第128回(3月16日)後継託す行革路線 会期延長も視野
  野党第1党の民主党が「メール問題」で自滅した結果、論戦もしぼんで空洞化の危機にあった国会は、ようやく活気を取り戻してきました。06年度予算案が衆院を通過した段階で、自民党が参院予算委で「元気のない民主党に代わって」(片山虎之助参院幹事長)と「4点セット」を逆に取り上げ、耐震強度偽装やライブドアなどの問題点を丁寧に質し、国民の政治不信解消に努めたからです。政府は10日、小泉改革の総仕上げと位置づける行政改革推進法案を閣議決定しました。教育基本法改正案、国民投票法案も早急に取りまとめて提出、後半国会を盛り上げる方針です。行革推進法案は単なるプログラム法案で、肉付けは次期政権に託されています。マスコミは9月総裁選の特集を始めていますが、予算が年度内に成立すれば4月から一気に総裁選が加熱しそうです。執行部は重要法案のほか、出来れば防衛庁の省昇格関連法案、北海道道州制特区法案なども取り上げ、会期延長も視野に入れ6月18日の会期末まで精力的に審議を進め、総裁選の加熱を避ける考えです。


府省の横断的配置転換
 小泉構造改革については、何度もホームページで取り上げてきたので、概要だけ記しますが、行政改革推進法案は、@【政策金融改革】8つの政策金融機関を再編成、1つの新機関に統合A【独立行政法人見直し】歳出削減のため組織と業務の必要性を再検討B【特別会計改革】10年度をメドに31特別会計を統廃合し、財政健全化に20兆円程度の寄与C【国家公務員純減】定員を06年度から5年間で5%以上純減D【国の資産、債務改革】国有財産の売却などで資産を圧縮し、債務残高を抑制――を主な内容としています。公務員の5年間5%削減は、郵政公社、自衛隊を除く国の行政機関職員約33万2千人を10年度までに約1万7千人削減するもので、新規採用の抑制と、国の事務・事業の合理化による人員削減、民間委託、独立行政法人化を挙げ、削減の重点分野としては、農水省の食糧管理、農林統計両部門などを盛り込んでいます。法案には「職員の異動を円滑に行うため、府省横断的な配置転換、職員の研修を行う仕組みを構築する」と明記しました。政府は法案成立後、内閣官房に対策会議を設置し、配置転換の具体策を決める方針です。


トップに限らず天下り規制
 政府系金融改革では、商工組合中央金庫と日本政策投資銀行の「完全民営化」を明記して根拠法は廃止、政府出資を民営化から7年後までにゼロとすることとしました。国際協力銀行(JBIC)の円借款部門を国際協力機構(JICA )に移行することも盛り込みました。8つの金融機関を統廃合して平成20年度に発足させる新たな政府系金融機関への天下り規制は、防衛施設庁官製談合事件の反省に立って、経営トップに限らず複数の「経営責任者」を対象とすることになりました。しかし、当初盛り込もうとした「天下りの全面禁止」の条文は、各省庁の抵抗に加え、内閣法制局から「天下りを一律禁止すれば、憲法の『職業選択の自由』に抵触する恐れがある」と指摘され、一律の天下り禁止は見送りました。首相が「行革国会」と呼び、その目玉と位置づけた「簡素で効率的な政府」作りの行革推進法案が提出されたことで、9月の首相退陣後も小泉改革路線は担保されるわけで、首相は法案決定の閣議で同法案の早期成立と諸改革の推進を全閣僚に指示しました。


後継を改革競争に駆り立てる
 郵政民営化が『小さな政府』の「入り口」なら、財投を通じて郵貯資金を民間に貸し出す政府系金融機関の統廃合は「出口」です。郵政民営化関連法が成立した時点で、小泉改革路線をどう将来に繋ぐかと首相や側近が考えた末、行革推進法案が生み出されました。従って同法案は、基本理念や作業手順など最低限の枠組みを示したプログラムに過ぎず、「ポスト小泉の政策遂行を法律で縛る」(中川秀直政調会長)効果は大きいですが、改革の肉付けは次期政権に委ねられます。その意味では、ポスト小泉の総裁レースを「改革競争」に駆り立てる狙いが込められています。政府与党は、同法案を公益法人制度改革関連法案、官民競争導入公共サービス改革法案(市場化テスト法案)と一括審議するため、衆参両院に特別委員会を設置する考えです。労組系の支持が多い民主党は、配置転換や団体交渉権の付与などに強い関心を示しており、法案審議はこれから白熱化するでしょう。



