北村からのメッセージ


 第117回(10月1日) 特別国会開幕 反対派が賛成し成立

 総選挙の圧勝を受けて9月21日開幕した特別国会の首相指名投票で、小泉首相は驚異的な340票(衆院)を獲得、第3次小泉連立内閣が発足しました。全閣僚17人とともに、私は防衛庁長官政務官を再任されました。首相は11月1日まで42日間の会期内に郵政民営化法案を成立させ、国会終了後は内閣改造・自民党役員人事を断行、来年度予算案の編成に入ります。衆参両院本会議の指名選挙では、「民意には逆らえない」として衆院12人と参院全ての造反議員が小泉首相に投票、同法案の採決でも大半が賛成する意思を明らかにしています。このため、同法案が10月中旬にも成立するのは確実です。首相は後継総裁候補に相応しい人物を内閣改造の要職に抜擢する考えを記者会見で表明しました。主要ポストは、難しい年金問題を処理する厚生労働、増税など財政再建に取り組む財務、日米、日中、日朝など多くの懸案を抱える外務などですが、与えられたポストで研鑽を積んだ者が次期政権を担当することが確実です。首相は残り1年の総裁任期内に、これらの閣僚を大いに競わせて小泉改革を達成させ、改革路線を継続させたいと考えています。

 民営化時期を半年間延期

 特別国会は初日に首相指名を終えた後、9月26日に開会式と首相の所信表明演説、28,29両日に各党代表質問を行い、10月6日からいよいよ郵政民営化法案の審議に入る段取りです。衆院郵政民営化特別委員会の委員長には、通常国会と同じく二階俊博氏が起用されました。法案審議では「改革派」をアピールするため、先の総選挙で反対派の対抗馬(刺客)として戦って当選した片山さつき、佐藤ゆかりの両氏ら新人13人を委員に充てました。再提出した法案は7月に衆院で修正可決された法案とほぼ同じ内容で、日本郵政公社を07年10月に持ち株会社と、その傘下の郵便貯金銀行、郵便保険(簡保)、郵便局会社、郵便事業会社の四社に分割・民営化する骨格を維持しています。これに前回修正された、過疎地の郵便局の赤字を補填する基金の拡充など4項目が加わっています。ただし、法案成立がずれ込んだ結果、システムがうまく稼働するかどうかのテスト期間を十分に確保するため、当初07年4月としていた民営化時期を10月に半年間延期しました。

 復党願い首相指名し賛成

 首相は所信表明演説で、今国会での郵政民営化法案の成立と三位一体の改革など構造改革をさらに加速させる決意を表明しました。「前国会では組合の反対から対案を出せなかった」と、自民党に足下を見らたことが敗因に繋がったと後悔する民主党は、独自の郵政改革法対案を衆院予算委審議の後に提出します。対案は同党がマニフェスト(政権公約)に掲げた「郵貯預入限度額を段階的に500万円にまで引き下げ、資金を官から民へ移し替える」という単純なもので、郵政民営化、もしくは廃止を打ち出す内容になりそうです。
 通常国会では、7月の衆院本会議で37人が反対票を投じ、14人が欠席・棄権しましたが、首相はこの51人の造反組を分断し反対派を徹底排除する刺客作戦に出たため、6人が離党、参院からも2人が参加して2つの新党を結成、27人が無所属で立候補し、4人が引退しました。このうち新党の4人と無所属13人が当選したものの、反対勢力は半減しました。ところが、無所属当選の12人が「根っからの自民党員だ」、「民意を尊重」などを理由に首相指名で首相に投票。8月の参院本会議でも22人が反対、8人が棄権・欠席して同法案を否決・廃案に追い込みましたが、その中心人物であった参院亀井派会長の中曽根弘文・元文相ら同派11人が早々と同法案に賛成の意向を表明。亀井派以外でも反小泉の「勉強会」を作ると主張していた鴻池祥肇・元防災相や真鍋賢二・元環境庁長官ら造反派全てが首相に指名投票、法案採決でも賛成に回ると表明しています。これら両院造反派の動きは、武部勤幹事長ら執行部が特別国会後に造反者への厳正な処分をちらつかせていることから、恭順の意を示し早い機会の復党を願っていることによるものです。

