、2月に訪中した野田毅代議士(日中協会会長)との会談で、「小泉首相にもう期待はしていない。在任中に(日中関係が)好転する可能性は非常に小さい」と語るなど、中国側が首脳外交の門戸を完全に閉ざしています。このように総裁選では日中韓の関係改善をどう進めるかが大きな焦点です。


外交タカ派の麻生外相
閣内にあって日中打開に苦労しているのが、総裁候補の1人である河野グループの麻生太郎外相。麻生氏は「中国の経済発展を歓迎する」との考えを繰り返し述べたり、外相在任4カ月の間に日本記者クラブで3回も講演し、3月8日の同クラブの会見では靖国問題について、「批判を受けずに天皇や首相が参拝できる解決策を検討すべきで、A級戦犯の分祀も必要だ」との認識を示すなど、中国に精一杯の配慮を見せています。しかし、首相と同様に靖国参拝は「心の問題」と受け止めており、昨年末には中国の軍事力増強について、前原民主党代表の「現実的脅威」発言に関連して、「かなりの脅威になりつつある」と同調するなど、中国側を刺激しています。しかも、麻生氏は3月9日の参院予算委で、「(台湾は)民主主義がかなり成熟し、自由主義を信奉し、法治国家でもある。日本と価値観を共有している国」と2月4日の講演に次いでまたも台湾を“国呼ばわり”し、中国外務省の秦剛・副報道局長から「日本外交当局の最高責任者が公然と中日共同声明に反する発言をしたことに驚きを感じ、内政干渉の行為に強く抗議する」と批判されました。


ダントツ支持の安倍氏
週刊誌には麻生氏が「米高官に核武装の意向を示した」などと書かれ、タカ派ぶりが話題になっています。こうした経緯から見ても、麻生氏が自民党内のアジア外交推進派の支持を取り付けることは望み薄でしょう。安倍氏も外交タカ派の点では遜色ないと見られています。日朝包括協議では、拉致問題で「対話」より経済制裁などの「圧力」を主張する安倍氏は、国民世論ではダントツの支持を得ており、党所属衆院議院の6割強が当選4回以下と若返っている現状では、幅広い支持を集めています。東シナ海のガス田開発問題を巡リ北京で3月6、7日に開かれた日中協議で、中国側が新たに示した共同開発提案に日本が実効支配している尖閣列島(中国名・釣魚島)周辺の海域が含まれていたことから、インターネットのブログなど国内世論は、「弱腰外交」を批判する書き込みで溢れました。


品格に欠ける表現と応酬
そのうえ、中国の李肇星外相が同7日、全国人民代表大会での記者会見で、「ドイツの政府当局者が、いかなるドイツの指導者もヒトラーやナチスを崇拝したことはない。(靖国参拝は)ドイツ人も理解できず、愚かで不道徳なことと述べた」と語ったため、安倍氏は世論をバックに、「現職の外交当局トップの地位にある人物が、他国の指導者に対し『愚か』とか『不道徳』といった品格に欠ける表現を用いるのは外交儀礼上、不適切だ」と記者会見で応酬、日中間の対立が一段と深まりました。ここへきて米軍再編の目玉である普天間基地の辺野古崎移設、海兵隊のグアム移転費用負担や米牛肉再禁輸問題などで日米外交もギクシャクし、小泉―ブッシュの蜜月関係も揺らいでいます。米国では驚異的な経済発展が続く中国と日本がいつまでも対立関係にあることは、アジアの不安定要因に繋がるとして、日中韓の友好修復を期待する議会勢力が増えています。小泉路線継承の本命「タカ派の安倍」か、対抗「ハト派の福田」の追い上げか、はたまた大穴「2,3,4位連合」政権か、森派の2極化も予想され、半年後に控えた総裁選は加熱するばかりです。