第126回(2月16日)4点セットで激突 施設庁の解体を
  「ほころび次々」(毎日)、「厳しい逆風」(共同通信)、「末期症状をどうする」(朝日)――。昨年秋まで「順風満帆の小泉政権」と讃えたマスコミの論調が、がらっと変わってきました。野党が、その後の耐震強度偽装事件、今年に入って起きたライブドアショック、米国産牛肉の再禁輸、防衛施設庁の官製談合摘発を「4点セット」として国会で厳しく追及、与野党が激突したからです。官製談合事件では、東京地検特捜部の捜索を受けた海洋土木会社などが、わが選挙区内の在日米海軍佐世保(長崎県)、岩国(山口県)両基地の岸壁や飛行場移設工事でも談合を行った疑いが強まっており、大変遺憾な事態。イラク派遣や豪雪地帯の除雪作業に献身的な努力を続けている自衛隊員のことを思えば、許し難い官業の癒着、幹部の腐敗体質です。今国会には防衛庁を省に昇格させる「防衛省設置法案」が提案されますが、防衛庁長官政務官を務めた私としては、額賀福志郎防衛庁長官が主張する「防衛施設庁の解体・統合」などの機構改革を法案に盛り込むべきだと考えています。


小泉改革の「影」の責任追及
 アスベスト(石綿)対策を含む05年度補正予算を成立させた国会は、2月6日から衆院予算委で06年度本予算案の審議に入りました。政府自民党協議会や私が毎水曜に出席する自民党副幹事長会議では、2月中に予算案の衆院通過、3月中に年度内成立を目指すことを確認しています。予算委の質問1番手には中川秀直政調会長が立ち、小泉構造改革を推進する重要性を訴えました。これに対し、民主党は、牛肉問題で中川昭一農水相の不用意答弁を引き出したことに勢いづき、予算案採決の前提として、耐震強度偽装事件では、伊藤公介・元国土庁長官の証人喚問を引き続き要求。「4点セット」それぞれについても予算委で集中審議を求め、小泉改革の「影」の部分を徹底的に焙り出す作戦です。そうした責任追及と合わせ官製談合防止関連法改正、天下り規制、証券取引委員会設置、建築基準法改正、輸入牛肉個体識別表示などの法案を続々提出、対話路線でも臨もうとしています。


暗闇に戻すなと“成長会長”
 世論も敏感で朝日の世論調査では、小泉内閣支持率は45%と昨年末の調査より5%低下。共同通信の調査では、市場原理導入や規制緩和などの構造改革は「見直すべきだ」との意見が50・6%にも達しました。野党各党は国会論戦で、小泉改革が貧富の格差、中央と地方の格差など「格差社会」を助長したとして、こぞって構造改革の「負の側面」を追及しました。これに、自民党は「経済のパイ拡大が格差を縮める」と反論しています。「改革による経済成長が、格差を起こさないための方策を持論に、自らを“成長会長”と自認」(朝日新聞評)する中川政調会長は、予算委のトップバッターに立ち、「いかに日本全体を勝ち組にしていくかが重要だ。野党は隠れ“大きな政府”を主張しているが日本を暗闇に引き戻し、世界の負け組に転落させる可能性が出てきた。格差是正の観点からここで改革を止めて時代を逆戻りさせるのは、愚の骨頂」と野党をこっぴどく批判しました。


「勝ち負けの二者択一でない」
 首相は「今のような低成長よりも、日本にはもっと眠っている力、潜在力がある。勝ち組とか負け組とか言われるが、人生は二者択一ではない。個人も企業もそれぞれの持ち味を発揮できる社会にしていくことが大事だ」と答え、構造改革の推進が経済成長や国民生活の豊かさにつながっていくとの考えを強調しました。また、中川氏は名目成長率4%の目標を掲げ、「経済成長こそが格差是正の良薬と言うことは確かだ」と主張しました。名目成長率とりわけ物価上昇率をどう見込むかは、消費税率引き上げを含む財政再建策や、金融面で日銀の量的緩和解除時期などの根幹に関わる問題です。自民党内には秋の総裁選に向けて財政運営を巡る路線論争が生じています。税収の自然増収は名目成長率に比例するため、年4〜5%の高い名目成長率を財政再建の前提に置けば、消費税などの増税幅を小さくできるメリットがあります。安倍晋三官房長官を推す中川氏と竹中平蔵総務相は消費税率引き上げに反対し、日銀に長期金利の抑制と金融緩和策の継続を求め、税収を左右する名目成長率は高めに設定する考えです。構造改革で実現を見込む高めの潜在成長率に、高めの物価上昇率を上乗せして名目成長率を設定するというのが中川・竹中路線です。


