北村からのメッセージ

 

 第12回 宇宙科学振興(2月16日) 大鉱物資源の宝庫

 立春が過ぎても寒い日が続きます。皆さんお元気ですか。寒波襲来で全国の野菜が値上りしているとか。衆院の農林水産委員会に属する身には気懸かりなことです。常任委員会には、農水のほか厚生労働委員会にもこのほど所属しました。KSD事件や雇用問題、高齢者対策などを抱え、間口の広い委員会です。特別委員会の石炭対策とあわせ3委員会で働いていますが、自民党の国会対策委員として早朝から衆院内を飛び回っております。

 議員宿舎に帰り着くのは決まって夜半。満天には星座がきらめいています。何千光年の彼方から地球に差し込む星の光。あれは縄文時代に他の銀河を発した恒星の光だろうか。生命の起源はどの惑星から地球に届いたのだろうか。多忙な日々を一時忘れ、あれこれ空想すると、幼年期から抱き続けた宇宙の神秘に、改めて畏敬の念を深くせざるを得ません。

 ホモサピエンス(人類)の先祖が火と原始的な道具の使い方を覚え、霊長類として他の動物を支配し始めて僅かに約100万年。時空を超えた宇宙の営みを考えると瞬きに似た歴史ですが、そのまた1万分の1の二十世紀に、人類は生物破滅の兵器・原爆を開発して大量保有し、あらゆる資源を枯渇させ、地球環境を著しく破壊しました。大変罪深いことです。

 今回は前々回の環境問題に続いて、資源安保、宇宙科学について所感を述べたいと思います。公益法人・逓信協会が出版している雑誌の昨年11月号に興味深い記事が載っていました。評論家・入江隆則氏が同誌に連載中の「霧に閉ざされた世界」で『宇宙というフロンティア』を取り上げています。市販されていないので、その内容をご紹介しましょう。

 入江氏は、かつて科学技術庁で宇宙開発委員を務め、H2ロケットの先端に取り付ける日本版シャトル「ホープ」や、リニアモーターを利用してカタパルトから飛び立ち、空気中ではジェット・エンジン、宇宙空間ではロケット・エンジンで推進する「ハイムス」などを研究されていました。また、米国の宇宙ステーション「フリーダム」に接続させて種々の実験を行う予定の「ジェム」と呼ばれるモジュールの計画も既に立案していたそうです。

 要旨は次の通りです。<宇宙開発をSFじみた感覚でとらえることは止める時期にきている。米国は何度か予算を縮小させたが、「フリーダム」の構築を続けているし、ロシアも旧ソ連の崩壊以来、経済と政治が混迷しているなかでも宇宙ステーション「ミール」の実験を継続してきた。彼らが宇宙というフロンティアの将来性を確信しているからだ。これに比べ日本は、H2ロケットの相次ぐ失敗もあって取り組みが遅れている。>

 <日本の宇宙開発には理念と目的が明確でない。宇宙開発は資源小国としての日本こそが、本腰を入れて取り組み、子孫のために長い目で見て着実に推進させるべき課題である。
太陽系内に全部で10万個以上あるとみられる小惑星の大部分は、火星と水星の公転軌道の間に集まっている。その中には大きな偏心軌道をとって、地球と月の軌道半径の数倍程度まで距離が接近してくるものがある。>

 <ブライアン・オレアリー元宇宙飛行士によると、最もありふれた小惑星でも金属含有量が7、8%、その中には戦略物資として貴重なプラチナ、パラジウム、イリジウム、オスミウムなどの貴金属が含まれている。ゲルマニウム、ガリウムなどの半導体素材の含有量が500ppmを越えて含むものがある。小惑星を地球に近い軌道に導くのはそれほど難しい作業ではない。そういう天体が地球の近くに1つあれば、地球全体の希少金属需要を何十年も満たすことができるそうだ。>

 <また、月面には現在の地球の全エネルギー需要を2000年間にわたって満たす核融合の燃料のヘリウム3が存在する。大気がないため、太陽風から直接月面に降り注ぐヘリウム3は、何億年にもわたり100万トンも蓄積されてきた。重水素とヘリウム3の核融合を月面で行う場合、再処理用の廃棄物も出さず、放射能の防御もいらないし、それを直接電力に返還できるので、巨大な発電用タービンはいらない。人類が月へ進出する展望は今や一変している。>