教育基本法の成立目指す
 「4点セット」に関連した建築基準法改正案を近く提出、証券取引法改正案とともに審議を急ぎますが、ライブドア、耐震強度偽装の両事件ともに企業モラルの崩壊が根底にあるため、教育改革の問題が、にわかにクローズアップされてきました。作家・新田次郎氏の息子で数学者の藤原正彦お茶の水女子大教授が書いた「国家の品格」が88万部ベストセラーを記録しており、武士道や日本古来の道徳、伝統、文化を見直すムードが高まっています。自公両党は9日、幹事長、政調会長、国対委員長が会談し、教育基本法改正案を今国会に提出し、成立を目指すことで合意しました。同改正案では、「国を愛する心」との表記を求める自民党と、「国を大切にする心」と主張する公明党が折り合わず、「愛国心」の表現をめぐり与党内で調整が続いていましたが、与党検討会の座長で衆院予算委員長の大島理森・元文相が予算審議から解放されたことから、与党内調整が急ピッチで進み、「生涯学習」「社会教育」「幼児教育」の3条項について大筋の合意を得ました。大島氏も「最後の詰めの段階にきた」と判断しています。首相は同日、「やると決めた以上、早く与党間で最終案をまとめる必要がある」と同改正案の作成を急ぐよう武部幹事長に指示しました。



18歳に引き下げる妥協案
 憲法改正の具体的な手続きを定める国民投票法案についても、自公両党は「5月の大型連休後に参院に送付」との目標で一致。衆院憲法調査特別委員会(中山太郎委員長)は16日の理事懇談会から与野党間の論点整理を始めます。自民党の船田元憲法調査会長は「3月末までに自公民3党間で法案要綱を作成、党内手続きを終えて議員立法の形で衆院に法案提出、4月末までに衆院通過、5月連休後に参院審議に入る」というスケジュールを描いています。同法案の焦点とされているのは、投票権者の年齢、国民投票の対象、マスコミ規制です。民主党は18歳に引き下げ、皇室典範なども投票対象に含めるよう主張しているのに対し、自民党は「20歳以上と定める公職選挙法の選挙人名簿と別に投票者名簿を作ることは難しい」と難色を示しています。そこで、「法案の本則は18歳以上と明記し、付則で当分の間、公選法の既定が18歳以上になるまでは20歳以上で対応する」などの妥協案が検討されています。自民党は報道についても、全くのゼロ規制ではなく、メディアの自主規制を望んでいます。このように国民投票法案は3党間で歩み寄る姿勢もあり、参院自民党の幹部は「円満な形で参院に送ってくれば、会期延長してでも成立させると衆院側に伝えてきています。


延長で首相の求心力維持
 教育基本法改正案や国民投票法案の提出気運が盛り上がってきたのは、総裁選が加熱する中に首相が埋没して、レームダック(死に体)視されるよりは、国会が延長された方が、求心力を維持でき、ポスト小泉選びでも影響力を行使できると踏んだからでしょう。細田博之国対委員長は11日、選挙区で「野党が色々なことを言って会期内に(重要法案が)成立しないなら、断固、会期延長してでも成立を期す」と述べています。お陰で国会は内政に関する重要法案が目白押しで後半国会も緊迫の様相が濃くなってきました。一方、防衛庁の省昇格関連法案は防衛施設庁の官製談合事件の影響があり、女性・女系天皇を認める皇室典範改正案も秋篠宮紀子さまのご懐妊で今国会提出は難しい情勢です。外交では、米軍再編と普天間飛行場移設問題、東シナ海のガス田開発問題など米中相手の懸案が大きく浮上しており、ポスト小泉候補がタカ派、ハト派のいずれの外交路線を選択するかが、国民の注目を浴びるようになってきました。