谷垣・与謝野VS中川・竹中
 2月1日の経済財政諮問会議では、竹中氏が「潜在成長率、物価上昇率が各2%で名目成長率4%の達成と言うのはまさに、堅実な前提だ」と述べたのに対し、与謝野馨経済財政相に近い、民間議員の吉川洋・東大大学院教授は「名目成長率をあまり上げるのは、要はインフレ政策だ」と激しく反論しました。消費税引き上げ論者の谷垣禎一財務相も同会議で、物価上昇率の引き上げについて「(税収増だけでなく)国債の利払いや物価連動で給付が増える社会保障など、歳出も増える」と指摘し、竹中氏を批判しました。これを与謝野氏が、6日の閣議後の会見で「高い成長を努力目標にすることは大事だが、財政再建は手堅い前提の方が責任ある改革の姿勢だ」と支援するなど、谷垣・与謝野VS中川・竹中の対立は深まるばかりです。安倍官房長官は、政府の経済財政見通しを示す「改革と展望」が実質成長率を1・5%程度と見込んでいることを踏まえ、「規制、金融、歳出、税制の改革をしっかり進めていくことで、潜在成長率を出来れば2%以上にする努力をしていかなければならない。目標到達は可能だ」と、予算委で小泉路線継続の姿勢を強調しています。


皇室典範改正は見送り
 閣内や党内ではもう1つ、皇室典範改正案の扱いをめぐり、積極、慎重の両論が渦を巻き大きな論議を呼んでいました。しかし、7日に秋篠宮妃紀子さまが第3子を懐妊されたことが判明したとたんに論議の潮目が変わり、政府・与党は同改正案の今国会提出を見送る方向へ傾きました。首相はご懐妊発表当日の衆院予算委で「天皇制が今後も安定的に継承されるためには、女性天皇、女系天皇も認めた方がよい。今国会中に成立するように努力したい」と述べ、紀子さまのご懐妊とは切り離し、党議拘束を掛けても改正案の今国会成立を目指す考えを示しました。だが、9日夕、山崎拓前副総裁と会談した結果、@改正案は全会一致か、それに近い状態で成立させるべきだA国会に提出したら成立させる必要があり、継続審議は避けるべきだ――との認識で一致、武部勤幹事長には、「政争の具にすることなく、皆が一致することが望ましい」と述べ、慎重に取り組むよう指示しました。


超党派議員懇が署名集め反対
 首相は皇室に40年間も男子が生まれないため、有識者会議に「将来にわたって安定的な皇位継承のあり方」を諮問、同会議は昨年11月、「女性・女系天皇を認める」「直系の第1子を優先する」を内容とする報告書をまとめました。これをもとに政府は皇室典範改正案をまとめつつあり、武部幹事長や中川政調会長は同改正案の今国会提出に積極姿勢を示していました。これに対し、改正案の提出阻止を掲げる超党派の「日本会議国会議員懇談会」(会長=平沼赳夫・元経済産業相)は旧皇族の男子を迎えてでも男系の維持を図るべきだとして、自民党員だけでも3分の1以上の署名を集めて反対しました。平沼会長は紀子さまご懐妊について、「男の子がお生まれになる可能性もあり、この国会で女系容認という改正は絶対に避けなければならない」と強調しています。こうした党内外の状況から、ご懐妊発表に先立つ3日の閣議後記者会見では、麻生太郎外相が「通常国会で遮二無二やらなければいけない法案だろうか。もう少し議論が必要」と言えば、谷垣財務相も「今国会であろうと、そうでなかろうと国民の合意が作られ、すんなり決まっていくことが望ましい」と合意形成を優先させる考えを示していました。


紀子さまご懐妊は時の氏神?
 杉浦正健法相も旧宮家の皇族復帰で男系継承を維持する方が望ましいとの考えを示し、中馬弘毅行革担当相は「どの派閥にも慎重論が出ている」と述べました。党執行部でも、久間章生総務会長は「冷静に意見集約することが必要」と語り、片山虎之助参院幹事長は6日の政府自民党協議会で「政局や大議論にすべきではない。与党でよく相談して提出の仕方を考えた方がいい」と主張、いずれも慎重姿勢を示しました。このため、政局は混乱含みとなり、首相は6日の党役員会で「慎重に議論していけば必ず理解が得られると思う。しっかり勉強した方がいい」と発言、党内閣部会を舞台に勉強会を立ち上げるよう指示したほどです。昨年の総選挙で圧勝した首相ですが、その足元の小泉チルドレンからも慎重論が噴き出すなど、このところ求心力に陰りか生じかけていましたが、ご懐妊の発表で「お子さまが生まれる9月まで待てばよい」と“模様眺め”の空気が党内で強まり、首相が軌道修正しても、「首相の指導力を問う」と言った責任追及の声は聴かれず、党内では「次期政権の課題」と受けけ止めるように急転しました。やはり首相はツイているようで、紀子さまご懐妊は、首相を救う“時の氏神”になったようです。