北村からのメッセージ

  第114回(7月16日)成立・解散・継続? 僅差で第2戦

 成立か、否決・廃案か、それとも継続審議か――。郵政民営化関連法案の攻防は、参院で審議を開始、いよいよ第2ラウンドに入りました。小泉首相が英国グレンイーグルズ・サミット出発前日の5日、衆院本会議では自民から反対37、欠席・棄権14の計51人の造反が出る中、わずか5票差という薄氷を踏む思いで、どうにか法案は可決されました。首相は肝を冷やしたに違いありません。党内亀裂は一段と深まっています。私は、@政府・与党の合意でまとめた修正案が党総務会で了承されたA党員、しかも内閣の1員である以上、党議拘束に縛られるのは当然B国連安保常任理事国入りを目指す重要な時期に、解散で政治空白を作ることは許されない――などの理由から苦渋の選択の末、賛成票を投じました。英国では悲惨なテロ事件が起き、米国と同盟関係の深い日本が次のターゲットに狙われているとの情報が流れています。生命と財産を守るのが政治の究極の課題。防衛政務官として、今は国民に信を問うよりも、国民の安全確保に全力投球したいと考えています

 亀井派18人でも廃案可能

 郵政事業懇話会の綿貫民輔会長(前衆院議長)、亀井静香元政調会長、野呂田芳成元農水相は、会期延長を議決した衆院本会議を欠席したのに続き、5日の法案を採決する本会議でも堀内光雄前総務会長、平沼赳夫前経産相、藤井孝男元運輸相らとともに反対投票し、古賀誠元幹事長、高村正彦元外相らは欠席しました。欠席者数人が反対に回れば法案は確実に否決されていました。これらの造反は首相の強引な政治手法、解散の示唆や人事で脅す恫喝的な党運営、優先順位を忘れた政策遂行などに対する党内の不満が噴き上がったものです。綿貫会長は「今すぐにも処分したらいい」と事前発言し反対票を入れ、「法案が否決されたら衆院解散というのは憲法違反だ」と述べています。「参院の第2ラウンドはKOだ」――。亀井氏は僅差で法案が衆院通過した夜、こう豪語しました。参院本会議で18人が造反すれば法案は否決されますが、参院の亀井派は反対派急先鋒の荒井広幸氏を含め総勢18人。このうちの10人は確信犯的な反対派とされ、旧郵政官僚OBの長谷川憲正氏(旧橋本派)ら他派の10人近い反対派と連携すれば廃案に追い込むことは可能です。

 内閣の不支持率が逆転

 衆院本会議否決後の郵政事業懇話会の拡大役員会には旧橋本、亀井両派を中心に参院の反対派16人が出席しました。首相が解散カードをチラつかせても衆院と違って解散はなく、直近の参院選は小泉総裁の任期切れ後の2年後。首相の後ろ盾となっている青木幹雄参院議員会長、片山虎之助参院幹事長ら穏健派の執行部が懸命に説得しても聴く耳は持たない感じです。小泉政権は抵抗勢力と戦う姿勢が国民に評価され内閣支持率は80%台でスタート、最近も40%台を維持してきました。だが、衆院通過後の共同通信社の世論調査では、内閣不支持率が初めて支持率を上回り、内閣支持率は次第にしぼみつつあります。浮気なマスコミは、「世論の小泉離れが始まった」「政権基盤に揺らぎ」「死に体(レームダック)の始まり」などと酷評し、ポスト小泉の関連記事を載せ候補者探しを始めました。党内で首相の求心力が薄れ、各派に派閥再構築を目指す動きが出てきたことは事実です。