 入江氏は以上の宇宙概況を説明したうえ、米宇宙飛行士の故・クラフト・エーリック博士が描いた、二十一世紀の月開発5段階を次のように示しています。(1)月軌道に軌道船を置き、着陸船を落下させて遠隔操作で土壌サンプルを回収するなど月資源の予備調査(2)月の低軌道に月ステーションを建造し、人が常駐して各種実験と月面作業訓練(3)月面コンビナートを建設し、酸素や鉄の生産、大型建造物の組み立てを太陽電池の電力で実行(4)月の居住環境が整備され、月人口の増加(5)月社会は経済的にも文化的にも地球に従属せず、月と地球間の貿易バランスは月側の輸出超過に傾くーーという壮大なアイデアです。入江氏は大鉱物資源としての小惑星と彗星の活用策に言及したわけです。 

 68年にSFの巨匠アーサー・C・クラークと、映像界の鬼才スタンリー・キューブリックは、人類が月に立つ前年に「2001年宇宙の旅」を製作しました。32年後の今年、人類は木星へ有人飛行をしているとの内容で、当時は世界に衝撃を与えました。通信衛星の発案者でもあるクラーク博士(83)は健在で、朝日の正月インタビューに「宇宙旅行の技術を発展させない文明は滅びる」とし「赤道上の静止軌道に人工都市『スターシティー』を建設し、宇宙エレベーターで地上と行き来する」との壮大な夢を語っています。

 この宇宙エレベーターは、入江氏らが提唱するリニアモーター利用のカタパルトに似ています。日本はこうした優れたアイデアのほか、毛利衛、若田光一両飛行士が二度の宇宙飛行に成功し、とくに若田氏は、宇宙遊泳しながらロボットアームで機材を接合させるなど、職人肌の技術が高く評価されています。さらに二人の宇宙飛行士が任命されました。

 このような成果を上げながら、宇宙開発事業団(NASDA)は国産の次期主力ロケット「H2A」1号機の打ち上げを、当初予定の2月から半年後の今夏まで延期しました。H2Aは1昨年11月の打ち上げで、2度目の失敗をしたH2の後続機。延期の理由は打ち上げの最終段階で第1段エンジン(LF7A)に相次いで起きたトラブルが原因です。

 日経によると、こうした日本の失敗をよそに、欧州のアリアンは連続59回も打ち上げに成功し、価格の安い中国の長征にも追い上げられるなど、日本のロケットビジネスは信頼性を失い、危機に直面しています。三菱重工など73社が設立した「ロケットシステム」は米国の衛星メーカー2社から30基の受注を受けていましたが、20基の契約が解除されたそうです。H2Aは米、欧州、ロシア、中国のロケットに匹敵するコスト競争力を狙って、価格を半分以下の約85億円に引き下げたことが祟ったと報じています。

 80年代に日本がH2ロケットの打ち上げに成功した時、世界の軍事評論家は「大陸弾道弾(ICBM)を発射できる技術を日本は身につけた。高速道路もジェット戦闘機の発着に利用できる」と日本の軍事大国化に警告を発しました。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が日本の頭越しにロケット発射実験をした時も、「あれはテポドンの実験だ」と日本国内が騒いだのに対し、北朝鮮は「人工衛星の実験だ」と開き直った経緯があります。

 また、自民党が政府開発援助(ODA)の削減を求める背景には、財政赤字で支出が苦しくなったばかりでなく、日本の援助を受けながら軍事力を強化する中国などに対する強い不満があります。このように、宇宙科学と軍事開発は密接な関係にあります。

 入江氏は「資源のほかに安全保障の見地からも二十一世紀の中頃に、宇宙は極めて重要な位置を占めていよう」と結んでいます。世界では日米欧露など16カ国が国際宇宙ステーションを建設中です。日本はその中核に坐り、資源、安保の両面からも宇宙科学のパイオニアとして宇宙の開発・振興に本腰を入れて取り組まなければならないでしょう。