北村からのメッセージ

  第122回(12月16日)ポスト小泉蠢動 改革競争が激化 


 年の瀬に政策金融の改革、三位一体の改革、医療制度改革など小泉改革の多くがバタバタと決着し、法制化作業に入りました。「みんなよくやってくれた」と小泉首相はご満悦。先の総選挙で抵抗勢力を一掃して首相が強力なリーダーシップを発揮したこと、ポスト小泉を目指す主要閣僚に「改革競争」を促したことが早期決着に大きく功を奏しています。首相は、側近ナンバーワンの中川秀直政調会長、「大いなるイエスマン」を自称する武部勤幹事長、最も信頼する竹中平蔵総務相ら“忠臣NTT”に支えられ首相主導の政局運営を続けています。「衆院は300議席、参院は150議席がいい」などと公選法改正にまで意欲を示し、余裕タップりです。しかし、政策金融改革では国際協力銀の解体に谷垣禎一金融相と麻生太郎外相が手を組み反発したり、三位一体改革では補助金削減の生活保護費を巡り、安倍晋三官房長官が中川政調会長らの支援を得て無事に行司役を努めるなど小泉後の主導権争いも目立ってきました。超党派の「国立追悼施設を考える会」も“反小泉連合”に化ける可能性もあり、年頭に向けて政治潮流がどう変わるのか。気が抜けません。

 
  本丸落城で出城は抵抗断念

 11月30日はさながら首相の独演会。まず午前の党本部の全国政調会長会議では、「私が首相になる前、『政府金融機関の統廃合、民営化はとんでもない』と、党の行財政調査会が一指も触れさせないと言ったんですよ」と切り出した後は自慢話が止まらず、「改革の本丸が落ちたから、何とか抵抗してやろうという勢力も諦めてきた。郵政民営化が実現できなかったら、政府系金融機関統合・廃止・民営化も、三位一体の改革も今のような結論は出なかった」とまくし立てました。国と地方の税財政改革(三位一体改革)協議会が決着に最終合意した午後は、記者団に、「みんなよくやってくれた。地方の意見を尊重して、いい結論を出してくれた。地方もいい評価をしてくれているようだ」と大変な喜びよう。前29日夕の経済同友会パーティでも、「改革の本丸が落城したから、二の丸、三の丸、出城の勢力が抵抗を諦めた」と快進撃で成就していく小泉改革に上機嫌でした。


  財務・外務両相連携し組織防衛

 長くなるので医療制度改革は省きますが、政策金融の改革は対象の8機関のうち、国際協力銀行や国民生活金融公庫など5機関を1つの政府系金融機関に統合することを明記したほか、国際協力銀の政府開発援助(ODA)部門は、国際協力機構(JICA)との統合を検討。日本政策投資銀行と商工組合中央金庫は、政府が株式を保有しない完全民営化とし、公営企業金融公庫は地方自治体に移管します。新機関の役員への省庁OBの天下りを禁止することも盛り込んでいます。政府・与党が同29日に合意した基本方針には,@新機関の国内金融業務と国際金融業務は、それぞれ専門の窓口設置や人材育成に取り組むA(新機関に統合される)沖縄振興開発金融公庫は、11年度まで現行組織のまま残すB日本政策投資銀と商工組合中央金庫の民営化への移行期間を5〜7年とするC金融危機や大災害などの発生時に行う中小企業向け緊急融資など、セーフティネット(安全網)の仕組みを整備する――の4項目が加えられています。

  
  双方とも数合わせに終始

 Cは日本経団連が資源エネルギー開発や、超長期の金融、災害や経済金融環境の激変時の中小零細企業などへの支援機能を維持するよう強く求めていることから、非常時に備え新たな仕組みを導入する方針を取り入れたものです。政府系金融機関の改革は、郵貯や簡保資金などを「入り口」とし、8機関の融資残高が90兆円というUHFフィナンシャル・グループに匹敵する規模に「出口」が肥大化し、非効率な資金の流れとなっていたのを、政策金融の役割を縮小し、民間に流すのが狙いです。だが、谷垣財務相は、国際金融業務と円借款業務を分離するなど国際協力銀の解体案が浮上したため、政投銀の民営化容認を早い段階で内々に首相に伝え、麻生外務相とも連携し国際協力銀の組織防衛に専念しました。この結果、国際協力銀の扱いは、安倍官房長官の下に設ける有識者会議で05年度内に結論を出すことに先送りされ、改革は単なる「数会わせ」に終わりました。三位一体改革も、3兆円の税源移譲を達成するための「数合わせ」に終始した感は否めません。政府・与党は11月30日、国と地方の税財政改革協議会で、国の補助金削減と地方への税源移譲案を正式に合意しました。未決着だった来年度分の補助金削減額は約6540億円で税源移譲額は約6100億円。昨年決まった約2兆3990億円と合わせた税源移譲額は約3兆90億円で、目標の3兆円をクリアしました。

