北村からのメッセージ

  第115回(8月1日)民営化の最終決戦 可決は政界大混乱


 国会会期末まで後2週間足らず。郵政民営化法案を巡る攻防は、最終決戦の場を迎えました。参院で18人が造反するか、36人が欠席すれば否決・廃案です。参院自民の反対派は約30人で、法案の成否は反対勢力の手中にあります。問題は、否決すれば小泉首相がすかさず国会を解散し、党分裂―総選挙敗北―政権交代―政界再編と大混乱が生じかねないことです。このため、参院の青木幹雄議員会長、片山虎之助幹事長ら執行部は反対派切り崩しの説得工作を連日続け、同法成立後は「郵政の監視・見直しをする議員連盟を作る」と語っています。一方、丹羽雄哉元厚相ら賛成派議員が解散回避の派閥横断的な会合を開くなど、政局安定を目指す動きも活発化しています。この会合には継続審議の狙いもあるようですが、「郵政花道引退」に繋がる継続審議には首相が強く反発しており、継続の可能性は低いと見られます。いずれにしても天下分け目の決戦。私は長崎県連会長の立場から久間章生総務会長に協力、自民党崩壊の事態だけは避けたいと日夜努力しています。

  反対派はステルス作戦

 郵政事業懇話会の綿貫民輔会長(前衆院議長)が主宰する「反小泉」勉強会が法案の衆院通過後の7月14日に開かれ、参院議員10人、衆院議員49人が出席しました。参院議員の出席者が前回より7人減ったことについて、荒井広幸氏(亀井派)は「ステルス作戦だ。レーダーに映らないようにしないといけない。(反対を)心に決めている人は多い」と述べ、亀井静香元政調会長も「表に出るとうるさいから、確信犯でもこなかった人がいる」とテレビで語っています。衆院では勉強会の出席者リストを元に武部勤幹事長ら執行部が説得を行ったため、参院では説得逃れの「隠し球」を取って置いたようで、実際の反対派は30人規模といわれています。勉強会では、「参院の法案否決を理由にした衆院解散は常識的におかしい」(高村正彦元外相)、「首相に解散権があるとしても、与党に向けるのはどうか」(藤井孝男元運輸相)などの声が相次ぎました。

  首相の票読みに党内批判
 
 そればかりか、首相が20日、都内の講演で「確実に反対するのは10人前後、反対の可能性があるのは20人じゃないか」と票読みしたのに対し、森喜朗前首相は「もってのほかだ。評論家ではない。みんながつらい思いをして努力しているのに、笑みを浮かべながら票読みをするなんて、本当にやってはならないことだ」と森派総会で批判。首相は「私は票読みできません。みなの意見を紹介したまで」と記者団に釈明しましたが、党内では批判が相次ぎました。解散には憲法第7条の「天皇は内閣の助言と承認により、国民のために、国事行為(衆院解散)を行う」と、第69条の「内閣は衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」の2つがありますが、時の首相が政権の命運を掛けた重要法案が参院で否決されても、衆院が解散された事例は過去にありません。

  否決なら躊躇なく解散 

 綿貫会長は、「参院で法案が否決されたからといって、衆院を解散するのは憲法違反」と主張、20日には河野洋平衆院議長を議長公邸に訪ね、「議会制民主主義を守る立場から考えて頂きたい」と首相への対応を要請。河野議長も「3権分立ということからも、ちょっと異常だ」と答えたといいます。これは首相が7条解散を求める本会議を開かないよう要請したものです。亀井氏も「江戸(参院)の仇を長崎(衆院)で討つとは、あまりにも議会制民主主義を無視している。参院は要らないということか」と怒り、「党則に沿って(首相解任に必要な)国会議員と都道府県代表の過半数を集めて、総裁リコールをやるのは簡単だ」と宣言しています。これに対し、首相は「参院の法案否決は内閣不信任と見なす」との考えを示すとともに、民主党の衆院議員から出された「法案否決を理由とする解散」についての質問趣意書には「新たに民意を問うことの要否を考慮して、内閣が政治的責任において決すべきものと考えている」との答弁書を19日の閣議で決めています。首相は、現憲法施行後に行われた19回の選挙のうち、69条解散は4回に過ぎないと強調。解散権は幅広い行政権を持つ内閣の判断に基づいて行使すべきものと受け止め、否決されれば躊躇なく解散を断行。序でに8月15日の靖国参拝も実行する見方もあります。