 野党、問責決議案提出へ

 首相はサミットのエリザベス英女王夕食会で、誕生日を迎えたブッシュ米大統領にエルビス・プレスリーの「I want you I love you」を熱唱しご機嫌だったそうですが、「小泉政治は最終局面」(小沢一郎氏)という民主党は「参院否決の解散はナンセンス」と総辞職を求め、解散の場合でも受けて立つ構えです。参院は11日の本会議で郵政民営化特別委の設置を議決、委員長に青木氏側近で反対派の主張にも理解を示す陣内孝雄元法相(旧橋本派)を互選、13日の本会議で法案の趣旨説明をし、審議に入りました。衆院では110時間の審議時間だったのに対し、委員数が少ない参院は70時間程度となる見通しです。野党は竹中平蔵民営化担当相に質問の集中砲火を浴びせ、問責決議案などで揺さぶる考えです。青木氏は「衆院で修正して荷崩れなしに参院に送ってくれれば必ず成立させる」と胸を張っていましたが、51人の大量造反に驚き、衆院可決後は協力要請に訪れた首相に対し、「衆院の反対派から強い働きかけがあるかも知れない。そうなると大変厳しい」と答えました。片山氏もテレビで、首相が丁寧な国会対応に努め、反対派を説得すべきだと述べています。

 執行部は党内融和重視
 
 2年後の参院選は出来れば衆院と同時選挙にし、単独過半数を回復したい青木氏ら参院幹部は、良識の府・参院の独自性を発揮して法案を成立させ、解散・総選挙を何としても避けたいと院の結束固めに躍起です。首相は外遊先でも「参院での否決は不信任」との認識を示し、依然解散の意向を表明していますが、森喜朗前首相は7日、森派の総会で「与党の中で話がまとまらないことで、解散して信を問うというバカげた話はない。政治史上に汚点を残す」と苦言を呈し、安倍晋三幹事長代理も長野県軽井沢の講演で「首相の態度が少し悪かった。法案を修正したのに『何も変わっていない』といったので、修正の効果が出なかった」と批判しました。首相も帰国後は「ゼロから出発する」と謙虚な姿勢を見せています。武部幹事長ら執行部は党内融和を最大に重視し、造反者の処分決定を参院での法案採決後に引き延ばしたほか、秋の内閣改造人事では参院の閣僚ポストを2から3に増やすことを提言したり、参院審議は国民の理解を得るよう政府が丁寧な答弁で、説明責任を果たすことを首相に求めています。

 総選挙は9・11の公算?

 気の早いマスコミは「会期末に廃案か、継続審議が決まれば、首相は解散を断行、総選挙の投票日は9月11日(日)の公算大。分裂選挙で政界再編」などと報じています。否決なら衆院51人の造反者は厳正処分(除名)され、首相口癖の「自民党をぶっ壊す」事態になりますが、30選挙区は未だ空白区というから、大混乱の総選挙となります。それ以上に国際情勢は厳しく、政治の空白は許せません。サミット開幕日の7日午前、ロンドンで発生した同時テロでは約50人が死亡、千人が負傷しました。悲惨だった01年9月の米中枢同時テロ、04年3月のスペイン・マドリッドで191人が死亡した列車同時爆破に続く大規模テロです。「聖戦アルカイダ秘密組織」を名乗るグループが「イラクとアフガニスタンでの虐殺への報復だ」と犯行を認める声明をウェブサイトに掲載しました。マドリッドは総選挙、ロンドンはサミットを標的にしたことに間違いありません。また6月23日には、イラク南部サマワの陸上自衛隊宿営地外を走行していた陸自車列近くで爆発があり、車両が損傷、4日夜には宿営地に砲弾が打ち込まれました。これら事件では6日までに、武装勢力「イラク・イスラム軍」を名乗る組織が「日本の部隊をロケット弾と爆発物で攻撃した」との声明をイスラム系ウェブサイトに掲載しています。

 テロ発生なら政権崩壊

 イスラム過激派は、イラク戦争を仕掛けた米国の同盟国・日本は攻撃目標であるとしてテロを予告しています。テロ組織は指揮系統があいまいで、世界各地に潜伏する葡萄状のセル(細胞)が資金を得てゴキブリのように、手薄な所を選んでゲリラ的に攻撃を掛けているようです。狙いは自衛隊基地、原発、地下鉄など公共の乗り物に無差別の自爆テロや、時限爆弾を炸裂させるほか、サリンガスを散布することも予想されます。過去にアルカイダの幹部が出入国を繰り返したという情報もありますが、日本の危機管理は十分か。ロンドンのような大規模テロが国内で起きたり、サマワの陸自宿営地で異変が起きれば、総選挙を待たず小泉政権は吹っ飛びます。私は防衛庁長官政務官として、郵政民営会化以上に重要な国の安全保障、国民の生命・財産を守るために努力したいと考えています。