  
  教員給与の負担引き下げ

 削減額(単位億円)は、厚生労働省が5290で最も多く、国交620、農水340、文科170、経産70、環境40,総務10の順。地方の反対が強かった生活保護費の削減は見送りましたが、総額抑制などの制度見直しに取り組み、児童扶養手当や児童手当は国の負担率を引き下げることにしました。文科省の主張通り義務教育費国庫負担制度は「堅持」を明記したうえ、公立小中学校の教職員給与費については国の負担率を2分の1から3分の1に引き下げました。財務省が移譲に反対した「財源が借金(国債)」の施設費は、廃止・減額分の5割分だけ税源を移譲します。合意文書には「地方分権に向けた改革に終わりはない。国と地方の行財政改革を進める観点から、地方の自立と責任を確立する取り組みを行う」と明記。改革継続の方向性を示しました。全国知事会など地方6団体は、07年度からの3年間を「第2期改革」と位置づけ、さらに補助金廃止・税源移譲を求めていく方針です。
 

  鶴の一声に3氏タグマッチ
 
 地方分権の流れを加速させるには、国からのひも付き補助金を減らして自治体に税源を移し、地方財政の自由度を高めるのが改革の狙いでしたが、調整では補助金の積み上げだけに議論が集中。いかにして国の権限を残したまま国庫負担率を引き下げるかの手法が目立ち、国と地方の役割分担などは討議されず、単なる数合わせに終始しました。にもかかわらず、政策金融の改革では、首相が「1つになるのが望ましい」と一言発しただけで政府系金融機関が一本化され、三位一体改革でも「地方の意見を尊重する」との首相の“鶴の一声”を合い言葉に、安倍官房長官、中川政調会長、竹中総務相がタグマッチで一応は霞が関の抵抗を押し切り、改革を実現しました。首相が喜ぶのは無理からぬところ。だが、内閣の司令塔・経済財政諮問会議の仕切り役(担当相)も独走型の竹中平蔵氏から調整型の与謝野馨氏に代わり、運営方法も民間議員寄りから財務省などの官僚寄りに変化しつつあります。竹中総務相が講演で「諮問会議は小泉改革の推進的役割を果たしてきたが、改革のモメンタム(勢い)が以前より低下した」と皮肉れば、すかさず与謝野経済財政担当相が「小泉交響楽団の指揮者は小泉首相ただ一人」と反論するなど穏やかならぬ関係です。一方、外遊先で消費税率アップを唱え政府系金融の複数機関化を模索した谷垣財務相とこれを支援した与謝野氏を首相は「調子外れ」と牽制し、党内で波紋を描きました。


  反小泉連合に化けるか

 党税調顧問の片山虎之助参院幹事長が「党税調に素人が口を出すのは慎んで欲しい」と中川政調会長を諫めるなど、谷垣・与謝野VS中川・竹中で始まった増税論議は、党内での確執を広げ、ポスト小泉を巡るジャブの応酬が始まっています。こうした中で11月9日、首相の靖国参拝に批判的な超党派の「国立追悼施設を考える会」(会長・山崎拓前副総裁=自公民130人が登録)が発足、在任中に無宗教の追悼施設建設試案をまとめた福田康夫元官房長官やハト派路線の継承者・加藤紘一元幹事長も中核メンバーとして参加しています。山崎・小泉・加藤のYKKは、竹下政権に盾突いた盟友関係にありましたが、最近、小泉―加藤関係は冷却しており、山崎氏についてもマスコミは「郵政民営化法成立の功労者なのに、山崎派の入閣はおろか副大臣ポストもゼロの屈辱を味わった。派閥領袖としては面目丸つぶれ」と同情し、「考える会」が“反小泉連合”に化ける可能性を指摘しています。その場合は福田氏が切り札としてポスト小泉候補に浮上するかもしれません。


  森前首相が安倍氏温存説
 
 それを意識してか、森喜朗前首相は11日、TBSの時事放談で「(総選挙で)勝ちすぎた振り子の論理からいうと(07年の)参院選で自民党は負ける方に来るのではないか。だったら あまり冒険することはない」と語り、安倍氏の温存論に言及しました。これには首相が翌12日に「チャンスはそう来ない。困難に直面して逃げたらだめだ」と安倍氏を鼓舞するなど、他のポスト小泉候補を刺激しました。こうした状況を見ても、年明けの通常国会は9月総裁選の思惑を秘めたプレ政権争奪戦が始まり、賑やかになりそうです。