  「ルイ16世だ」に丁寧答弁
 
 「首相は(敬愛する)織田信長よりもルイ16世ではないか。採決で法案が否決されても、わが国は断頭台に登らされることは無い。安心していい」――。民主党の江田五月参院議員会長は、実質的な審議に入った15日の参院特別委で、ルイ16世がフランス革命で、議会の387票対334票の小差で死刑にされたことと、衆院本会議のわずか5票差で可決されたことをダブらせて、皮肉たっぷりに質問しました。これに対し、首相は「江田さんの名は五月。『時は今 雨が下しる 五月かな』と詠んだのは本能寺に討ち入る前の明智光秀。私は信長ほどの能力も無ければ英雄でもない。断頭台で首をはねられる時代でないことは承知しているが、丁寧に誠実に対応していく努力をする」と逆襲しました。21日は自民党反対派の急先鋒・長谷川憲正氏が「国民に不安を与えるだけの理念なき民営化だ。過疎地の金融サービスに支障が生じ、郵貯、簡保が無くなれば市民は困る」と竹中平蔵郵政民営化担当相を相手に痛烈に批判しました。それでも首相や竹中担当相は反対派や野党を刺激しないよう衆院とは打って変わり、丁寧な答弁に終始しています。

  継続審議視野に早期採決
 
 参院特別委は7月27日午前の東京中央郵便局など施設視察と28日の盛岡、京都両市での地方公聴会をはさんで26、29日の参考人質疑を終えました。参院自民党執行部は早ければ8月4日に締めくくり総括質疑と採決を行い、5日の参院本会議で採決する構えです。13日の会期末まで1週間も残すのは、仮に、民主党が首相や竹中担当相の問責決議案、衆院での内閣不信任案を提出して徹底抗戦しても十分ゆとりがあること。土壇場で法案の再修正や継続審議の声が高まることを想定、処理する日数を確保しようと考えたからです。民主党は審議引き延ばしで法案を廃案に追い込むか、それとも自民党反対派の造反に期待をかけ、一気に衆院同様「本会議決戦」に持ち込むか、悩んだようですが、野党ペースで進むと逆に自民党反対派の動きにブレーキをかける恐れがあると見て、もっぱら反対派との連携を重視しています。継続審議問題は,青木会長と森前首相が18日夜、都内ホテルで首相と会談した際、その可能性を探ったのに対し、首相は「成立か廃案しかない。これだけ審議をしてなぜ継続しなければならないのか」と不快感を示したといいます。

  再修正は困難な情勢
 
 再修正は主として衆院議員側が、持ち株会社に対し、保有する郵貯銀行と保険会社の株式を完全処分するよう義務付けている規定を凍結するなどを求めていますが、これについても首相は22日、「衆参一体で政府・与党が合意し修正をしたのだから(再修正は)ありません」と記者団に語り、応じる気配はありません。衆院での修正についても「単なる字句修正で、基本方針、理念はいささかも変わっていない」と頑なな姿勢を採り続けています。仮に首相が再修正に応じたとしても、残り2週間で総務会の了承を取り付け、参院で議決後、衆院に差し戻して採決するのは時間的にも難しいようです。結局は、自民執行部が反対派を切り崩す以外に手段はなく、執行部は有力な支持団体に対し、解散の大混乱を避けるために組織内候補を説得するよう要請したり、参院議員が選挙区の参院選で“借り”がある地元の代議士にも説得工作を依頼するなど、懸命な努力を重ねています。それを見かねたのか、与党・公明党の冬柴鉄三幹事長は27日、日本記者クラブの講演で「(自民敗北の場合)民主党とは組みたくないが、政治の安定のためにそれしかないなら、躊躇すべきではない」と述べ、自民党の反対派を牽制しました。さあ、執行部の努力の結果、賽の目はどう出るか。国民は固唾を呑んで見守っています。