 派閥解体と小泉親衛隊

 綿貫民輔・前衆院議長、亀井静香・元政調会長らの国民新党と、田中康夫長野県知事を代表とする新党日本は、提携を深め、選挙後に反対派を糾合して院内統一会派を結成、やがては公明党をしのぐ数十人規模の「大同合併」を達成し、政界再編の中でキャスティングボートを握る夢を描いていました。しかし、平沼赳夫・前経産相、保利耕輔・元文相ら反対派が新党に参加する考えはなく、構想は挫折したようです。むしろ、旧亀井派は完全に分裂し伊吹文明・元労相を代表に伊吹派を名乗るほか、旧橋本派、旧掘内派は未だ領袖が不在。旧小里派は最高顧問の加藤紘一元幹事長が同派を離脱し谷垣氏が代表になるなど、派閥の改編・弱体化が急激に進んでいます。今思えば首相の「自民党をぶっ壊す」とは「派閥解体・形骸化」と同義語でした。首相は今回の総選挙で当選した83人の新人を対象に、毎月1回の懇談の場を設けるよう武部幹事長に指示しました。これには派閥入りした新人は出席させない方針で、新人の「脱派閥化」を狙っていますが、マスコミは逆に「最大派閥・小泉派の結成」、「小泉チルドレン」、「小泉親衛隊」の誕生などと揶揄しています。

 議席3倍の小泉マジック

 それにしても「小泉マジック」は歴史に残るものでした。小選挙区の自民得票数は3251万8389票で、民主党の1・3倍に過ぎず、得票率では47%でした。ところが議席占有率は73%で296議席を確保、自公の与党では民主113議席の約3倍を獲得しました。特に前回自民の大物議員が枕を並べ討ち死にした首都決戦では、都内25選挙区のうち23議席を占めて圧勝したため、自民の東京比例区名簿に搭載した候補が全員当選してもなお枠が1議席余り、社民党が棚ぼた式に繰り上げ当選となるハプニングもありました。また、7月の都議選で惨敗した女性の元杉並区議が、公示直前の公募で自民の公認を得、大阪7区から立って当選するなど、都市部に旋風が巻き起こりました。小選挙区制には、51%対49%の僅差でも相手を討ち負かして「死に票」にさせるという、オール・オア・ナッシングの怖さがあり、風向き次第で勝敗は激変します。首相はその辺りを心得ていて、国民に「郵政イエスかノーか」の1点だけを分かりやすく問いかけ、大勝利を収めたわけです。民主党の菅直人元代表は「小泉ハリケーンにやられた」と、党の再生を目指し党の代表選に3度目の出馬をしましたが、「官公労などとのしがらみを断つ」若手の前原誠司氏に敗れました。自民党内でもポスト小泉の動きが胎動し始めています。

 閣内に総裁候補取り込み

 「研鑽を積んで、心構えもしっかり固め。小泉内閣が進めてきた改革を、さらに前進させる。そういう情熱を持った方に、後の総裁になっていただければ、と期待している。(内閣改造では後継総裁候補に)出来るだけ活躍の場が与えられるような配慮をしていかねばならない」――。首相は9月12日、総選挙直後の記者会見で「ポスト小泉」について、こう発言しました。マスコミがこれまで総裁候補に上げたのは、経歴順に亀井静香、加藤紘一、山崎拓、平沼赳夫、高村正彦、麻生太郎、谷垣禎一、藤井孝男、町村信孝、福田康夫、安倍晋三、野田聖子の各氏です。このうち総裁選にチャレンジしたのは麻生、高村、藤井の3氏だけ(亀井氏は選挙直前に立候補辞退)ですが、これら候補には反対または欠席・棄権した造反グループが多く、首相から見れば反改革の首謀者。離党した亀井氏、落選した藤井氏は言うに及ばず、反対派の平沼、野田氏、棄権の高村氏ら造反組を除くと候補は限られてきます。元YKKグループの加藤氏は「加藤の乱」以来首相との間に距離が生じ、逆に山崎氏は首相との盟友関係がより緊密化しました。麻生総務相、谷垣財務相、町村外相は現職閣僚で活躍中です。

 民主に対抗し若手擁立か

 調整型の福田前官房長官、外交タカ派の安倍前幹事長はともに小泉政権での貢献度は抜群ですが、福田、安倍、町村の3氏は森喜朗、小泉両首相と同様に旧福田派で、これまでの政界常識からいって、3代続けて同じ派閥が政権をたらい回ししたケースはありません。従って山崎拓元副総裁や麻生総務相、谷垣財務相がやや有力に見えますが、サプライズ人事が好きな首相のこと。03年秋の党3役人事では平沼氏ら「中二階組」が後継者に近づくのを嫌って安倍氏を幹事長に抜擢、同年11月の総選挙を勝ち抜いたように、首相は次の総選挙でも前原民主党代表に対抗するうえで、安倍氏ら若手の後継擁立を念頭に置いて、既に清新で重厚な内閣改造に着手しているかも知れません。郵政法案の審議と並行して、党内ではこうした人事抗争が深く潜行し、10月後半の政局が賑やかになることでしょう。